回路設計

監修:カイロスキ株式会社

回路設計とは

回路設計とは、電子機器やシステムを動作させるために必要な電子回路を設計・構築するプロセスです。主にアナログ回路 (電圧や電流の変化を連続的に扱う回路) とデジタル回路 (信号を0と1の二進数で処理する回路) の2種類に分かれ、用途に応じた設計が行われます。

回路設計は、仕様の検討 → 回路図の作成 → シミュレーション の過程で進められ、プリント基板 (PCB) 設計と試作基板の製造 → 回路動作をPCB評価で確認しチューニングによって回路改良 といった流れで進められます。信頼性が高く、機器サイズや製造コストを抑えた設計をするためには、電気的知識や多くの経験はもちろん、用途に応じた最適な設計を行う事が求められます。

回路設計の使用用途

回路設計はさまざまな業界で広く利用されており、以下のような分野で特に重要な役割を果たしています。

1. 産業用機器・FA (ファクトリーオートメーション) 業界

工場の自動化や生産ラインの最適化に向けた機器では、高精度なセンサー信号処理や制御回路が必要です。
主な応用例:

  • ロボット制御のモーター駆動回路
  • 自動ドアの駆動制御
  • センサー (圧力、振動、光、温度) の信号処理回路
  • 計測機器や高精度なアナログ制御回路
  • 機器に応じて最適化された電源回路
  • PLC (プログラマブルロジックコントローラ) による生産ラインの制御
  • IoTによる予知保全・ビッグデータ分析
  • AIを活用した生産効率の最適化

過酷な環境 (高温・振動・電磁ノイズなど) であっても安定した動作が要求されるため、高い精度や品質が要求される機器には同様に高い回路設計技術が求められます。
例:ロボットアームではアナログ回路がモーターの位置・速度を制御し、デジタル回路が動作プログラムを管理します。

2. 自動車業界 (EV・ADASなど)

自動車業界では、車両の電子制御化が進み、安全性・快適性・環境性能の向上のために、最先端のアナログ回路とデジタル回路の技術が組み合わされています。
アナログ技術の役割:

  • センサー (温度、圧力、距離など) のアナログ信号処理
  • モーター駆動やバッテリーの充放電制御
  • オーディオシステムや通信システムの高精度信号処理

デジタル技術の役割:

  • エンジンやブレーキなどの電子制御 (ECU) 
  • 画像認識やAIを活用したADAS (先進運転支援システム)
  • インフォテインメントシステム (ナビゲーション、タッチパネル)
    例:
    電気自動車 (EV) のバッテリーマネジメントシステム (BMS) では、アナログ回路で電圧・温度等のセンシングを行い、デジタル回路がデータを処理し最適な充放電制御を行います。

3. 通信・ネットワーク業界 (5G・IoT)

現代の通信技術は高速で安定したデータ伝送を実現するために、アナログ回路とデジタル回路の協調設計が不可欠です。
アナログ技術の役割:

  • RF (無線周波数) 信号の増幅・フィルタリング (アンテナ、レシーバー、トランスミッター)
  • アナログフロントエンド (AFE)を用いた受信信号処理

デジタル技術の役割:

  • データの符号化・復号化 (デジタル信号処理:DSP)
  • ネットワーク制御 (プロトコル処理、ルーティング)
  • IoTデバイスのデータ解析と制御 (エッジコンピューティング)
    例:
    スマートフォンではアナログ回路がRF信号を処理し、デジタル回路が通信データをパケット化して効率的に処理します。

4. 家電業界 (スマート家電・AV機器)

近年の家電製品はスマート化が進み、アナログとデジタルの両方の技術が統合されています。
アナログ技術の役割:

  • 全自動コーヒーメーカーのモーター制御・ヒーター制御やセンサー信号の増幅
  • 温度・湿度センサーなどのアナログセンシング
  • 機器の電源全般 (ACコンセントから機器を駆動・制御する電源電圧や電流生成)
  • ドライヤーやサーキュレーターなどのモーターの回転制御

デジタル技術の役割:

  • AIによる自動制御 (学習機能、スマートスピーカー)
  • クラウド接続による遠隔制御・データ管理
  • 画像・音声処理によるインターフェースの向上
    例:
    エアコンではアナログセンサーが室温を測定し、AIなどのデジタル回路によって運転を最適化します。

5. 医療機器業界

医療機器では患者の生体情報を正確に測定し、リアルタイムで分析・診断を行うために、アナログとデジタル技術の融合が不可欠です。

アナログ技術の役割:

  • 心電図 (ECG) 、脳波 (EEG) 、血圧測定などの微弱信号の増幅とノイズ除去
  • 画像処理用のアナログセンサー (MRI、CTスキャナー)
  • 高精度なアナログフロントエンド回路 (AFE)

デジタル技術の役割:

  • AIを活用した診断システムや画像処理
  • リアルタイムモニタリングとデータ解析 (クラウド連携)
  • 遠隔医療用のデジタル通信
    例:
    血圧計 (デジタル血圧計) では、アナログ回路が微弱なセンサー信号を検出しノイズ除去や信号増幅の役割を担います。また、デジタル回路では高度な画像処理や通信を行うことで高精度であり利便性の高い測定が可能となります。

回路設計サービスの選び方

回路設計を外部委託する際は、自社要求に最適な委託先であるかを慎重に確認し選定する必要があります。以下のポイントに留意することで、トラブルを防ぎ、スムーズなプロジェクト進行を実現できます。

1. 委託先の技術力と実績の確認

委託先が自社の要求に応えられる技術力を持っているか以下の点をチェックしましょう。

  • 過去実績: 類似製品や同業界での設計経験があるか
  • 専門分野: アナログ/デジタル、RF (無線) 、電源回路など、自社の求める技術分野に精通しているか
  • 試作・量産対応: 回路設計だけでなく、基板設計や製造・検証やチューニングとっ保守まで対応できるか
    留意点:
    設計品質は過去の実績や専門性に大きく依存するため、事前に詳細な意見交換を行うことが重要です。

2. コミュニケーションの体制と管理

プロジェクトを円滑に進めるために、コミュニケーション体制を明確にしましょう。

  • 担当窓口の設置: 双方の担当者を明確にし、迅速な意思決定ができる体制を構築
  • オンラインツールの活用: Teams、Zoom、Slackなどを活用し、設計レビューや議論を適切なタイミングで実施
    留意点:
    認識のズレを防ぐため、仕様の確認書などで詳細仕様を確認し、重要視している点を共有し、理解できているか確認しておきましょう。

3. 品質保証と検証プロセス、アフターフォロー

最終製品の品質を確保するために、以下の品質管理プロセスを委託先と合意しておきます。

  • 設計レビュー: 設計フェーズごとに評価を実施 (デザインレビュー)
  • 試作と検証 : 性能を担保する必要な検証がなされており、課題があった場合、改善のための対策準備があるか
  • 納品物の検査: 仕様書通りの性能が出ているかを検査 (動作検査)
  • アフターサポート: 量産後の不具合対応や回路の修正、リニューアル対応
    留意点:
    委託会社の実績確認やコミュニケーションをとる中で信頼できる会社であるか、様々な観点から確認が必要です。特に品質を上げるための開発メソッドや特徴の確認、中長期パートナーとして信頼関係が築けるか (設計担当者の定年) など、可能な範囲で確認する必要があります。

本記事は回路設計を提供するカイロスキ株式会社様に監修を頂きました。

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