洗面ボウル

洗面ボウルとは

洗面ボウルとは手洗い場や洗面台などで、水栓金具の下方に設置されて水を受けるためのものです。

元々の形状が球形であったため、「ボウル」と称されます。住宅・商業施設を問わず様々な場所で利用されており、現在では多様な内装に合わせて様々な色・形状・デザインのものがあります。

洗面ボウルの使用用途

洗面ボウルは、一般住宅、商業施設、宿泊施設などにおいて、手洗い場や洗面台一般で使用されています。

主な用途は、顔を洗う、歯を磨く、化粧をする、ひげをそるなどですが、その他にも下記のような用途があります。

  • 髪染め
  • 手洗い洗濯・汚れ物の予洗い
  • ペットのシャワー
  • 髪を洗う
  • 赤ちゃんの沐浴

洗面ボウルの原理

1. 概要

洗面ボウルは、水やお湯を受けることに用いられる器具です。そのため、水を受けられるよう、中央が大きく窪んだ形状をしており、中央に排水のための穴が開いています。材質には様々な種類があり、質感や機能性が異なります。下記は代表的な素材とその特徴です。

2. 陶器

陶器は洗面ボウルの素材として最も一般的な素材です。安価でありながら表面に光沢があり、汚れも付着しにくく清掃性が高いことが特徴です。

陶器は傷が付きにくい素材ですが、物を落とすなどの衝撃を加えると割れたりヒビが入ったりします。また、熱湯を流すとヒートショックでひび割れすることがあります。80℃程度までは耐えられる製品もありますが、中には42℃以上で破損の恐れがある製品もあるため、注意が必要です。また、陶器の洗面ボウル自体も重量があるため、落下しないよう対策が必要です。

3. 樹脂

樹脂製の洗面ボウルには、主にアクリル樹脂やポリエステル樹脂が使用されています。所謂人工大理石と呼ばれる素材は樹脂製に分類されます。陶器と異なり、割れる心配はありません。加工の自由度が高く、様々な形状で作ることが可能であり、カウンターと洗面ボウルが一体成型されたものもあります。一方、小さな傷、汚れやシミは陶器に比べて付きやすい特徴があります。また、ヘアカラーなどの薬剤で変質・変色する可能性があります。

4. 天然石

天然石の洗面ボウルには、大理石やライムストーンの製品があります。石灰岩の原石から加工されているため、同じ大理石でも色や柄は一台ごとに異なります。

高級感のある光沢仕上げと素材の質感を活かしたマット仕上げがあり、それぞれの魅力があります。天然石は多孔質という特性があり、吸水性がありますが、定期的に保護剤を塗布することで汚れによる染みを防ぐことができます。

使用後に水分を拭き取り、乾燥した状態を保つことで美しい状態が維持できます。

5. ホーロー

洗面ボウルの中には多くはないもののホーロー製の製品もあります。ホーローとは、金属製の素地にガラス材の釉薬をコーティングして焼き上げたものです。匂いや汚れがつきにくく、陶器のように割れることがない素材です。ただし、表面のコーティングが欠損するとベースの金属が錆びてしまいます。

6. その他

その他の素材には、ガラスや金属があります。ガラスは光を透過し、色付きや柄入りのものもあるため、独特のインテリア性があります。一方、水垢などの汚れが目立ちやすく、こまめな清掃が必要です。

金属製には、ステンレスなどの錆びにくい素材が使用されます。独特な光沢感と、優れた加工性により様々な形状が実現可能であることが特徴です。

洗面ボウルの種類

洗面ボウルには、置き型(ベッセル型)、埋込み型・半埋め込み型などを始めとした様々な形状があります。それぞれの特徴をよく理解して選択することが必要です。

1. 置き型

置き型とは、洗面カウンターの上に置いて使用するタイプの洗面ボウルです。ベッセル型とも呼ばれており、近年人気のデザインです。形は主に、円型と角型があります。

水がカウンター天板に跳ねないようにするためには、それなりの大きさのものを選択する必要があります。ただし、カウンターが高すぎると洗面器の上端も高くなり、使い勝手が悪くなることがあるため注意が必要です。

2. 埋め込み型 

埋め込み型とは、洗面カウンターに埋め込む形状の洗面ボウルです。すっきりとした印象となり、カウンターの凹凸がないように施工すると、清掃性が高いというメリットもあります。

また、洗面カウンターに洗面ボウルを半分埋め込んで使用する半埋め込み型と呼ばれるタイプもあります。この場合は、洗面ボウルの存在感を残しつつ、カウンター下の収納を確保することが可能です。

3. 壁付け型

壁付け型は、洗面ボウルを壁に直接取り付ける形状の洗面ボウルです。省スペース性に優れているため、洗面所が狭い場合や、トイレの中の手洗い場に採用されることが多いです。

4. カウンター・洗面器一体型

樹脂製の洗面ボウル、所謂人工大理石製のものでは、カウンターと洗面器が一体化したタイプの製品も多く販売されています。一体成型により継ぎ目がなく、見た目がスッキリとしていることが特徴です。

溶射装置

監修:株式会社澤村溶射センター

溶射装置とは

溶射装置とは、加熱によって溶融・軟化させた溶融粒子を基材へ噴射し、基材表面に成膜する処理 (溶射処理) を行う装置です。

溶射処理は、基材に異種材料をコーティングすることにより、基材にはない特性・機能を表面に持たせることを可能とする技術です。具体的には、防錆性・防食性・耐薬品性・耐蝕性・耐摩耗性・耐熱性などの表面保護や、導電性付与・絶縁処理・酸化防止・装飾性付与などの機能付加が挙げられます。溶射処理はコーティングを必要とする部分のみに効率よく処理を行うことが可能です。

また、減肉した基材に異種や同種材料をコーティングして寸法再生することも可能です。

溶射は基材を低温に抑えることが可能で、歪がすくなく、また、現地施工が可能で成膜速度が速いという特徴があります。

溶射装置の使用用途

溶射装置は、様々な種類の基材一般 (金属、セラミックス、サーメット、プラスチック、FRP、紙など) に使用が可能です。また、吹き付けられる物質である溶射材料には、金属 (合金含む) 、サーメット、セラミックスなどを用いることができます。

これらの広い汎用性のため、溶射装置には多様な用途があります。下記に代表的な例を示します。

  • 鉄鋼構造物・屋外構造物など (橋脚や鉄橋、航空機の搭乗橋、屋外遊具など) の基材保護 (防錆・防食) 
  • コンクリ-ト内の鉄筋の陰極保護
  • 化学製品を製造する機器・装置における耐薬品性・耐蝕性の向上
  • 各工業分野の設備、装置など (自動車、航空機部品、半導体製造装置部品、メカニカルシール・スリーブ・プランジャーなど) における耐摩耗性・耐熱遮熱性・電気絶縁性・耐酸化性の付与
  • カーボン製品に対する酸化防止や浸炭防止用途、絶縁処理、パーティクルの防止

溶射の原理

溶射装置による溶射処理の概要は下記の通りです。

  1. ガス等の燃焼エネルギーや電気エネルギー源を用いて溶射材料を溶融、もしくは軟化状態にする
  2. 溶融・半溶融状態となった溶射材料を基材に吹き付ける
  3. 吹き付けられた材料は基材に当たり扁平化し積層する。

熱源には、プラズマ、フレーム、アークなどが用いられ、線材やワイヤー状、粉末状の溶射材料を加熱します。

溶射装置の種類

溶射装置は、様々な種類が開発されており、熱源や溶射方式などが種類によって異なります。下記は代表的な溶射装置の種類です。

1. フレーム溶射装置

フレーム溶射装置における熱源はアセチレンやプロパンなどのガス燃料と酸素による燃焼フレームです。溶射材料は、粉末、ワイヤーあるいは棒状 (セラミックロッドなど) のものが使用されます。

熱源を用いて溶融した粉末粒子や溶融した材料融液から、燃焼ガスもしくは圧縮空気を用いることで液滴を作り出し、噴霧します。フレーム溶射は手動装置のほか、必要に応じて半自動や完全自動の装置を用いることも可能です。

2. アーク溶射装置

アーク溶射装置は、熱源として電気エネルギーを用いる装置です。溶射材料である、2本の金属ワイヤーに電圧を加え、アーク放電を発生させます。ガス噴射によって微細化した溶融粒子を基材に吹き付けて成膜を行います。使用されるガスは圧縮空気(特殊な場合アルゴンや窒素)などです。

電気導電性を有するワイヤー状の溶射材料にのみ適用が可能です。溶射の中でも特に高吐出量で成膜速度が速く、コストが低いという特徴があります。

3. プラズマ溶射装置

プラズマ溶射は、プラズマの高い熱エネルギーを利用する溶射法です。ガン内部の陰極と陽極の間に電圧をかけ、そのアーク放電でアルゴンなどの作動ガスを電離させることで発生するプラズマを利用して材料の溶融し基材に吹き付けます。融点の高い粉末材料でも溶融加速することができるという点が優れている方法です。

4. 高速フレーム溶射

高速フレーム溶射は、燃料(一般的にはケロシンや炭化水素系ガス)と酸素を高圧下で燃焼し、燃焼室に続くバレルの効果により超音速のフレームを得る方法です。非常に密度が高く強い密着性のある皮膜が形成されます。HVOF (High Velocity Oxy- Fuel) 法と呼ばれることもあります。

HVOF法による皮膜は、一般に硬質クロムの代替工程として使われており、非常に密度が高く硬質で密着力の高い皮膜を形成することが可能です。

本記事は溶射装置を製造・販売する株式会社澤村溶射センター様に監修を頂きました。

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組織切片スライサー

組織切片スライサー

組織切片スライサーとは、研究や臨床において、標本化や培養などの目的で細胞組織を薄くスライスする(切片化)ための装置です。

臨床においては、組織標本を作製し顕微鏡などで病変を解析する組織検査のために用いられる他、研究においては免疫組織化学や電気生理学をはじめとした各種分野において分析対象の組織標本を作製する用途で用いられます。人体の細胞組織のほか、研究においては、動物や植物など様々な生物の細胞組織の標本化に用いられる装置です。ミクロトーム、マイクロスライサーなどの名称で呼ばれていることもあります。

組織切片スライサーの使用用途

1. 臨床

組織切片スライサーは、臨床においては、病変部を含む組織から組織標本を作製することに用いられます。使用されるのは、外科的手術によって摘出された臓器や、診断目的で採取された組織片などです。作製した標本は、顕微鏡などで観察され、診断が行われます。

これらの組織検査は、「生検」とも呼ばれます。一方、病理解剖によって取り出された臓器 (剖検) については、後述する病理組織学で用いられます。

2. 研究

研究分野において、組織切片スライサーは、病理組織学をはじめとする各種医学・生物学分野で使用されます。

病理組織学とは、組織や手術で採取した生検組織、もしくは病理解剖によって取り出された臓器を顕微鏡で観察し、研究する学問です。組織切片は染色処理され、色素や抗体によって組織やタンパク質成分が可視化されます。その他、組織切片を用いる医学分野は、免疫組織化学、酵素学や毒性学などです。組織切片は標本化だけではなく、腫瘍組織などの培養に用いられる場合もあります。

また、組織切片スライサーは人体のみではなく広く組織細胞一般に使用可能です。動物や植物などの細胞組織研究に用いられます。動物組織の物質代謝研究、電気生理学、スライス培養、イメージングなどの用途例があります。

3. 切片化可能な組織 (臓器)

組織切片スライサーは、下記の組織から切片が調製可能です。製品機種にもよりますが、人体のほか、ラット、マウス、モルモット、ひよこ、ブタ、魚類など広く使用することが可能です。

  • 脳 (視床下部、大脳皮質、海馬、小脳、プルキンエ細胞など)
  • 脂肪
  • 心臓
  • 肝臓
  • 膵臓
  • 副腎
  • リンパ節
  • 脾臓
  • 筋肉
  • 生殖組織
  • 脊髄
  • ガン組織

また、植物を用いる場合、種・茎・根など、基本的にどの部位からでも切片化が可能です。

組織切片スライサーの原理

組織切片スライサーは、試料台に置かれた組織試料を刃で切断して薄片化します。固定した試料台に対して刃を移動させる「滑走式」(別名はユング型、シャンツェ型など)と、固定した刃に対して試料台の方を動かす「回転式」(別名は、ロータリー式、ミノー型、ザリトリウス型など)の2つの形式に分類されます。

また、ビブラトーム/振動ミクロトームと呼ばれる種類は、高周波振動する刃を細かく振動させて試料を切る装置です (振動切削) 。製品によっては、試料をアガロース包理してから切断します。アガロース包理によって刃の振動が伝わりにくくなるため、組織の損傷が最小限になります。細胞内外の構造が保持され、安定して染色やイメージングを行うことが可能です。また、細胞を培養する場合も生細胞を多く得ることができます。

組織切片スライサーの種類

組織切片スライサーは様々な種類がある装置です。前述の通り、動作機構には滑走式や回転式、振動ミクロトームなどがあります。また、滑走式の中にも、刃が浮かないよう重りがついたものや、滑走レールを挟み込むようにして刃を保持する機能を備えたものなど、バリエーションがあります。

振動ミクロトームにも、切開や厚み調整を全自動で行うものや、厚み調整を手動で行う半自動のものなどがあります。また、装置によって、大きさが異なりますが、小型のものでは安全キャビネットやクリーンベンチ内での仕様が可能です。尚、機種によって取り扱い可能な細胞組織の種類が変わります。使用の際は、用途に合わせて適切に選択することが必要です。

テレメトリー

テレメトリーとは

テレメトリーとは、観測対象から離れた地点から遠隔で観測を行い、データを取得する技術一般(遠隔測定法)を指す言葉です。

テレメトリーという言葉自体は遠隔測定法一般を広く指すため、様々な分野において多様な形態で行われています。分野によって少しずつ意味合いや形態が異なります。

テレメトリーの使用用途

テレメトリーは、様々な分野において多様な用途で用いられている技術です。具体例には下記のようなものがあります。

1. ソフトウェア製品

ソフトウェア製品や、ソフトウェアを搭載した機器製品などでは、パフォーマンスデータを収集し、監視と分析のためにそれを遠隔地に伝達するプロセスをテレメトリーと呼びます。

テレメトリーにより、開発者の側で、ユーザーの嗜好・利用時間・利用パターンの情報を得たり、クラッシュ報告を得たりすることが可能です。ネットワーク管理では、個々のソフトウェアの情報収集にとどまらず、複数のネットワーク関連機器から稼働情報を収集して一元化する場合もあります。

2. 課金情報

テレメトリーは、ガスや電気のメーターでも利用されています。各世帯での利用量などのデータをガス会社・電力会社で遠隔取得することが可能です。また、自動販売機では、テレメトリーを用いて商品の在庫切れやつり銭の不足解消、売り上げ管理などが遠隔で行われています。

従来人が行っていた作業をテレメトリーで遠隔化することで、人件費の削減や、人為的ミスの予防などを行うことが可能です。

3. 生物・医療

生物学の分野では、発信器などを取り付けて行動・生理・環境に関するデータを遠隔測定し、行動や生態を調査することをテレメトリーと呼ぶ場合があります (バイオテレメトリー) 。前臨床研究 (毒性学、薬理学、安全性薬理学研究など) として実験動物に対して行うものや、野生動物の生態、環境保護を目的に行われるものもあります。

また、実際に医療分野で患者の容態を遠隔モニタリングすることにも用いられている技術です。無線テレメトリー方式の生体情報モニタでは、心電図・脈拍・血圧・体温・パルスオキシメトリーなどの情報をスタッフステーションなどに常時送ることができます。

4. その他

レーシングカーではセンサーなどを取り付け、タイヤの磨耗・ブレーキの温度・燃費などを離れた場所から観測することに用いられています。宇宙分野では、ロケットや人工衛星は地上の管理側から離れているため、テレメトリーによる観測が非常に重要です。

また、軍事分野では、遠隔監視や得られるデータをテレメトリーと呼ぶこともあります。

テレメトリーの原理

テレメトリーは、観測対象と観測する側のデバイスを通信でつなぐシステムです。無線方式で繋ぐ方法と有線方式で繋ぐ方法とがありますが、通常は無線方式であることが多いです。

観測する側には

  • センサや測定器・計測器
  • 測定データを電気信号などに変換して伝送するための送信機

が搭載されている必要があり、観測する側には

  • データ受信機
  • データを蓄積・分析するためのシステム

が必要です。

テレメトリーの種類

テレメトリーは、様々な分野で使用されている技術であることから、製品形態も様々なものがあります。

1. 産業分野

産業分野では、各用途に合わせたテレメトリー用センサー製品が多く販売されています。例えば、ドローン飛行に適した製品の例では、サーボセンサー、光学回転センサー、磁気回転センサー、温度センサーなどがあります。また、人工衛星搭載用のテレメトリー装置は、無線を用いて人工衛星の状態情報を送信する装置です。

2. 動物・前臨床研究

前臨床研究での動物実験用には、専用の製品が販売されています。ラット・マウスや、大型動物に埋め込むための装置や、ジャケット型 (主に手術や麻酔に耐えられない場合) の装置があります。

心電図、脳波、筋電図、眼電図、血圧、呼吸数、体温、加速度などを測定することが可能です。毒性学、薬理学、安全性薬理学研究などに広く役立てられています。

レーダーセンサー

監修:株式会社小森安全機研究所

レーダーセンサーとは

レーダーセンサーとは、電波を照射して跳ね返ってきた反射波から物体や人などを検知する仕組みのセンサーです。

レーダー (英: Radar) とは、radio detecting and rangingから頭文字を取ったアクロニムです。照射する電磁波には可視光線よりも波長の長いマイクロ波が用いられます。各種静止物体、移動物体や人の検出・監視・動体の速度や距離の計測を行うことができ、様々な分野で広く活用されている技術です。

国際標準化機構(ISO)の規格13849-1のパフォーマンスレベル(PL)、国際電気標準会議(IEC)の規格61508の安全度水準(SIL)や、アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.)の製品安全規格であるUL規格に準拠したものがあり、安全性に関わる場所で使用する場合はそうした規格に準拠しているかどうかも検討材料の一つになります。

レーダーセンサーの使用用途

レーダーセンサーは、物体検知・速度や距離の計測を行うことができる装置です。

1. 産業用途

産業用途では、衝突回避や侵入防止など、主に安全対策を目的として使用されます。主な用途としては下記のようなものがあります。

  • 工場における各種装置や工業用ロボット、切断機などと人との接触防止
  • 衝突回避システム (乗用車、トラック、フォークリフトなどの車両および、キャリア、ハンドラー、シップローダーなどの港湾機械)
  • 車両センサー・車載センサー (車両の移動速度や距離、物体の有無等を判定する)
  • 高精度液面検出・振動モニタリング

また、車載センサーは、自家乗用車においても運転支援機能として近年搭載されるようになっています。

2. 人感センサー/バイタルセンサー

レーダーセンサーは、人体を検知することができ、更に心拍数や呼吸数を非接触で取得することが可能です。そのため、人感センサーやバイタルセンサーとして使用される場合もあります。ただし、現段階では人体センターとして人体のみを検出することは難しく、人体以外の動きを検知する事があります。

  • 複数人のバイタル検出や複数の動体の追跡
  • 成人および乳幼児のベッドの見守り (脈拍と呼吸の計測およびベッドからの転落検出) 
  • 防犯カメラの機能拡張・交通量モニタリング

レーダーセンサーは非接触式であることと、イメージセンサーと異なり映像を伴わないことが特徴です。そのため、浴室やトイレなどのプライバシー配慮が求められる空間や、機密性の高い施設など、映像での監視を行うことが難しいシチュエーションにおいても使用しやすいというメリットがあります。

3. ポータブルデバイス

レーダーセンサーは、一部のスマートフォンに搭載されており、手の動きを追跡することでジェスチャーコントローラーとして使用されています。ウェアラブルデバイスや各種ポータブルデバイスにも搭載されていくことが見込まれている技術です。

レーダーセンサーの原理

1. 概要

レーダーセンサーは、マイクロ波や、さらに波長の長いミリ波を一方向へ照射し、物体に反射して戻ってきた反射波を解析することにより物体の位置などを検知します。

日本でレーダーセンサーに使用されている帯域には、79GHz帯 (帯域幅4GHz幅、距離分解能3.75cm) や60GHz帯 (帯域幅7GHz幅、距離分解能2.14cm)などがあります。また、レーダーセンサーは風や雨、霧、煙、粉体、光の影響を受けず、湿度、温度によっても検出能力は変化しません。このため、屋外環境や煙や粉体の多い環境でも高精度の検出が可能です。

2. FMCWレーダー (周波数変調連続波レーダー)

レーダーセンサーの中には、FMCWレーダーと呼ばれる連続波レーダーを採用しているものもあります。FMCWレーダーは、周波数変調した連続波を送信し、送信波と反射波の周波数差 (ビート周波数) から距離を求める方法です。

レーダーセンサーの種類

レーダーセンサーは、様々な分野で使用されているため、製品の種類も様々なものがあります。

1. 産業用

工場などで使用する産業用製品は、煙、ほこり、切粉、など、機械加工による廃棄物に耐えるように設計されており、製造機器などと接続して、機器の停止や再起動防止ができるようになっています。また、車載用や車両検知用などの製品は、屋外で使用されることを念頭に置いて雨などに強い構造になっていることが多いです。

2. 民生用

民生用機械では、人のバイタル検出や細かい動作の追跡などを目的とすることが多いため、脈拍検出、呼吸検出、動体検出などを想定した設計となっています。人が居るか居ないかだけではなく、人数や位置、動きを検出するなど、精緻な検出ができる製品も多いです。

本記事はレーダーセンサーを製造・販売する株式会社小森安全機研究所様に監修を頂きました。

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シンナー再生機

シンナー再生機とは

シンナー再生機とは、塗料やインキ、樹脂などが混入した廃溶剤 (シンナーなど) を回収・リサイクルするための装置です。

別名では、ソルベントリサイクラー、溶剤再生機、溶剤再生装置などと呼ばれることもあります。再生された溶剤は、洗浄用の溶剤として使用される他、再生液と新液を混ぜて使用される場合もあります。廃溶剤の再生により、資源の有効活用、産業廃棄物の処理費用の削減、新規溶媒の購入費用の削減などに貢献する装置です。

シンナー再生機の使用用途

シンナー再生機は、溶剤を使用する多くの産業において用いられています。主な使用産業並びに具体的な使用例は、下記の通りです。

1. 輸送用機器・機械

  • 自動車やその関連部品の製造・修理
  • 航空機製造・修理
  • 造船 (鉄船・FRP船)

2.  電子機器

  • 精密部品加工
  • 基盤加工
  • 半導体等脱脂洗浄工程排気処理
  • その他エレクトロニクス

3. 印刷

  • ペイント・インキ製造
  • グラビア印刷
  • オフセット印刷
  • フレキソ印刷

4. 金属

  • 金属加工ならびに脱脂
  • 金属家具製造

5. 化学・医薬品

  • 薬品・樹脂などの製造における乾燥・反応工程排気処理
  • 医薬品原体・中間体の製造における合成反応・遠心分離・貯蔵タンクからの排気処理
  • プラスチック製造・加工

シンナー再生機の原理

1. 概要

シンナー再生機は、廃溶剤を蒸留することにより再生溶剤を取り出す仕組みです。廃溶剤の再生機構の概要は下記の通りです。

  1. 蒸留タンク内に廃溶剤を投入します。

  2. 蒸留タンクをヒーターなどで加熱して廃溶剤を気化させます。ヒーターは通常、底部などに埋め込まれています。

  3. 溶剤蒸気が気化して、空冷コンデンサー内に入ります。

  4. 冷却ファンでコンデンサーが冷却され、溶剤蒸気が液化します。

  5. 再生溶剤が回収されると共に、樹脂や顔料などが固形の廃棄物として排出されます。

2. 再生処理可能な溶剤

  • 炭化水素系溶剤: キシレン、トルエン、n-ヘキサン、イソヘキサンなど
  • アルコール系溶剤: メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール (IPA) など
  • ケトン系溶剤: アセトン、メチルエチルケトン (MEK) 、メチルイソブチルケトンなど
  • エステル系溶剤: 酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ノルマルプロピルなど
  • ハロゲン系溶剤 (塩素系やフッ素系・臭素系) :塩素系溶剤:塩化メチレン、トリクロールエチレン、テトラクロールエチレンなど

3. 再生困難な溶剤

シンナー再生機は多くの溶剤を再生処理することが可能ですが、下記のような場合は再生処理することが困難です。

  • 沸点が280℃以上の場合
  • 廃液もしくは、再生液が酸性やアルカリ性の場合
  • 粘度が高い場合
  • ニトロセルロースが混入されている溶剤

ニトロセルロースは、インキ・塗料に含まれる場合がある物質ですが、135℃~165℃で発火する物質であるため、大変危険です。

シンナー再生機の種類

シンナー再生機には様々な種類があり、用途に合わせたものを使用することが重要です。

1. 連続式とバッチ式

シンナー再生機には、連続式とバッチ式とがあります。連続式とは、シンナー再生機のタンク内の廃溶剤が減ってくるとポンプで連続自動充填される方式です。廃溶剤の減少は蒸留タンク内の液面センサーで感知されます。

バッチ式は、タンクに一回充填した分の廃溶剤のみを処理します。

2. 圧力

シンナー再生機には常圧で蒸留する製品と減圧で蒸留する製品とがあります。常圧で蒸留する製品の場合、主に溶剤の沸点温度が約50℃~180℃の溶剤を処理することが可能です。

それよりも沸点の高い溶剤を処理する場合は減圧式の製品を用いる必要があります。減圧式の製品では概ね沸点250℃までの溶剤に対応しています。

3. その他

シンナー再生機には、様々な大きさが有り、10〜600Lまでの様々な廃溶剤容量に対応しています。また、防爆型と非防爆型があり、防爆型では防爆モーターが使用され、モーターと電気制御系統がカプセルで覆われた構造です。自動運転、自動停止機能を備えた装置もあります。

基板ケース

基板ケースとは

基板ケースとは、プリント基板などの電子基板を収納・保護するために使用する筐体・収納ケースです。

プラスチックや金属など、様々な素材があり、また、外観や形状についても様々な製品が販売されています。単純な収納や保管を目的として使用される場合もありますが、筐体として使用し、ケース内に格納したまま基板を使用する場合もあります。

汎用のケースを使用したり、必要に応じて特注ケースを用意することがありますが、様々なサイズのケースとパーツの組み合わせでカスタマイズ性を高めた基板ケースもあり、そうしたものを活用すればコストパフォーマンスが高くなる可能性があります。

基板ケースの使用用途

基板ケースは、機器製作や、電子工作の分野において、プリント基板などの基板を内部に収納することに用いられます。過酷な条件下で使用する場合は防水タイプという選択肢もあるなど、外部の混入物や、事故による損傷や破損から基板を保護し、更に配線の整備をより安全に行うことも可能です。また電子機器の筐体として使用することで、使用者のケガや感電を防ぐことができます。

基板ケースを使用する目的は、

  • 基板の単純な保管収納
  • 透明ケースなどを用いた観賞用・ディスプレイ用としての収納
  • 輸送を目的とした保護
  • 基板の使用時における保護 (機器筐体など)

などが挙げられます。

基板ケースの原理

基板ケースは、使用用途に合わせて様々な組立形状をしており、シンプルなものでは、コの字型の上蓋と本体を組み合わせた形状をしています。そのままで開閉できるもの、ビスで開閉するタイプのもの、或いは、ハメコミ構成により簡単に開閉できないようになっているものなどがあります。

筐体など基板を収納したまま使用する場合は、放熱性の優れたものを使用することが必要です。また、基板に合わせた端子穴が必要であるため、元々ケースに加工されている端子穴以外にも必要な場合は、追加工にて別途穴あけ加工が行われる場合があります。

基板ケースの種類

基板ケースは様々なものが販売されており、用途に合ったものを選択することが必要です。

1. 材質

基板ケースの材質については、プラスチック、アクリル樹脂、アルミ合金、スチールなどがあります。

樹脂素材の中には、難燃ABS樹脂、耐熱ABS樹脂、帯電防止アクリル材などの機能性樹脂が使用されている場合もあります。

特徴としては、ファクトリーオートメーション向け電子機器では、難燃性規格”UL94-V0″の準拠が要求されることが多く、耐薬品性、難燃性の観点からABS樹脂を避ける傾向がります。

PC/ABSアロイ樹脂はハロゲンフローで難燃性は問題ありませんが、耐薬品性が高くないため、耐薬品性、難燃性の高いPA66樹脂、PC樹脂が選ばれることがあります。

2. 外観

基板ケースの色や外観は様々なものがあります。基板の様子がよく分かる透明ケースや、金属の質感を生かしたメタリックなものがあります。

色も、白やグレー、黒などのシンプルなものから、配色されたカラフルなものまで様々な製品から選ぶことが可能です。機器筐体として使用することを目的としたものは、デザイン性が高い傾向にあります。

3. 放熱性

基板ケースに基板を入れたまま機器として使用する場合は放熱性に配慮することが必要です。製品によって対策は様々ですが、主な対策には下記のようなものがあります。

  • 通気孔を設ける
  • 冷却ファンを使用する
  • アルミなどの放熱性の優れた素材を使用する
  • 熱対策用の専用ヒートシンクを用いる

放熱対策がされていないケースについても冷却ファンの増設により使用が可能になる場合もあります。ただし、冷却ファンの増設は補助的な対策になることが多いため、はじめから基板の使用を想定した基板ケースを使用する方が安全です。

4. 大きさ・端子

基板ケースには様々な大きさの製品があります。使用する基板の大きさに合わせて適切なものを選択することが必要です。基板ケース本体が中に格納できるようでも、基板ケースと基板の大きさが合っていない場合には、SDカードなどの取り出しや、ケーブルの取り回しが難しいことがあります。

また、端子穴も製品によって異なるため注意が必要です。単純な保管目的を想定したものは、穴が開いていません。製品によっては、基板取付位置がカスタマイズ可能になっており、様々な製品にフレキシブルに対応できる場合もあります。

5. 取り付け・設置

基板ケースの多くは、置いて使用することを想定されています。製品の中には、専用アクセサリを用いるなどの方法で、ブラケットや壁面への取付けが可能となるものもあります。主な設置方法は次のとおりです。

  • 卓上平置き
  • 卓上自立
  • 壁面取付け
  • DINレール取付け

その他、二段にスタックする方法や、VESAマウントインターフェイスに対応しているものなどがあります。

4. その他

その他には、特殊な機能を付加したケースなどもあります。例えば、高周波基板ケースは、高周波基板のシールドの役割となるケースです。

デバイスプログラマ

監修:株式会社ノアリーディング

デバイスプログラマとは

デバイスプログラマとは、各種半導体メモリ (ROM) やプログラマブルデバイスに関してデータの読出し、書込み、消去などを⾏うことができる装置です。

別名では、ROMライターと呼ばれています。デバイスプログラマで書き込むことのできるデバイスとしては、フラッシュメモリ (NOR、NANDなど) 、シリアルフラッシュ、フラッシュマイコン、ロジックデバイスなどです。また、eMMCメモリ、UFSメモリに対応している装置もあります。

デバイスプログラマの使用用途

デバイスプログラマは、主に開発したデータをメモリ媒体 (ROM) に書き込むために⽤いられます。個⼈開発などにも使⽤されますが、産業⽤途でも多く使⽤されている装置です。⾃動化システムへ組み込んで⻑時間⼤量の書き込みを⾏うことに⽤いられる場合もあります。

また、書込み生産数量が大量でない場合にはデバイスプログラマを購⼊せずに、外部のROM書込みサービスを使い書込み作業を委託することもできます。

産業⽤途において量産書き込み使⽤される分野には下記のようなものが挙げられます。

  • アミューズメント業界デバイス
  • 民生機器、ホームオートメーション
  • 車載機器、インフォテインメント
  • 産業機器、工業的制御機器
  • 通信機器、事務機器、医療機器など

デバイスプログラマの原理

1. 概要

デバイスプログラマは、電気的にROMへデータの書き込み、消去などを⾏う装置です。PCを経由してROMへデータの書き込みなどを⾏う場合や、PCを経由せず単体 (スタンドアロン) でROMへ書込みを⾏う場合などがあります。

ROMへの書込みには、デバイス単体への書込みを行うデバイスプログラマ方式とデバイスが実装されたボードと専用線で接続しボード上のROMにリモートで書込みを行うオンボードプログラマ方式がありますがどちらも一般的には同じデバイスプログラマと呼びます。デバイス単体プログラマのことを別名でオフボードプログラマとかプリプログラマと呼ぶことがあります。

2. 主な機能

デバイスプログラマで可能な機能の例は下記の通りです。

  • マスターROMからバッファメモリへのデータコピー
  • データの消去 (イレーズ)
  • データ書込み
  • ROM書込み後読出しデータとバッフメモリデータとの⽐較 (ベリファイ)

デバイスプログラマの種類

デバイスプログラマは、様々な種類の製品が販売されています。製品ごとの違いを理解したうえで適切なものを選択することが必要です。

1. メモリ/マイコン品種への対応

デバイスプログラマは、1台で複数種類 (フラッシュメモリ、フラッシュマイコンなど) のメモリの書き込みが可能ですが、プログラマ毎に書込み可能な対象メーカ、品種、シリーズなどが異なります。デバイスプログラマを選択する際には、使用するROMの品種すべてに対応できることを確認します。通常一台のプログラマに対して、対象となる全てのROM品種に対応する専用プログラムとROMを載せるためのソケットを選択します。

2. ソケット (変換アダプタ)

ROMを接続するソケット部の数は、プログラマ製品によって異なります。複数個のソケットを持つ製品は、主に⽣産現場で複数個のROMに書き込みを⾏う場合に⽤いられる場合が多いです。卓上装置では、8個、16個、32個などがあります。

⼤型の全⾃動プログラミング装置では、デバイスプログラマを複数台搭載することで書込み生産能力を向上させ、最大で96ソケット~112ソケットまで搭載するものまで提供されています。

3. 書き込みメモリサイズ

デバイスプログラマでは、装置によって用途が異なるため書込み速度の違い (数MB/s~100MB/s以上) や同時に書込みできる最大メモリサイズの違い (バッファメモリ:1Gビット (128Mバイト) ~512Gバイト) があります。512Gバイトではインフォテインメント⽤途などの⼤量書き込みに適しており、1Gビット以下は小型民生機器の生産に適切です。

4. デバイス搬送用メディア (トレイ、テープ)

大量書込み生産をする際に、対象ROMを搬送する際に使用する搬送メディア (トレイ、テープまたはリール、チューブ) への対応が必要となります。一般的にはトレイでの搬送が主ですが、最近の小型デバイス (小型マイコン、フラッシュ) などではテープでの搬送の需要が高まっています。大型全自動書込み装置ではこのテープメディアへの対応が可能なものの要求が増しています。

本記事はデバイスプログラマを製造・販売する株式会社ノアリーディング様に監修を頂きました。

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AGV制御

AGV制御とは

AGV制御とは、工場などで稼働されているAGV、すなわち無人搬送車の安全かつ円滑な運行を管理するために用いられる、システムや装置などの製品です。

AGV(英: Automated Guided Vehicle ※)は、予め設定されたガイド (磁気テープ、ビーコン、バーコードなどにより、固定された経路) に従い、自動的に走行を行う車両です。ソフトウェアによって制御され、施設内での資材の運搬などに用いられます。経路上の障害物を検出して自動的に停止することは可能ですが、障害物を避けて自律走行することなどはできません。稼働台数が増えるとスムーズな運用を行うための課題が発生します。このような場合に、全体の運用を監視・管理・制御するため、AGV制御が利用されます。

AGV制御の利用用途

AGVは、工場や大型倉庫、病院における医療器材や、食事の配膳の搬送に用いられます。台車・フォークリフトやベルトコンベアに代わる資材搬送手段として利用されている技術です。予め設定した経路に沿って自動で走行するため、省力化や効率化の上でメリットがあります。

しかし、自動車工場や物流における大規模倉庫など、大規模な導入先では、稼働面積が広くなるとともに、稼働台数も増え、下記のような課題が発生します。

  • AGVの交差点、合流点が必要になり、運行管理が難しい
  • 稼働面積が広いため、遠隔地の監視が難しい
  • 稼働台数が多いため、全てのAGVの稼働状況を把握することが難しい
  • 軌道上の偏りや渋滞でスループットが低下する
  • シャッター、エレベーターなどの設備と連動が難しい
  • AGVが緊急停止した場所に所在地がすぐに分からない
  • 稼働状況の記録が難しい

これらの課題を解決し、円滑で安全な運用を行うための一連のシステムや装置などがAGV制御です。

AGV制御の原理

1. 制御システム型

稼働域内全体を制御するAGV制御システムは、無線環境と、無線通信を中心としたシステムを整備し、その中で無線子機を搭載したAGVを制御します。主な機能は下記の通りです。

  • 現在位置や走行速度・時間、バッテリーの蓄電量、センサーの異常検知などのリアルタイム監視
  • 停止・発進・稼働終了などの遠隔操作
  • 最短経路の自動生成と効率的な配車

また、蓄積された運行データを整理して、見える化表示や、解析ツールなどの別のアプリケーションと連携させることにより、業務改善に役立つというメリットもあります。

2. 個別装置型

全体を統括するシステムとは異なり、個々のAGVに取り付けることで制御を行うタイプのAGV制御もあります。

例えば、自動牽引装置では、台車など物流アイテムとAGVを接続することで、ワンタッチでの接続や自動切り離しなどが可能になります。また、レシーバーをAGVへ搭載し、リモコンで操作することや交差点制御を簡単に行うことができる装置もあります。

AGV制御の選び方

AGV制御には、上記の通り全体を制御するシステムや、個別装置をAGVへ搭載するなどの方法があります。システム型の方が全体の複雑な統括が可能ですが、地上設備や無線導入AGV自体の改造など、システム構築に準備が必要です。また、コストも高くなる傾向にあります。一方、個別装置を搭載する方法は、より簡素な機能ではありますが、コストも安価であり、導入も容易です。簡単な交差点制御や分岐合流コースの構築では個別装置型も有効に利用することができます。

システム構築型も、2.4MHz帯の無線LANではなく、920MHz帯のマルチホップ通信を利用することでコストダウンの工夫を行っている製品もあります。920MHz帯は2.4MHz帯よりも回り込み特性が良く、電波干渉が低く、消費電力も低いとされます。また、マルチホップ通信とは、バケツリレー式にデータを転送する無線方式です。1台の無線ユニットでは届かないような広い範囲でも、中継器や他の無線ユニットを経由させて通信を行うことができます。

これら各製品の特性を踏まえ、目的に合った適切な製品を選択することが重要です。

※Automatic Guided Vehicleと表記することもあります。国際標準やISOではAGVをAutomated Guided Vehicleとしていることからこの記事ではAutomated Guided Vehicleとしました。

表面改質装置

監修:フロイント・ターボ株式会社

表面改質装置とは

表面改質装置とは、粒子の表面に物理的処理や化学的処理を施すことによって新たな特性や性質を付与することに用いられる装置です。

表面改質とは、固体の表面に物理的・化学的な処理を施して表面の性質を変えることを指します。表面改質装置は特に粒子表面に表面改質を施す装置であり、新規材料・素材の創製や、既存の材料の性能の向上をもたらす技術です。表面改質処理には下記に分類される種類の処理があります。

  • コーティング処理 (成膜化)
  • カップリング処理 (極性の異なる無機物と有機物を繋ぐ働きを持つ官能基を粒子表面に結合させる) 
  • 複合化処理 (母核となる粒子(母粒子)に別の粒子 (子粒子) を固定化する)
  • 球形化処理

粉粒体の物理的な処理による改質としては高分子の物理吸着,高分子の成膜による被覆(コーティング),微粒子の吸着・積層あるいは融合(粒子複合化)による被覆などをあげることができます。化学的処理としては,粒子表面での種々の化学反応による改質が可能です。この中には,懸濁法によるマイクロカプセル化も含まれます。一般的には,表面改質は表面活性を変化させると定義されますが,コーティング,マイクロカプセル化の例にみられるように,実際的には,種々の機能性をもたらす手法ととらえることができます。

これらの処理によって、親油性、親水性、伝導性、流動性などのさまざまな機能を粒子に付加したり、不定形粒子を均一に球形化したりすることが可能です。どの処理に対しても、ターゲット微粉粒子に対して均一な処理が施されます。

表面改質装置の使用用途

表面改質装置は、様々な産業分野における粒子の表面改質に用いられています。粒子に対して、濡れ性の改善、徐放性の制御、発色性の向上・改善、球形化に代表される形状制御、溶解性の促進、固溶体の調製、アモルファス化、などの効果が期待される技術です。

1. 医薬品

医薬品分野では、製剤において、分包材の細粒や顆粒、また、打錠用顆粒の製造に用いられています。また、健康食品についても、分包材用、乾式打錠用粉末の製造に利用することが可能です。

医薬品材料に表面改質装置を利用することにより、アモルファス化、溶解性の向上などの効果が期待されます。

2. 食品

食品産業では、粉体一般に表面改質装置が使用されています。表面改質装置を使用することのできる具体的な製品の例としては、下記のようなものが挙げられます。

  • 粉末スープ類
  • 小麦粉ミックス
  • ふりかけ食品
  • 調味料類・スパイス
  • 酵母豆乳
  • コラーゲン・澱粉・にがり
  • 健康食品や食品添加物

3. 化学

化学分野では、

  • 電池材料や電子材料
  • 化粧品材料
  • 化学肥料
  • 触媒・酵素
  • 粉体塗料・トナー・顔料
  • 樹脂 (ベークライト・メラミン・塩化ビニールなど)

などの表面処理に表面改質装置が用いられています。具体的に取り扱われる物質としては、
リン酸鉄リチウム、鉄粉、水酸化アルミニウム、水酸化ニッケル、カーボンブラック、酸化チタン、マイカ、タルクなどが挙げられます。

シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、などを用いて、無機物のシランカップリングにも使用されている装置です。

表面改質装置の原理

1. 表面改質処理の概要

表面改質は、物理的方法で処理を行う方法と化学的方法で処理を行う方法とに大きく分類することができます。物理的処理を行う表面改質は、物理的な分子の吸着や成膜による被覆などを利用した方法です。化学的処理を行う表面改質では、粒子表面での種々の化学反応による改質を行います。

2. 表面改質装置の概要

表面改質装置は、溶媒などを用いる湿式と、溶媒を用いない乾式とがあります。例えば、乾式で物理的処理を行う装置では、高速の気流中に原料を分散させるなどの方法によって、衝撃力を主体とした力を用いて微粒子の表面を微粒子で表面改質・複合化を行います。また、この衝撃力により不定形粒子を均一に球形化処理を行う球形化処理も可能です。

加熱を伴う表面改質を行うことが可能な装置もあり、動作機構の一例は下記の通りです。

  1. 粉粒体を熱風中に噴霧し、分散させる 
  2. 温度350〜500 ℃の熱風により粒子の溶融を行う
  3. 表面張力により球形化・成膜化・固定化が成される
  4. 周囲から冷却エアが導入され、急速冷却される

この方法では、瞬間的な加熱・冷却が行われるため、材料の熱劣化が少なく、また、完全な分散状態で処理されるために粒子同士の造粒がないという利点があります。

表面改質装置の種類

表面改質装置には、様々な製品があり、用途に合ったものを選択することが必要です。前述の通り、乾式や湿式、加熱の有無などの種類があります。

装置によっては窒素ガスやアルゴンガスを用いた不活性ガス雰囲気中での処理が可能です。また、乾式の装置であっても、少量の溶媒を噴霧して使用することが可能なものもあります。動作機構も装置によって異なり、それぞれ逆方向へ回転するチョッパーとアジテータースクレーパーを用いて粒子を混合分散させるものや、熱風中に一方向的に粒子を分散噴霧するものなどの種類があります。多くの製品は、メンテナンス性の観点から、分解清掃が容易な構造です。

本記事は表面改質装置を製造・販売するフロイント・ターボ株式会社様に監修を頂きました。

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