硬さ試験とは
硬さ試験とは、物質の硬度を測定するために行う試験のことです。
硬さ試験によって求められた硬さ値から、物質のさまざまな機械的性質を容易に推測できるということから、最もよく行われる材料試験の1つであり、工業上では重要な試験の1つと言われています。
試験手法の種類が多いことや、数ある材料試験の中で比較的簡単に行えることが特徴です。試験手法によって硬さの定義や値などが異なるため、調べたい物質の特性に応じて適切な試験手法を選択することが重要とされています。
硬さ試験の使用用途
硬さ試験は、物質の硬さ値自体を求める目的ではなく、硬さ値から物質のさまざまな機械的性質 (耐力や引っ張り強さ、耐摩耗性など) を推測するために使用されることが多い試験です。
硬さ試験は、他の材料試験のように被測定物を試験用にわざわざ加工する必要がなく、手軽に短時間で測定することができます。
硬さ値と被測定物の耐力や引っ張り強さ、耐摩耗性などの機械的性質には相関性があるため、硬さ値さえ分かれば被測定物の機械的性質を容易に求めることが可能です。
一方で、不純物が多い材料など、硬さ値から求められる機械的性質では不十分な場合、引っ張り試験や衝撃試験、金属組織試験など、それぞれ個別に試験が必要です。
硬さ試験の原理
硬さ試験には多くの種類が存在しますが、測定に使用する原理は2つのみです。
1. 押込み試験法の原理
押込み試験法は、様々な形状の物体を被測定物に押込み、その凹み具合から硬さを求めます。硬さ試験のほとんどはこの押込み試験法の原理を用いて行われます。被測定物に凹みができてしまいますが、硬さを正確に測定できます。
2. 動的試験法の原理
動的試験法は、球体を被測定物にぶつけて跳ね返った高さや角度などから硬さを求めます。被測定物に傷をつけることなく硬さを測定できますが、硬さの精度が押込み試験法よりも低いです。
硬さ試験の種類
数多くの試験方法がありますが、一般的によく使われる試験は次の通りです。
1. ロックウェル硬さ試験
主に熱処理をした鉄鋼部品などの硬さ測定に使用される試験です。
数ある硬さ試験の中でも、特に測定方法が簡単で、測定者によって測定値が大きく変化しないのが特徴です。頂点の角度が120°のダイヤモンド製円錐か、鋼球を基準・試験荷重で2回続けて押込み、出来た凹みの深さの差で硬さが算出され、HRという記号で表されます。
2. ビッカース硬さ試験
幅広い金属材料やセラミックス材、一部のプラスチックの硬さの測定に使用される試験です。
ダイヤモンド製の角錐を被測定物に押込み、出来た凹みの表面積で硬さが算出され、HVという記号で表されます。凹みが小さいため、薄膜や金属表面の硬さを求めるのによく利用される試験です。さらに小さな角錐を使用する場合は、微小硬さ試験と呼ばれます。
3. ヌープ硬さ試験
ビッカース硬さ試験と同様の試験機で行われる試験です。
頂点の角度が172.5°のダイヤモンド製四角錐 (対角線長比1:7:11) を被測定物に押込み、試験荷重を出来た凹みの表面積でわることで硬さが算出され、HKという記号で表されます。凹みが浅いのが特徴で、主に薄い材料や、脆い材料の硬さ測定によく使われます。
4. ブリネル硬さ試験
主に金属材料全般の硬さ測定に使用される試験です。
大きな範囲の硬さ測定ができるのが特徴で、場所によって硬さが異なる鋳鉄のような金属の硬さ測定によく使われます。鋼球を被測定物に押込み、荷重を出来た凹みの表面積でわることで硬さが算出され、HBという記号で表されます。
5. ショア硬さ試験
主に金属材料の硬さの測定に幅広く使用される試験です。
ダイヤモンド製の球を一定の高さから被測定物に落下させ、球がどれだけ高く跳ね返ってきたか、その高さによって硬さを算出します。硬さ試験の中で唯一、物体同士の反発を利用した方法で被測定物が傷つけずに測定できます。
この特徴から金属材料の中でも傷をつけたくない完成品や仕上がり品の硬さ測定に使われます。硬さ記号はHSが使われます。
6. デュロメータ硬さ試験
主にプラスチックやゴムなどの硬さ測定に使用される試験です。
頂点の角度が35°の針状の円錐を被測定物に押込み、出来た凹みの深さから硬さを算出し、HDという記号で表されます。
7. バーコール硬さ試験
主に金属やプラスチック、FRP (繊維強化プラスチック) などの硬さ測定に使用される試験です。
頂点の角度が26°の針状の円錐を被測定物に押込み、出来た凹みの深さから硬さを算出し、HBIという記号で表されます。