ダイヤル温度計

ダイヤル温度計とは

ダイヤル温度計とは、円形の温度表示部と棒状の感温部から構成されている温度計です。

感温部にはバイメタルやブルド管などが用いられ、機械的に指針を動作させる方式で動作します。ガラス温度計水銀温度計やアルコール温度計などの温度計に比べて頑丈であり、保守も容易であることから、工業用に広く用いられています。現在は温度の指針、最大指針、警報指針の3針式の製品が多いです。 

ダイヤル温度計の使用用途

ダイヤル温度計の主な用途は、変圧器の温度の測定です。変圧器内部の中でも特にコイル付近の油温度、回転機の軸受温度の計測に用いられます。

受変電設備等に組み込まれる変圧器 (トランス) は、稼働状況により機器温度が上昇します。過負荷がかかった場合、定格温度以上になる可能性があり故障の原因になりかねないため、温度を確認することが必要です。

ダイヤル温度計自身には警報器の機能はありませんが、多くの製品で任意温度にセットできる警報接点を持っており、ランプやブザーなどを外部接続することで警報装置としての役割をもたせることができます。また、ダイヤル温度計は、変圧器以外にも、温度管理が必要な産業・工業で広く汎用されており、具体的な例として下記の温度管理が挙げられます。

  • 冷凍産業
  • 食品産業
  • バイオテクノロジーや医薬品産業
  • 機械製造、組立
  • 加熱装置
  • 冷却、空調機器
  • 換気装置
  • 太陽熱集熱器
  • 温水タンク
  • 熱伝達ステーション

ダイヤル温度計の原理

ダイヤル温度計は、温度を表示する盤面と棒状などの感温部が導管で接続されている構造です。感温部は、バイメタル、ガス又は液体膨張の原理などで動作しています。

1. バイメタル式温度計

バイメタルは、熱膨張率が異なる2種類の金属板を溶接や接着によって貼り合わせたものです。温度変化により湾曲する特性を利用して、表示板の目盛りを指す針を動かす仕組みとなっています。

2. ガス・液体膨張式温度計 (圧力式温度計)

圧力式温度計は、温度によるガスや液体の体積の変化を利用したものです。感温筒、導管、ブルドン管から構成されます。感温筒、導管、ブルドン管は、圧力下で液体やガスで満たされた密閉空間となっています。

温度変化により感温筒内の液体やガスが膨張・収縮し、導管を通してブルドン管内部の圧力が変化し、この圧力の変化を温度として指示する原理です。

ダイヤル温度計の種類

ダイヤル温度計は、前述したようにバイメタル式温度計やガス・液体膨張式などの仕組みの種類があります。変圧器の温度管理や様々な工業・産業における温度管理に汎用されていることから、用途に合わせて細かな点で様々な種類があります。

1. 機能による分類

ダイヤル温度計の製品の中には、最高温度の指針が備えられているものもあります。このような製品では、一時的な最高温度を観測することが可能です。

また、標準指示温度計に温度センサを組み込んだハイブリット型温度計もあり、現場計測での直読の他に遠隔計測や自動制御を行うアナログ出力を行うことができます。耐震型の製品では、グリセリンをケース内に封入することにより、外部からの振動やポンプの脈動などによる指針や計器内部構造の激しい振れを吸収する仕様となっています。 

2. 外装による分類

衛生的な環境を必要とする食品工場や製薬・化学工場などを想定した種類の製品では、電解研磨仕上げのケース外装の製品や、サニタリー用ステンレススチール製製品などがあります。形状は壁掛型の他、ビス止めで測定対象装置前面パネルへの埋め込みを想定したものなどがあります。

温度指示部と感温部は導管で接続されているため、例えばキュービクルに変圧器を収納した場合、温度指示部のみを盤前面に取り付けることが可能です。また、メッキ工場・化学薬品工場などの過酷な条件での使用を想定した製品では、耐薬品性に優れているものもあります。

参考文献
https://connect.nissha.com/filmdevice/filmdevice_column/capacitive_touch_panel
https://www.ebara-keiki.co.jp/publics/index/107/

 

静電容量タッチセンサ

静電容量タッチセンサとは

静電容量タッチセンサとは、電界において静電容量の変化を利用して検出するタッチセンサです。

静電容量とは、導電体 (コンデンサなど) において、蓄えられている電荷の量を表す物理量です。人体は導体 (電流を流すことができる) であるため、手などの人体の一部分がタッチパネルなどの表面に近づくと、指先などの接触部分とセンサーに用いられている電極の間に静電容量が生じます。静電容量方式のセンサーでは複数の指を用いるマルチタッチジェスチャーが可能であり、スマートフォンを始めとする様々な製品に使用されています。

また、素材の柔軟性から湾曲状でもタッチが可能であることや耐水性に優れることなども長所の1つです。

静電容量タッチセンサの用途

静電容量タッチセンサは、スマートフォンやタブレット、ゲーム機、ATMや券売機などのタッチパネル、ウェアラブル機器に広く使用されています。ワイヤレスイヤホンを耳につけているかどうかを判定するための用途や、高精度のものではアルコールディスペンサーの残量検知を目的とした用途もあります。

キットなどとして一般に販売されているものは、主にスイッチモジュールやフィルムセンサーなどとして用いられる場合が多いです。

静電容量タッチセンサの原理

静電容量タッチセンサは電極を用い、導体である人がタッチした際に生じる静電容量の変化を利用する仕組みです。静電容量タッチセンサでは、主にITO電極が用いられます。

ITO (Indium-Tin Oxide) 電極とは、ガラス基板上にITOを蒸着した電極で、電気化学測定などに汎用される電極です。自己容量方式と相互容量方式の2種類の仕組みに分類されます。

1. 自己容量方式

自己容量方式のセンサは、センサ電極を1種類だけ用います。ITO電極間には電界が形成されており、この電界に導体である人体が指などで触れることで、電界と手の間に擬似的にコンデンサが生じます。このとき起こる静電容量の増加を検知し、センサーとして機能する仕組みです。

高感度で、分厚いカバーをかけた上からでも読み取りができるというメリットがあります。ただし、後述する投影型の場合はXY電極の行や列でタッチ位置を判断するため、マルチタッチ時には触れていない箇所を誤ってタッチ箇所として認識してしまう場合がある点が短所です。

2. 相互容量方式

相互容量方式のセンサでは、電極は送信用と受信用の2種類に分かれています。1つは電界を発生させる電極であり、他方は電気力線を吸収する電極で、この2者はコンデンサー様の関係です。

センサーに手を近づけると、2つの電極の間にある電界の一部が指先に遮られます。電界と手がコンデンサの関係になった結果、電極間の静電容量は減少します。相互容量方式は、このようにして2つの電極間に生じる電界の変化を検出する仕組みです。

静電容量タッチセンサの種類

静電容量タッチセンサの種類には、表面型と投影型の2種類の構造があります。

1. 表面型

表面型では、ガラス基板の4つの角に電極が配置されています。基板の表面には電界が生じており (自己容量方式) 、タッチすることにより静電容量の変化が起こります。静電容量の変化を4つの電極で検知し、タッチした位置を検出する仕組みです。

長所としては、耐久性が高く、水や油など表面の異物の影響を受けにくいことが挙げられます。また、構造がシンプルであるため低コストであり、大画面などに適していることも長所です。短所としては、マルチタッチができないことが挙げられます。

2. 投影型

投影型センサのパネルは、2つのITO電極が直交する2方向の電極層として配置されます (X軸方向とY軸方向) 。相互容量方式では、送信用と受信用の電極がX軸電極とY軸電極のように直交する格子状に配置され、静電容量が減少した座標をタッチされた位置として判定しています。

多点検出が可能なため、マルチタッチに対応可能です。また、それぞれの座標位置において個々に静電容量の変化を検知できることから、拡大や縮小などの直感的な操作も可能です。また、耐久性が高く、透過率が高いという長所もあります。

表面型よりも複雑な信号処理が行われるためノイズの影響を受けて誤作動しやすいことが短所ですが、このような誤作動はコントローラーICによって解消することができます。

参考文献
https://connect.nissha.com/filmdevice/filmdevice_column/capacitive_touch_panel
https://www.dush.co.jp/method-type/capacitive-touchscreen/

 

ルアーロックシリンジ

ルアーロックシリンジとは

ルアーロックシリンジとは、シリンジのうちシリンジ先端部にロック機能が付いているものです。

通常のルアーチップ式のシリンジと異なり、針の脱落を防ぐことができるため、特にしっかりと注射針を接続したい場合に適したシリンジと言えます。通常のシリンジと同様に、医療用や実験用などの分類があり、様々な場面で汎用されます。

ルアーロックシリンジの使用用途

ルアーロックシリンジの用途は、通常のシリンジと同様に医療用と実験用の2種類に大別されます。

1. 医療用シリンジ

医療用では、通常の注射薬の他、口腔内洗浄、造影剤などに用いられています。特に、シリンジポンプを用いて注射薬を持続注入するような場合や、抗がん剤などを取り扱う際などでの利用が多いです。抗がん剤などは刺激の強い薬液であり、取り扱いの際に針やカテーテルが脱落すると危険です。

また、シリンジポンプは内圧が上昇しやすいため、一般的な注入よりも針が脱落しやすいと考えられます。ルアーロックシリンジは、このような場合で危険回避のために用いられます。

医療用では、滅菌して個別包装されたディスポーザブル (使い捨て) 式 の製品が主流です。一方、プラスチック製のシリンジでは薬物吸着や樹脂添加剤の流出等の懸念がある場合には、ガラス製のシリンジが用いられます。医療用のガラス製シリンジは、使用するたびに滅菌して再利用されます。

2. 実験用シリンジ

医療現場以外にも、物理・化学・生命科学分野における実験器具として用いられます。主な用途は、液体や気体の注入、体積の測定、加圧・減圧、滴下、分注などです。

ルアーロックシリンジの原理

最も一般的な形状であるルアーチップ式のシリンジでは、針取り付け部分のテーパーを利用し、針を押し込んで固定します。針の着脱が容易である一方、針が脱落しやすいことが欠点です。

一方、ルアーロックシリンジは、針が抜け落ちないようシリンジの先端がネジ状になっています。そのため、針が抜け落ちないようにロック機構で固定することが可能です。ロック機構はプラスチックシリンジではプラスチックとなっており、ガラスシリンジではガラスの他、樹脂と金属を組み合わせた構造をしているものもあります。

ルアーロックシリンジの種類

1. 用途・材質による分類

ルアーロックシリンジには、用途に合わせて医療用や実験用などがあります。また、ガラスシリンジのうち、特にガスの取り扱いも可能となっている気密性を有したシリンジは、ガスタイトシリンジと呼ばれる製品です。

ルアーロック式のシリンジにも、他のシリンジと同様にディスポーザブルのプラスチック製 (ポリプロピレン) のものや、ガラス製 (ホウケイ酸ガラス) など、材質にはいくつかの種類があります。使用する薬剤等に合わせて選択することが必要です。

2. 容量による分類

ルアーロックシリンジは、様々な種類の容量のものが販売されています。医療用では、1mL、2mL、3mL、5mLなどの小容量から、10mL、20mL、30mL、50mL、100mLなどの中〜大容量まで幅広い製品展開です。

研究開発用では、50μL、100μL、250μL、500μLなど、更に小容量のガラスシリンジ製品などもあります。最大容量が異なると、目盛りや最小容量も異なるため、適したものを選択することが必要です。

3. その他

ルアーロックシリンジの中には、洗浄して繰り返し使用するものと、最初から使い捨てが想定されているディスポーザブル式のものなどがあります。医療用では滅菌して個別包装されたディスポーザブル式が主流です。ディスポーザブル式は、医療現場における感染予防、および、化学実験等におけるコンタミ防止で使用されます。

通常のシリンジの他、プランジャーが吸入全量を強制排出するゼロデッドボリューム型などもあります。注射薬を予め充填して製剤として販売する、プレフィルドシリンジにもルアーロック機構が使用されています。

参考文献
https://www.monotaro.com/note/productinfo/syringe/

フルシトシン

フルシトシンとは

フルシトシンとは、抗真菌薬の1種として知られている有機化合物です。

化学式 C4H4FN3Oで表される組成をしており、別名では5-フルオロシトシン (5-FC) と呼ばれている通り、ピリミジン塩基であるシトシンの5位がフルオロ化された構造をしています。その他の別名には、4-アミノ-5-フルオロ-2(1H)-ピリミジノン、 フルシトシンなどがあります。CAS登録番号は、2022-85-7です。

フルシトシンの用途

フルシトシンは、主にカンジダ感染症やクリプトコッカス症の治療に用いられる抗真菌薬です。分類では、フッ素化ピリミジンアナログに属します。適応は、真菌血症、真菌性髄膜炎、真菌性呼吸器感染症、黒色真菌症、尿路真菌症、消化管真菌症などであり、有効な菌種はクリプトコックス、カンジダ、アスペルギルス、ヒアロホーラ、ホンセカエアです。

真菌細胞内でシトシンデアミナーゼによる脱アミノ化を経て5-フルオロウラシルとなり、RNAのミスコードを引き起こしてDNAやRNAの合成を阻害する作用を及ぼします。その結果、リボソームタンパク質の合成が阻害され、抗真菌効果が得られます。フルシトシンは、研究用途でヌクレオシド誘導体の1種としてTMP生合成研究に使用される物質です。

フルシトシンの性質

フルシトシンは、分子量129.09、融点298-300 ℃ (分解) であり、常温での外観は白色粉末です。密度は1.40g/mLであり、水やエタノールに溶けにくい性質を示します。

フルシトシンの種類

フルシトシンは、主に研究開発用試薬製品や医薬品として販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、1gや5gなどの容量の種類があります。実験室で取り扱いやすい容量での提供ですが、その中でも小容量が中心であり比較的高価な試薬製品ということができます。通常、冷蔵 (2-8℃)で保管される物質です。

2. 医薬品

フルシトシンは抗真菌薬として販売されています。医師の処方の元で服用される薬剤であり、購入に当たっては処方箋が必要です。フルシトシンの名称は一般名であり、製品名には「アンチコル」などの名称があります。

剤形は、経口投与 (錠剤: アンチコル錠500mg) や静脈点滴が一般的です。

フルシトシンのその他情報

1. フルシトシンの取扱い上の注意

フルシトシンはGHS分類にて、生殖毒性: 区分2に指定されている物質です。具体的には生殖能又は胎児への悪影響を及ぼす恐れがあります。保護衣、保護手袋、保護メガネなどの適切な個人用保護具を用いることが必要です。

2. フルシトシンの反応性

通常の保管・取り扱い環境では、安定と考えられている物質です。強酸化剤は混触危険物質に指定されています。火災などの場合における危険有害な分解生成物として、炭素酸化物、窒素酸化物 (NOx) 、フッ化水素が挙げられます。

3. フルシトシンの副作用

フルシトシンを医薬品として投与する場合の主な副作用は、食欲不振、嘔気、白血球減少、発疹、胃部不快感、下痢、血清カリウム低下、AST、ALTの上昇などです。特に重篤な副作用には、汎血球減少、無顆粒球症、腎不全 (頻度不明) があります。異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うことが必要です。

4. フルシトシンと他の薬剤との相互作用

薬剤の中にはフルシトシンと相互作用する物があるため、注意が必要です。例えば、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤は、フルシトシンとの併用により早期に重篤な血液障害や下痢、口内炎等の消化管障害等が発現するおそれがあり、併用禁忌とされています (これらの薬剤の投与中止後少なくとも7日以内はフルシトシンを投与しない) 。

また、抗悪性腫瘍剤等や放射線照射、アムホテリシンBやトリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤は、骨髄抑制作用を増強するおそれがあるため、併用注意に指定されています。

参考文献
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907004854896151

トレオニン

トレオニンとは

トレオニン (英: Threonine) とは、アミノ酸の1種で化学式C4H9NO3で表される物質です。

側鎖にヒドロキシエチル基を持つ構造を有します。略号はThrまたはTであり、CAS登録番号は80-68-2 (L体は72-19-5) です。光学活性中心を2つ持つため4つの異性体が存在し、それぞれL-トレオニン(2S,3R) 、D-トレオニン(2R,3S)、L-アロトレオニン(2S,3S) 、D-アロトレオニン(2R,3R) と呼ばれます。

トレオニンの使用用途

トレオニンの主な用途は、医薬品原料 (輸液等) 、培地、食品添加物などです。トレオニンは、生体内ではL体のみが存在し、L-トレオニンはヒトや動物の体内で合成ができない必須アミノ酸の1つです。

成長や新陳代謝を促進する効果や、肝臓の機能を高める効果、胃炎改善作用、筋緊張昂進の抑制作用などがあると言われています。肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぎ、脂肪肝を予防する効果もあります。動物性タンパク質に多く含まれ、卵、スキムミルク、ゼラチンなどに特に多く含まれる物質です。

トレオニンの性質

トレオニンは、分子量119.12、融点244℃であり、常温での外観は白色粉末です。水にやや溶けやすく、エタノール及びジエチルエーテルにほとんど溶けません。

無臭の物質であり、密度は1.07g/mL、酸解離定数pKaは2.63 (カルボキシル基) 、10.43 (アミノ基) です。

トレオニンの種類

トレオニンは、主に研究開発用試薬製品や、飼料用アミノ酸、食品添加物などとして販売されています。飼料用アミノ酸や食品添加物としては、L体のみが利用されますが、試薬製品としてはDL混合体、D体、L体の製品がそれぞれ存在します。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、DL混合体、D体、L体などの種類があり、容量の種類も0.5g、1g、5g、25g、100g、500gなど、実験室で取り扱いやすい容量を中心に様々なものがあります。通常、室温で保管可能な試薬製品として扱われる物質です。

2. 飼料用アミノ酸

飼料用アミノ酸としてはL-トレオニンのみが用いられており、肥育豚やブロイラーなどの肥育期の飼料に利用される物質です。25kg (袋包装) など、比較的大容量で提供されることが一般的です。

3. 食品添加物

トレオニンは、食品添加物としては、食品や飲料に用いられる物質です。調味料や栄養強化剤などの用途が一般的です。業務用では25kgや50kgなど、産業用に使用しやすい大容量で提供されています。

トレオニンのその他情報

1. トレオニンの反応性

トレオニンは、通常の保管条件では安定と考えられている物質ですが、光により 変質するおそれがあります。高温と直射日光を避けて保管することが必要です。強酸化剤は混触危険物質に指定されており、危険有害な分解生成物として、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物が指摘されています。

2. トレオニンの生合成

トレオニンは、植物や微生物の体内において、次のような各反応を経て生合成されています。

  1. 酵素アスパルトキナーゼがアスパラギン酸のβ-カルボキシル基をリン酸化する
  2. β-アスパルテートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼによって前段階の中間体生成物が還元され、β-アスパルテートセミアルデヒドが生成する
  3. ホモセリンデヒドロゲナーゼによる還元反応によりアルデヒド基がヒドロキシ基となる
  4. ホモセリンキナーゼによるリン酸化を受ける
  5. トレオニンシンターゼにより脱リン酸化とヒドロキシ化反応が進行し、トレオニンが生成する

3. トレオニンの取扱い上の注意

トレオニンの取り扱いの際は、局所排気装置を設置し、保護衣、保護メガネなどの適切な個人用保護具を使用することが必要です。また、保管の際は容器を遮光し、換気のよいなるべく涼しい場所に密閉して保管することとされています。

イソプロピルアミン

イソプロピルアミンとは

イソプロピルアミン (英: Isopropylamine) とは、化学式 C3H9Nで表される二級アミンの1種です。

別名には、2-アミノプロパン、2-プロピルアミン、1-メチルエタンアミン、モノイソプロピルアミン、sec-プロピルアミンなどの名称があります。CAS登録番号は75-31-0です。

イソプロピルアミンの使用用途

イソプロピルアミンの主な使用用途は、 医薬・染料中間体、農薬・界面活性剤原料です。イソプロピルアミンを原料として合成される除草剤に、グリホサートやアトラジンがあります。

また、プラスチック製造の薬剤にも用いられます。その他の用途は、合成樹脂添加剤、ゴム薬品などの中間体原料です。

イソプロピルアミンの性質

イソプロピルアミンは、分子量59.11、融点-95℃、沸点33℃であり、常温での外観は無色透明の液体です。アンモニア臭と形容される特有の臭いを持ちます。密度は0.690g/mLです。

水、エタノール及びアセトンに極めて溶けやすい性質を持ちます。強塩基性を示し、共役酸の酸解離定数pKa値は10.63です。引火点が-20℃と低温であり、引火性の高い性質を持ちます。

イソプロピルアミンの種類

イソプロピルアミンは、通常研究開発試薬製品や工業薬品などとして販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、25mL、250mL、500mL、1L、2L、18Lなどの単位で販売されています。実験室で取り扱いやすい小型容量が中心ですが、大容量の製品もあり、比較的安価な試薬製品と言えます。

2. 工業用

工業薬品としては、イソプロピルアミンは12kgなど比較的大型容量からの提供が中心となっている製品です。

イソプロピルアミンのその他情報

1. イソプロピルアミンの合成

イソプロピルアミンは、イソプロピルアルコールとアンモニアを原料として、ニッケルまたは銅触媒存在下によるアミノ化反応により得られます。

2. イソプロピルアミンの反応性

イソプロピルアミンは、通常の保管・取り扱い条件では安定な物質とされています。 加熱によって分解し、その際の分解生成物には、有毒な窒素酸化物及びシアン化水素を含みます。

また、イソプロピルアミンは強塩基性を示し、強酸化剤、酸、酸無水物及び酸塩化物と反応する物質です。ニトロパラフィン、ハロゲン化炭化水素、酸化剤及び他の多くの物質と激しく反応します。銅及び銅化合物、鉛、亜鉛及びスズを腐食する作用があります。

3. イソプロピルアミンの危険性

イソプロピルアミンは、 種々の危険性があり、GHS分類では下記のように分類されています。

  • 引火性液体: 区分1
  • 急性毒性 (経口) : 区分4
  • 急性毒性 (経皮) : 区分3
  • 急性毒性 (吸入:蒸気) : 区分4
  • 皮膚腐食性/刺激性: 区分1A
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性: 区分1
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露): 区分1 (中枢神経系、呼吸器)/区分3 (麻酔作用)
  • 特定標的臓器毒性 (反復ばく露): 区分2 (呼吸器)
  • 水生環境有害性 (急性) : 区分3

取り扱いの際は、保護衣・保護メガネなど適切な個人用保護具を使用し、排気装置を備えるなど適切な環境を整えることが必要です。また、環境への有害性も指摘されていることから、廃棄の際も正しく取り扱うことが重要です。

4. イソプロピルアミンの法規制情報

前述の危険性により、イソプロピルアミンは法令によって規制を受ける物質です。消防法では、第4類引火性液体、特殊引火物に指定されており、労働安全衛生法では、危険物・引火性の物、名称等を表示すべき危険物及び有害物、名称等を通知すべき危険物及び有害物、危険性又は有害性等を調査すべき物に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/75-31-0.html

酸化リチウム

酸化リチウム

酸化リチウム (英: Lithium oxide) とは、組成式Li2Oで表されるリチウムの酸化物です。

分子量29.881、融点1,570℃、沸点2,600℃であり、常温での外観は無色結晶となっています。なお、CAS登録番号は12057-24-8です。

酸化リチウムの使用用途

酸化リチウムの主な使用用途は、導電性ガラス、電池、固体電解質の製造などです。釉薬にも用いられ、銅と混合して青色に、コバルトと混合してピンクを出すのに用いられています。

熱遮蔽コーティング (Thermal barrier coating; TBCs) においては非破壊的発光分光分析検査や劣化の評価に用いられる場合があります。また、ジルコニアコーティングにおいては、酸化イットリウムと共にドーピング剤として用いられる物質です。

酸化リチウムの性質

酸化リチウムは、リチウムイオンLi+と酸化物イオンO2−からなるイオン結晶です。密度は2.013g/mLであり、水と反応して (発熱反応) 水酸化リチウムを生成します。酸化リチウムは、他のアルカリ金属酸化物よりも熱力学的に安定な物質です。

結晶構造は、立方晶系の逆蛍石型構造を取ります。この構造は、酸化カリウムおよび酸化ナトリウムと同様のものです。リチウムイオンLi+は正四面体4配位、酸化物イオンO2−は立方体8配位となっており、格子定数はa = 4.61Åです。

酸化リチウムの種類

酸化リチウムは、一般的には主に研究開発用試薬製品として販売されています。容量の種類には、5g、10g、25g、100g、500gなどがあり、実験室で取り扱いやすい容量での提供が一般的です。

水との反応性が高く吸湿性も高い物質ではありますが、適切な保管環境においては安定であり、通常は室温で保管可能な試薬製品として扱われています。アルゴンを封入した状態で販売されている場合もあります。

酸化リチウムのその他情報

1. 酸化リチウムの合成

酸化リチウムは、金属リチウムを空気中または酸素中で燃焼させることによって合成可能です。本反応のような酸素との反応では、過酸化リチウムLi2O2および超酸化リチウムLiO2は生成しません。

その他の方法では、銀箔に包んだ無水水酸化リチウムをニッケルボート中で減圧下675℃に加熱することで分解生成物として合成したり、炭酸リチウム (700℃で50時間減圧下で加熱) や、無水過酸化リチウム (ヘリウム中で450℃で6時間加熱) などの分解反応で合成することもできます。

2. 酸化リチウムの化学反応

酸化リチウムは、水蒸気および二酸化炭素を吸収しやすい性質がある物質です。二酸化炭素との反応によって炭酸リチウムを生成します。また、水とは徐々に反応して、水酸化リチウムを与えます。

光によって変質する恐れがあるため、保管環境においては高温と直射日光を避ける必要があります。また、強酸化剤は混触危険物質であり、想定される危険有害な分解生成物は金属酸化物です。

3. 酸化リチウムの有害性と法規制情報

酸化リチウムは、GHS分類において以下に指定されています。

  • 急性毒性-吸入 (粉じん/ミスト)  : 区分3
  • 皮膚腐食性/刺激性: 区分1
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性: 区分1
  • 生殖毒性: 区分1A
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) : 区分1

上記のように、人体への有害性が高い物質です。取り扱いの際は、保護メガネ、保護手袋や防塵マスクなどの適切な個人用保護具を用い、使用環境ではよく換気を行います。

また、取扱い後には顔や手など、 ばく露した皮膚を洗う必要があります。目に入った場合は、コンタクトレンズの着用有無に関わらずまず水で数分間注意深く洗浄することが必要です。

毒物及び劇物取締法や、消防法、労働安全衛生法などでの指定はありませんが、危険物船舶運送及び貯蔵規則や、航空法では、腐食性物質に指定されています。法令を遵守して適切に取り扱うことが必要です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0112-0606JGHEJP.pdf