フレックスカップリングとは
フレックスカップリング (英: Flexible Shaft Couplings) とは、フレキシブルカップリングの略称で、軸継手の一種です。
カップリング (軸継手) は、駆動軸と従動軸を連結して動力を伝達する機械要素で、「リジットカップリング」と「フレックスカップリング」の2種類があります。フレックスカップリングは、駆動軸と従動軸の芯ずれを吸収して振動や軸受への負荷し、さらにミスアライメントによる消耗やトラブルを低減します。
リジットカップリングは、駆動軸と従動軸は芯ずれの無い結合が必須ですが、バックラッシュはゼロで動力伝達は最も効率的です。
フレックスカップリングの使用用途
図1. フレックスカップリングの使用例
フレックスカップリングは、一般的に機械の振動・衝撃が大きな機械の軸継手として使用されています。特に、振動や芯ずれの吸収が優れていることから、高精度な位置決めが必要な場合のサーボモーター用軸継手、高負荷な機器・回転速度が一定でない機械などに使われるケースが多いです。
ジョー形やオルダム形などの、スリーブやスペーサー付きタイプは、メンテナンス性が高いのが特徴として挙げられます。スペーサーを取り外すことで、駆動軸と従動軸を移動させずに、分解と組み立て可能です。そのため、ポンプ、コンプレッサ、送風機などの軸継手としても使用されています。
フレックスカップリングの原理
図2. 芯ずれ (ミスアライメント)
カップリングの重要な役割は、以下の4つです。
- 駆動軸から従動軸へ動力の伝達
- 駆動軸と従動軸の取り付け誤差の吸収
- 駆動軸の振動を吸収し周囲の機器に伝播させない
- 駆動軸から熱を従動軸へ伝達しない
特にフレックスカップリングは、上記の2、3項に優れたカップリングです。フレキシブル性を持たせるために、ディスク、スリーブ、スペーサー、高減衰能ゴムや両軸間に挟み込み結合したり、スリット加工し柔軟性を付加しています。これにより、駆動軸と従動軸のある程度の芯ずれ (偏心、偏角、軸方向変位など) を許容し、フレキシブル性で振動や衝撃を吸収し安定した回転を維持します。
駆動軸と従動軸の芯ずれを許容できることで、部品それぞれの加工精度をある程度下げることが可能です。その結果、製作コストも抑えられ、機械の組み立て調整が容易になります。また、フレックスカップリングをモーターの結合に使用する場合は、運転によるモーターの発熱をカップリングがある程度遮蔽します。
フレックスカップリングの種類
図3. フレックスカップリングの種類 (1)
図4. フレックスカップリングの種類 (2)
フレックスカップリングは、種類や構造により特性が異なり、適用できるモーターが異なり、代表的な種類は下表のとおりです。
種類 |
特徴 |
特性 |
適用モーター |
|||||
許容芯ずれ |
ねじり剛性 |
ゼロバックラッシュ |
振動吸収性 |
インダクションモーター |
サーボモーター |
ステッピングモーター |
||
ディスク形 |
|
〇 |
〇 |
◎ |
– |
– |
〇 |
〇 |
スリット形 |
|
△ |
〇 |
◎ |
– |
– |
〇 |
〇 |
クロスピン形 |
|
– |
– |
– |
△ |
〇 |
△ |
△ |
マグネット形 |
|
– |
– |
– |
〇 |
〇 |
– |
– |
ジョー形 |
|
〇 |
△ |
△ |
〇 |
◎ |
〇 |
〇 |
オルダム形 |
|
◎ |
– |
– |
〇 |
◎ |
– |
– |
高減衰能ゴム形 |
|
– |
– |
◎ |
〇 |
– |
◎ |
◎ |
ベローズ形 |
|
– |
– |
– |
〇 |
– |
– |
〇 |
記号説明 ◎: 最も適合、○: 適合、△: 用途によって適合
フレックスカップリングのその他情報
カップリングの選定
据付や運転条件によるカップリングの選定の流れは以下のとおりです。
- 必要伝達トルクの確認
- 据付条件の確認
- 角度誤差、軸方向変位量の吸収が必要かどうかの検討
- カップリングの種類の検討 (スリーブの材質、フレキシブル構造の選定)
- 正逆回転の有無によりサービスファクター (安全率SF) の確保の検討
- 位置決め精度を動力伝達の機械要素からカタログ値などの確認
参考文献
https://www.nbk1560.com/resources/coupling/article/couplicon-about/
https://www.tsubakimoto.jp/power-transmission/shaft-coupling/disc/echt-flex/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/221005022699/
https://www.tsubakimoto.jp/power-transmission/shaft-coupling/disc/echt-flex/ner-spacer/