硬度計

硬度計とは

硬度計とは、広く一般的には金属や樹脂、ゴム製品などの表面の硬さを評価するための試験装置です。

金属の硬さを評価する機器は「硬さ試験機」、樹脂やゴムなど比較的柔らかい物質の硬さを評価する機器は「硬度計」と呼ばれる場合が多いですが、実際には明確な定義はありません。また、水のミネラル分の量を表すための硬度計もあります。

硬度の正しい定義は、圧子と呼ばれるものを測定対象部分に押し込んだ際の製品の変化などから、硬さを評価する試験結果を数値として表したものです。硬度を示すための試験は、さまざまな方法があります。測定する材料には、金属、樹脂など多くの種類があり、用途に応じて硬さを測定する方法を選択することが重要です。

硬度計の使用用途

硬度計の代表的な用途は、以下のとおりです。

1. ロックウェル硬さ

押込み硬さの1種で、ダイヤモンドや硬球などの圧子を、定められた荷重を測定する材料にかけてくぼみを作ります。そのくぼみの深さから硬さを測定する方法する方法です。

まず、最初に基準の押し付け荷重を圧子にかけて、深さの原点を決めます。その後、決められた試験押し付け荷重に達するまで、追加で荷重を負荷して一定時間保持した後に、基準荷重に戻します。この時の最初に基準荷重をかけて原点とした深さと基準荷重に戻した深さの差により、硬さを評価します。

主に熱処理をした鉄鋼材料の硬さを評価する試験です。金属用の硬さ試験であるビッカース硬さ試験とともに広く用いられています。ただし、ビッカース硬さ試験よりも試験荷重が大きいために、試験荷重に耐えられる試験片が必要です。

2. ビッカース硬さ

押込み硬さの1種で、ダイヤモンドを圧子として測定する材料に押してつけてくぼみを作り、押し付けた荷重とくぼみの表面積から硬さを測定する方法です。くぼみの大きさは、金属顕微鏡で計測します。

主に金属の硬さを評価する試験ですが、非常に狭い範囲の硬さを評価することが可能です。熱処理を施した金属において、熱処理で硬化した深さを評価する場合にも使用されます。有効硬化層深さと言います。

3. ショア硬さ

反発硬さの1種で、銅棒の先端にダイヤモンドを取り付けた圧子を測定物のに落下させて、測定物にぶつけた後の圧子の跳ね返りの高さから測定する方法です。反発高さ試験で圧子を特定の高さから落とし、ぶつけた後の圧子の反発の大きさ (跳ね返りの高さ) から測定します。

そのため、電源が不要です。大きな建築物などの現地試験が可能となります。

硬度計の原理

硬さを評価するための方法には大きく、押込み硬さと反発硬さの2つに分けられます。

1. 押込み硬さ

圧子と呼ばれるダイヤモンドなどの硬い材料を測定する材料に押し付け、その押し付けたくぼみの深さなどによって硬さを求めます。金属の硬さを評価するブリネル硬さ、ロックウェル硬さ、ビッカース硬さなどがあります。

2. 反発硬さ

圧子を測定する材料にぶつけて、ぶつけた後の圧子の反発の大きさによって硬さを測定します。主な試験にショア硬さがあります。

硬度計のその他情報

1. 食品用硬度計

食料品の硬さを計る測定器はレオテスター、またはレオメータと呼ばれます。レオテスターの測定対象となる食品は、本編のいわゆる硬度計のカテゴリに比すると、はるかに柔らかく上記の硬度計では測定することができません。

レオテスターの測定単位も他の硬度単位と同様に規定が無いため、測定で使った荷重計、フォーステスターなどの表示単位をそのまま使うか、圧縮板を用いた場合には圧縮板の面精あたりの表示 (N/㎟) などで表示されます。しかし、他の硬度と同様にデータの相関性は薄いため、同じ測定器で測定したデータ間での相対比較で評価することになります。

2. 水の硬度計

水の硬度はいわゆる硬水、軟水などと呼ばれるものです。水の硬度は水に含まれカルシウム量の2.5倍 (Cax2.5) とマグネシウム量の4倍 (mgx4) の和の値を表していて、それらの物質を、化学反応で測定する測定器と、試薬を使って測定します。単位は mg/L (アメリカ硬度) で表記され、数値が高いものを硬水、数値が低いものを軟水と呼びます。

参考文献
https://info.shiga-irc.go.jp/public/data/1008/205.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/75/10/75_10_1183/_pdf
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/testing-machine/material/hardness.jsp
http://ms-laboratory.jp/strength/ms2/hd/hd.htm

電子タイマ

電子タイマとは

電子タイマー

電気機器を特定の時間にONし、特定の時間にOFFすることのできるタイマのことを電子タイマもしくはプログラムタイマと言い、結構昔からから使用されています。

一般的な電子タイマの場合、毎日同じ時間にONさせ、その後、同じ時間にOFFさせるような使い方をします。

製品の中にはON/OFFさせる時間の組み合わせを複数種類持っていて、例えば、月曜日は、AパターンのON/OFF時刻で制御し、火曜日はBパターンのON/OFF時刻で制御し、以降C,D,E・・・のパターンで、各曜日単位でいずれのプログラムを有効にするか選択するような使い方ができる電子タイマもあります。

電子タイマの使用用途

電子タイマは照明器具や家電機器などに使われます。

毎日同じ時刻に照明のイルミネーションを点灯させ、所定の時刻になったらOFFさせるとか、毎日同じ時刻に加湿器をONにして、例えば、決まった就寝時刻にOFFさせるといった使い方が想定されます。

以上の基本的な使い方に加え、最近では色んな付加機能が搭載された製品があります。例えば、明るさセンサーを備えていて、周囲が明るくなったらON、暗くなったらOFFといった使い方です。これは、夜間は使わないけど、昼間だけ稼働してほしいような場面において便利です。

また、屋外での利用を想定して防水型のものや、接続されている機器の使用電力量を表示してくれるタイプまであります。

価格は安いもので1,000円程度から中には1万円以上するものまであります。

電子タイマの原理

電子タイマには、商用電源AC100Vを入力するACコンセント(電源供給側)の差込口と制御対象の電気機器のACコンセント(電源取出し側)の差込口とが用意されています。

所定のON時刻になった場合、前述の電源供給側と電源取出し側を導通させることにより
接続された機器に電力を供給するというとてもシンプルな仕組みです。

許容電力が電子タイマの種類によって異なるため、この許容電力を超える電力の供給はできないため、電子タイマの許容電力を確認し、使用する機器が必要とする電力量がそれ以下であることを確認の上、使用する必要があります。

毎日、特定の時間にONし、特定の時間にOFFさせるといった単純な電子タイマの場合は、単純なロジック回路のみにより設計されることが多いです。

他方で、複数のプログラムを持ち、操作用の複数のプッシュボタンと液晶表示を持つような高機能型の電子タイマの場合は、ワンチップマイコンを搭載した設計がなされていることが多いです。

卓上旋盤

卓上旋盤とは

卓上旋盤

卓上旋盤とは、金属などの材料を円筒形に削るための機械のことです。

旋盤は、加工したい材料を回転させながら刃物を当てることで削り取る加工機械です。卓上旋盤は大型の業務用旋盤とは異なり、小型でテーブルトップ使用が可能な旋盤です。

卓上旋盤はベッド、主軸台、刃物台、心押台から成り立っています。主軸台では材料を固定し、一定の速度で回転させます。刃物台には金属の切削用の刃物を固定します。心押台は主軸台と対向に設置されており、先端部を変更すればドリル穴加工も可能です。

卓上旋盤はDIYや趣味の範囲で使用されることが多く、小型の加工や修理などに適しています。業務用旋盤に比べて手軽に使用できるため、金属加工に興味がある場合や自分で作品を作る場合には最適です。安価な機種もありますが、卓上旋盤は基本的には高価な機械のため、購入前には調査が必要です。また、使用時には必ず安全対策を講じることが重要でしょう。

卓上旋盤の使用用途

卓上旋盤は金属やプラスチックなどの硬い材料を円筒形状に削ることが得意で、特に穴あけやネジ加工などに役立ちます。

様々なサイズや種類が存在するため、個人でも手軽に取り扱うことが可能です。例えば、DIY愛好家が自作するパーツや工具を加工する場面や、学校の工作教育で使用されることもあります。さらに、工場や製造現場でも卓上旋盤は重要な役割を担っています。

例えば、自動車や航空機、建設機械などの製造現場では、部品や部材の加工に卓上旋盤が使用されます。また、小規模な製造現場でも、卓上旋盤を用いて部品や製品の製造を行うこともあり、用途は多種多様です。

小型・手軽な取り扱いと、円筒形状の加工に優れた能力から、広範囲にわたる用途で使用される機械です。技術的なスキルが必要な場面でも、卓上旋盤を用いれば、より高い精度で加工を行えます。

卓上旋盤の原理

卓上旋盤の原理は、回転する材料に対して切削加工が施すことで成り立ちます。卓上旋盤の構造は、縦旋盤と横旋盤に分類され、主軸の方向によって異なります。

1. 縦旋盤

縦旋盤では底面に主軸があり、上面に刃物台が設置されています。この構造により、垂直方向に重量のある加工が行いやすく、重力や遠心力が均等にかかるため、加工の精度が向上します。ただし、あまり長さのある材料の加工が難しく、小さなものを加工する場合には手間がかかるので注意が必要です。

2. 横旋盤

横旋盤では、水平方向に主軸が配置され、加工が容易に行えます。特に、縦旋盤では難しかった長い材料の加工が可能になり、切削時の粉塵の排出性にも優れています。ただし、縦旋盤と比べると精度の高い加工がしにくいという点が特徴です。

卓上旋盤の使い方

小型でCNC制御システムは備わっていないため、大量生産には向いていません。したがって特注の治具や試作工具を自作するような1点ものかつ小型な部品加工に適しており、生産性は問わないことが多いため、切削速度や回転速度を落とし気味にして加工するほうが基本的には安全です。

刃物台にバイト (刃) を取り付け、加工物の中央付近にくるようにバイトに敷板を挟んで高さを揃えること、チャックに加工物を固定することは汎用旋盤と基本的には同じですが、汎用旋盤よりも小さい分、荒削りで一度にたくさんの切り込みを入れると主軸の回転が止まってしまうため、切り込み量は少なめで加工する必要があります。

また、卓上旋盤の種類によっては木工用も存在し、安価で且つ100V電源で作動するため趣味の範囲でのホビーやDIYなどで手軽に使いやすいモデルもあるため、卓上旋盤は事業用のみならず、家庭用としても使える最も身近な旋盤といえます。

卓上旋盤のその他の情報

卓上旋盤でできること

小型ながらも汎用旋盤と同じく、基本的な円筒加工物の外径加工、内側の形状を加工する中ぐり加工、芯押し台にドリルやリーマを取り付けて穴あけ加工ねじ切り加工、材料を切断する突っ切り加工などをすることが可能です。

木工用卓上旋盤を使えば木製の食器を作ることができ、金属加工ではダイスホルダーや小径シャフトなどを制作することができます。本体の重量も軽く、スペースも取らず家庭用の電源から電源確保ができることから、小さい部品ならば様々な用途の加工が手軽にできるのが卓上旋盤の魅力です。

また、鋼や木工のみならず、プラスチックやアルミ、真鍮のような材料も加工ができるため、プラモデルパーツの自作や工芸など、工業だけでなく趣味にも使うことができます。

反対に大径の加工物、工具鋼や焼き入れ鋼のような高硬度鋼の加工は機械の剛性上出来ません。CNC制御も備わっていないため大量生産も不可能であるため、本格的な部品製造には向きません。

参考文献
https://www.nakamura-tome.co.jp/2020/09/24/article_00001/
https://www.senban.jp/nyuumon/20.html
https://www.toyoas.jp/products/category/senban/detail.html?p=54
https://dorekau.com/22334#i-7
https://www.ivyhc.com/?p=3795
https://jisakuyaro.com/Metalwork/category44/entry193.html

卓上フライス盤

卓上フライス盤とは

卓上フライス盤とは、フライス盤を小型化し、テーブルトップ用にした工作機械のことです。

通常のフライス盤と同様に、回転する主軸に取り付けられた切削工具であるフライスを使用して、材料を切削することが可能です。

一般的なフライス盤は大型かつ高価なため、業務用に使用されることが多いですが、卓上フライス盤を使用すれば、家庭でも手軽に工作に取り組めます。卓上フライス盤には、主軸、コラム、サドルが備え付けられており、主軸の方向によって縦型と横型に分類されています。

卓上フライス盤を使用することで、金属やプラスチックなどの材料を自在に切削することが可能です。また、フライス盤は切削加工だけでなく、穴あけや溝切りなどの加工にも適しているため、DIYや趣味として工作を楽しむ方にとって、非常に有用な工作機械といえます。

卓上フライス盤の使用用途

卓上フライス盤は、フライスによって材料を加工できるため、主に金属材料の切削加工に用いられます。切削加工という特性から、金属材料に平面や曲面、溝などを作ることが可能です。

加工された材料は精密な寸法や形状を持ち、高い精度が求められる分野に利用されます。自動車や航空機の部品、医療機器や光学機器などに使われる精密部品の製造に活用されます。

また、家庭やオフィスでも使用でき、DIYや趣味としても活用されます。例えば自作の工具やオブジェなどを作ることが可能です。ただし、角のある材料ではフライスに曲率があるため、全辺に直角を出すことが難しくなります。その場合、角に曲率を残したままにするか、ニガシと呼ばれるコーナーを少々広げる加工法を施すことが必要です。

卓上フライス盤の原理

卓上フライス盤は加工対象を固定して工具を回転させ、刃先が対象物に切削を加えることで、材料を削り取ります。この方法により、高精度な加工が可能です。

フライス盤は、ひざ形とベッド形という2つの構造があります。ひざ形は、テーブルを上下させることで加工するため、形状が複雑な対象物でも加工が容易です。一方、ベッド形は主軸を上下させることで加工します。この方法により、強力な切削加工が可能です。

また、フライス盤には立形と横形の2種類があります。現在では立形が主流であり、エンドミルやフェイスミルなどの工具により、側面の刃で切削する方法が一般的です。また、フェイスミルによる平面状の切削も利用されます。これに対して、横形は主軸が水平方向に配置されており、縦型のフライス盤よりも大きな材料を加工できるという利点があります。

卓上フライス盤は、小型のフライス盤でありながら高精度な加工が可能です。そのため、機械加工の分野において、一定の需要があります。

卓上フライス盤の種類

卓上フライス盤は、主にベンチトップフライス盤、ショップフライス盤、CNCフライス盤の3週類が存在します。それぞれ特徴や用途が異なるため、必要な用途に合わせて選ぶことが大切です。また、選択する際には、加工範囲や加工能力、精度、価格、設置スペースなどを考慮する必要があります。

1. ベンチトップフライス盤

ベンチトップフライス盤は、小型で軽量なフライス盤で、卓上に置くことが可能です。家庭や小規模工場でのDIYや小規模加工に向いており、手軽に利用できるため、初心者にも人気があります。ただし、加工能力や精度は限られています。

2. ショップフライス盤

ショップフライス盤は、大型で重量感のあるフライス盤で、産業用途に向いています。様々な材料を加工でき、高い精度で加工が可能です。また、多くの場合、自動送り機能を備えているため、連続的な加工が可能です。ただし、価格も高く、設置スペースも必要となります。

3. CNCフライス盤

CNCフライス盤は、コンピュータで制御される自動加工機で、高度な自動化技術を備えています。加工内容を事前にプログラムで設定し、自動で加工を行うこと可能です。高精度で複雑な形状の加工が可能で、大量生産にも向いています。ただし、価格が高いため、小規模工場や個人での利用は限られます。

参考文献
https://www.kousakukikai.tech/milling/
https://www.senban.jp/nyuumon/10.html
https://www.makino.co.jp/ja-jp/machine-technology/machines/other

表面強化剤

表面強化剤とは

表面強化剤とは、表面を強化するために用いられるコーティング剤のことです。

一般にコンクリートの床面に塗布して使います。例えば、大型のトラックやフォークリフトが頻繁に使用される工場や倉庫の床面は、トラックやフォークリフトのタイヤが繰り返し転がることによって、激しく摩耗してしまいます。このような状況において、床面を保護することが役割です。

私たちの日常生活では、大型の商業施設の立体駐車場の床面に使用されていることがあります。車で走行するとタイヤと床面が、キュルキュルと音が鳴るところがありますが、このような床面に表面強化剤が施工されています。

表面強化剤の使用用途

表面強化剤は、主に工場とそれに付随する倉庫や、物流センターなどの倉庫などの床面に施工されています。このような場所ではフォークリフトなど、産業機器の走行に伴って床面が傷ついて荒れることを、表面強化剤が防いでいます。

この他、工場の機械室などの床面にも使用されています。表面強化剤によって床面のコンクリートをコーティングすると、コンクリートの劣化による粉塵などの発生を防ぐ、防塵対応の床面にすることが可能です。

都市においては、大型商業施設の立体駐車場、地下駐車場に施工されています。車で通過する際にキュルキュルと音がなるのは、表面強化剤が施工されているためです。

表面強化剤の原理

通常コンクリートの表層は、多孔性があり、小さな穴や溝が表面にたくさんある状態です。表面強化剤をコンクリートの表面に塗布すると、コンクリートの表層の細孔部分に表面強化剤の強化剤が浸透していき、水分は外側に蒸発していきながら、コンクリートの穴を塞いでいきます。

時間が経過するとともに、水分などの不純物が抜け切った状態になると表面強化剤が硬化し、コンクリートの多孔が塞がれた状態になります。このように、表面強化剤がコンクリート内部のカルシウムとも反応することが、コンクリート表面を保護するメカニズムです。

表面強化剤はコンクリート表面に強く接合されるため、剥離することなく存在し続けるのも特徴の1つです。コンクリートとの反応は2、3年の経年とともに続き、コンクリートと一体化していきます。結果として、より強固に表面が強化され、半永久的な効果を期待できます。

表面強化剤の特徴

表面強化剤の特徴は、主に以下の3つがあります。

1. 耐久性向上

表面強化剤は、コンクリート施工された床面を保護するために施工されます。コンクリートに対して表面強化剤による表面処理を行うことにより、床面の耐摩耗性を向上させ、強化することが可能です。

耐摩耗性はコンクリートに比べて、2倍から3倍程度に向上します。表面強化剤は、コンクリートの表面の層を強化し、摩耗に対する耐性を向上させて劣化や摩耗によって表面が荒れることを防ぎます。

摩耗したコンクリートが粉塵になることを防ぐため、防塵効果も得ることが可能です。

2. 防汚効果

表面強化剤を施工することは、床面の汚れ防止をすることによって、メンテナンスコストの削減などが期待できます。表面強化剤は一度の使用で半永久的に効果が持続し、経年とともに強度が高まっていくことも特徴です。

表面強化剤を塗布することによって表面が均一になるので、凹み部分に汚れが溜まりにくくなります。表面に付着した汚れも、水洗いするだけの清掃で容易に除去しやすくなります。

3. すべり止め効果

表面強化剤は、床面のすべり止め効果を高める役割を果たします。製品によってはすべり抵抗係数が乾燥面で0.7以上、水+砂面においても0.6程度を発揮します。

一般的に床面の場合にははすべり抵抗係数が0.4以上ある場合に、すべりにくい床であるとされています。しかし、表面強化剤を塗布すれば、十分にすべりにくい床面にすることが可能です。

参考文献
https://www.abc-t.co.jp/products/detail/9065.html
http://www.nihonkasei.co.jp/
https://www.sk-kaken.co.jp/product/floor-coating-materials/sk-barriercoat/

血球計算盤

血球計算盤とは

血球計算盤の概要

図1. 血球計算盤の概要

血球計算盤は、細胞数を数える際に用いる道具です。ヘモサイトメーターとも呼ばれています。細胞融合技術や細胞培養操作などの作業の前には細胞を数えることが必要なので、この際に使用されます。

赤血球や白血球などの血球やリンパ球、その他培養細胞など、計測したい対象によって、細胞の大きさが異なります。このため、血球計算盤の目盛りの刻み幅も対象によって異なったものを用います。

血球計算盤の使用用途

血球計算盤は、細胞に関連する技術の研究や開発などで使用されます。細胞数を算定することにより、細胞密度や、生存率などの各種必要な数値を計算することが可能です。トランスフェクションや細胞融合技術、凍結保存など、細胞培養操作などの際に、事前準備として必ず行われます。

血球計算盤の原理

血球計算盤には、刻み幅が異なる目盛りが等間隔で並んでおり、各幅の目盛りを使うことで数値を計算できるようになっています。一辺1mmの枠内に100個程度の細胞が存在するように懸濁液の濃度を調節し、16個の正方形からなる枠内の生細胞を数えます。

血球計算盤とカバーガラスの使い方

細胞の見え方のイメージ

図2. 細胞の見え方のイメージ

1. 血球計算盤

まず、観察したい細胞を集めて培地に再懸濁し、そこから採取した細胞懸濁液を色素で着色して、生きている細胞と死んでいる細胞を分類します。死んだ細胞は着色されますが、生きている細胞は着色されないので、色の有無で細胞の生死を見分けます。

懸濁液の濃度は濃すぎると計測しづらく、薄すぎると正しく計測することができないため、枠内に100個程度の細胞が存在するよう、適切な濃度に調節することが重要です。最初は、正方形が16個集まった一番大きい1mm四方の枠内に収まっている生細胞の数をカウントしますが、細胞数が多すぎる場合は細胞の大きさに合わせて、使用する目盛りを小さくしていきます。

この操作を通して生細胞・死細胞の数を計測することにより、細胞生存率の計算が可能です。

2. カバーガラス

血球計算盤は、カバーガラスを密着させて使用します。カバーガラスは使用前にエタノールで洗浄し、風乾させておきます。使用直前に軽く水で湿らせ、血球計算盤の目盛面に載せます。ガラスが割れないよう注意しながら、指ですり合わせるように軽く力を入れ、血球計算盤に密着させます。

この時、しっかりと密着できているかを確認するため、ニュートンリングの有無を確認します。ニュートンリングとは、表面が同率曲線のガラスを重ね合わせた時に生じる虹色の干渉縞です。血球計算盤とカバーガラスの間に埃などの汚れが入り込んでしまっている場合には見えません。

ニュートンリングが確認できない場合には、血球計算盤の目盛面とカバーガラスの密着面を、エタノールを適量含ませたガーゼ等で清拭し、再度同様の手順で確認します。汚れが入った状態では計算室の深さが変わってしまい、正確なカウントはできないため注意が必要です。

ディスポーザブル製品の中には、カバーガラス不要の製品もあります。そのような場合にはニュートンリング作成の手間を省くことが可能です。

血球計算盤の種類

様々な種類の目盛り

図3. 様々な種類の目盛り

1. ビルケルチュルク型の血球計算盤

血球計算盤にはいくつか種類があり、目盛りの刻まれ方と計算室の深さがそれぞれ異なります。最も一般的に使用されているのは、ビルケルチュルク(Burker-Turk)型の血球計算盤です。

計算室を2室もった複式の計算盤で、赤血球や白血球だけでなく、精子やバクテリア、酵母、プランクトン、培養細胞など、幅広い細胞のカウントに対応することができます。ビルケルチュルク型の血球計算盤では、各計算室の容積は0.9μL、目盛り線は縦横とも一辺が3mmとなるように設計されています。

この一辺がさらに三等分されていて、1mm×1mmの9つのブロックに分けられています。このうち、真ん中のブロックは主に赤血球系の細胞など、絶対数の多い細胞のカウントに使用され、一方、四隅のブロックは白血球系の細胞や培養細胞など、比較的絶対数の少ない細胞のカウントに使用されます。

2. その他の血球計算盤

血球計算盤には他に、計算室が1室で単式の計算盤であるトーマ型や、ビルケルチュルク型と同様の複式の計算盤で、目盛線がよりシンプルな改良ノイバウエル型などがあります。

参考文献
https://www.abcam.co.jp/protocols/counting-cells-using-a-haemocytometer
https://www.as-1.co.jp/academy/22/22-1.html
http://www.ncgmlipidsp.jp/protocol/4/12.html
http://minatomedical.com/01-ka111_m.html
https://www.abcam.co.jp/protocols/counting-cells-using-a-haemocytometer-2

MEMSマイク

MEMSマイクとは

MEMSマイクとは、音声変換の箇所をMEMSコンポーネントで構成したマイクのことです。

プリント回路の基板上にMEMS素子が設置され、カバーされたマイク構造を有しています。MEMSとは「Micro Electronics Mechanical System」の頭文字を取った略語で、日本語訳は「微小電気機械システム」です。

マイクへの適用の場合には、薄膜微細加工技術により、Si基板上の振動板を作りこむことで、MEMSは音波を電気的信号に変換するトランスデューサー (変換器) の役割を担っています。MEMS素子では、同一基板上にICも集積可能なので、基板上に微小な機械部品と電子回路を集積させている事例が多いです。

MEMSマイクの使用用途

MEMSマイクの代表的な使用用途は、スマートフォン向けのマイクです。スマートフォンに限らず、様々なオーディオやアプリケーションに使用されています。また、バイオ、医療、自動車を含む機械などにも応用されており、近年注目を浴びています。

昨今のスマートフォンなどの電子機器の急速な普及に伴い、マイクロフォンの技術も発展してきました。人が多い場所でノイズを消して、通話するためには電子機器に複数のマイクロフォンを搭載する必要があります。

そこで、従来のECM (エレクトレット・コンデンサ・マイクロフォン) に代わる小型・高性能マイクとして、MEMSマイクが注目されている状況です。

MEMSマイクの原理

MEMSマイクの原理は、音波でMEMS素子である振動板が振動した際に、その容量値の変化を検出し電気信号に変換して出力する動作にあります。MEMS素子は非常に小型であり、ICとの集積も構造面で比較的容易なため、この出力された信号をIC側で増幅しアナログ信号の電圧・電流値として取り扱う場合や、もしくはデジタル信号化 (ADC) 処理の併用により、高効率なパルス幅変調 (PWM) 処理を行う場合が多いです。

MEMSマイク自体は基板にカバーで覆われた構造をしており、そのカバーには、マイクロフォン内部に音声が入り、MEMS素子で音声の検出可能なように、小さな穴が1つ開いています。MEMSマイクには、従来のマイクであるECMに比べ、小型である、耐熱性に優れている、リフローはんだ付けが可能、高音質、信頼性の向上、バッテリーの長寿命、コストダウンなどの数多くの利点があります。

特にMEMSマイクが適する場合は、電気的ノイズが多い環境のアプリケーションです。振動が多い環境下では、MEMSマイクの出力インピーダンスが比較的低く、また集積ICでのデジタル信号処理の併用でノイズ除去性に優れるために、この機械的な振動による有害ノイズレベルを低減することが可能です。

MEMSマイクのその他情報

1. ECMとMEMSマイクの比較

MEMSマイクと比較してECMの場合は、小型化しづらい、リフローが困難など、高密度な電子機器搭載時に使いにくい面がある一方で、従来から用いられてきたマイクであり、種類が豊富で過去の設計財産を活用しやすい、電源電圧範囲などの仕様が非常に多岐にわたる、音の方向性に優れた製品が存在する、といった現行のMEMSマイクにはまだない優れた面もあります。

MEMSマイクよりもECMの方がアプリケーション面で適する場合もあるので、状況に応じて適切な方を選ぶことが大切です。

2. AIスピーカーへの適用事例

2022年度の現在、多くの電子機器、特にスマートフォンではMEMSマイクが多数搭載されている状況です。今まではユーザーがMEMSマイクの性能のよさを体験することは少なかったのが現実であり、ECMからMEMSマイクへの置き換えが、市場において進んでいる実態は多くのユーザーには、あまり認知されていませんでした。

高性能なマイクが求められる近年話題のAIスピーカーはユーザーの体験の質に直接つながるため、MEMSマイクの恩恵を受けるはずです。実際にMEMSマイクの中のICにAIチップを搭載しクラウドフリーで数10種類のキーワードをAIで検出可能なMEMSマイクも、あるメーカーで研究開発されています。

近将来、家庭や自動車内で普通に存在するAIスピーカーがMEMSマイクの高性能な技術によって、その動作や音質が技術的に支えられていることを実感する日がやってくるのもそう遠い未来ではないでしょう。

参考文献
https://jp.cuidevices.com/blog/comparing-mems-and-electret-condenser-microphones
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/hatena/069

粉体混合機

粉体混合機とは

粉体混合機

粉体混合機とは、食品や医薬品など多くの産業で欠かせない、粉体を均一に混合するための装置のことです。

形状や原理によって種類が異なります。それぞれの特性を理解し、扱う粉体の種類や比重、重量などを考慮して最適な混合機を選択することが重要です。例えば、粉体の粒度が大きい場合や粘着性が高い場合は、強力な撹拌が可能な混合機が望ましいです。

また、使用目的に応じて、連続式や一括式の混合機の選定が必要です。連続式は生産効率が高く、大量の粉体を扱えますが、一括式は混合精度が高く、小ロットの粉体混合に適しています。

粉体混合機の選択は、製品の品質や効率に大きな影響を与えるため、慎重な検討が必要です。適切な混合機を選択することで、製品の品質向上やコスト削減に繋がります。粉体混合機の活用により、さまざまな産業において効率的な粉体処理が実現されています。

粉体混合機の使用用途

粉体混合機は、食品工場や薬品工場をはじめとする多くの場所で使用されています。

1. 食品分野

粉体混合機は粉末状の食品の製造において、重要な役割を果たしています。粉末かつおぶしやふりかけ、あられ、ダシの素などの製品は、各成分が均一に混ざっていることが品質に直結します。

粉体混合機は、これらの製品の製造過程で、成分の均一性を確保するために有用です。

2. 医薬品分野

投与物の主剤の均一性が極めて重要です。ヒトや動物の体内に投与されるため、安全性や効果が求められます。粉体混合機は、医薬品製造においてこの均一性を実現するために使用され、製品の品質向上に寄与しています。

3. 化学分野

樹脂粉末、火薬、ウラン粉末、農薬、粉末塗料などの製造過程で、粉体混合機が活用されています。これらの製品でも、成分の均一性が品質や安全性に関わるため、粉体混合機の使用が不可欠です。

粉体混合機の原理

粉体混合機は、粉体を効率よく均一に混合するための装置で、その原理は大きく2つに分類されます。それぞれの原理に基づいて機能し、異なる特性や利点を持っています。

適切な混合機を選択することで、製品の品質向上やコスト削減に繋がり、多様な産業において効率的な粉体処理が実現されています。

1. 容器回転型

容器を回転させて、中の粉体を混合します。容器内のスペースを有効に活用できるため、粉全体が均一に混ざります。

また、羽根を使わないので、粉体をできる限り壊さずに混合することが可能です。容器回転型の代表的なものには、W型混合機やV字型混合機、ドラム型混合機などがあります。

2. 撹拌型

容器内に羽根を設置し、羽根を回転させて粉体を混合します。撹拌型の混合機は、広い設置スペースが不要で安全性が高いです。撹拌型の代表的なものとして、リボン混合機や円錐スクリュー型混合機などが挙げられます。

粉体混合機のその他情報

粉体混合機併用する機械

粉体混合機は、粉体の均一な混合を実現するために使用される機械ですが、その効率と効果をさらに向上させるために、粉砕機、シーブ機 (ふるい機) 、充填機などの機械と併用されることがあります。

1. 粉砕機
粉体混合機の前工程として、粉砕機が使用されることがあります。粉砕機は、原料を所定の粒度まで粉砕する機械で、混合に適した粒度の粉体を得ることが可能です。混合機での混合効果が向上し、製品の品質が一定に保たれるようになります。

2. シーブ機 (ふるい機)
粉体混合機の後工程として、シーブ機 (ふるい機) が使用されることがあります。シーブ機は、粉体を振動させることで、粒度の異なる粉体を選別する機械です。

混合後の粉体をシーブ機で選別することで、均一な粒度の製品が得られ、製品品質の向上が期待できます。

3. 充填機
製品化の最終工程として、充填機が使用されます。充填機は、混合された粉体を容器や袋に充填する機械で、一定量の製品を正確に充填することが可能です。充填機を使用することで、製品の量を一定に保ち、品質管理が容易になります。

参考文献
https://www.nitto-kinzoku.jp/archives/technic/powder_mix/
http://www.aichidenki.jp/rm/applications/index.html

研磨機

研磨機とは

研磨機

研磨機とは、主に表面の仕上げ加工などの研磨加工で使用される加工機のことです。

さまざまな研磨方法が存在し、適切な砥石や研磨剤などが必要となります。研磨方法によっては、高速回転する砥石に加工物を近づけて作業することもあるため、作業時の火花によるやけどや、加工機への巻き込みなどに注意しながらの作業が必要です。

研磨機の使用用途

主に部品表面の仕上げに使用することが多いですが、部品のバリ取りを目的とした粗い研磨加工を行うこともあり、各用途に応じて最適な加工方法および加工機が存在します。また、表面の仕上げだけではなく、円筒状の部品の内側を仕上げる際などにも使用されます。研磨により面が滑らかになることで、摺動性の向上効果を得られるからです。

シリンダやレールスライダーなど多くの摺動動作を行う部品にも研磨加工が施されています。最近では、卓上サイズの研磨機も多く存在するため、工場以外でも、自宅でのシルバーアクセサリーの研磨やプラモデルのバリ取りなどに使用される機会が増えてきています。

研磨機の原理

研磨に使用する砥石や研磨剤などに含まれる砥粒が小さな刃物のような効果を発揮することで、少しずつ加工物を削っていきます。最も代表的なものは、高速回転している砥石に加工物を当てて磨く「砥石研磨」です。

非常にシンプルな研磨方式ですが、加工物を押し当てる力や角度の小さな差によっても仕上がりが異なるため、その作業には熟練を要します。また、加工を進めるにつれて、砥石自体も損耗して削れていくため、砥石の損耗量を見ながら適切なタイミングで新しい砥石に交換しながら運用する必要があります。原理的には、紙やすりなどで行うヤスリ作業も同様ですが、より効率的な研磨が可能です。

同様の手順で研磨を行う「バフ研磨」が存在しますが、こちらは砥石の代わりに、綿やフェルトなどの軟らかい素材でできた「バフ」を使用して研磨を行います。砥石研磨よりも表面を滑らかにする効果が高く、鏡面仕上げなどに使用されます。一方で、研磨に時間がかかるため、加工物の厚みを減らすような用途を伴う場合には向いていません。

研磨加工機では高速回転する物体に対して加工物を近づけて作業することから、作業時には怪我をしないように注意が必要です。特に、手袋をしての研磨を行う際には、ほつれた糸が高速回転部に巻き込まれてしまう可能性があります。小型の研磨機でも、巻き込まれた際の力は非常に大きいため、大怪我に繋がる可能性があり危険です。また、加工物の素材によっては、砥石との接触時に火花が発生することもあるため、やけどへの注意も必要です。

研磨機のその他情報

1. 電解研磨機によるステンレス表面処理

ステンレスは表面に大気中の酸素と結合して形成した数ナノメートル厚さの不働態被膜により、防錆・防食性と耐熱性を持つ金属材料です。しかし、機械加工や表面仕上げ、搬送や保管などにより適正な表面状態が保てていないと、不働態被膜が均一に形成されず優れた特性が出ずに不良品などの原因になります。

電解研磨はステンレスの表面の不純物や粗さを綺麗に除去し、高い特性を有する不働態被膜を形成することを目的とした処理です。ステンレスの電解研磨機では、電解研磨溶液中で被研磨物であるステンレスを陽極として直流電流を流すことで、表面をミクロン単位で電気化学的に溶解し綺麗にします。

粗い表面の凸部が優先的に溶解されるので表面の粗さが小さくなり、研磨や機械加工によって生じたバリの覆いかぶさりや、その下の空隙など、通常の研磨では除去しにくい欠陥も滑らかに仕上げることが可能です。また、処理方法がシンプルで、電解液槽のサイズ次第で大量の研磨も可能なため、生産性にも優れています。

不働態被膜は防食性や耐熱性能に優れていますが、厚さは数ナノメートルと薄く弱いため、ステンレス表面が滑らかであるほど均一で密着性の高い被膜になります。電解研磨は、ステンレスの特性を最大限に引き出すための大切な工程です。

2. 電解複合研磨機

電解研磨よりさらに平滑な表面が必要な場合は、研磨材による物理的な研磨を複合した電解複合研磨が有効です。回転研磨ディスクを陰極とし、被研磨物の表面に電解液と電流を流しながら移動研磨します。

凸部の不働態被膜が機械的に除去され、そこから金属が溶出することで、電解研磨と機械研磨をそれぞれ単独で行った場合よりも滑らかに研磨されます。ナノメートルオーダーの粗さにできるのが特徴です。

平面だけでなくパイプのような曲面を研磨できるため、半導体製造関連部品や配管、バルブ類、医薬機器などの精密さと耐久性が要求されるものに広く利用されています。

参考文献
https://www.agency-assist.co.jp/column/717/
https://www.kinzokuh.co.jp/technology/technology_ep/
https://www.nakano-acl.co.jp/fukugo/

プリプレグ

プリプレグとは

プリプレグ

プリプレグとは、繊維をシート状にしたものに樹脂を含浸させて作る複合材料で、繊維強化プラスチックの成形原料の1種です。

含浸させる樹脂はエポキシなど、加熱により硬化する熱硬化性樹脂や、加熱により軟化し、冷却すると固まる熱可塑性樹脂が使用されます。繊維は、炭素繊維やガラス繊維がよく用いられます。

繊維や含浸樹脂の組み合わせにより、目的に合わせた材料を作ることが可能です。

プリプレグの使用用途

プリプレグに使用される繊維としては、炭素繊維やガラス繊維の他にもアラミド繊維なども用いられます。それぞれの用途は以下のとおりです。

1. 炭素繊維プリプレグ

炭素繊維を使ったプリプレグはカーボンプリプレグと呼ばれ、炭素繊維強化プラスチック (CFRP) 用の成形材料として使用されます。CFRPの特徴は軽量性、高強度、高剛性などが挙げられます。

また、導電性の炭素繊維を用いているため電子伝導性があります。主に航空機分野で用いられることが多いですが、他にも自動車やゴルフクラブのシャフト、テニスラケットのフレームなど、用途は幅広いです。

2. ガラス繊維プリプレグ

ガラス繊維プリプレグは、ガラス繊維強化プラスチック (GFRP) の成形材料として使用されます。GFRPの特徴は、金属材料よりも大きな比強度を有し、軽く、絶縁性のガラス繊維を用いているため電子伝導性はありません。

この特徴を生かして、アンテナカバー、プリント基板などで使用されています。

3. アラミド繊維強化プラスチック

アラミド繊維は非常に軽くて切れにくく、耐衝撃性や強度が高いです。一方で、炭素繊維やガラス繊維に比べると折れにくいため、自由な形状の成形が難しく、後加工が困難という欠点があります。耐衝撃性や強度が高いため、航空機、宇宙用各種部品、圧力容器などに使用されています。

プリプレグの原理

プリプレグはCFRPやGFRPなどの成形材料として使用されやすい形状、物性をもっています。予め決まった量比で樹脂と繊維が複合化してシートになっているため、他のCFRP製造方法と比較して、性能のバラつきの小さい成形品を作ることが可能です。

プリプレグは繊維を1方向に並べた状態で樹脂を含浸させています。これはUD材と呼ばれ、繊維方向の強度は強いですが、繊維の垂直方向については非常に弱いため、繊維強化プラスチック (FRP) に成形する際には、繊維の方向を変えながら積層していくことが大切です。

遷移の方向を変えることで、どの方向に対しても高強度のFRPが成形されます。織物に樹脂を含浸させたプリプレグもあり、これはファブリック材と呼ばれています。含浸する樹脂については使用用途やCFRPとGFRPの違いにより異なりますが、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の他に、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂も使用される場合が多いです。

特に熱硬化性樹脂を用いたプリプレグは、FRPに成形加工されるまでは未硬化の状態であるため、表面はタックがあり、保管時に硬化が進んでしまわないように密封して冷凍保存する必要があります。

プリプレグのその他情報

プリプレグの製造方法

プリプレグは、含浸させる樹脂が熱硬化性か熱可塑性かによって製造方法が異なります。

1. 熱硬化性樹脂
熱硬化前の樹脂フィルムを成形し、これを1軸方向にならべた繊維または繊維の織物と合わせてヒートプレスします。フィルムの厚さにより繊維の含有率をコントロールでき、繊維含有率のムラも生じにくいという特徴があります。

2. 熱可塑性樹脂
樹脂自体の粘度が高いため、溶媒に樹脂を溶解させて含侵させ溶媒を乾燥する方法や、樹脂を細かく粉砕して繊維や織物に振り掛けてヒートプレスする方法があります。

参考文献
https://www.torayca.com/lineup/product/pro_003.html
https://www.kurimoto.co.jp/composite/cfrp/
https://tip-composite.com/products/gfrp/
https://www.cybernet.co.jp/ansys/case/analysis/333.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sosei/53/613/53_613_145/_pdf
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00434255?mftokyo2017web=0705