FFTアナライザとは
FTT (Fast Fourier Transform) アナライザとは、高速フーリエ変換を (FFT) 行う解析機器です。
機械や建物にはさまざまな振動が発生しますが、FFTアナライザを使うことによって、振動の発生原因や低減策を見つけることが可能になります。FFTと類似した計測機器にスペクトラムアナライザやメモリレコーダがありますが、FFTアナライザは主に低周波信号の周波数成分を観察するときに用いられます。
FFTアナライザの使用用途
FFTアナライザの主な使用用途は、機械や設備、建造物の振動解析です。測定対象物に加速度ピックアップを固着し、電気信号に変換してFFTアナライザへ入力し、演算処理をして周波数成分を解析します。
機械や建造物が発する振動、および共振周波数を確認し、疲労故障が発生しないように構造物を補強したり、振動を抑制したりすることも可能です。また、モータの回転ムラの検出も用途の1つです。モータが回転する際の振動をFFT解析すると、振動の発生要因、例えば「モータの回転軸 (ロータ) が振動しているのか」「歯車やベアリングが振動しているのか」など、振動の発生源が明らかになります。
そのほか、音声解析にもFFTが活用されています。人や楽器が発する音の領域を確認したり、騒音を周波数分析してどのような場所、設備から発しているかを確認します。この場合は、マイクロフォンを用いて音声をアンプに通し、信号変換および増幅をしてFFT解析を行います。
最近では、事務機や家電製品などの開発領域も、FFTが活用される分野です。例えば、製品の静音性の評価や、騒音原因及びその対策方法の検討に使用されます。低周波信号に対するノイズ源特定にも用いられることから、周波数信号を扱う製品のノイズ対策にも利用・応用されます。
FFTアナライザの原理
高速フーリエ変換 (FFT) は、フランスの数学者Fourierが提唱したフーリエ級数の理論を基にしています。フーリエ級数の理論とは、どんな複雑な波形でも周期性を持っているのであれば、単純な正弦波 (sin波) 、余弦波 (con波) の級数で表現することができるという理論で、この級数の考え方を拡張したのが、フーリエ変換です。
一般的に、実際に測定しようとする信号は、どこまで測定すれば、周期性があるかは不明です。そこで、フーリエ変換では、観測される波形から適当な時間分を切り取り、切り取った波形が無限に繰り返される信号と仮定します。フーリエ変換黎明期には、フーリエ変換の計算には膨大な回数の掛け算が必要でした。
しかし、J.W.TurkeyとJ.W.Cooleyによって、データ数を2のn乗回取ることによって、計算回数を少なくする方法が提案されました。例えば、データ数を1024とすると、1024×1024=1,048,576回の計算が、10,240回に短縮されます。この方法を高速フーリエ変換 (FFT) と呼び、FFTはその頭文字を取ったものです。
一般的な波形は、振幅と周波数 (または周期) と位相 (時間差) の3つのパラメータで表すことができます。この原理にFFTを適用し、FFTアナライザを用いることによって、時間を横軸とした入力波形信号が、横軸を周波数、縦軸はそれぞれの周波数における波形の振幅を表すグラフへと変換されます。
FFTアナライザのその他情報
1. FFTアナライザとスペクトラムアナライザの違い
FFTアナライザとスペクトラムアナライザの違いは、まず扱える周波数の領域が異なることです。FFTアナライザは、DC~100kHzまでの低周波信号を扱います。一方、スペクトラムアナライザが扱うのは、周波数レンジが10kHz~10GHzと非常に広い領域です。
最近の機種だと、DC~50GHzまで対応できるものもあります。また、使い方の違いとしては、FFTアナライザはどのような周波数成分を持つかわからない場合に使用するのに対して、スペクトラムアナライザは、既知の高周波信号 (携帯電話やWiFi発信機) の周波数成分分析に使用する装置です。
さらに、装置の構造から両者の違いを見ると、従来スペクトラムアナライザはアナログ回路で構成されていたのに対して、FFTアナライザではADコンバータによって、得られた波形をデジタル化した後に、高速フーリエ変換処理を行い、周波数の強度分布を算出しています。
参考文献
https://www.onosokki.co.jp/HP-WK/c_support/newreport/analyzer/FFT1/fft_1.htm#mark1
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Reference-FFTAnalyzer-01/?page=3