イソプロピルアミン

イソプロピルアミンとは

イソプロピルアミン (英: Isopropylamine) とは、化学式 C3H9Nで表される二級アミンの1種です。

別名には、2-アミノプロパン、2-プロピルアミン、1-メチルエタンアミン、モノイソプロピルアミン、sec-プロピルアミンなどの名称があります。CAS登録番号は75-31-0です。

イソプロピルアミンの使用用途

イソプロピルアミンの主な使用用途は、 医薬・染料中間体、農薬・界面活性剤原料です。イソプロピルアミンを原料として合成される除草剤に、グリホサートやアトラジンがあります。

また、プラスチック製造の薬剤にも用いられます。その他の用途は、合成樹脂添加剤、ゴム薬品などの中間体原料です。

イソプロピルアミンの性質

イソプロピルアミンは、分子量59.11、融点-95℃、沸点33℃であり、常温での外観は無色透明の液体です。アンモニア臭と形容される特有の臭いを持ちます。密度は0.690g/mLです。

水、エタノール及びアセトンに極めて溶けやすい性質を持ちます。強塩基性を示し、共役酸の酸解離定数pKa値は10.63です。引火点が-20℃と低温であり、引火性の高い性質を持ちます。

イソプロピルアミンの種類

イソプロピルアミンは、通常研究開発試薬製品や工業薬品などとして販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、25mL、250mL、500mL、1L、2L、18Lなどの単位で販売されています。実験室で取り扱いやすい小型容量が中心ですが、大容量の製品もあり、比較的安価な試薬製品と言えます。

2. 工業用

工業薬品としては、イソプロピルアミンは12kgなど比較的大型容量からの提供が中心となっている製品です。

イソプロピルアミンのその他情報

1. イソプロピルアミンの合成

イソプロピルアミンは、イソプロピルアルコールとアンモニアを原料として、ニッケルまたは銅触媒存在下によるアミノ化反応により得られます。

2. イソプロピルアミンの反応性

イソプロピルアミンは、通常の保管・取り扱い条件では安定な物質とされています。 加熱によって分解し、その際の分解生成物には、有毒な窒素酸化物及びシアン化水素を含みます。

また、イソプロピルアミンは強塩基性を示し、強酸化剤、酸、酸無水物及び酸塩化物と反応する物質です。ニトロパラフィン、ハロゲン化炭化水素、酸化剤及び他の多くの物質と激しく反応します。銅及び銅化合物、鉛、亜鉛及びスズを腐食する作用があります。

3. イソプロピルアミンの危険性

イソプロピルアミンは、 種々の危険性があり、GHS分類では下記のように分類されています。

  • 引火性液体: 区分1
  • 急性毒性 (経口) : 区分4
  • 急性毒性 (経皮) : 区分3
  • 急性毒性 (吸入:蒸気) : 区分4
  • 皮膚腐食性/刺激性: 区分1A
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性: 区分1
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露): 区分1 (中枢神経系、呼吸器)/区分3 (麻酔作用)
  • 特定標的臓器毒性 (反復ばく露): 区分2 (呼吸器)
  • 水生環境有害性 (急性) : 区分3

取り扱いの際は、保護衣・保護メガネなど適切な個人用保護具を使用し、排気装置を備えるなど適切な環境を整えることが必要です。また、環境への有害性も指摘されていることから、廃棄の際も正しく取り扱うことが重要です。

4. イソプロピルアミンの法規制情報

前述の危険性により、イソプロピルアミンは法令によって規制を受ける物質です。消防法では、第4類引火性液体、特殊引火物に指定されており、労働安全衛生法では、危険物・引火性の物、名称等を表示すべき危険物及び有害物、名称等を通知すべき危険物及び有害物、危険性又は有害性等を調査すべき物に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/75-31-0.html

酸化リチウム

酸化リチウム

酸化リチウム (英: Lithium oxide) とは、組成式Li2Oで表されるリチウムの酸化物です。

分子量29.881、融点1,570℃、沸点2,600℃であり、常温での外観は無色結晶となっています。なお、CAS登録番号は12057-24-8です。

酸化リチウムの使用用途

酸化リチウムの主な使用用途は、導電性ガラス、電池、固体電解質の製造などです。釉薬にも用いられ、銅と混合して青色に、コバルトと混合してピンクを出すのに用いられています。

熱遮蔽コーティング (Thermal barrier coating; TBCs) においては非破壊的発光分光分析検査や劣化の評価に用いられる場合があります。また、ジルコニアコーティングにおいては、酸化イットリウムと共にドーピング剤として用いられる物質です。

酸化リチウムの性質

酸化リチウムは、リチウムイオンLi+と酸化物イオンO2−からなるイオン結晶です。密度は2.013g/mLであり、水と反応して (発熱反応) 水酸化リチウムを生成します。酸化リチウムは、他のアルカリ金属酸化物よりも熱力学的に安定な物質です。

結晶構造は、立方晶系の逆蛍石型構造を取ります。この構造は、酸化カリウムおよび酸化ナトリウムと同様のものです。リチウムイオンLi+は正四面体4配位、酸化物イオンO2−は立方体8配位となっており、格子定数はa = 4.61Åです。

酸化リチウムの種類

酸化リチウムは、一般的には主に研究開発用試薬製品として販売されています。容量の種類には、5g、10g、25g、100g、500gなどがあり、実験室で取り扱いやすい容量での提供が一般的です。

水との反応性が高く吸湿性も高い物質ではありますが、適切な保管環境においては安定であり、通常は室温で保管可能な試薬製品として扱われています。アルゴンを封入した状態で販売されている場合もあります。

酸化リチウムのその他情報

1. 酸化リチウムの合成

酸化リチウムは、金属リチウムを空気中または酸素中で燃焼させることによって合成可能です。本反応のような酸素との反応では、過酸化リチウムLi2O2および超酸化リチウムLiO2は生成しません。

その他の方法では、銀箔に包んだ無水水酸化リチウムをニッケルボート中で減圧下675℃に加熱することで分解生成物として合成したり、炭酸リチウム (700℃で50時間減圧下で加熱) や、無水過酸化リチウム (ヘリウム中で450℃で6時間加熱) などの分解反応で合成することもできます。

2. 酸化リチウムの化学反応

酸化リチウムは、水蒸気および二酸化炭素を吸収しやすい性質がある物質です。二酸化炭素との反応によって炭酸リチウムを生成します。また、水とは徐々に反応して、水酸化リチウムを与えます。

光によって変質する恐れがあるため、保管環境においては高温と直射日光を避ける必要があります。また、強酸化剤は混触危険物質であり、想定される危険有害な分解生成物は金属酸化物です。

3. 酸化リチウムの有害性と法規制情報

酸化リチウムは、GHS分類において以下に指定されています。

  • 急性毒性-吸入 (粉じん/ミスト)  : 区分3
  • 皮膚腐食性/刺激性: 区分1
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性: 区分1
  • 生殖毒性: 区分1A
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) : 区分1

上記のように、人体への有害性が高い物質です。取り扱いの際は、保護メガネ、保護手袋や防塵マスクなどの適切な個人用保護具を用い、使用環境ではよく換気を行います。

また、取扱い後には顔や手など、 ばく露した皮膚を洗う必要があります。目に入った場合は、コンタクトレンズの着用有無に関わらずまず水で数分間注意深く洗浄することが必要です。

毒物及び劇物取締法や、消防法、労働安全衛生法などでの指定はありませんが、危険物船舶運送及び貯蔵規則や、航空法では、腐食性物質に指定されています。法令を遵守して適切に取り扱うことが必要です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0112-0606JGHEJP.pdf