セルフローダとは
セルフローダは、主に産業用車両を工事現場へ運搬する特殊車両です。
セルフローダは、主に中型から大型トラックのシャシーをベースとし、専用の荷台を架装することにより産業用重機や公道を走行できない車両の運搬を行います。
類似するものにセーフティローダが挙げられますが、こちらは車両の積み下ろし時に荷台のみが後方へ移動して傾斜する方式であり、車両全体が後方へ傾斜するセルフローダとは区別されています。なお、セルフローダ、セーフティローダともに道路運送車両法により「車載専用車」の登録です。
セルフローダの使用用途
主に、車輪または履帯を持つ車両を工事現場や山間部等の自走困難な現場へ運搬する用途に使用されます。また、故障車や新車の運搬の用途もあります。
履帯を持つ車両は自走により移動させることが可能ですが、交通の妨げとなる可能性がある他、道路の舗装面を痛めてしまうことが難点です。また、山間部等へ自走するのは燃料消費、運転者の負担の問題もあり、あまり現実的とは言えません。
セルフローダは迅速に車両を運搬することができる他、運転者の負担を減らすことができます。
セルフローダの原理
産業用車両の積載を容易に行うため、荷台前方に装備されたジャッキにより車体全体を後方へ約7.0~13.0°傾けることが可能であるのが大きな特徴です。荷台後端部には路面との段差をなくすためのスロープを設けることでさらに積載性を向上させられるほか、動力を持たず自走できない車両を引き上げるためのウインチが荷台前端部に設けられています。
道路運送車両法上は車載専用車としての登録となるため、リヤオーバーハングは最遠軸距 (3軸車=1軸目と3軸目、4軸車=1軸目と4軸目) の2/3まで、側面アオリ高さは15cm以下、後面アオリ寸法は高さ45cm以下に収めます。このほか、車両以外を容易に積載できないよう床面に穴をあけるなども必要です。
架装時は、ベース車両に対してリヤオーバーハングが延長される場合が多いため、旋回時に車両後端部の振り出しに注意して運転する必要があります。
セルフローダの選び方
セルフローダを選ぶ際のポイントは、架装の仕様、最大積載量と車両のサイズ、及び車両の軸数です。
架装の仕様は、クレーンやウインチが付いているか、車体を持ち上げるジャッキの形状、あゆみ板が自動か、など様々です。業務内容に合わせて最適なものを選定します。
最大積載量と車両のサイズは、運搬する対象車両の重量と大きさを考慮し、用途に合わせて選定します。ただし、車両のサイズが大きすぎると、高さや幅員の規制がある道路での走行に制限を受けるので注意する必要があります。
車両の軸数は、3軸と4軸があります。3軸は、前2軸・後1軸または前1軸・後2軸であり、前者は、タイヤの直径が大きく、床の高さが高い車両です。後者は、タイヤの直径が小さく、床の高さが低いので、安定性が高い特徴があります。
セルフローダのその他情報
1. セルフローダの運転資格
セルフローダを公道で運転するには、次の免許が必要です。トラックの運転免許と同じです。
- 普通自動車免許:最大積載量3t未満、車両総重量5t未満
- 中型 (8t) 限定免許:最大積載量5t未満、車両総重量8t未満
- 中型自動車免許:最大積載量3t〜6.5t、車両総重量5t〜11t
- 大型自動車免許:最大積載量6.5t以上、車両総重量11t以上
車両に付属しているウインチを使って、対象車を積載する場合は、別に資格が必要です。2日間の運転特別教育を受講し、学科と実技を受けて、ウインチの操作資格が取得できます。
2. セルフローダとセーフティローダの違い
セルフローダとセーフティローダは、対象車両を運搬するという目的は殆ど同じですが、構造が異なります。
セルフローダは、車体の前方をジャッキで持ち上げ、車両全体に傾斜を付けて、対象車両を積み込みやすくします。一方、セーフティローダは、荷台部分が後方へスライドし、荷台のみを傾斜させます。セルフローダに比べ、傾斜が緩く、比較的安全に対象車両を積載することができます。
参考文献
https://www.kinki-truck.com/article21/
https://www.tadano.co.jp/products/sl/index.html