ツールバランサーとは
ツールバランサーとは、工具を保持しておく装置です。
ツールバランサーに保持された工具をユーザーが手離すとその工具はユーザの手から離れます。一般的なツールバランサーに保持された工具は、ユーザーの手を離れると元の位置へ戻ります。
ツールバランサーは、重量のある工具を用いる人の疲労を抑えます。疲労が抑えられるのは、ツールバランサーが工具を保持するからです。一般的なツールバランサーは、人の疲労を抑える上に、作業場所の整頓を可能とし、作業能率を向上させます。これは、ツールバランサーが工具の位置を一定とするからです。
ツールバランサーの使用用途
ツールバランサーは、工具を手に持ったり手離したりすることが多い場所で使用されます。工具を手に持ったり手離したりすることが多い場所の例は、組立ラインです。
ツールバランサーに保持される工具には、レンチなどのハンドツール、電動ドライバー、エアインパクトレンチ、エアガンがあります。特に持ち続けると腕が疲れるような重量のある工具に対してツールバランサーは適しています。ツールバランサーを複数使用すれば必要な工具を必要な時だけ選択して使用することができます。
ツールバランサーは重量のある物の運搬に用いてはいけません。重量がある物の運搬にツールバランサーを用いた場合、その重量がある物を外した途端にツールバランサー先端が跳ね上がることがあるためです。跳ね上がったツールバランサー先端により作業者が怪我をすることもあり得ます。
ツールバランサーの原理
1. 一般的なタイプの場合
基本的な原理
ワイヤー先端に工具が吊るされることでワイヤーに荷重がかかると、ワイヤーはドラムから繰り出されます。ワイヤーを引き上げる力と工具の質量とが拮抗した位置で工具は止まります。このようになる基本的な原理は以下の通りです。
巻取機構の主な動力源は渦巻ばねです。ワイヤーがドラムから繰り出されることに伴ってその渦巻ばねの変形は大きくなります。その変形が大きくなることに伴って巻取機構がドラムに与えるトルクが大きくなります。これにより、ドラムがワイヤーを引く力は増加します。一方、ワイヤーがドラムへ引き上げられると、渦巻ばねの変形は小さくなります。その変形が小さくなることに伴って、そのワイヤーがドラムが引く力も小さくなります。その力が小さくなると巻取機構はワイヤーを引くことができなくなります。
抵抗が調整される原理
ドラムの形状が円錐台状になっているので、ワイヤーの繰り出し量の総和が増えるにつれ、繰り出し量の単位長さに対するドラムの回転角は小さくなります。その回転角が小さくなると、渦巻ばねの変形量の増加も小さくなります。変形量の増加が小さくなると、巻取機構がドラムに与えるトルクの増加も小さくなります。そのトルクの増加が小さくなるので、巻取機構がワイヤーを引く力の増加も小さくなります。そのため、ワイヤーの繰り出し量が大きくても小さくてもユーザーが感じる抵抗はあまり変わりません。
2. マニピュレータタイプの場合
マニピュレータタイプのツールバランサーにおいて、リンク間は屈曲自在に接続されています。そのため、ユーザが工具を動かすとリンクはそれに追従します。その結果、ユーザは工具を容易に動かすことができます。ユーザが工具から手を離すと、リンクに荷重がかかります。するとその荷重は一時的に支えられます。そのため、ユーザーの手から離れた工具が自由落下することはありません。
ツールバランサーの構造
1. 一般的なタイプの場合
一般的なタイプのツールバランサーは、工具に接続されるワイヤー・ドラム・巻取機構・トルク調整機構・ケースを備えます。
ワイヤー
ワイヤーはドラムから繰り出されドラムに巻き取られます。その巻取のためのトルクをドラムに与えるのは巻取機構です。トルク調整機構はドラムがワイヤーを巻き取る力を調整します。
ドラム
ドラムの形状は円錐台状となっています。ドラムの外周面には螺旋状の溝が形成されています。その溝のうちドラムの底部近くの部分に嵌まるのはワイヤーのうち先端から離れた箇所です。その溝のうち円錐台近くの部分に嵌まるのは先端に近い箇所です。
エアーホースまたはケーブル
一般的なタイプのツールバランサーは、ワイヤーに代えてエアーホースまたはケーブルを備える場合もあります。エアーホースまたはケーブルが備えられる場合、エアーホースまたはケーブルが工具を吊り下げ、エアーホースまたはケーブルが工具へ動力を供給します。
2. マニピュレータタイプの場合
マニピュレータタイプのツールバランサーは、複数のリンクと、リンク間を屈曲自在に接続する機構と、リンクに荷重がかかったときにその荷重を一時的に支える装置とを備えます。
ツールバランサーのその他情報
バランサーとの違い
「バランサー」と呼ばれるツールバランサーと似た装置があります。バランサーは、物の近距離移動に用いることができます。バランサーの動力源にはモータおよび空圧機器があります。バランサーは制御装置を備えています。その制御装置は、吊り下げる物の重量に応じてワイヤーなどの巻取トルクを制御します。