トータルステーションとは
トータルステーションとは、距離と角度を一度に計測可能な測量機器のことです。
測量及び土木工学の分野において使用され、高度で多機能な計測機器です。トータルステーションは、さまざまな計測およびデータの処理機能を1つのデバイスに組み合わせ、土地測量士、建設現場などにとって、必要不可欠なツールとなっています。
トータルステーションは、対象物やポイントまでの距離と角度を測定します。また、トータルステーションの設置位置の座標 (経度・緯度・標高) を設定しておくと、対象やポイントの座標を自動で計算および記録することが可能です。
トータルステーションの使用用途
トータルステーションは、土地測量、建設などのさまざまな分野で使用されています。
1. 土地測量
土地測量は最も広く使用される分野です。距離、角度、標高を測定します。これにより、正確な地形図、境界測量、土地区画の作図に使用されます。
2. 建設
トータルステーションは、建設プロジェクトで重要な役割を果たします。現場のレイアウト、基礎の設置、設計図との誤差確認です。建物が設計図通りに建設できるよう活用されます。
3. 鉱業
掘削現場においては、正確な高山マップの作製、掘削量の測定、坑内および傾斜の安定性の監視に活用されます。また、大規模な鉱山運用では、測量制御ポイントの設置などに使用されます。
4. 考古学
考古学においては、発掘物や発掘現場の正確な位置を記録するのにも使用可能です。考古学的な地図や文献の作成につながります。
5. 環境のモニタリング
環境や地形の変化などのモニタリングに活用されます。
トータルステーションの原理
トータルステーションは、電子距離測定技術と角度測定、および三角関数を組み合わせて対象までのポイントを測量します。トータルステーションを用いた測定では、幾何学と三角関数の原理に基づいています。
1. 角度の測定
トータルステーションは、まず水平角と鉛直角を測定します。通常、以下の2つの要素を使用します。
- 水平角
トータルステーション自身と対象のポイントの水平角度を測定します。通常は、水平円盤やエンコーダを用いた検知です。 - 鉛直角
トータルステーションの光学軸 (視線) と対象ポイントへの視線の間の鉛直角も測定します。硬度を計算するためのパラメータです。
2. 距離の測定
図1. トータルステーションによる距離の測定
トータルステーションは、電子距離測定技術を使用して、対象ポイントまでの距離 (斜距離) を測定します。代表的に使用されるのは、赤外線やレーザーなどによる光パルスです。
光パルスが対象に到達して、戻ってくるまでの時間を測定します。戻ってくるまでの時間を光の速度で割ることで、トータルステーションから対象ポイントまでの距離 (斜距離) が導出可能です。
3. 三角関数を使用した計算
図2. トータルステーションと三角関数
トータルステーションは水平角、鉛直角、斜距離を使用して、対象ポイントの座標が計算可能です。この計算には、基本的な三角法が必要なります。
水平距離は、水平角を斜距離で割ることで求められます。高低差は、鉛直角−90度を斜距離で割ることで求められます。
4. データの記録
計算された座標 (緯度、経度、標高) はトータルステーションのメモリに記録されます。一部のトータルステーションでは、座標データをパソコンなどの外部デバイスへリアルタイムで転送することも可能です。
トータルステーションのその他情報
トータルステーションのICT活用
図3. トータルステーションの活用例
近年、建設分野において、ICT (Information and Communication Technology、情報通信技術) 活用の取り組みが推進されるようになりました。建設プロジェクトの計画、設計、および管理に必要不可欠な現場の情報を効率的にかつ正確に収集することが、トータルステーションの役割です。
1. 現場の評価と測量
建設プロジェクトの初期段階でトータルステーションは活用され、建設現場を測量します。現地の地形をマッピングし、土地の特徴に関するデータを収集、基準点の設定です。
2. 正確なレイアウト
ICTを活用した現場においては、トータルステーションの活用のために、通信機器、ネットワークの構築が必要です。通信塔、データセンター、ネットワーク機器など、ICTに関するインフラコンポーネントを正確にレイアウトさせます。最適なネットワークのパフォーマンスを確保することが目的です。
3. 竣工図の作成
建設が完了した後、トータルステーションは竣工図を作成するために使用されます。ICTのインフラコンポーネントや各測定点の座標が含まれており、将来のメンテナンス性を向上させます。
4. 品質の管理
トータルステーションは、施工中の状況を監視可能です。設計図との不一致を建設中の早い段階で特定し、修正できます。
5. プロジェクトの管理
GPSのリアルタイムデータと進捗状況の提供を通じてプロジェクト管理が可能です。施工管理者は、建設の進捗をモニタリングし、進捗情報を収集、プロジェクト計画の修正などに寄与します。
参考文献
https://www.rentalsurvey.jp/topics-menu/topics-top03.html
https://note.com/tkc_exp/n/na41862965497
https://www.cbr.mlit.go.jp/kensetsu-ict/model/pdf/GNSS-youryou_chigai.pdf