ALD装置

ALD装置とは

ALD (成膜) 装置とは、原子層堆積法 (英: Atomic Layer Deposition) によりナノスケールの薄膜を形成する装置です。

原子層を1層ごと成膜するため、精密な膜厚制御性と緻密な段差被膜性を有する点が特徴です。ただし、成膜速度が遅いというデメリットがあります。

ALD成膜では多数の有機金属材料を用いますが、人体への悪影響や発火性の高い材料が多いです。取り扱いには、専門の知識と細心の注意が必要となります。

ALD装置の使用用途

ALD装置は、半導体生産工程やFPD生産工程などで多く用いられます。近年ではDRAM生産で欠かせない技術です。以下はALD装置で製膜される薄膜の一例です。

1. ゲート酸化膜

FETなどのトランジスタを形成する際に必要となる高誘電率を備えた薄膜です。主にAl2O3やZrO2などの酸化膜が用いられます。

2. バリア膜

ALDにて形成される窒化膜をバリア膜と呼ぶことがあります。Cu配線材などの遷移金属の拡散防止のために用いられ、配線周辺の金属汚染や絶縁劣化を防ぎます。

3. 透過防止膜

樹脂基材や有機ELパネルへ水分などが透過するのを防ぐための薄膜です。異物の透過を防ぐことで、品質保持や長寿命化に寄与します。

 

上記のように産業に使用されることがほとんどですが、バイオメディカル業界へも応用されます。人工関節や人工骨などが代表例で、金属製人工骨へ生体適合膜を形成して拒絶反応を防止します。また、薬品へコーティングして薬効時間の調整にも用いられます。

ALD装置の原理

ALD装置はステンレスやアルミなどの真空チャンバを備え、材料ガスの供給パートと材料ガスを排出する排気パートやプロセスを制御する制御ユニットで構成されます。

前駆体となる有機金属材料をプリカーサと呼びます。まずは真空チャンバー内にプリカーサを導入して基板の表面に吸着させます。その後チャンバー内を一度排気して余剰プリカーサを取り除いたのちに、酸化・窒化させて薄膜を形成します。

このサイクル1回で原子層が1層形成され、複数回繰り返すことで膜を堆積させることが可能です。サイクル回数によって膜厚が変化するため、膜厚制御性が高い事が特徴です。ALD成膜の工程でもパージ工程は大変重要であり、異なるプリカーサや酸化源がチャンバー内に残留すると膜質に悪い影響を与えます。

成膜効率を向上させるために、基板を加熱またはプラズマでアシストする場合があります。加熱する方法をサーマルALDと呼び、プラズマでアシストする方法をプラズマALDと呼びます。

ALD装置のその他情報

1. ALDとCVD、PVD技術の違い

CVDは「Chemical Vapor Deposition (化学的気相成長) 」、PVDは「Physical Vapor Deposition (物理的気相成長) 」の頭文字をとって名付けた成膜技術です。

ALDはガスを利用しているため、CVDの一種ともいわれています。しかしながら、ガスが分解することによって生成するSiO2、SiNxといった化合物が塵のように堆積していくCVDとは異なり、ALDは1レイヤーずつ成膜が可能な点が大きな違いです。

PVDは成膜に用いる手法がガスではなく、物理的な手法で成膜を行う技術です。PVDでは真空状態で成膜物質に対して加熱、スパッタリング、イオンビーム照射、レーザー照射を行うことで成膜物質を粒子状態に蒸発・飛散させ、対象物に付着・堆積をさせる方法です。

ALDを用いて成膜を行う場合は、CVDとPVDで成膜をする場合と比較して、幅が狭く深さがある構造物に対して成膜が可能です。特に、100nm以下のサイズ孔に対して成膜する際に、ALD技術が優れた被膜能力を発揮します。ALDのガスは深く入り込んで成膜できるため、小さい孔が多数存在する物体に対しても非常に被膜能力が高い技術です。

2. ALD装置の世界市場

ALDの世界的なマーケットは、2028年までに65億ドルに達する見込みとされます。現在の薄膜成型市場は、CVDがマーケットシェアの大部分を占めています。その中でALD技術は半導体デバイスの製造プロセス中で非常に重要な役割を担うことに加え、蒸着性能や生産速度も比較的に高い技術です。そのため、ALD技術は今後も独自の重要性を築きつつ継続して伸長を続けていく市場と考えられます。

参考:ALD装置の世界市場規模

参考文献
https://aldjapan.com/%e5%8e%9f%e7%90%86/
http://ex-press.jp/lfwj/lfwj-news/lfwj-biz-market/21629/
https://www.oike-kogyo.co.jp/research/column/pvd/

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