PETフィルムとは
図1. フィルムの種類と特徴
PETフィルムとは、耐熱性や強度に優れた高分子フィルムです。
工業分野から包装用などの生活分野まで、幅広く活躍しています。正式名称は、ポリエチレンテレフタレートです。ペットボトルの材料でもあります。
高分子フィルムはPETフィルム以外に、PP (ポリプロピレン) フィルムやPVC (ポリ塩化ビニル) フィルムなどがあります。これら2つのフィルムと比較すると、柔軟性は劣りますが、平滑性や耐熱性、耐熱膨張性、耐溶剤性、対候性などで優れています。
PETフィルムの使用用途
PETフィルムの使用用途は、工業用や包装用、液晶テレビ向けの機能フィルムなど多岐にわたります。PETフィルムは高性能な高分子である一方、安価なため汎用性が非常に高いです。
例えば、耐熱性を活かしたレトルト食品用の包装材や高い平滑性を活かしたラミネート基材など様々な特性を利用しています。また、光学特性に優れていることからディスプレイの保護フィルムなど活躍の場を広げています。
製造方法や添加剤、特殊な加工を施すことにより、フィルムの光学特性が変化するため、様々なグレードの製品が存在します。
PETフィルムの特徴
図2. PETの重合
PETフィルムの性質は、PETの構造によるものです。PETとは、エチレングリコールとテレフタル酸を重縮合反応することによって得られる熱可塑性ポリエステルです。
分子が直鎖状のため、分子の再配向が可能となり、強度の向上に寄与します。フィルムの製造方法はいくつかありますが、PETフィルムの場合は、Tダイ法やインフレーション法、延伸法などが採用されています。
図3. フィルムの製造方法
1. Tダイ法
押し出し機の先端に設置されたTダイと言われる直線状の金型から、材料を押し出してフィルム状にします。押し出されたPET樹脂は、冷却ローラーにより冷却され、フィルムが完成します。
2. インフレーション法
リング状の金型から樹脂をフィルム状に押し出した後、冷たい空気を吹きかけ成形します。インフレーション法はフィルム用途よりも袋状に加工したい場合に用いられます。
3. 延伸法
フィルムを一軸方向または二軸方向に引っ張り、分子を一定方向にそろえる製造方法です。分子がきれいに再配列し、強度が向上するため、PETフィルムの製造に最適です。
PETフィルムのその他情報
PETフィルムの加工方法
PETフィルムに加工を施すことで、通常にはない機能を付与したり、特性を大きく向上させたりすることが可能です。加工方法としては、下記の方法が挙げられます。
ウェットコーティング法 | 液体を塗布した後乾燥させる。 |
ドライコーティング法 | 蒸着やスパッタリングを用いて膜を形成する。 |
サンドブラスト法 | サンドブラストを用いて物理的に凹凸を形成する。 |
ラミネート法 | ほかのフィルムに熱や力を加えて接着させる。 |
なお、付加する機能は以下の通りです。
離型性 | フィルムが剝がれる性質 |
粘着性 | フィルムが粘着する性質 |
帯電防止 (AS性 Anti static性) | はがしたりした際にフィルムが静電気を帯びない能力 |
防眩性 (アンチグレア性) | 表面の反射を減らし、光が映り込まなくする性質 |
光拡散性 | 光を拡散させたり集光させたりする性質 |
反射防止性 | 光が反射するのを防止する性質 |
アンチニュートン性 | 2層以上のフィルムにおいて光が干渉しづらくする性質 |
遮光性 | フィルムが光を遮る性質 |
光・熱線選択透過性 | 波長によってフィルムが光 (色や光沢などが変化) や熱線 (例えば光は通して輻射熱は通さないなど) を選択的に透過させたり反射させたりする性質 |
ただし、加工を施すことによってコストが増大するため、使用目的にあわせて品質・物性の管理をすることが重要です。
参考文献
http://kagakucafe.org/ouchi080301.pdf
https://www.futamura.co.jp/products/film/pet.php