酸化亜鉛とは
酸化亜鉛 (英: zinc oxide) とは、化学式がZnOで表される亜鉛の酸化物です。
天然には紅亜鉛鉱として産出されますが、地域は限られています。酸化亜鉛を亜鉛華や亜鉛白と呼ぶ場合も多いです。
労働安全衛生法では、名称等を表示すべき危険物及び有害物、名称等を通知すべき危険物及び有害物に該当します。労働基準法、化学物質管理促進法 (PRTR法) 、毒物及び劇物取締法、消防法には、該当していません。
酸化亜鉛の使用用途
酸化亜鉛は、白色顔料のペンキ、絵の具、乳濁ガラスなどに使用されています。また、タイヤなどのゴム製品の添加剤として耐久性や熱放散性を高めるために用いられます。
幅広く化粧品として使用され、紫外線を反射する性質を有するため、日焼け止めとして利用可能です。消臭効果や汗を抑える効果のため、制汗剤やボディシートなどに使用されています。さらに、収れん作用、消炎、防腐効果があり、医薬品にも用いられ、軟膏剤や液剤等に利用可能です。
メタノールを合成するための触媒にも、酸化亜鉛は使われます。
酸化亜鉛の性質
常温で酸化亜鉛は白色の粉末で、加熱しても分解しません。300°Cほどまで加熱すると黄色になり、冷えると戻ります。1気圧で熱するとおよそ1,300°Cで昇華が開始します。これは酸化亜鉛を炭素で還元する温度より低いです。
酸化亜鉛は真性半導体です。広い波長域で光を反射する性質を持っています。遷移金属をわずかに添加すると、リン光体になります。可視光を反射し、紫外線を吸収可能です。太陽光でリン光を発し、陽極線や陰極線で緑色や紫色に発光して、熱した場合には白色の熱発光を発します。
酸化亜鉛は両性酸化物です。酸に溶解して亜鉛塩を、水酸化アルカリ水溶液に溶解して亜鉛酸塩を生成します。炭酸アンモニウム水溶液やアンモニア水で錯塩を形成して溶けます。ただし水には溶けません。
酸化亜鉛の構造
酸化亜鉛は亜鉛と酸素の化合物です。紅亜鉛鉱は六方晶系の結晶を形成しています。
酸化亜鉛は六方晶のウルツ鉱と立方晶の閃亜鉛鉱の、2種類の形で結晶化します。最も安定しているウルツ鉱型構造が最も一般的です。閃亜鉛鉱型構造は立方格子構造の基板上に酸化亜鉛を成長させると安定化できます。いずれの結晶も四面体であり、一般的なZn(II)の形状です。
酸化亜鉛のその他情報
1. 酸化亜鉛の合成法
天然の紅亜鉛鉱は、アメリカ合衆国の2箇所の鉱山でのみ産出される希少鉱物です。ポーランドにある亜鉛工場の煙突で析出した結晶が販売されています。
化学式がZnC2O4と表されるシュウ酸亜鉛を400°Cで熱分解すると、酸化亜鉛は得られます。ZnCO3・3Zn(OH)2である塩基性炭酸亜鉛を熱分解しても生成可能です。硝酸亜鉛や硫酸亜鉛の熱分解でも生じます。
工業的に酸化亜鉛は、金属亜鉛を加熱して気化させて、空気で燃焼して得ています。
2. 酸化亜鉛の反応
皮脂から遊離した脂肪酸が酸化亜鉛と反応すると、亜鉛イオンがわずかに生じます。地球の大気に酸化亜鉛が触れると、二酸化炭素と水を少しずつ吸収します。
酸化コバルトと灼熱した場合には、顔料であるコバルトグリーンを生成可能です。
酸化亜鉛をリン酸で処理すると、歯科で利用されているセメント状の物質を形成します。この主成分はホープ石と呼ばれ、化学式はZn3(PO4)2・4H2Oです。
3. 酸化亜鉛の危険性
酸化亜鉛自体には毒性がありません。ただし、亜鉛や亜鉛合金が高温で酸化した際に発生する酸化亜鉛の煙を吸い込むと危険です。真鍮の融点が亜鉛の沸点に近く、真鍮を含む合金を溶解するときに起こります。空気中の酸化亜鉛の暴露は、亜鉛メッキ鋼の溶接中にも発生し、金属煙熱を引き起こす可能性もあります。
日焼け止めなどに含まれる、酸化亜鉛と紫外線吸収剤を組み合わせた配合物は、酸化亜鉛が低分子の紫外線吸収剤と光分解を起こし、毒性を示すと報告されました。