PEEKチューブとは
PEEKチューブとは、化学分析や医療で使われるチューブの1種です。
PEEKとは、高機能であることを示すスーパーエンジニアリング・プラスチックの名称であり、機械的強度、耐圧性、耐熱性、耐加水分解性、絶縁性に優れた材料です。PEEKの特性を極細チューブとして製品化されたものが、化学分析や医療分野で多く利用されています。
PEEKチューブの使用用途
PEEKチューブは、まず医療用チューブとして、カテーテルや薬液の配管として使用されています。科学分析の分野では、高速液体クロマトグラフ (HPLC) の配管チューブとして利用されています。HPLCとは「High Performance Liquid Chromatography」の略であり、液体中に溶解している化合物の成分を分離することによって、定性・定量分析を行うための分析方法です。
化合物を分離する過程において、PEEKチューブの耐圧性能や科学的特性が活かされています。その他、半導体保護用ラックワイヤー保護チューブ、光ファイバ保護チューブ、冷却媒体配管チューブ、理化学用金属管、ガラス管の代替チューブなども用途として挙げられます。
PEEKチューブの原理
PEEKチューブは、PEEK材料の特性をそのまま活かしています。PEEKの正式名称は、Poly Ether Ether Ketone (ポリ・エーテル・エーテル・ケトン) です。エーテル結合-エーテル結合-ケトン結合を基本単位とした分子団の重合により合成される、直鎖状ポリマー構造を持つスーパー・エンジニアリング・プラスチックです。
機械的特性が高く、高温条件下においても高い引張強度や耐衝撃性、耐クリープ性を有します。連続使用可能温度が260℃で、耐圧性、耐摩耗性、耐加水分解性、耐薬品性、および力学特性、電気特性に優れているのが特徴です。
食品安全性も認められているため、PEEKは食品や飲料の加工装置でも広く用いられています。PEEKは優れた特性がある一方で、コストが高く、また高強度であることから切断加工や切削加工性には劣るのがデメリットです。
PEEKチューブの特徴
PEEKチューブは、PEEK材料の特徴がそのまま活かされています。まず高い機械的強度があるため、チューブに高い内圧が生じる環境にも対応可能です。耐疲労強度が高いことも、高圧環境での使用に適しています。
さらに、高温条件、耐薬品性にも優れており、かつ高温時でも耐酸、耐アルカリ性を維持することが可能です。耐スチーム性、難燃性ではアメリカのUL規格に適合している製品もあります。また食品衛生にも優れており、食品の添加物等の良品要件を定めた、食品安全衛生法第370号に適合した製品もあります。
PEEKチューブの種類
PEEKチューブは用途にあわせて、内径、長さ、色わけされた製品が用意されています。内径は0.025mmから1mm程度まで、非常に多くのサイズが販売されており、使用する機器にあわせて選択可能です。色付きのものは複数のチューブを用いる際に、経路の識別や類似した内径の製品の識別として使うことができます。長さは1mから10mほどの長さで販売されています。
PEEKチューブのその他情報
1. PEEKチューブの製造方法
PEEKチューブは一般的に押し出し製法で製造されます。押出製法により、内径25μmという極細のものから数cmという太さまで様々なサイズのものが入手可能です。長い製品はコイル状に巻かれて販売されていますが、直管や曲げ形状で成形できる製品もあります。
2. PEEKチューブの今後
さまざまな特性を持つPEEKチューブですが、新たな開発も行われています。最近ではシリコンゴムや他の柔らかい合成樹脂によって被覆されたチューブも開発・製造されており、高い干渉性が必要な場合やチューブ内を流れる液体の温度を正確に管理したい場合など特殊な条件下での利用も可能です。
参考文献
https://arc.asahi-kasei.co.jp/report/arc_report/pdf/rs-1001.pdfhttps://www.hagitec.co.jp/hagi05/peek01.htm