食品トレーとは
食品トレーとは、魚や肉などの生鮮食料品を乗せた、薄くて柔らかい化学製品のトレーです。
主に発泡スチロールなどの成型加工がしやすい樹脂製で、食品を取り扱うことから衛生面、安全面、食品の鮮度保全での高い要求を満たしています。また、油に強く、-40℃から+110℃までの広い温度に耐えられるもの、電子レンジで加熱しても変形しないなど、優れた特性を持った製品があります。
従来は使い捨てでしたが、消費者の環境意識の高まりとともに、回収を求める声が大きくなりました。これを受けてスーパーなどの業界団体は1990年から店頭に回収ボックスなどを設置して、使い終わった食品トレーを回収してリサイクルに廻す取り組みを始めました。また、今日では家庭ごみの分別回収が進み、多くの食品トレーが回収されています。
食品トレーの使用用途
食品トレーは、スーパーやコンビニを始め食料品を販売する殆ど全てのお店で使用されています。肉や魚を始めとした生鮮食料品、お寿司やお惣菜などの調理済み食品など多くの食品の販売に使用されています。
食品トレーは衛生面と保存性に優れており、食品売り場での商品の陳列に使われる他、消費者にその商品が購入された後は、そのまま自宅の冷蔵庫内での保管にも使用されるなど、現在の食生活の必需品になっています。
食品トレーの原理
食品トレーは原油を精製して得られるナフサを出発点として作り出されます。ナフサを原料としたスチレンモノマーを重合させてできるプラスチック樹脂の一種が、ポリスチレン樹脂です。ポリスチレン樹脂を発泡剤と共に加熱して押出成形すると、発泡スチレンシート (英: Polystyrene Paper, PSP) ができます。
発泡スチレンシートは発泡スチロールの一つの形です。発泡過程で発泡スチレンシートはポリスチレン樹脂の約10倍に膨らみます。中は気泡構造で、発泡していないポリスチレン樹脂と比較して同じ体積で重さが10分の1になります。そして、発泡スチレンシートは熱を加えることで容易に加工できる特性を持っています。
この発泡スチレンシートを真空成型して食品トレーを製造します。従って、食品トレーは発泡スチレンシートの素材としての良さをそのまま引き継いでいます。
食品トレーの種類
食品トレーには様々な大きさや形があり、表面を着色したトレーもあります。また、発泡スチレンシート以外の材料を使用したものもあります。近年ではプラスチックごみによる海洋汚染が問題視され、日本ではスーパーのレジ袋が有料化されました。
トレーメーカーはプラスチックではなく、植物由来の食品トレーの開発も進めています。原料となる植物にはトウモロコシやキャッサバなどがあります。2000年ころから日本でも栽培され始めたケナフを使ったトレーは、通販で購入することができます。
食品トレーのその他情報
1. 食品トレーの特徴
発泡スチレンシートから製造された食品トレーはいくつもの優れた性質を持っています。具体的には、軽い、強い、断熱性に優れている、耐水性がある、衝撃を吸収できる、衛生的である、食品の鮮度を保てるなどです。
肉や魚などの生鮮食料品の販売は、発泡スチレンシートから製造された食品トレーが登場する以前は、商品が見える冷蔵のショーケースを間に挟んで、客と店員が向き合う対面販売が主流でした。発泡スチレンシートから製造された食品トレーが普及したことにより、肉や魚を食品トレーに乗せて、冷蔵棚に陳列する現在のスーパーマーケットのスタイルが出来上がりました。
2. リサイクルの変遷
環境保護と資源保護の観点から、石油から作られるプラスチック製品の使い捨てが問題視されるようになったため、1990年からは業界全体で食品トレーをリサイクルして再利用する取り組みが進められてきました。その結果、回収した食品トレーをリサイクル資源として使用し、新しい食品トレーを製造する仕組みが完成しています。
スーパーマーケットなどに設置してあるトレー回収ボックスから回収した食品トレーはメーカーのリサイクル工場に集められます。そこで、白いトレーと、カラートレー、リサイクルできないトレーに選別されます。
白いトレーはポリエチレン樹脂のペレットに再加工され、発泡スチレンシートの製造工程に投入されます。リサイクル原料を利用する分だけ石油原料の使用を減らすことができ、原油からポリスチレン樹脂を製造するまでの工程を省略できます。そのため、石油からポリエチレン樹脂を製造する場合と比較して、生産工程で二酸化炭素の排出量を約30%削減できると言われています。
また、回収されたトレーの中で、食品トレーの原料として使われなかったものは、雑貨用品など他のリサイクル原料に廻されます。