オゾン分解装置

オゾン分解装置とは

オゾン分解装置のイメージ

図1. オゾン分解装置のイメージ

オゾン分解装置 (英: Ozonolysis device) とは、オゾンを分解するための装置です。

オゾンは脱臭・殺菌等に非常に有効な物質ですが、強力な酸化物質であるため人体には有害です。オゾンが体内に入ると、鼻腔・喉・気管・肺など通過する全ての粘膜が酸化され、結果として、臭気・刺激・咳・頭痛・眠気・胸部圧迫感などの症状が現れます。

一定以上の濃度 (5~10ppm) での曝露 (吸引) が続くと、肺水腫となり生命の危険を招きます。日本産業衛生学会では作業環境基準としての許容濃度を0.1ppm (0.2 mg/m3) と定めており、オゾン分解装置はこのようなオゾンによる健康被害を防ぐために用いられる装置です。

オゾン分解装置の使用用途

オゾン分解装置は、主にオゾンが発生したり高濃度になりやすい場所で使用されます。使用目的は、高濃度のオゾンばく露による人体や環境への悪影響を防ぐことです。オゾン分解装置はオゾン発生装置と組み合わせて使用することで、オゾンが過剰に生じるのを防ぐことが可能です。

一方、オゾン発生装置を使用しなくても空気中の紫外線や放電があるところでもオゾンは発生します。そのため、オゾン分解装置は、紫外線照射装置やプラズマ表面改質装置、工業用の高出力電子加速器などオゾンが生じうる様々な製造現場や研究分野でも使用されています。

オゾン分解装置の原理

オゾン分解方法には、活性炭分解法や触媒法、湿式法、熱分解法などがあります。特に、活性炭分解法と触媒法の2種類が主流です。一般的に低濃度の場合は活性炭を使用し、高濃度の場合は触媒を使用することが多いです。

1. 活性炭分解法

活性炭分解法とはオゾンを活性炭と反応させて分解する方法です。この方法では2つの化学反応が使用されています。

  1. オゾンが活性炭を酸化して、二酸化炭素と少量の一酸化炭素を発生する発熱反応 (遅い反応であるため全てのオゾンがこの反応で分解されるわけではない)
  2. 活性炭の表面に蓄積したオゾンが活性化エネルギー以上のエネルギーを上記1の発熱反応より得て、発熱と共にオゾンが酸素分子に還元される反応が起こる

この方法は発熱を伴う反応であるため、表面に有機物などがある状態でオゾンが活性炭表面に蓄積すると燃焼や爆発を起こす可能性があります。この手法は気相、液相いずれでも使用可能ですが、気相では高濃度のオゾンガスは不向きです。

2. 触媒法 ( 接触分解法)

オゾン分解装置に用いられる触媒のイメージ

図2. オゾン分解装置に用いられる触媒のイメージ

触媒法とは、触媒を用いることで接触分解により比較的低温条件においてオゾンを分解する方法です。触媒には二酸化マンガン、酸化第一鉄、酸化ニッケルなどが広く用いられており、蜂の巣構造のセラミックスハニカムに担持させる構造などがあります。

これは、オゾンが触媒に接触する回数が多いほど効率が良く、ハニカム構造は表面積が大きいためです。具体的な分解反応は、以下のようにに段階反応となります。

   M (触媒) + O3 → M – O + O2
   M – O + O3 → M + 2O2

無機系物質である酸化物触媒を利用することで爆発のリスクがなく、触媒自体は化学反応に直接寄与する訳でないので燃焼灰化などがないことがメリットです。なお、この方法では触媒活性の低下を起こさないように管理が必要です。また、液相では触媒が活性化されないため本手法を使うことはできません。

オゾン分解装置の種類

オゾン水分解装置のイメージ

図3. オゾン水分解装置のイメージ

オゾン分解装置の種類は、扱いやすい触媒法の製品が主流です。触媒法の装置は、基本的には触媒を担持したセラミックスハニカムなどの構造物にオゾンを通過させるだけのシンプルな構造であるため、比較的安価で小型のものから大型のものまで様々な製品があります。

温度に対する依存性が低く性能が変化しにくいため、室温20℃から50℃と幅広い温度で使用が可能です。製品によっては2種類のオゾン分解剤を組み合わせるなどの工夫がされているものもあります。

また、半導体または液晶製造プロセスなどで使用される純オゾン水の分解のため、水中に溶解しているオゾンを分解する装置もあります (オゾン水分解装置) 。オゾン水分解装置では、用いられる分解機構は紫外線ランプが主流です。

オゾン分解装置のその他情報

オゾン分解触媒の寿命

オゾン分解触媒は、有毒なオゾンを分解する重要な役割を担っています。また、人に近い場所でも使用されることから長寿命であることが必要です。オゾン分解触媒は様々な外的要因によって性能と寿命が低下します。

この外的要因は、取り去ることで性能が元に戻る「一次被毒」と、触媒と直接化学反応してしまい性能が元に戻らない「永久被毒」の2つに分かれます。

  • 一次被毒
    水蒸気やハロゲンガス、NOXなど、オゾン分解触媒に物理的に吸着し、オゾンの吸着や分解反応を阻害させるもの
  • 永久被毒
    金属蒸気や硝酸系、硫黄系の化学物質など、オゾン分解触媒と化学的に結合し変化させるものや、また付着し除去できない要因

このうち、基本的除去により性能が元に戻らないものは永久被毒に分類される物質です。ホコリなどの比較的サイズの大きな要因は完全除去できれば寿命の低下を防ぐことができますが、微細で複雑なハニカム構造では不可能なので寿命を低下させてしまうため、永久被毒に分類されます。

参考文献
https://www.ecodesign-labo.jp/ozone/info/6-1.php
https://www.asumigiken.co.jp/ozone/
http://www.wako-system.co.jp/006.html
http://www.cnpnet.co.jp/cnpe/ozon/basis.html#aa
https://shinagawa-general.co.jp/product/ozonolysis/
https://www.nies.go.jp/kanko/news/20/20-3/20-3-05.html
http://yyy1496.web.fc2.com/2015112751.pdf
https://www.n-u.co.jp/jp/products/environment/ozone/
http://www.wako-system.com/manufacture/manufacture03.html
http://www.wako-system.co.jp/206.html

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