落下試験とは
落下試験とは、製品や貨物が落下したときに、その衝撃に耐えられるかどうかを評価するものです。
手で操作している時や商品を持ち運ぶ時に落下する可能性が高く、これらの状況で「誤って落としても商品の機能に問題がない」ことを証明できれば、商品自体の信頼性を高められます。物を落とす状況を再現し性能を確かめる落下試験によって耐久性を評価することが大切です。
また、落下試験と間違えやすいものに「衝撃試験」があります。衝撃試験と落下試験の主な違いは、「加速度をつけて落下させること」「短時間の衝撃を評価すること」の2つです。
落下試験の使用用途
落下試験は下記のような様々なものに対して行われます。
- パソコンなどの電子機器
- 化粧品や日用品の包装容器
- 食品や乳製品の包装容器
落下試験を行うことで問題なくエンドユーザーへ製品が届けられるかを確かめることができます。特に、店頭などに並ぶ製品は、以下のように様々な段階を踏みます。
- 運送会社が工場から店頭まで運ぶ
- 店舗スタッフが箱から製品を取り出し、陳列棚に出す
- 顧客が製品を購入し、自宅に持ち帰る
そのため、あらゆる場面を想定して「配達店頭に並んでいる状態」と「梱包されている状態」の2条件で試験されることが多いです。製品や梱包の耐久性を向上させるためにも、落下試験の条件や機器を確認してから行うことが重要です。
落下試験の原理
落下試験の原理は、決められた高さや方向から製品を落とし、製品に加わる衝撃を確認します。
1. 高さの決め方
高さは「JIS規格 Z 0200」で定められており、貨物の重量とレベルの2つの指標で決定します。貨物の重量は、以下の6段階に分類されます。
- 10kg未満
- 10kg以上20kg未満
- 20kg以上30kg未満
- 30kg以上40kg未満
- 40kg以上50kg未満
- 50kg以上100kg未満
また、レベルは以下の4段階あります。
- レベル1
転送積み替え回数が多く、非常に大きな外力が加わるおそれがある場合 - レベル2
転送積み替え回数が多く、比較的大きな外力が加わるおそれがある場合 - レベル3
転送積み替え回数及び加わる外力の大きさが、通常想定される程度の場合 - レベル4
転送積み替え回数が少なく、大きな外力の加わるおそれがない場合
上記の重量とレベルの組み合わせ24通りから、落下する高さを決定します。最も高いケースは「10kg未満」かつレベル1の製品で、落下させる高さは80cmです。反対に、最も低いケースは「50kg以上100kg未満」かつレベル4の製品で、落下高さは5cmです。
2. レベルの決め方
レベルは主に運送方法によって異なり、下記が目安となります。
- レベル1:船での輸送 (輸出など)
- レベル2~3:チャーター便での輸送
- レベル3:鉄道輸送
- レベル3~4:手運び
3. 落下させる方向
落下させる方向は、1つの角と3つの稜、6つの面の計10方向です。各方向で衝撃加速度やひずみ量、変形量が基準を満たしているか調べます。
また、スマホやパソコンといった電気製品の落下試験だった場合は、製品の電子回路の電圧変動や瞬断の有無も確認します。バッグやポケットから落とした際に故障しないことを保証するためです。
落下試験の種類
落下試験は、大きく自由落下試験と片支持りょう落下試験の2種類に分けられます。
1. 自由落下試験
自由落下試験は、10方向で指定された高さから十分固い床に当たるように落とす試験です。以下の3パターンのいずれか、もしくは複数で試験を行います。
- 製品自体
- 包装貨物 (気泡緩衝材に包まれケースに入れられているなど、店頭に並んで置かれたときの状態)
- 梱包状態 (12個まとめて段ボール箱に入っているなど、輸送するときの状態)
2. 片支持りょう落下試験
機械で運ぶ大型貨物の場合は、片支持りょう落下試験が実施されます。片支持りょう落下試験とは、製品の一方を一定の高さで支持し、支えている側と反対側を持ち上げて落下させる試験です。片支持りょう落下試験の落下回数は規格で定められています。