イソブタン

イソブタンとは

イソブタンと構造異性体 (ブタン)

図1. イソブタンと構造異性体 (ブタン)

イソブタン (英: Isobutane) とは、化学式C4H10で表される炭化水素です。

CAS登録番号は75-28-5であり、別名には2-メチルプロパン (英: 2-methylpropane) 、トリメチルメタン (英: trimethylmethane) などの名称があります。ブタンの構造異性体に相当し、湿性天然ガスや石油系炭化水素の分解ガス中に含まれている物質です。主にブタンの異性化反応によって合成されています。

労働安全衛生法では、施行令別表第1危険物 (可燃性のガス) 、名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物に該当します。労働基準法、化学物質管理促進法 (PRTR法) 、毒物及び劇物取締法、消防法には非該当です。

イソブタンの使用用途

イソブタンは、主にフロンガスの代替品として、エアコンや冷蔵庫の冷媒、スプレーなどに使用されています。アメリカ冷凍空調学会で定められた冷媒の種類を表す番号である冷媒番号は、R600aです。

また、イソブタンは、引火性及び爆発性があるため、液化ガスとして家庭用や工業用燃料に用いられている物質です。主にアウトドア仕様のカセットガスやライターに使われます。

沸点温度がブタンより低いため、寒冷地や冬山登山での使用に適性があります。また、その他の用途には有機合成原料、噴霧剤が挙げられ、イソブタンは特にイソパラフィン類の合成原料としても使用されている物質です。

イソブタンの性質

イソブタンの基本情報

図2. イソブタンの基本情報

イソブタンは、分子量58.10、融点-159.42℃、沸点-11.7℃であり、常温での外観は無色気体です。

空気を1とした相対比重は2.01であり、密度は2.51kg/m3です。エタノール、エーテル、クロロホルムなどに溶解します。水への溶解度は48.9mg/Lです。

イソブタンの種類

イソブタンは、主に工業用高圧ガスとして販売されています。ポリスチレン・ポリエチレンなどの発泡用に用いられる製品や、特殊なものでは、可燃・毒性ガス検知器校正用標準ガスなどがあります。

容器の種類は鋼製溶接容器などであり、所謂ガスボンベの形式で 販売されている物質です。内容量は50kg、500kgなどがあります。可燃・毒性ガス検知器校正用標準ガスは、可燃性ガスを使用する現場においてガス検知器の校正に使用されているものであり、空気で希釈されています。内容量は3.4L・10L・47Lなどです。

イソブタンのその他情報

1. イソブタンの反応性

イソブタンは、強酸化剤、アセチレン、ハロゲンおよび窒素酸化物と反応して火災や爆発の危険を生じる物質です。また、空気より重い気体であるため、地面に沿って移動し、 流動、撹拌などにより、静電気が発生することがあります。そのため、遠距離発火の可能性が高いです。

2. イソブタンの化学反応

イソブタンの化学反応

図3. イソブタンの化学反応

イソブタンは、酸性条件などで低分子アルケンと反応して炭化水素を生成します。この反応は、石油産業において2,4-ジメチルペンテンや2,2,4-トリメチルペンタンを合成するために用いられる反応です。

また、酸化によってtert-ブチルヒドロペルオキシドを生じます。この物質は、プロピレンと反応させることによりプロピレンオキサイドを合成することが可能です。

3. イソブタンの危険性

イソブタンの主な危険性は、下記のものが挙げられます。

  • 可燃性/引火性が高い
  • 循環器系の障害
  • 眠気またはめまいのおそれ

GHS分類では以下に分類されています。

  • 可燃性/引火性ガス:  区分1
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露): 区分1 (循環器系) 、区分3 (麻酔作用)

4. イソブタンの法規制情報

イソブタンは上記の危険性により、労働安全衛生法で、「名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物」「危険物・可燃性のガス」に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが重要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/75-28-5.html

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