ニッケルめっきとは
ニッケルは錆びにくくて化学的にとても安定しているため、めっき用の金属として幅広くされており、電気部品や装飾物の表面を保護する方法としてニッケルめっきは多く使用されています。
ニッケルめっきをおこなう方法は、大きく分類して2種類です。
1つ目は、電気ニッケルめっきと呼ばれている方法で、電気を利用して陽極であるニッケルに酸化反応を起こし、還元反応により陰極である被めっき物(めっきを施す材料)にニッケルを析出させることでめっき処理を施しています。
2つ目は、無電解ニッケルめっきと呼ばれる方法で、電気の代わりに薬品を利用して化学反応を起こし、ニッケルを析出させてめっき処理を施す方法です。
電気ニッケルめっきの歴史は古く、1830年代に世界で初めて開発されました。日本では1892年に初めてニッケルめっきが行われたと言われています。なお、初期の電気ニッケルめっきには表面に光沢がなく、めっき処理後に研磨をして表面に光沢を出していました。
ニッケルめっきの方法ごとの原理および種類と使用用途
ニッケルめっきの方法としては、電気ニッケルめっきと無電解ニッケルめっきが挙げられます。
電気ニッケルめっきの原理
電気ニッケルめっきは、溶液の中に電気を流してめっき金属であるニッケルを電気分解させ化学反応を起こすことによりめっきする方法です。
図1に示すように、被めっき物(めっきを施す材料)を陰極、とニッケル板を陽極として硫酸ニッケル水溶液の中に浸しておこないます。これに通電するとニッケル板が酸化反応を起こして、ニッケルイオンが溶液中に溶け出し、溶液中の電子と結びついて還元反応を起こし、陰極の被めっき物表面にニッケルが析出して被膜が形成されます。
図1. 電解ニッケルめっきの模式図
電気ニッケルめっきの種類と使用用途
電気ニッケルめっきは、アート性のあるものから電気部品など幅広い分野のめっき処理に使用されています。なお、電気ニッケルめっきの種類は、光沢ニッケルめっき、半光沢ニッケルめっき、無光沢ニッケルめっきの3種類です。
光沢ニッケルめっきの代表的な使用用途としては、家庭用コンセントやコネクターなどの表面処理が挙げられます。
半光沢ニッケルめっきは、はんだ付けや溶接が主な使用用途です。
無光沢ニッケルめっきは、光沢ニッケルめっきと比較して艶がなく見た目は悪くなりますが、光沢ニッケルめっきと異なり光沢を出す為の添加剤を必要としません。このため、添加剤に影響されることなく、非常に安定した緻密なニッケルめっき被膜が得られ、内部部品のめっきに適しています。
無電解ニッケルめっきの原理
無電解ニッケルめっきは、めっき液となる溶液の中に2種類の薬品を入れその化学反応でニッケルを析出させて、被めっき物の表面に被膜を形成する方法です。
図2に示すように被めっき物をめっき液の中に浸した状態にしておこないます。めっき液は、例えば、硫酸ニッケルと次亜リン酸ナトリウム、pH緩衝材、錯化剤、安定化剤等で構成されており、めっき液中のニッケルイオンが還元反応を起こして被めっき物表面にニッケルが析出し、被膜が析出されます。
図2. 無電解ニッケルめっきの模式図
ニッケルクロムめっきについて
ニッケルクロムめっきとは
ニッケルクロムめっきは、水道の蛇口などによく使用されるシルバー色で少し青白いメッキです。ニッケルクロムめっきは装飾クロムめっきとも言われています。耐食性が良いうえ、硬く、耐候性もあり、光や熱の反射性がよいため、ニッケルめっきの上層に仕上げとして良く使用されています。
当然のことながら、ニッケルクロムめっきを施した場合、ニッケルめっきのみの場合よりも衝撃や腐食に強くすることができ、大気中ではクロムの表面に酸化被膜が生じるので、内部を腐食から守ると同時に外観も維持することが可能です。
ニッケルクロムめっきを施した場合、ニッケルめっきの光沢感とニッケルクロムめっきの銀白色の金属感が合わさり、装飾としても人気があるので、上述の水道の蛇口など以外にも広く使用されている処理方法です。
クロムについて
クロムには酸化数の違いによって、三価クロムと六価クロムがあります。六価クロムは環境汚染や人体への有害性が報告されていることから、RoHS指令、RoHS2指令で使用が禁止されている物質です。従来は六価クロムによるめっき処理が主流でしたが、近年ではその有害性により三価クロムを使用しためっき処理が広く活用されています。三価クロムによるめっき処理は均一性に優れており、従来と同等の耐食性を有するものも開発されています。また、人体に無害なので、作業性等の面でも使用しやすいめっき処理方法です。
無電解ニッケルめっきの腐食について
ニッケルめっき膜の海などにおける塩気への耐性を向上する方法として、無電解ニッケルめっきの際に、還元剤として次亜リン酸塩を用いてめっきを析出させる方法があります。
このようなニッケルめっき被膜は、無電解ニッケル-リンめっきと呼ばれていますが、この無電解ニッケル-リンめっき膜は、大気中の海塩などが比較的少ない状態において短期間の間に被膜が損傷し、金属がむき出しとなり、さびてしまうのが大きな課題です。
研究の結果、大気中の亜硫酸ガス由来の硫酸イオンが表面のニッケル層に接触すると、硫酸ニッケルの水和物が生成し、これが、表面のニッケル層の腐食を進行させる原因物質であるということがわかっています。
このような課題に対しては、犠牲防食タイプのめっき(電気化学的に、上層のめっき皮膜がゆっくり酸化することで下地めっきまたは素材の腐食を守る)ニッケル二層めっきやこの二層めっきの中間にイオウを0.1~0.2%含む光沢ニッケルを挟んだ三層ニッケルめっきが開発されています。また、前述のニッケルクロムめっきなども有用です。
参考文献
https://www.sun-kk.co.jp/room/function/nickel-type.php
https://www.sanko-seisaku.co.jp/mekki-kakou/total_support/plating/index.html
https://www.sanwa-p.co.jp/mekki/nickel/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1989/42/11/42_11_1058/_pdf
https://www.wakayamapp.jp/faq/faq6/entry-81.html
https://www.sanko-seisaku.co.jp/mekki-kakou/total_support/plating/index.html
http://www.ssken.co.jp/research/pdf/111/111_04.pdf
https://www.asahimekki.com/faq/3520.html
https://www.sanwa-p.co.jp/mekki/no-electrolysus-nickel
https://www.sanwa-p.co.jp/faq/detail5141.php