防水試験

防水試験とは防水試験

防水試験とは、製品に対し、水滴が落下したり水没させた時の環境を想定し、浸水に対してどの程度耐久性があるかを評価する試験のことです。

防水試験はIP試験と呼ばれる電気機械器具の外郭に対しての保護度合いを評価する試験の中に入っており、防水試験の結果に応じてIPX0~8までの保護等級が付けられます。保護等級は数字が大きいほど耐久性が高いことを示しており、IP試験には防水試験以外にも固形の侵入に対する保護を評価する防塵試験も含まれています。

防水試験の使用用途

防水試験では、製品に水の侵入をどの程度保護できるかを評価することが可能です。IP試験にも導入されていることから、基本的には電気機械器具に対して行われる試験となっています。保護等級が高いほど防水性が高いため消費者が商品を選ぶうえでも十分基準として扱える数値です。

特にこの数値が気にされており身近のものは時計です。生活防水や完全防水などの表記はこの防水試験のデータをもとに書かれていることが多いです。

防水試験の原理

防水試験は簡易的なものからIPの規格に準拠したものまで様々な試験法がありますが、今回はIPの規格に準拠した試験について明記します。

防水試験は、IPの保護等級によって実施する試験の内容が異なります。IPX1~IPX2は比較的軽度な防水機能であるため、水分をサンプルに滴下して不具合がないかを確認しますIPX3~IXP4と等級が上がると続いて試験サンプルに対し散水することで試験を実施し、水量や水圧を上げていきます。

IPX5では噴流をかける試験、IPX6では暴噴流をかける試験に移ります。IPX7~8になるとかなり高い防水強度を持つため、試験方法も一気に変わり製品サンプルを浸水させて評価を行います。最大強度のIPX9は高圧洗浄試験を行います。

このように等級が上がるにつれて試験の難易度も上がります。

衝撃試験

衝撃試験とは

衝撃試験とは、試験材料に対し衝撃荷重が加わった際に、どの程度の衝撃に耐えられるかを測定する試験のことです。

通常は試験サンプルを固定し、そこに振り子式の打撃ハンマーを振り下ろして衝撃を加えた上で、どの程度衝撃に耐えられるか、またはどの程度変形しないまま破損するか、2点を評価します。

この衝撃試験では材料自体の強度も明らかになるため、材料ベースの場合は材料選定、製品状態の場合は製品の品質保証に役立ちます。

衝撃試験の使用用途

衝撃試験では、材料自体または製品での耐衝撃性を測定可能です。そのため衝撃の加わりやすい商品では、使用環境を想定して見合った衝撃を加えて評価する必要があります。

その中でもスマートフォンやタブレットなどのモバイル製品では、使用している間に落下の衝撃を受ける可能性が極めて高いため、高い衝撃にも耐えられるようにあらゆる条件で衝撃試験が行われています。

そのほか輸送時の衝撃を想定して試験を行い、消費者の手に渡るまでに落下衝撃で起きる破損の不具合を抑制可能です。

衝撃試験の原理

衝撃試験に似た試験に落下試験がありますが、落下試験は製品を自由落下させた衝撃を確認する試験です。衝撃試験は1点にハンマーで打撃を加えた衝撃であり、種類が異なります。また衝撃試験では、自由落下時に起こる速度以上で試験サンプルに打撃するため、高速の負荷をかけられます。

このような衝撃試験では通常固定した試験サンプルに対し、振り子上のハンマーを振り下ろして衝撃を加え、試験を実施可能です。衝撃試験では試験を行う機械が定められており、アイゾット衝撃試験機 (英: Izod impact testing machine) とシャルピー衝撃試験機 (英: Charpy impact testing machine) が使用されます。

1. アイゾット衝撃試験機

アイゾット衝撃試験機では、試験片の片側を固定し、固定していない側からハンマーで打撃して、衝撃値を測定します。

2. シャルピー衝撃試験機

シャルピー衝撃試験機では、試験片の左右両側を固定し、背面側からハンマーで打撃して破壊し、衝撃値を測定します。

衝撃試験の選び方

1. アイゾット衝撃試験

アイゾット衝撃試験は、ゴルフのティーショットのように、靭性を確認する試験です。試験片に小さい切り込みを施して、ノッチ付きの方向から打撃します。ハンマーが持ち上がった角度と持ち上がった角度を測定可能です。ノッチ付きとなしで、測定結果を比べる場合もあります。

アイゾット衝撃試験では、試験片を壊した後のハンマーの動きが重要です。試験片が衝撃を吸収しない場合にはハンマーが高い場所まで振り上がり、試験片が衝撃を吸収した場合にはハンマーがあまり振り上がりません。プラスチックや金属のようなさまざまな材料で実施可能です。プラスチックは温度で衝撃強さが違うため、低温と高温で行う場合もあります。

2. シャルピー衝撃試験

シャルピー衝撃試験では、破壊時に使ったエネルギーで、脆さや強さをテスト可能です。試験機へ試験片を設置して振り子で中心へ打撃し、ノッチ付きではノッチの反対側に対して振り子で打撃します。

振り下ろした後にハンマーは反対側へ振り上がります。試験片のありとなしで、振り上がった角度を比べて靭性を確認可能です。試験片が衝撃を吸収しないとハンマーが高い場所に振り上がり、試験片が衝撃を吸収するとあまり振り上がりません。プラスチック、木材、金属などのあらゆる製品で試します。

衝撃試験の種類

1. 落球衝撃試験

落球衝撃試験 (英: Falling ball impact test) では靭性を確かめるため、決まった高さから製品または材料に向かって鋼球を落下させます。

2. デュポン式落下衝撃試験

デュポン式落下衝撃試験 (英: DuPont Impact Test) はプラスチックのシートや塗膜の強さを調べるテストです。プラスチックやコーティングには衝撃による剥がれや割れの可能性があるため、擬似的な衝撃を加えて製品のもろさを見ます。

3. ダートインパクト試験

ダートインパクト試験 (英: Dirt impact test) は、プラスチック板、ガラス、建材用ボードへダートを落下させたときに、試験片が破壊されるか調べるテストです。

落下試験

落下試験とは

落下試験とは、製品や貨物が落下したときに、その衝撃に耐えられるかどうかを評価するものです。

手で操作している時や商品を持ち運ぶ時に落下する可能性が高く、これらの状況で「誤って落としても商品の機能に問題がない」ことを証明できれば、商品自体の信頼性を高められます。物を落とす状況を再現し性能を確かめる落下試験によって耐久性を評価することが大切です。

また、落下試験と間違えやすいものに「衝撃試験」があります。衝撃試験と落下試験の主な違いは、「加速度をつけて落下させること」「短時間の衝撃を評価すること」の2つです。

落下試験の使用用途

落下試験は下記のような様々なものに対して行われます。

  • パソコンなどの電子機器
  • 化粧品や日用品の包装容器
  • 食品や乳製品の包装容器

落下試験を行うことで問題なくエンドユーザーへ製品が届けられるかを確かめることができます。特に、店頭などに並ぶ製品は、以下のように様々な段階を踏みます。

  1. 運送会社が工場から店頭まで運ぶ
  2. 店舗スタッフが箱から製品を取り出し、陳列棚に出す
  3. 顧客が製品を購入し、自宅に持ち帰る

そのため、あらゆる場面を想定して「配達店頭に並んでいる状態」と「梱包されている状態」の2条件で試験されることが多いです。製品や梱包の耐久性を向上させるためにも、落下試験の条件や機器を確認してから行うことが重要です。

落下試験の原理

落下試験の原理は、決められた高さや方向から製品を落とし、製品に加わる衝撃を確認します。

1. 高さの決め方

高さは「JIS規格 Z 0200」で定められており、貨物の重量とレベルの2つの指標で決定します。貨物の重量は、以下の6段階に分類されます。

  • 10kg未満
  • 10kg以上20kg未満
  • 20kg以上30kg未満
  • 30kg以上40kg未満
  • 40kg以上50kg未満
  • 50kg以上100kg未満

また、レベルは以下の4段階あります。

  • レベル1
    転送積み替え回数が多く、非常に大きな外力が加わるおそれがある場合
  • レベル2
    転送積み替え回数が多く、比較的大きな外力が加わるおそれがある場合
  • レベル3
    転送積み替え回数及び加わる外力の大きさが、通常想定される程度の場合
  • レベル4
    転送積み替え回数が少なく、大きな外力の加わるおそれがない場合

上記の重量とレベルの組み合わせ24通りから、落下する高さを決定します。最も高いケースは「10kg未満」かつレベル1の製品で、落下させる高さは80cmです。反対に、最も低いケースは「50kg以上100kg未満」かつレベル4の製品で、落下高さは5cmです。

2. レベルの決め方

レベルは主に運送方法によって異なり、下記が目安となります。

  • レベル1:船での輸送 (輸出など)
  • レベル2~3:チャーター便での輸送
  • レベル3:鉄道輸送
  • レベル3~4:手運び

3. 落下させる方向

落下させる方向は、1つの角と3つの稜、6つの面の計10方向です。各方向で衝撃加速度やひずみ量、変形量が基準を満たしているか調べます。

また、スマホやパソコンといった電気製品の落下試験だった場合は、製品の電子回路の電圧変動や瞬断の有無も確認します。バッグやポケットから落とした際に故障しないことを保証するためです。

落下試験の種類

落下試験は、大きく自由落下試験と片支持りょう落下試験の2種類に分けられます。

1. 自由落下試験

自由落下試験は、10方向で指定された高さから十分固い床に当たるように落とす試験です。以下の3パターンのいずれか、もしくは複数で試験を行います。

  • 製品自体
  • 包装貨物 (気泡緩衝材に包まれケースに入れられているなど、店頭に並んで置かれたときの状態)
  • 梱包状態 (12個まとめて段ボール箱に入っているなど、輸送するときの状態)

2. 片支持りょう落下試験

機械で運ぶ大型貨物の場合は、片支持りょう落下試験が実施されます。片支持りょう落下試験とは、製品の一方を一定の高さで支持し、支えている側と反対側を持ち上げて落下させる試験です。片支持りょう落下試験の落下回数は規格で定められています。

腐食試験

腐食試験とは

腐食試験とは、物質を腐食させる環境因子を抜き出し、あえて腐食を促進させるよう条件下で耐食性を確認する試験の総称です。

製品が破損する要因の1つとして腐食が挙げられます。腐食は実に様々な環境因子が複合的に合わさって起きるものであり、それを完全に再現するのは難しいと言えます。疑似的に再現できたとしても大がかりな試験が必要ですが、腐食に影響すると考えられる環境因子を抜き出した要素試験であれば、簡易的に行うことができます。

腐食試験はあえて腐食を促進させるような条件下で行うため、比較的短く耐食性の評価ができることや、他の素材と比較しやすいです。

腐食試験の使用用途

ある一定の基準を超えたもののみを材料として使用するなど、材料の選定や、製品の耐食性評価の基準として腐食試験が採用されています。

また、JISやJASOなど、規格化された腐食評価基準なども存在し、自動車分野、家電・電気製品分野、土木・建築分野などで幅広い分野で活用されています。

腐食試験の原理

腐食試験は、物質の化学反応による劣化のメカニズムを利用して行われる試験です。摩耗や擦傷など、物理的作用による劣化は腐食とは言わず、化学反応による劣化のみを腐食と呼びます。

まず、腐食試験においては、製品に使われる材料を、製品が使われる可能性のある環境の環境因子の中に置きます。例えば、沿岸部での使用が想定される製品であれば海水の成分、また、野外での使用が想定される製品であれば酸性雨の成分が環境因子です。

そして、腐食を促進させる条件下で一定時間放置し、観察します。時間の経過と共に、腐食の仕方や、腐食するまでにかかった時間などを明らかにしていきます。

腐食試験の種類

材料と環境因子の組み合わせによって、様々な種類の腐食試験があります。その中でも、よく行われる代表的な試験は次の4つです。

1. 実環境暴露試験

この腐食試験は、促進試験ではなく実際の環境下においた条件で経時的にどのように腐食していくかを確認します。耐候性試験とも呼ばれ、光や湿度、水などの影響によって、どのように腐食が進行していくのかを調べます。

主に野外で長時間放置されるような橋、建物、機械、乗り物などの腐食を確認するのに使用されることが多く、正しい腐食度合いが確認できますが、促進試験ではないので、試験期間が長いです。

2. 模擬環境暴露試験

この腐食試験では、試験する材料に合わせて最も腐食が促進しやすい条件を抽出し、促進しやすい条件下で腐食度合いを確認します。

実環境でおきる腐食よりも厳しい条件下で行われるため、その材料の耐食性の強さの限界値を調べることができることや、短期間で耐食性を調べられます。

3. 電気化学腐食試験

この腐食試験では、電気化学的な反応を加えることで、疑似的に腐食環境を作り出し、腐食の発生条件やその程度を測定することが可能です。

具体的には、腐食電位測定や、アノード分極曲線測定、インピーダンス測定試験など、電気化学測定試験を用いて耐食性の評価を行います。高温高圧水腐食試験と組み合わせた評価も可能です。

4. 局部腐食評価試験

この腐食試験では腐食が起きやすい溶液に浸漬させたり、そこで応力を加えることで一部分に強い腐食を起こさせることのできる試験です。

熱や力によって酸化被膜が破壊され一気に腐食が進んでしまうような金属素材の評価などに使用されます。

腐食試験のその他情報

腐食試験に使われる主な腐食因子

腐食試験には、材料を腐食させる様々な腐食因子が使われます。よく使われる腐食因子は次の通りです。

1. 塩水
海などの沿岸部で放置されたり、使用される材料の腐食試験に使われる因子です。塩水を使用した試験としては、塩水噴霧試験などがあります。

2. 酸性雨
工場の近くや、野外などで放置・使用される材料の腐食試験に使われる因子です。大気腐食を想定した複合サイクル試験 (CCT) などで使用されます。

3. ガス・オゾン
工場などで、腐食性ガス発生下で使われる材料の腐食を調べるための因子です。腐食性ガスである二酸化硫黄や、硫化水素二酸化窒素塩素、オゾンなどが使われ、ガス腐食試験などで使用されます。

4. 光
太陽光があたる場所で、放置・使用される材料の腐食試験に使われる因子です。耐候性試験などに使用されます。

5. 低温
寒冷地で使用される材料の腐食試験に使われる因子です。恒温恒湿、温湿度サイクル試験などで、低温による塗膜の硬化や、脆化、剥離などを調べる際に使われます。

6. 湿潤
湿度の高い場所において使用される材料の腐食試験に使われる因子です。水蒸気酸化試験や、恒温恒湿、温湿度サイクル試験などで使われます。

7. 乾燥
低湿度、乾燥地帯において使用される材料の腐食試験に使われる因子です。乾燥試験などで使われます。

8. チッピング
自動車などの走行によって、巻き上げられた道路の小石などの衝突や擦傷などから進行する腐食を想定した腐食試験に使われる因子です。耐候性試験などで使われます。

耐圧試験

耐圧試験とは

耐圧試験

耐圧試験とは、機械、配管、タンク、圧力容器などの圧力に関する部品や機器を想定される最大の圧力や定格圧力の範囲で、破壊や変形がないことを確認する試験です。

一般的に、液体や気体を充填した状態で行われます。耐圧試験には、定圧法や定量法、定温法などがあり、試験方法は検査する対象物によって異なります。耐圧試験は、想定圧力に耐えられるかだけでなく、品質管理や安全性の確認にも使用されます。

例えば、圧力容器は高圧ガスや蒸気を保持している場合があり、体圧試験は事故や損害を防ぐために欠かせない工程です。なお、気密試験は圧力が関係する試験ですが、圧力に直接関連するのは圧縮空気や窒素ガスなどの気体の漏洩を確認することであり、耐圧試験とは異なります。

耐圧試験の使用用途

耐圧試験は、過酷な環境下で設備が耐えられるかどうかを確認するために実施されます。耐圧試験は、圧力容器や配管、各種バルブやポンプ、熱交換器など、高圧設備全般において行われる試験です。

近年、エネルギー需要の増大に伴い、大規模な設備が必要な産業が増加しています。設備には、高圧ガスや高温流体を扱うものが多く、大規模な設備の状況下で安全性を確保することが重要です。

新しい設備を設置時や修理後は、正常な運転を開始する前に耐圧試験を実施します。耐圧試験を行うことで、設備が運転中に破損するリスクを事前に減らせるためです。

なお、耐圧試験は、設備の設置時や定期的な点検時など、定期的に実施されます。高圧設備を多く保有するプラントや工場では、定期的に計画を立て、試験を実施することが一般的です。

耐圧試験の原理

耐圧試験では、設備が設計通りの圧力に耐えられるかを確認するため、水と圧力ポンプ、圧力計が使用されます。通常、部分ごとではなく一度に試験を行うのが一般的で、設備内の配管を密封し空気を完全に抜きます。

空気を抜いた後に、水圧ポンプを設置し、徐々に圧力を上げていきます。想定圧力まで上昇したら、圧力が安定してから設備内に破損や変形が起きていないかの確認が必要です。確認する際、圧力を上げて安定するまで十分待ちます。圧力が徐々に下がっていく場合は、どこかから漏水している可能性があります。

耐圧試験を行う際には、溶接箇所に注意が必要です。溶接部分は、隙間ができる可能性があります。溶接の熱や振動によって部品がもろくなっている可能性もあるため、注意が必要です。試験前は溶接箇所をしっかり確認し、試験中も状態を監視する必要があります。

また、耐圧試験は、設備を製造する前に行われる工程でもあります。実際に使用する設備に近い大きさのテストモデルを作成し、同様に圧力をかけて耐久性を確認することが必要です。製造前に行われる耐圧試験は、将来的なトラブルを未然に防ぐために欠かせない工程です。

耐圧試験の種類

耐圧試験の代表的な試験方法として、定圧法、定量法、定温法の3種類が挙げられます。試験方法を選択する際には、電気機器や配電設備の種類、試験目的に応じて、適切な方法を選択することが重要です。

1. 定圧法

定圧法は、高圧をかけた状態での耐久性や絶縁性能を評価する方法です。一定の高圧をかけた状態で、一定時間の漏洩電流を測定します。定圧法は、電気機器の安全性を評価するために広く使用されています。

2. 定量法

定量法は、高圧をかけた状態での耐久性や絶縁性能を評価する方法です。定量法は、高圧下での時間あたりの漏洩電流を測定することによって、電気機器の耐久性を評価します。定量法は、長時間かけて試験を行うため、より高い信頼性を持つことができます。

3. 定温法

定温法は、高圧下での耐久性や絶縁性能を評価する方法です。定温法は、一定温度に保った状態で高圧をかけ、一定時間の漏洩電流を測定します。定温法は、特定の温度における電気機器の安全性を評価できる点が特徴です。

結晶構造解析

結晶構造解析とは

結晶構造解析

結晶構造解析とは、X線などの電磁波の回折を利用して結晶内の電子密度の3次元構造を明らかにし、結晶の原子配列や分子構造などを決定する分析手法です。

主要な手法であるX線結晶構造解析は、無機、有機や分子の大きさを問わず様々な物質で利用可能なため、無機塩、金属、鉱物、半導体などの材料や、核酸やタンパク質などの複雑で巨大な生体分子などの分子構造を明らかにするために用いられています。また、様々なバルク材料、薄膜・表面処理、微粒子などの結晶構造を評価することにより、結晶配向状態の分析や各種定性分析に用いることもできます。

エレクトロニクス材料から、医薬・バイオ分野まで、多くの分野で活用されている分析手法です。

結晶構造解析の使用用途

結晶構造解析は、原子のサイズ、化学結合の長さと種類など、結晶の様々な構造的特性を決定することができます。主要な方法であるX線結晶構造解析は、特にビタミン、薬、タンパク質、DNAなどの核酸を含む、多くの生体関連分子の構造と機能を明らかにすることに用いられています。

こうした分析は、病気に対する医薬品を設計する上で有用な分析手法です。また、X線結晶構造は材料の電子的または弾性的特性や、分子間の化学的相互作用やプロセスを解明したりすることにも利用されます。

結晶構造解析の原理

1. 結晶構造解析の流れ

結晶構造解析の概要

図1. 結晶構造解析の概要

結晶構造解析の全体の流れは、下記の通りです。

  1. 試料の結晶化条件の探索、測定に適する大きさの結晶の作製
  2. 結晶を照射装置に固定する
  3. 結晶にX線などの光線を照射して、回折パターンを二次元画像として得る
  4. フーリエ変換を用いて二次元画像の回折パターンを電子密度の3次元モデルに変換する
  5. 電子密度パターンから、結晶の構造を決定する

しばしば最初のステップである試料の適切な結晶の作製が最も困難であり、時間がかかることが多いです。結晶は十分な大きさ (一般的には全方向に渡って0.1 mm以上) と純度をもち、亀裂や双晶形成などの大きな欠陥のない構造をしている必要があります。

2. X線回折の原理

ブラッグの条件

図2. ブラッグの条件

規則的構造を取っている結晶にX線などの電磁波を照射すると、入射するビームが多くの特定の方向に回折します。こうした回折を測定することにより、結晶内の電子密度の3次元画像を作成することが可能です。

例えば、X線照射時において結晶中の原子が作る面 (原子網面) がX線を反射すると、平行な別の2つの面に反射されたX線が干渉によって強め合い、回折が起こります。このとき回折が起こる条件は、面の間隔をd、X線の入射角をθ、任意の整数n、X線の波長λとして、2dsinθ = nλです (ブラッグの条件) 。

結晶構造解析に用いられる装置は、発生部と試料と検出部は常にブラッグの条件を満たすように動きます。

3. 電子密度の算出

電子密度分布に関わる数式

図3. 電子密度分布に関わる数式

実際の結晶中では原子内の電子がX線などの電磁波を回折します。このとき、位置ベクトルrの位置において、微小体積dV内で散乱されるX線の振幅はその位置での電子密度ρ(r)に比例します。

原子がX線を回折する場合の散乱波の振幅fはこれを積分したものであり、この値を原子散乱因子と呼びます (数式1) 。結晶においても同様の式が成立し結晶中の電子密度はその各原子の電子密度の和で近似できると仮定することが可能です。

そのため、結晶の散乱因子である結晶構造因子Fは、位置ベクトルriの位置にある原子の原子散乱因子fiを使って書き換えられます (数式2) 。X線の散乱強度は結晶構造因子の絶対値の2乗に比例するため、X線の散乱強度から結晶構造因子を求めることが可能です (数式3)。

結晶構造解析では、算出された結晶構造因子から結晶を構成する原子を同定します。

結晶構造解析の種類

結晶構造解析は、X線を用いた結晶構造解析であるX線結晶構造解析が一般的ですが、分析手法としては、電子回折法や中性子回折法など、その他の電磁波を用いたものもあります。

また、X線結晶構造解析の種類では、試料の単結晶を作成してX線回折を測定する単結晶X線回折と、多数の単結晶の集合と考えられる試料のX線回折を測定する粉末X線回折とがあります。通常、前者は未知試料の分子構造を決定するのに用いられ、後者は未知試料を同定するのに用いられる分析方法です。

受託分析サービスでは、結晶構造分析一般を受託しているもの、タンパク質結晶構造分析に特化しているもの、分析のみならず単結晶試料の作製から分析・構造決定まで受託しているものなど、さまざまなサービスが存在しています。

硬さ試験

硬さ試験とは

硬さ試験

硬さ試験とは、物質の硬度を測定するために行う試験のことです。

硬さ試験によって求められた硬さ値から、物質のさまざまな機械的性質を容易に推測できるということから、最もよく行われる材料試験の1つであり、工業上では重要な試験の1つと言われています。

試験手法の種類が多いことや、数ある材料試験の中で比較的簡単に行えることが特徴です。試験手法によって硬さの定義や値などが異なるため、調べたい物質の特性に応じて適切な試験手法を選択することが重要とされています。

硬さ試験の使用用途

硬さ試験は、物質の硬さ値自体を求める目的ではなく、硬さ値から物質のさまざまな機械的性質 (耐力や引っ張り強さ、耐摩耗性など) を推測するために使用されることが多い試験です。

硬さ試験は、他の材料試験のように被測定物を試験用にわざわざ加工する必要がなく、手軽に短時間で測定することができます。

硬さ値と被測定物の耐力や引っ張り強さ、耐摩耗性などの機械的性質には相関性があるため、硬さ値さえ分かれば被測定物の機械的性質を容易に求めることが可能です。

一方で、不純物が多い材料など、硬さ値から求められる機械的性質では不十分な場合、引っ張り試験や衝撃試験、金属組織試験など、それぞれ個別に試験が必要です。

硬さ試験の原理

硬さ試験には多くの種類が存在しますが、測定に使用する原理は2つのみです。

1. 押込み試験法の原理

押込み試験法は、様々な形状の物体を被測定物に押込み、その凹み具合から硬さを求めます。硬さ試験のほとんどはこの押込み試験法の原理を用いて行われます。被測定物に凹みができてしまいますが、硬さを正確に測定できます。

2. 動的試験法の原理

動的試験法は、球体を被測定物にぶつけて跳ね返った高さや角度などから硬さを求めます。被測定物に傷をつけることなく硬さを測定できますが、硬さの精度が押込み試験法よりも低いです。

硬さ試験の種類

数多くの試験方法がありますが、一般的によく使われる試験は次の通りです。

1. ロックウェル硬さ試験

主に熱処理をした鉄鋼部品などの硬さ測定に使用される試験です。

数ある硬さ試験の中でも、特に測定方法が簡単で、測定者によって測定値が大きく変化しないのが特徴です。頂点の角度が120°のダイヤモンド製円錐か、鋼球を基準・試験荷重で2回続けて押込み、出来た凹みの深さの差で硬さが算出され、HRという記号で表されます。

2. ビッカース硬さ試験

幅広い金属材料やセラミックス材、一部のプラスチックの硬さの測定に使用される試験です。

ダイヤモンド製の角錐を被測定物に押込み、出来た凹みの表面積で硬さが算出され、HVという記号で表されます。凹みが小さいため、薄膜や金属表面の硬さを求めるのによく利用される試験です。さらに小さな角錐を使用する場合は、微小硬さ試験と呼ばれます。

3. ヌープ硬さ試験

ビッカース硬さ試験と同様の試験機で行われる試験です。

頂点の角度が172.5°のダイヤモンド製四角錐 (対角線長比1:7:11) を被測定物に押込み、試験荷重を出来た凹みの表面積でわることで硬さが算出され、HKという記号で表されます。凹みが浅いのが特徴で、主に薄い材料や、脆い材料の硬さ測定によく使われます。

4. ブリネル硬さ試験

主に金属材料全般の硬さ測定に使用される試験です。

大きな範囲の硬さ測定ができるのが特徴で、場所によって硬さが異なる鋳鉄のような金属の硬さ測定によく使われます。鋼球を被測定物に押込み、荷重を出来た凹みの表面積でわることで硬さが算出され、HBという記号で表されます。

5. ショア硬さ試験

主に金属材料の硬さの測定に幅広く使用される試験です。

ダイヤモンド製の球を一定の高さから被測定物に落下させ、球がどれだけ高く跳ね返ってきたか、その高さによって硬さを算出します。硬さ試験の中で唯一、物体同士の反発を利用した方法で被測定物が傷つけずに測定できます。

この特徴から金属材料の中でも傷をつけたくない完成品や仕上がり品の硬さ測定に使われます。硬さ記号はHSが使われます。

6. デュロメータ硬さ試験

主にプラスチックやゴムなどの硬さ測定に使用される試験です。

頂点の角度が35°の針状の円錐を被測定物に押込み、出来た凹みの深さから硬さを算出し、HDという記号で表されます。

7. バーコール硬さ試験

主に金属やプラスチック、FRP (繊維強化プラスチック) などの硬さ測定に使用される試験です。

頂点の角度が26°の針状の円錐を被測定物に押込み、出来た凹みの深さから硬さを算出し、HBIという記号で表されます。

疲労試験

疲労試験とは

疲労試験

疲労試験とは、試験サンプルに負荷を繰り返しかけ、この試験サンプルが破壊されるのはどの地点なのかを明らかにする試験のことです。

金属は1回で壊れないような小さな負荷であっても、繰り返しかかることで目には見えない亀裂が生じます。これを「クラック」といいます。

クラックが生じた状態でさらに負荷がかかると、最終的に破壊します。これを「疲労破壊」と呼び、疲労破壊するまでの回数を調査するのが疲労試験です。

疲労試験の使用用途

疲労試験は、金属が使われているほとんどの製品に行なわれています。特に自動車やケーブル、陸橋など「繰り返し使うことが想定される製品」では、疲労試験は必須といっても過言ではありません。

また、折り曲げる操作に対する耐久性を調べる場合も、疲労試験が導入されています。金属材料は細長く加工されていることも多く、何度も折り曲げた結果、小さなクラックが発生しやすいためです。

加えて、金属ほどではありませんが、ゴムや樹脂も繰り返し負荷をかけることで破断応力が下がります。材質や使用用途によっては、金属と同じく疲労試験を行うことをおすすめします。

疲労試験の原理

疲労試験は、下記のような流れで行われます。

  1. 製品に使われる金属材料から、試験片となるサンプルを切り出す
  2. 専用の機械にこの試験片を設置し負荷をかける
  3. 負荷と破断が起きた回数をプロットしていきグラフを作成する
  4. グラフで得られた曲線から疲労限界点を算出する

このときに作成するグラフをS-N線図といいます。S-N線図は、縦軸に「負荷 (応力) の大きさ」を、横軸に「破断したときの負荷回数」をそれぞれプロットすることで作成可能です。

S-N線図を作成すると、ある応力以降水平になります。この応力を疲労限度といい、何回負荷を繰り返しても疲労破壊が起こらない力のことです。この疲労限度に安全率を掛け合わせることで、材料の許容応力が算出できます。

また、正確なS-N線図を作成するためには、大小バランスよく負荷を設定して試験をすることが重要です。与える負荷を6種類以上にし、できるだけの多くの点を振って実施することをおすすめします。

疲労試験の種類

疲労試験にはさまざまな種類があります。評価する試験の種類や負荷の大きさは、試験サンプルが使われる製品や使用環境に応じて決定します。

  • 回転曲げ疲労試験
    回転軸が自重などに耐えられるかを評価する試験
  • 引っ張り圧縮疲労試験
    材料を引っ張りもしくは圧縮させる試験
  • ギガサイクル疲労試験
    低い応力を10回かけて破壊させる試験
  • 平面曲げ疲労試験
    鋼板の曲げ荷重に対する耐久性を評価する試験
  • 熱疲労試験
    変位を固定した状態で加熱と冷却を繰り返す試験
  • ねじり疲労試験
    試験片にトルクを繰り返しかける試験
  • 超音波疲労試験
    超音波で試験片を振動させる試験
  • 内圧疲労試験
    圧力媒体を試験体に入れて圧力を上げ、耐久性を評価する試験
  • 疲労亀裂進展試験
    疲労亀裂の成長速度を評価する試験

自動車のシャフトは、繰り返しねじり負荷がかかることから「ねじり疲労試験」は欠かせません。また、引っ張り圧縮疲労試験には、試験片の全面に負荷をかける「高サイクル疲労試験」と、段付きなど応力が集中する部分のみ負荷をかける「低サイクル疲労試験」の2種類があります。

局部に応力がかかる可能性のある製品であれば、両方の試験を行うことをおすすめします。

疲労試験のその他情報

疲労試験が行われる背景

疲労試験が行われる背景は、「金属は強い負荷がかかったときだけ破壊するとは限らない」ことです。機械や構造物は、周期的に力が加えられる「繰り返し荷重」で壊れることも多く、約8割ともいわれるほどです。

疲労試験で正しい評価を行わなければ、重大な事故を引き起こすかもしれません。例えば、2007年に起きた「エキスポランドジェットコースター横転事故」は車軸の疲労による破壊が原因だと言われています。

このような事態を防ぐためにも製品の材質や使用用途に合った疲労試験を行い、材料に使用してよい応力の上限 (許容応力) を算出することが大切です。

熱衝撃試験

熱衝撃試験とは

熱衝撃試験とは、試験したい製品を高温・低温環境下に繰り返しサイクルでさらし、周囲の温度変化に対しどの程度耐性があるか確認するための試験のことです。

周囲の温度条件によって受ける影響を確認する試験のことを環境試験といい、他にも低温試験・高温試験・高温高湿試験などがあります。また、熱衝撃試験とよく似た試験でヒートサイクル試験という試験があります。

ヒートサイクル試験は低温と高温をゆっくりと行き来するのに対し、熱衝撃試験では短時間で行き来するので急激な温度変化に対する耐性を確認できます。

熱衝撃試験の使用用途

熱衝撃試験はヒートサイクル試験同様、熱膨張率の違いによって起きる損傷についてのみ確認が可能です。

特に多数の熱膨張率をもつ物質が入っており温度変化によって損傷が起きやすい電子部品や、大きな温度変化にさらされるかつ高い安全性が求められる自動車関連の部品などの耐久性評価に適しているといえます。

温度耐性の低い素材を使用した部品であればヒートサイクル試験では問題がなくても熱衝撃試験で耐久性に問題があると発覚する場合もあります。

そのため周囲の急激な温度変化にさらされる製品についてはヒートサイクル試験と合わせて試験を実施する場合が多いです。

熱衝撃試験の原理

製品は通常温度が高い条件では膨張し、温度が低い条件では収縮するので周囲の急激な温度変化によって製品の膨張と収縮が繰り返されます。熱で膨張したり収縮したりする程度は素材によって異なり、熱膨張係数で表されます。

熱膨張係数が大きく異なる素材を同時に使用している場合、素材同士の間で応力がかかり、はがれや亀裂などの物理的損傷が引き起こされます。わずかな損傷が積み重なることで製品自体が劣化し、場合によっては動作に影響を及ぼすこともあります。

急激な温度変化がどの程度繰り返されることで製品に問題がでるかを確認することで、品質を担保できる期間を推定することが可能です。

自動車部品など、高い安全性や信頼性が保証されている製品の場合、一部が劣化することで本体にも影響を及ぼしかねないため余裕をもった条件で部品に異常が起きないことを確認した上で導入が決定されます。

熱分析

 熱分析とは熱分析

図1. 熱分析装置の構成

熱分析とは、分析したい物質を加熱または冷却した時、どの程度の温度、どの程度の時間がかかると物理的に変化が起きるかについて調べる分析の総称です。

熱分析装置は基本的に以下のもので構成されます。

  • 検出部
    ヒーター、試料、検出器 (センサー) を備え、試料をヒーターにより加熱冷却すると共に、試料の温度と物理的性質を検出します。
  • コンピュータ部
    温度制御部とデータ処理部の2つで構成されています。温度制御部ではヒーターの温度制御を行い、設定されたプログラムに従ってヒーターの温度を制御します。データ処理部で検出器と温度センサーからの信号を入力して、データ記録から解析までの処理を行います。

つまり、熱分析とは温度を変化させながら物性を測定する装置です。現在の装置は、温度制御及びデータの記録、解析まで全て手軽に行えるようになっており、装置の制御・解析ソフトとセットで販売されている場合が多いです。

熱分析の使用用途

熱分析は、温度の変化によって材料の機能や効果がどのように変化するかを確認する際に使用します。これによって材料の特性を知り、材料の最適使用温度や製品を製造する際の適正温度を知ることが可能です。

例えば、物質には温度変化によって発生する応答として、融解やガラス転移などの相転移や熱分解などの化学反応、熱膨張や熱収縮があります。これらの特性を熱分析を通して知ることで、寸法安定性に優れた材料の開発や、最適なプロセス条件の設定などに活用します。

そのほかにも、品質管理において生産された製品が要求スペックを満たしているのかを確認するためにも活用されています。

熱分析の原理

Fig2 熱分析装置の測定対象

図2. 熱分析装置の測定対象

熱分析は、検出したい物理的性質に応じて複数の手法があり、大きく分けて5つの技法が存在します。

1. 示差熱分析 (DTA)

基準物質との温度差を検出する分析技法です。基準物と同じ熱履歴を与えて、基準物質に対して、試料の発熱あるいは吸熱を検出します。DTA曲線はガラス転移、結晶化、溶融および昇華といった変化に関するデータを示します。

2. 示差走査熱量測定質量 (DSC)

基準物質との熱流差を検出することができる分析技法で熱容量・比熱の測定によく用いられます。融解、ガラス転移、結晶化といった物質変化の確認、反応や熱履歴の検討が可能です。

3. 熱重量測定 (TG)

重量変化を検出する分析技法で、DSCではあまり確認しない昇華、蒸発、熱分解、脱水等、重量変化といった変化を確認できます。熱重量分析は、他の分析装置と組み合わせることで、同一の試料から同時に多くの情報を得られます。よく見られるのはTG-DTAとTG-DSCです。

4. 熱機械分析 (TMA)

試料に非振動的荷重 (一定荷重) をかけながらの温度に対する変形を計測する手法です。熱膨張、熱収縮、ガラス転移、硬化反応のような形状変化の伴う現象や熱履歴の検討等の測定が可能です。

5. 動的粘弾性測定 (DMA)

試料に時間によって変化する歪みや応力を与えて、それによって発生する応力や歪みを測定することにより、試料の動的な力学的な性質 (粘弾性) を測定する方法です。ガラス転移、結晶化、反応の中でも分子内の運動や構造変化に伴う現象や熱履歴の検討等の測定が可能です。

 

このほかにも発生するガスを分析するEGA (Evolved Gas Analysis) などの手法も存在します。これらは、試料の種類や測定の目的に合わせて最適な手法を選択する必要があります。図2におおよその目安を示しますが、試料の種類によっては測定できない場合もあるため、注意が必要です。

熱分析とその他の分析・観察手法とを組合せることで、付加価値をつけた複合装置も開発されています。文中にもあるようにTGとDTSやTGとDSCを組み合わせた構成の装置やTMAとDMAの両方の測定ができる装置が販売されています。

その他にも、光学顕微鏡と組合せて形態や色彩の変化を同時に観察できるものや、FT-IR (フーリエ変換赤外分光分析) 、MS (質量分析) などの化学分析と組合せることで、加熱に伴って発生したガスの分析を同時に行える装置も登場しています。

熱分析測定のその他情報

熱分析測定結果の例

Fig3 熱分析装置の測定結果の例

図3. Fig3 熱分析装置の測定結果の例

図3は温度に対する物性の変化が大きい高分子材料をイメージした材料熱分析測定結果の例です。

高分子材料を加熱していくと、まずガラス転移というゴムのように柔らかくなる状態変化が起きます。次に結晶化という分子が規則正しく並ぶ構造になる状態を経て、結晶化した分子が融解をはじめていきます。さらに温度を上げていくと、酸化分解が発生して気体となります。

この過程を熱分析装置で測定すると、各熱分析装置でガラス転移、結晶化、融解、酸化分解といった現象が起こった際に急激な測定値の変化が発生します。この変化を追うことで、測定対象の特性を知ることが可能です。

図3のように発生した物理的性質によって、ある手法ではピークが現れますが、ある装置では検出できないなど熱分析の測定結果も異なります。そのため、材料特性を評価する上で、測定の目的に応じて測定法を使い分けたり、いくつかの測定手法での結果を照らし合わせたりして評価することが大切です。