監修:カイロスキ株式会社
リバースエンジニアリングとは
リバースエンジニアリング (Reverse Engineering) とは、既存の製品やシステムを解析し、その設計情報や構造を解明するプロセスを指します。これは、新たな設計を行うための参考としたり、互換性のある製品を開発したり、故障解析や改良のために利用されます。
通常のエンジニアリング (開発プロセス) はアイデア発想から始まり、仕様を定義し製品を開発します。それに対してリバースエンジニアリングは既存の製品を解析して、その設計や機能を逆に理解するプロセスとなります。
リバースエンジニアリングの使用用途
一般的にリバースエンジニアリングは以下の目的で行われます
- 製品の動作原理を理解する
- 互換性のある製品の開発
- 修理やメンテナンスのための設計情報取得
- セキュリティ評価や脆弱性の解析
- 特許や知的財産権侵害の回避・調査など
このようにリバースエンジニアリングは様々な用途で活用されます。ただし、知的財産権や著作権に関する法的問題が生じる可能性があるため、適切なガイドラインに従う必要があります。
以下はその一例です
1. PCB (プリント基板) のリバースエンジニアリング
電子機器に搭載されるPCBは機能の駆動または制御において中心的な役割を担います。
用途:
- 保守・メンテナンス:古い機器に搭載している基板情報を復元し、修理やリニューアルを容易にする
- 互換品の開発::対象基板の互換性を持つ基板を製作
- 競合製品の分析: 競合他社の製品の設計思想を学ぶことで、新製品開発のヒントを得る
PCBリバースエンジニアリングのプロセス例
- 部品を取り外し各部品の定数を測定
- 現行PCBの銅箔パターンから部品接続図を作成
- 部品情報とパターン情報から回路図を作成
- 現行PCBの波形を取得し性能のベンチマークとする
- これらの情報を元にリニューアルまたは同等以上を目標としたPCB開発を行う
2.ソフトウェア
ソフトウェア業界では既存プログラムを解析することで、バグ修正や機能追加を実施します。また、競合ソフトウェアの機能を分析し、自社製品の改良や新機能の開発に役立てることも重要な役割です。セキュリティ検証としてソフトウェアの脆弱性を特定し、リスク評価を行うためにも用いられます。
3. 自動車
他社の車両を分解して性能や技術を理解し、自社車両の改善や新モデルの開発に役立てることも重要です。古い車両の部品を解析して、製造停止となった部品の代替品を開発することも可能です。また、車両の安全機能や設計を評価し、より安全な車両を設計するためのデータを収集する役割も果たします。
4. その他製造業
製造業においては既存製品や生産プロセスを分析し、高効率化による製品品質の向上やコスト削減の可能性を探ります。また、他社の製品を参考にすることで、自社製品の設計や機能を見直し、改善を図ることも多いです。新入社員や技術者に対する実践的な教育手段としても活用され、既存の製品を解析させることで知識を習得させます。
リバースエンジニアリングの原理
まず、リバースエンジニアリングは観察から始まります。製品やシステムの動作を観察し、その機能や特徴を理解します。製品の外観や操作方法などを細かく観察することが必要です。
次に、製品やシステムを分解する段階に進みます。ハードウェアの場合は物理的な部品を取り外し、それぞれの役割を確認します。ソフトウェアの場合は、プログラムコードを解析し、アルゴリズムやデータフローを明らかにする仕組みです。
その後、収集した情報を基に設計や機能の理解を深めます。得られたデータを整理し、全体的な設計フレームワークやシステムアーキテクチャを明確にします。また、同様の製品や技術と比較することで、特有の工夫を特定することが可能です。
リバースエンジニアリングの最終的な目的は既存製品の知識を活用して、新しい製品の開発や改良、さらには技術的な問題の解決に役立てることです。このプロセスを通じて得られた知見は、製品の競争力を向上させるための重要な情報となります。
リバースエンジニアリングサービスの選び方
リバースエンジニアリングを外部委託する場合、以下の点に留意することが重要です。
1. 実績と専門性の確認
- PCB (回路設計又は基板設計) 、電子回路、ソフトウェア、メカニカルなど、依頼内容に応じた専門分野の実績を確認
- 対応事例を確認し、同様の開発経験又は解析経験の有無を確認
2. 使用する設備やツールの確認
- 測定器など解析実施するための設備や機器を保有しているか
- 解析する機器に対し深い知識を持っているか
3. セキュリティと法的遵守
- NDA (秘密保持契約) を締結し、情報漏洩を防止できる体制があるか
4. 対応範囲の確認とスケジュールの管理
- 作業プロセスや成果物を伝え、見積もりを提示してもらう
- 委託先の担当者との意思疎通をはかり、進捗に応じた報告を受ける
これらのポイントを考慮し、適切なサービス提供会社を選びましょう。
本記事はリバースエンジニアリングを提供するカイロスキ株式会社様に監修を頂きました。
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