エレベーターシステムとは
エレベーターシステムとは、エレベーターの安全運用を目的として遠隔監視などの役割を担う通信システムです。
従来のエレベーターの保守は、人力での通報・監視・点検保守に頼る部分が大部分でした。ネットワーク・IoTを活用した現在のエレベーターシステムにおいては、エレベーターとサービス拠点との通信を利用し、自動での異常検知並びに報告・自動点検・遠隔復旧などを行うことが可能となります。
エレベーターシステムの使用用途
エレベーターシステムは、主にエレベーターの安全運用と保守管理を目的として導入されています。エレベーターの状態を、サービス拠点 (管制センター) に逐次送信するとともに、トラブル発生時にはエレベーター内の利用者と音声通話を行うことも可能です。災害時などの緊急停止の際、オペレーター側から利用者に外部の状況など、情報提供を行うこともできます。エレベーターの安全運用のため、備えられている主な機能は下記の通りです。
- 平常時の運行状況・機器状況の遠隔監視
- 緊急停止などの際におけるオペレーターへの自動通報
- 緊急時などにおけるエレベーター内とオペレーターとの音声通話
- トラブル時の遠隔復旧・遠隔救出
- 自動点検・機器変調の診断
- 運行データの収集・解析
エレベーターシステムの利用によって遠隔で利用状況を知ることができるため、現地確認・点検などのコストを削減することができるというメリットがあります。また、現地での作業員対応が必要なトラブルの場合も、遠隔監視システムで予め情報を得てから出向くことができるので、作業時間の短縮・作業の効率化に繋がります。
また、機器による遠隔監視・点検により、ドアの開閉状態や開閉に関わるベルトの緩みなどを目視よりも更に細かく正確に定量することが可能です。目視で点検ができない部分についても、点検が可能になる場合があります。そのため、エレベーターシステムの導入により、異常の早期発見精度が向上するという効果もあります。
エレベーターシステムの原理
1. 構成
エレベーターシステムは、エレベーターに設置する「デバイス」、エレベーターとサービス拠点を繋ぐ「ネットワーク」、データを蓄積する「クラウド」の要素から構成されます。
デバイスは、エレベーターに付属している各種の監視装置・センサーに接続しており、ネットワーク経由でサービス拠点とやり取りします。緊急通報用のスイッチがついており、非常時には音声通話機能を備えます。
使用されているネットワークは、PHSや公衆電話回線、ISDN、LTEなどです。近年、高速・大容量回線であるLTEへの移行が進められています。従来の通信は、データ通信と音声通話との通信を切り替える必要がありましたが、LTEを利用したVoIPはデータ通信と同時に通話が可能なため、通話と遠隔救出作業を同時に行えることが長所です。また、Wi-Fiネットワークは、配線用ケーブルを必要としないというメリットがあります。
また、動作に関わるデータにはクラウド・サーバーを活用することで、システム構築に関わるコスト削減が行われている場合があります。
2. 監視・点検項目
エレベーターシステムで監視・点検が行われる項目には下記のようなものがあります。それぞれにセンサーが設置されており、データはネットワーク経由でサービス拠点へと送信されます。
- 制御関連 (機器温度・ブレーキ動作状態・接触器動作状態・制御機器動作状態)
- かご関連 (戸の開閉・ゲートスイッチ動作・押しボタン動作・インターホン電源)
- 昇降路内における安全スイッチの動作
- 乗場 (戸の開閉・ドアスイッチ動作・乗場操作盤の押しボタン動作)
- 走行状態 (起動状態・着床状態)
- 運行状況 (月毎起動回数・階床別利用状態)
エレベーターシステムの種類
エレベーターシステムは複数の企業から提供されており、それぞれ特色ある機能が搭載されています。
例えば、エレベーターが自動で点検運転を行う製品では、夜間に毎日1回定期点検を行う場合があります。運行データを取得し、顧客希望に応じてエレベーター機械監視点検報告書・エレベーター利用状況などの報告書を発行します。
最新のエレベータゲートウェイは、VolPやVoLTEを介した音声伝送をサポートし、エレベーターの通信システムのシームレスなリモート監視と管理する製品です。また、災害時に備えてエレベータ内部にバックアップバッテリーが備えられている場合もあります。
費用やグレードによって様々な製品があり、施設や建物の用途に合わせてサービス内容を選ぶことが必要です。