クランクハンドル

クランクハンドルとは

図0_クランクハンドル

クランクハンドル (英: Crank handle) とは、ハンドル (取っ手) を手で回転させることで、機械的に回転出力を発生させるための入力装置です。

主に、レバー (棒状部品) の片端に回転出力側となる穴 (もしくは軸) が配置され、入力となるハンドルをL字形に取り付けられた部品 (工具) を指します。クランクとは、「円運動がシャフトに与えられたり、シャフトから受け取られたり、往復運動が円運動に、またはその逆に変換されたりするために、軸の端に直角にキー止めされた車軸または曲がったシャフトの部分、またはアーム」と示されています。

クランクハンドルの使用用途

クランクハンドルの使用例

図1. クランクハンドルの使用例

クランクハンドルは、回転動作を必要とする様々な用途や環境で使用されています。身近なもので言えば、車載ジャッキ用の回転ハンドルや窓やルーバーの開閉用ハンドルなどです。また、釣り竿リールのハンドルに使用されている場合もあります。

産業用途においては、電動機などの動力装置不具合時のバックアップ回転操作用として、使用される場合が多いです。バルブ開閉用や電動機・減速機などの手動回転操作、旋盤などの工作機械の位置決め用で使用されています。

参考の使用例として、手動吊り上げ装置操作用とウォーム減速機手動操作用にクランクハンドルを使用した場合を上記図1に示しています。

クランクハンドルの原理

クランクハンドルとは、手動回転動作の機械的入力装置として機能させるための機械要素のことです。この場合のクランクとは、回転する軸と芯のずれた軸を結ぶ棒 (レバー) などからなる機構を指します。また、ハンドルとは操作を行うための取っ手を示しています。

ハンドル (取っ手) を手で握り、回転させることで回転出力を発生させるための入力装置を総称して「クランクハンドル」と呼びます。軸などを直接回転させるより、レバーの長さにより小さな力で回転を発生させることができます。クランクハンドルを回すときには、力を加える点 (ハンドル) が回転の中心から遠い方が、より小さな力で作業できます。

この軸などを回転させるために必要な力を「トルク」と呼び、トルクは下記式により定義されます。

トルクT(N・m)=接線力F(N) ※1×回転半径R(m) ※2
※1 ハンドルを回転させる力
※2 レバーの長さ (ハンドル中心とレバー穴間の距離)

レバーの長さが長いほどより小さな力で、大きな回転力を発生させることができます。しかし、レバーが長いと回転速度を早くすることが難しくなります。したがって、大きなトルクで低回転速度が必要な場合は長いレバー、小さなトルクで高回転速度が必要な場合は短いレバーを選択する必要があります。

クランクハンドルの種類

クランクハンドルの種類 (1)

図2. クランクハンドルの種類 (1)

クランクハンドルの種類は、レバー・ハンドルの材質、形状、穴形状などによって複数種類があります。

クランクハンドルの種類 (2)

図3. クランクハンドルの種類 (2)

  • レバー・ハンドル材質 鋳鉄、炭素鋼ステンレス鋼、アルミニウム合金、樹脂
  • レバー形状 ストレート、オフセット
  • ハンドル取り付け 固定、回転式、回転収納式
  • レバー穴形状 丸穴、角穴
  • その他 軸取り付け部分がラチェット式、ハンドルと反対側にバランスウェイト付き

クランクハンドルの種類 (3)

図4. クランクハンドルの種類 (3)

クランクハンドルの選定

クランクハンドルの選定は、下記のような使用環境や作業スペースを考慮して行います。

  • クランクハンドルと取り付ける装置の軸形状に合わせて、丸穴、角穴を選定します。
  • クランクハンドルと取り付ける装置の軸寸法、レバー穴寸法を選定します。
  • 作業に必要な力が大きい場合は、レバーの長いものを選定します。
  • 同様に作業に必要な力が大きい場合は、炭素鋼やステンレス鋼などの強度の高い材質を選定します。
  • クランクハンドルと取り付ける装置との距離が近過ぎ、部品などが干渉し操作ができない場合は、オフセットハンドルを選定します。
  • 作業しない場合にハンドルが邪魔になるような場合は、回転式ハンドルや回転収納式ハンドルを選定します。
  • 特に高温多湿で常時日照にさらされるような場合は、金属製の耐候性に優れたレバー材質を選定します。
  • 360度回転する作業スペースがない場合などは、ラチェット式を選定します。
  • 旋盤などの工作機械の位置決めで、回転数が多き場合などは、バランスハンドルを選定します。

参考文献
https://www.imao.co.jp/catalog/imageindexlists2/?categorycode=%24SMEH_G
https://www.nbk1560.com/products/machine_element/handle/
https://www.livre-megatech.com/products/index.html

ツールバランサー

ツールバランサーとは

ツールバランサーとは、工具を保持しておく装置です。

ツールバランサーに保持された工具をユーザーが手離すとその工具はユーザの手から離れます。一般的なツールバランサーに保持された工具は、ユーザーの手を離れると元の位置へ戻ります。

ツールバランサーは、重量のある工具を用いる人の疲労を抑えます。疲労が抑えられるのは、ツールバランサーが工具を保持するからです。一般的なツールバランサーは、人の疲労を抑える上に、作業場所の整頓を可能とし、作業能率を向上させます。これは、ツールバランサーが工具の位置を一定とするからです。

ツールバランサーの使用用途

ツールバランサーは、工具を手に持ったり手離したりすることが多い場所で使用されます。工具を手に持ったり手離したりすることが多い場所の例は、組立ラインです。

ツールバランサーに保持される工具には、レンチなどのハンドツール、電動ドライバーエアインパクトレンチ、エアガンがあります。特に持ち続けると腕が疲れるような重量のある工具に対してツールバランサーは適しています。ツールバランサーを複数使用すれば必要な工具を必要な時だけ選択して使用することができます。

ツールバランサーは重量のある物の運搬に用いてはいけません。重量がある物の運搬にツールバランサーを用いた場合、その重量がある物を外した途端にツールバランサー先端が跳ね上がることがあるためです。跳ね上がったツールバランサー先端により作業者が怪我をすることもあり得ます。

ツールバランサーの原理

1. 一般的なタイプの場合

基本的な原理
ワイヤー先端に工具が吊るされることでワイヤーに荷重がかかると、ワイヤーはドラムから繰り出されます。ワイヤーを引き上げる力と工具の質量とが拮抗した位置で工具は止まります。このようになる基本的な原理は以下の通りです。

巻取機構の主な動力源は渦巻ばねです。ワイヤーがドラムから繰り出されることに伴ってその渦巻ばねの変形は大きくなります。その変形が大きくなることに伴って巻取機構がドラムに与えるトルクが大きくなります。これにより、ドラムがワイヤーを引く力は増加します。一方、ワイヤーがドラムへ引き上げられると、渦巻ばねの変形は小さくなります。その変形が小さくなることに伴って、そのワイヤーがドラムが引く力も小さくなります。その力が小さくなると巻取機構はワイヤーを引くことができなくなります。

抵抗が調整される原理
ドラムの形状が円錐台状になっているので、ワイヤーの繰り出し量の総和が増えるにつれ、繰り出し量の単位長さに対するドラムの回転角は小さくなります。その回転角が小さくなると、渦巻ばねの変形量の増加も小さくなります。変形量の増加が小さくなると、巻取機構がドラムに与えるトルクの増加も小さくなります。そのトルクの増加が小さくなるので、巻取機構がワイヤーを引く力の増加も小さくなります。そのため、ワイヤーの繰り出し量が大きくても小さくてもユーザーが感じる抵抗はあまり変わりません。

2. マニピュレータタイプの場合

マニピュレータタイプのツールバランサーにおいて、リンク間は屈曲自在に接続されています。そのため、ユーザが工具を動かすとリンクはそれに追従します。その結果、ユーザは工具を容易に動かすことができます。ユーザが工具から手を離すと、リンクに荷重がかかります。するとその荷重は一時的に支えられます。そのため、ユーザーの手から離れた工具が自由落下することはありません。

ツールバランサーの構造

1. 一般的なタイプの場合

一般的なタイプのツールバランサーは、工具に接続されるワイヤー・ドラム・巻取機構・トルク調整機構・ケースを備えます。

ワイヤー
ワイヤーはドラムから繰り出されドラムに巻き取られます。その巻取のためのトルクをドラムに与えるのは巻取機構です。トルク調整機構はドラムがワイヤーを巻き取る力を調整します。

ドラム
ドラムの形状は円錐台状となっています。ドラムの外周面には螺旋状の溝が形成されています。その溝のうちドラムの底部近くの部分に嵌まるのはワイヤーのうち先端から離れた箇所です。その溝のうち円錐台近くの部分に嵌まるのは先端に近い箇所です。

エアーホースまたはケーブル
一般的なタイプのツールバランサーは、ワイヤーに代えてエアーホースまたはケーブルを備える場合もあります。エアーホースまたはケーブルが備えられる場合、エアーホースまたはケーブルが工具を吊り下げ、エアーホースまたはケーブルが工具へ動力を供給します。

2. マニピュレータタイプの場合

マニピュレータタイプのツールバランサーは、複数のリンクと、リンク間を屈曲自在に接続する機構と、リンクに荷重がかかったときにその荷重を一時的に支える装置とを備えます。

ツールバランサーのその他情報

バランサーとの違い

「バランサー」と呼ばれるツールバランサーと似た装置があります。バランサーは、物の近距離移動に用いることができます。バランサーの動力源にはモータおよび空圧機器があります。バランサーは制御装置を備えています。その制御装置は、吊り下げる物の重量に応じてワイヤーなどの巻取トルクを制御します。

タップホルダ

タップホルダとは

タップホルダとは、内部ねじを切るために使用される工具です。

金属などへめねじを加工する際に、タップを保持するために用います。一般的に手動のねじ切り作業において使われることが多いです。タップホルダを使用することで、材料の内部に正確なねじを切ることができます。

ねじを切るための専用工具であるため、作業効率が向上し、高精度なねじ切りが可能です。また、タップホルダは手動で操作するため、電源や電池が不要です。特に小規模な作業や修理作業に適しており、場所や環境に制約されずに使用することができます。一度購入すれば繰り返し使用可能で、比較的安価です。

ただし、操作には正確性が求められます。適切な圧力と回転速度を保ちながら、切削を行う必要があります。誤った操作や力の加え方がねじ切りに悪影響を及ぼす可能性があるため、慎重に作業を行うことが大切です。

タップホルダの使用用途

タップホルダはさまざまな場面で使用されます。以下はタップホルダの使用用途一例です。

1. 機械加工

金属加工におけるねじ切り作業で頻繁に使用されます。機械部品の製造や修理作業において、ねじ穴を正確に切削することは重要です。ねじを正確に切削することで部品の組み立てや取り付けを行います。

タップホルダを使用することで、ねじを一貫して正確に切削することが可能です。

2. 木工

木工作業においても使用されます。木材を組み立てる際にねじを使用する場合、タップホルダを使ってねじ穴を正確に切削します。特に家具製作や木製品の製造で使用されることが多いです。

タップホルダを使用することで、木材へのねじの取り付けが確実に行われ、耐久性の高い仕上がりを実現できます。

3. 自動車

自動車の修理作業において、タップホルダが使用される場面はさまざまです。エンジンの部品交換や修理作業などにおいて、ねじ穴が破損してしまった場合にタップホルダを使用して修復します。タップホルダを使用することで、正確なねじ穴を再作成し、部品の取り付けが可能です。

自動車の修理においては、正確なねじ切りが重要であり、タップホルダはその要求に応える役割を果たします。

タップホルダの原理

タップホルダに求められる代表的な機能には、タップの保持やタップへの伝達トルク容量などがあります。また、タップ加工時の直進性やねじピッチ誤差の吸収なども重要です。

タップの保持と伝達トルク容量について、タップにはネジ加工時に大きなトルクがかかります。そのため、タップ軸以外に軸端部に四角軸があり、空転を防止する製品が多いです。軸の寸法はタップ径に応じて異なるため、タップホルダも寸法を合わせる必要があります。

タップ加工時の直進性は、タップが高い直角度を保って加工できるかがポイントです。タップホルダには加工負荷を受けても容易に回転軸がずれない剛性が求められます。

また、ネジ切り作業では1回転でねじピッチ分だけ進むため、工作機械側の主軸も同じ距離移動することが必要です。高精度な送り制御ができない場合は移動距離の誤差をタップホルダが吸収するため、伸縮機構があるタイプを採用する必要があります。

タップホルダの種類

タップホルダには大きく分けて2種類あります。

1. ハンドタップ

手作業でタップ加工をするためのタップホルダです。手でタップを回転させる持ち手が付いており、T型タップホルダやタップハンドル、ハンドルなどとも呼ばれます。

手で握り、回転させながら材料に切削刃を進めてねじ切りを行います。力と角度の制御が重要であり、正確なねじ切りを実現するためには熟練した技術が不可欠です。

2. 加工機械用タップホルダ

工作機械でタップ加工するためのタップホルダです。設備の回転主軸への取り付ける形状となります。

加工機械用タップホルダは、機械化された作業環境でのねじ切り作業を効率化するために使用されます。加工機械と組み合わせることで精密なねじ切りが自動化され、大量生産や高精度加工が可能です。