測長機とは
測長機とは、その名の通り長さを測る機器です。
現在では、光の速さを基準にして、単位時間で光が進む距離で長さを定義します。長さの測り方は、直接法と間接法に区別されます。
- 直接法
一般的によく使われる物差し、巻き尺、ノギス、マイクロメータなどを使用し、標準の長さやスケール、目盛りと比べて長さを測る方法です。 - 間接法
長さと関係のある他の物理量を用いたり、電気的、光学的な手法を用いたりして長さを測る方法です。
多くの場合は直接法で長さを計測できますが、長大な構造物や、ミクロンオーダーの微細な対象物である場合は、標準の長さ (スケール) を用意することが困難なため、間接法が用いられるケースがあります。また、形が複雑だったり、手が届かない場合、あるいは接触することが許されない対象物の場合も、間接法が用いられます。
測長機の使用用途
測長機は様々な分野で使用されていますが、用途に合わせて最適なものを選ぶ必要があります。
- 数mm~数十mmで手のひらや卓上に乗る程度の大きさのもの: 定規やノギス
- 数百mm~数mでやや大きく長いもの: 巻き尺等
- 仕上がり精度がμオーダーで、出来映えを顕微鏡で観察するようなもの: マイクロメータ
- 野外での数m~数十mの距離: 光学的な手法 (三角測量、レーザー測長計)
- レンズや半導体ウェハなど精密工業製品の微細な凹凸測定: レーザー干渉計
さらに、光や触針ではアクセスできない対象内部の測定には、X線CTなどの技術が計測に応用されています。また、ナノテク産業ではナノメートルレベルの測定が必要であるため、走査型電子顕微鏡が応用された方法で計測されます。手軽な用途として、最近ではスマートフォンのカメラから測長するアプリが開発されるなど、画像解析による測長法も開発が進んでいます。
測長機の原理
1mの定義は、「1秒の1/299,792,458の時間に、光が真空中を進む長さ」です。これに基づいたメートル原器が長さの基準となっています。原理的には直接法はこのメートル原器との比較です。
長さの定義に基づいた測定原理としては、光の飛行時間 (time of flight: ToF) を計測する方法があります。光が非常に速いことから、高度なエレクトロニクス技術が必要とされます。現在多くのレーザー型の機器 (ToF) では、強度変調された入射光と反射光の位相差にもとづいた測定法が一般的に採用されています。
定義では真空中の光の挙動となっているため、実際には空気の屈折率による補正が必要です。レーザー干渉計では、レーザー光同士の干渉現象を利用した計測法を採用しています。
同じレーザー照射に対する参照面からの反射光と、測定面からの反射光を干渉させると生じる干渉縞を解析することで、測定面の参照面からの距離をnmオーダーで測定することができます。いくつか測長器を例示しましたが、手法は非常に多いです。
測長機のその他情報
1. 測長機の使い方
多くの測長機で採用されている横型測長機は、ベッドと、ベッド上を移動する標準尺を内蔵した往復台,標準尺を観測する測微顕微鏡,被検体を一定の測定力のもとにおく測定面、および被測定物を支持する測定台から構成されています。この横型測長器には、アッベの原理を満足する構造と、エッペンシュタインの原理を満足する構造とが知られています。
アッベの原理を満足する構造を有する横型測長機においては、ベッドの非真直性に基づく往復台の測定軸線からの角偏差による測定誤差を無視できるように、被検体の測定軸線と標準尺の目盛面とを同一直線上に配置することにより測定が行われます。
一方、エッペンシュタインの原理を満足する構造を有する横型測長機においては、ベッドの非真直性に基づく測定誤差を取り除くために、被検体の測定軸線と標準尺とが離れているときのその距離と標準尺用の対物レンズの焦点距離とを等しくなるように構成し、レンズの焦点面を標準尺上に光学的に配置することにより測定が行われます。
2. レーザー測長機
レーザー測長機は被検体にレーザー光を照射し、その反射光を利用して被検体の距離を測定します。レーザー測長機は、測定する距離に応じて「変位センサー」「距離センサ」と称します。
- 変位センサー
近距離 (数十mm~数百mm) の範囲をミクロン単位で測定する測長機です。 - 距離センサ
長距離 (数mm~数m) の範囲をミリ単位で測定する測長機です。
上記測長機における測定方法としては、「三角測距方式」と「タイム・オブ・フライト方式 (time of flight: ToF) 」が知られています。
三角測距方式
反射光をもとに三角測量の原理で測定する測定方法であり、測長機は発光素子と受光素子とにより構成されています。発光素子には半導体レーザーが使用されます。測定方法は、半導体レーザーから投光レンズを介して集光されたレーザー光が被検体に照射されます。被検体に照射されたレーザー光の拡散反射の一部は、受光レンズを介して受光素子上にスポット像を結びます。結像したスポットの位置を検出、演算することで被検体までの変位量が測定可能です。
なお、受光素子にCMOS (Complementary Metal Oxide Semi-conductor: 相補型金属酸化膜半導体) を使用しているものをCMOS方式、受光素子にCCD (Charge Coupled Device: 電荷結合素子) を使用しているものをCCD方式と称しています。
タイム オブ フライト方式 (time of flight: ToF)
照射光が被検体で反射して受光部で受光するまでの時間を計測することにより、距離を測定する方法です。この方式には、投光波長と受光波長との間に生じる位相差を利用する「位相差距離方式」と、一定のパルス幅をもったレーザーを投射する「パルス伝播方式」が知られています。
参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/3d/laser/