PEEK樹脂

PEEK樹脂とは

PEEK樹脂とは、ポリエーテルエーテルケトン (英: Poly Ether Ether Ketone) という名称のエンジニアリングプラスチックを超えるスーパー・エンジニアリングプラスチックです。

エンジニアリングプラスチック (英: Engineering plastic) は、通常のプラスチックと比較して機械的性能に優れているプラスチックです。具体的には100℃以上の環境に長時間曝されても、49MPa以上の引っ張り強度と2.5GPa以上の曲げ弾性率を保つプラスチックが、該当します。エンジニアリングプラスチックはエンプラとも言われます。

スーパー・エンジニアリングプラスチックはスパーエンプラとも言われ、プラスチックの中でも特に機能性が高く、最上級のプラスチックとして金属の代わりなど、特殊な用途にも使用されます。さらに、この中でも最高の機械性能を持つと言われているものがPEEK樹脂です。PEEK樹脂は使用可能温度が250℃以上と高いことをはじめ、耐薬品性、難燃性、力学的特性、絶縁性などにも優れています。

PEEK樹脂は、英国のICI社 (現: Victrex社) によって1978年に開発され、現在でも様々な企業や研究機関で開発が進められています。

PEEK樹脂の使用用途

PEEK樹脂は優れた機械性能を持つことに加えて、加工のしやすさも持ち合わせています。PEEK樹脂は熱可塑性樹脂の一種であり、加熱すると柔らかくなり冷めると固まるため、加圧整形や射出成型など金型を使った加工整形がしやすいのも特徴です。

その一方で、機械的強度が強いがゆえに切削加工や切断加工が非常にしにくいという欠点があります。そこで、PEEK樹脂を使って作るのに適した部品は、熱可塑性を利用した加工によって作られる部品となります。

1. 自動車製造

自動車製造では、金属部品の一部をPEEK樹脂で置き換えることで、製造コストの削減と共に、自動車の軽量化を実現しています。自動車の軽量化は燃費の向上にも寄与しますので、今後もPEEK樹脂への置き換えは進むものと思われます。

2. 半導体製造工程

半導体製造工程では、非常に高い清浄度を保ったクリーンルームの中で、製造や検査、洗浄工程が繰り返し進められます。その中でウエハをハンドリングする様々な機械や治具は、ウエハを傷つけたり破損したりせず、尚且つ汚さずに取り扱わなければなりません。PEEK樹脂は高い強度に加え、発塵の心配も少ないので、これらの機械や治具にも使われています。

3. 医療

医療の分野では、注射針や義歯などにも使用されています。その他、電子部品やプリント基板、食器など、幅広い分野で使用されています。

4. ハイテク

ハイテク分野では、PEEK樹脂を使って造形が可能な3Dプリンターが市販されるようになりました。ノズルの温度を約500度まで上げることができ、チャンバー内の温度を約300℃に保てる3Dプリンターができてきたことで、PEEK樹脂を使った造詣が可能になりました。

PEEK樹脂の原理

ベンゼン環が、エーテルおよびケトンと結合して直鎖状ポリマー構造を持ったポリマーの総称のことを、芳香族ポリエーテルケトンと言います。このうち、エーテル結合とケトン結合が、エーテル・エーテル・ケトンの順に配置されているものがPEEK樹脂です。

PEEK樹脂の製造方法はいくつかありますが、現在のところ工業的に行われているのは求核置換反応法と求電子置換反応法の2種類です。製造されたPEEK樹脂には、様々な物質を配合させて特性の異なるPEEK樹脂が作られています。それをナチュラル・グレード、プラスチック強化グレードなどとグレード分けがされて、ペレット、ペーストまたはパウダーの形で販売されています。

PEEK樹脂の種類

PEEK樹脂は極めて優れた特性を持った樹脂です。そのため、製造各社では様々な添加物を配合して、ある面にさらに優れた特性を持たせたPEEK樹脂を製品化しています。これらのPEEK樹脂は、グレード名を付けて分類されています。主なグレードには、基本グレードの他、強化グレード、摺動グレード、導電グレードなどがあります。

1. 基本グレード

基本グレードは、その名の通り基本となる素のグレードです。基本グレードでも耐熱性や耐薬品性は特に優れています。PEEK樹脂を溶解することができる市販の化学薬品は濃硫酸だけとも言われています。

2. 強化グレード

強化グレードにはガラス繊維強化グレードや炭素繊維強化グレードがあります。ガラス繊維強化グレードは、基本グレードと比較して、寸法安定性と剛性などが強化されています。炭素繊維強化グレードは、基本グレードと比較して、熱伝導率が高く、摩擦時に発生する熱を早く放出できます。

3. 摺動グレード

摺動グレードは、基本グレードと比較して摺動性と耐摩耗性が強化されています。添加物としてガラス繊維、グラファイト、そしてテフロンとしてデュポン社から販売されているPTFE (英: polytetrafluoroethylene) などを配合しています。

4. 導電グレード

導電グレードは、炭素繊維などを配合して導電性を高めたグレードです。静電気破壊が心配される電子部品などで使用されています。

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