DC電源とは
DC (Direct Current) 電源とは、交流の商用電源から直流の電圧を作り出す電源装置のことです。
AC/DCコンバータと呼ばれることもあります。電子機器の内部回路は直流で動作するため、電池駆動を除いた全ての機器はDC電源を内蔵していると考えて問題ありません。
研究機関や大学などで使われる実験用のDC電源は例外として、通常機器の内部に収納されています。目にする機会はありませんが、機器の消費電力を左右する非常に重要なコンポーネントです。
DC電源の使用用途
DC電源は、スマートフォンの充電器や各種電気製品、工場の生産設備等に最低一台は搭載されています。ただし、機器内の電子回路によっては、最適な電源電圧が異なることがあります。その場合は、一台のDC電源からDC/DCコンバータを用いて必要な電圧に変換し、各回路に供給する電源構成が必要です。
各種機器に組み込まれるDC電源は出力電圧が一定値に固定されていますが、実験用機器や各種試験装置に使われるDC電源は、電源条件を変更して機器の特性を測定する用途にも用いられるため、出力電圧を任意に設定できるものでなければなりません。プログラム電源とも呼ばれるこれらの用途では、特に次の性能が求められます。
- 出力電圧を正確に設定する手段を備えていること。
- リップルやノイズが少ないこと。
- 出力電流の大きさに影響されず、常に安定した電圧出力であること。
また、DCモータを利用した動力系に大きなパワーを供給するDC電源もあります。例えば、産業ロボットの駆動、医療機器分野における各種ポンプやファンの回転、建設機械の動力源などにDCモータが採用されていますが、それらのモータへ電力を供給するDC電源が必要です。これらの用途では優れた制御性が要求されますので、大電流出力でありながらも安定した電圧出力が必要になります。
DC電源の原理
DC電源には基本的な回路要素として、整流回路と平滑回路、安定化回路が欠かせません。
1. 整流回路
4個のダイオードを組み合わせたブリッジ回路で、交流を脈流に変換します。嘗てはダイオード1個の半波整流回路が採用されていましたが、リップル特性が良くないため現在は全く見掛けません。
2. 平滑回路
整流回路の出力である脈流を平滑して、リップルの少ない直流に変換します。一般には、大容量のコンデンサ2個とチョークコイル1個から成るπ型と呼ばれる構成です。コンデンサの容量が大きいほどリップルが少なく安定した出力が得られます。
3. 安定化回路
DC電源には出力電圧を安定化する回路が必要ですが、これにはスイッチング電源とリニア電源の2つの回路方式があります。
スイッチング電源
商用電源をそのまま整流回路と平滑回路に通して直流に変換し、それをDC/DCコンバータを用いて所望の電圧に降圧するものです。大きな変圧器が不要なため、比較的小型/軽量に作ることができます。また、電圧変換する際のエネルギー効率が高く、発熱も少ないことがメリットです。
これらの特徴より現在のDC電源の主流となっています。入力電圧に対して幅広く対応できることも特徴の一つで、100V~240V の商用電源に対して、全域で安定した直流電圧を出力することが可能な電源があります。このような電源を採用すれば、世界中どこでも使える電子機器を作ることができます。
リニア電源
大型の変圧器を使用して商用電源を低い交流電圧に変換し、それを整流回路と平滑回路に通して直流にするものです。ただし、そのままではリップルや電圧変動が大きいので、レギュレータ回路を追加して安定した出力電圧を得ます。このような構成は、ドロッパ方式といわれ、メリットとして出力電圧に乗るノイズが少ないことが挙げられます。
ノイズに対して敏感な計測器や音響機器、前述のプログラム電源等に採用されています。一方、レギュレータ回路での発熱が大きいので、高出力の電源では空冷ファンなどの冷却装置が必要になります。
DC電源のその他情報
DC電源の市場動向
ある民間の調査機関では、「世界のDC電源の市場規模は、2021年は4億米ドルで、2027年までに5億2,010万米ドルの規模に達する」と発表しています。その背景として、家庭用電化製品におけるエネルギー効率の高い電源への需要の高まりや、世界的な産業オートメーション化の進展が、市場の成長を促す重要な要因であると分析しています。
さらに、航空宇宙、防衛、通信等の業界で無線通信システムが広く採用されていることも、DC電源市場の成長を後押ししている要因の一つです。
さらに新しい用途として、自動車のバッテリー充電装置、充電ステーション、オンボードチャージャー等も市場を拡大させる要素と言われています。
参考文献
https://www.kikusui.co.jp/knowledgeplaza/?d=powersupply1
https://www.kikusui.co.jp/knowledgeplaza/?d=powersupply2
https://www.matsusada.co.jp/column/column-dc-power.html