歯科用3Dプリンター

歯科用3Dプリンターとは

歯科用3Dプリンターとは、歯列模型や矯正歯科、インプラント治療に利用する3次元造形物を製作する3Dプリンターです。

歯科治療においては、歯列模型やマウスピースをはじめとして、多くの3次元造形物が使用されます。3Dプリンターは積層造形であることから、造形用の金型を必要とせずにオーダーメイドで製作することが可能です。製作日数も従来法より短く治療期間を短縮することができます。また、歯科医院で内製化することも可能です。

歯科用3Dプリンターの使用用途

歯科用3Dプリンターは、歯列模型をはじめとするモデルの制作や、治療用のマウスピース、手術用のガイドなどを製作することに使用されます。具体的な製作物の例は下記の通りです。切削加工よりも自由な造形が可能であるという特徴があります。

  • 治療前もしくは治療後の口腔内の状態を患者と共有して確認し、矯正などを行う際の見本とする歯列模型
  • 補綴物 (歯の治療後のかぶせ物) を製作する際に必要な模型
  • 歯ぎしり防止用マウスピース
  • インプラントなど歯の手術を行う際の手術用ガイド (サージカルガイド)
  • ラミネートベニア
  • 歯形を取るためのトレイ

歯科用3Dプリンターを使用することで上記のような3次元造形物を製作することが容易となるため、コストや製作日数の削減を図ることができます。また、3Dプリンターで可能な作業を代替することで、歯科技工士がより高度な作業に注力することが可能です。保存データから必要に応じて再度同じものを製作できるため、歯列模型の本体を保管する必要がなくなり、省スペース化にも貢献します。

歯科用3Dプリンターの原理

歯科用3Dプリンターは、一般の3Dプリンターと同様に積層方式で造形し、いくつかの造形方式があります。

下記の中でも、歯科向けの3Dプリンターとしては、造形速度、造形精度のバランスの観点で、光造形 (DLP、SLA) 方式が主に使用されます。

1. DLP方式 (Digital Light Processing)

DLP方式とは、液体樹脂 (レジン) に対し、プロジェクターを用いて紫外線を面照射して硬化させる造形方式で、光造形方式の一種です。面で積層していくため、積層スピードが速く、高精細で大小幅広いサイズの造形が可能であるという特徴があります。ただし、造形面積を大きくしようとすると、解像度は下がります。

光源によってもコストや精度に違いが出ます。積層範囲と速度の両立を図って4Kプロジェクターを採用している製品もあります。

2. SLA方式 (Stereo Lithography Apparatus)

SLA方式も光造形方式の一種です。DLP方式が紫外線を面状に照射したのに対し、SLA方式は点状に照射します。材料の液体樹脂 (レジン) に点状の紫外線を当て、土台から少しずつ樹脂を固めて積層する仕組みです。一筆書きの要領で紫外線を照射するため、積層面積は広く取ることができます。また、パワーを出しやすく、装置の大型化もしやすいという特長があります。ただし、積層時間はDLP方式に比べて長くかかります。

3. インクジェット方式

インクジェット方式とは、粉末剤を噴射させながら光を当てて積層をしていく造形方式です。材料噴射法とも呼ばれます。点で積層していくため、積層時間はかかりますが、一方広い面積で積層ができ、高精細でリアルな造形物を作ることができます。

4. FDM方式 (材料押し出し方式 )

FDM方式とは、熱溶解積層方式とも呼ばれ、フィラメントを熱で溶かして造形していく造形方式です。熱で溶かした樹脂をノズルから押し出し、一筆書き状に1層ずつ積み重ねて造形します。プリンターの構造自体はシンプルなため、機種の価格が安く、材料費も安く済むことが多いです。

歯科用3Dプリンターの種類

歯科用3Dプリンターは様々なメーカーから多様な製品が販売されています。上記の通り、造形方法にはいくつかの種類があります。

また、造形可能サイズ・積層速度・積層精度のバランスは機種によって大きく異なっているため注意が必要です。積層速度と精度を優先した製品では、積層面積が非常に小さい場合があります。一方、大きな積層面積に対応している製品では、積層時間が思いの外長くかかる場合もあるため、導入前に確認することが必要です。

使用する用途・目的・規模に合わせて、バランスを取りながら機種選定を行うことが重要と言えます。

座席管理システム

監修:ダイトロン株式会社

座席管理システムとは

座席管理システムとは、主にフリーアドレスオフィスなどで使用される、座席の使用状況を管理するために用いられるシステムです。

オフィスにおけるフリーアドレス制は、スペースの有効活用や社内コミュニケーション推進などの効果があります。一方、空席状況や社員の現在地が分かりにくいといった問題を抱えることがあり、運用には工夫が必要です。座席管理システムは、座席の利用状況を可視化したり事前予約を行うことでフリーアドレス制のオフィス運営を円滑にすることができます。

座席管理システムの使用用途

1. 基本用途

座席管理システムは、主にフリーアドレス制のオフィスで活用されています。基本的な用途としては、

  • 空席状況・座席使用状況の把握
  • 社員の位置情報・出勤情報の把握
  • 座席の予約

があります。

フリーアドレス制のオフィスでは、フレキシブルなコミュニケーションを取りやすいというメリットがあります。一方で、

  • 空席状況がわかりにくい
  • 各社員の所在が分かりにくい
  • ミーティングや会議のためのスペースを確保するために手間がかかる

などの問題が発生しやすいというデメリットがあります。座席管理システムを利用することで、これらの問題を解消し、円滑なフリーアドレス制を運用することが可能です。また、座席管理システムで利用状況を可視化することにより、オフィスレイアウトの見直し・最適化に役立てることもできます。感染症発生時における、濃厚接触者の把握にも有効です。感染症追跡を目的とした座席管理では、大学などの座席を指定しない教育施設においても座席管理システムが有効に活用されています。

2. 付帯機能を用いる用途

座席管理システムの中には、基本機能の他に付帯機能を持たせている多機能製品もあります。この場合は、座席管理以外にも、会議室の予約、社員検索などを連動して行うことが可能です。

具体的な機能の例としては

  • 会議室の予約を行う機能
  • 社員がどこにいるかを検索する機能
  • 時間ごとの使用履歴の出力・分析
  • 社員の在席履歴の出力・分析
  • 感染症影響分析などのため、近接デスク利用者を特定する
  • カレンダーアプリケーションとの連携
  • タイムカードや勤怠記録との連携

などが挙げられます。

座席管理システムの原理

1. 基本機能

座席管理システムは、オフィスのレイアウトに合わせた座席・図面画面上に、現在の空席や、使用者の名前 (もしくはアバターなど) をリアルタイムで表示します。また、特定の座席に対し、利用する時間を前もって指定して予約することもできます。座席の使用開始/終了は、座席にてスマートフォンやカードのタッチ、QRコード読み取りなどの方法によって切り替えられる仕組みです。

座席管理システムにおいて各座席に設置されるFeliCaなどのICを使用したシステムでは、複製が困難であり、座席の一意性を担保します。座席の状況はPC及びスマートフォンで確認することが可能です。

2. 出力・集計

座席管理システムの利用データを集計して分析することにより、

  • オフィスのレイアウト最適化・省スペース化
  • 勤怠実績・出社率の集計などによる社員管理の効率化

などに役立てることができる場合があります。

座席管理システムでは、通常、利用データのCSVを時間帯別・デスク別・社員別などで出力することが可能です。

座席管理システムのその他情報

座席管理システムは、基本機能は前述の通り概ね共通であるものの、製品によって付帯機能が大きく異なります。

例えば、テレワーク中の社員の勤務状況を把握できるようなシステムも存在します。

本記事は座席管理システムを製造・販売するダイトロン株式会社様に監修を頂きました。

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炭塗料

炭塗料とは

炭塗料とは、各種炭を原料とした自然塗料です。

炭塗料とは、主にはパウダー状に加工した炭を成分として含む、水性塗料です。ホルムアルデヒド・エチレン・アンモニアをはじめとする種々の有害ガスを吸着する効果が期待され、シックハウス症候群対策に優れているとされます。消臭効果や調湿効果、防水効果、断熱効果などが期待され、屋内外に使用される塗料です。製品によっては、ホルムアルデヒドの発散量を表す等級において、F☆☆☆☆ (最も飛散量が低い) を獲得しています。

炭塗料の使用用途

炭塗料は様々な建築物に使用される塗料です。屋内外への仕様が可能であり、室内はもとより、外壁、建物基礎内部への塗布も行われます。台所、床下、玄関、天井板、梁、柱、洗面所、台所、浴室、エクステリアなど、幅広い用途での仕様が可能です。

実際の使用事例として、下記のような例があります。多くの事例は、炭塗料の質感や外見を生かす意匠としての利用や、空気環境浄化の機能を期待した利用などです。

  • 古民家改修における外装塗装
  • 鉄骨への塗装
  • 外壁・ブロック塀への塗装
  • 城外装塗装
  • 駅舎の内装及び外装塗装
  • 空気環境浄化とコンクリート保護延命を目的とした幼稚園や学校などへの塗装
  • 地熱を利用する全館空調建築に対する、空気環境浄化を目的とした床下への塗布
  • 焼き杉板など、呼吸する素材への自然塗布

鉄骨などの無機質の素材に塗布することで、木造のような温かみのある印象を与えることができます。

炭塗料の原理

1. 概要・組成

炭塗料は、パウダー状にした炭と、樹脂成分などを含む水性塗料です。炭と合わせて、炭素セラミック、銀系抗菌剤などが配合される場合もあります。炭には、主に備長炭が用いられますが、赤松木炭や竹炭が使用される場合もあります。樹脂にはアクリル樹脂などが用いられ、通常の合成樹脂エマルジョンペイント (1種規格など) と同様に使用することが可能です。

2. 機能・効果

炭の表面は無数の穴が空いた多孔質となっていることが知られています。この多孔質に化学物質や水、空気を吸着する効果により、炭塗料は様々な効果が期待されます。孔の大きさが揃っている程、優れた作用を示す素材です。

  • 有害ガスの吸着 (シックハウス症候群対策) : ホルムアルデヒド、エチレン、アンモニア、硫化水素、酢酸、キシレン、トルエンなどを吸着
  • 吸放湿効果 (調湿効果)
  • 調湿効果による室内のカビ・ダニ発生抑制 
  • 孔内の空気層による断熱作用
  • 建材中の水分除去による凍結破損抑制
  • 水分除去によるアルカリ骨材反応抑制
  • CO2遮蔽によるコンクリートなどの中性化防止作用

炭塗料の断熱作用によって、夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことが可能です。居住空間の快適性を上げるだけでなく、水分除去や中性化防止などにより、建材やコンクリートの延命作用もあります。また、シロアリは炭を食べないことから、炭塗料を柱や建物基礎に塗布することによって防蟻効果も期待されます。遠赤外線放射による省エネルギーの他、有害電磁波の遮蔽、マイナスイオンの供給も期待される効果です。

通気性と防水性を兼ね備えていることから、台所や浴室などの水回りにおいても、吸放湿・防カビなどの効果を期待することができます。

炭塗料の種類

炭塗料は、複数のメーカーから販売されており、製品の種類があります。外装内装共に使用可能な製品が多いですが、内装のみ使用可能な製品もあるため、注意が必要です。

使用されている炭の種類では、備長炭、赤松木炭、竹炭などがあります。また、機能性や効果を高めるため、他の成分が添加されている製品もあります。添加剤として用いられる物質の例は、炭素セラミックや銀糸系の抗菌剤、ヒバ油などが添加されるなどです。

容量の種類は、16kg、4kgなどがある製品や、18kg一斗缶のみの製品のものなど製品によって異なります。用途や目的に合わせて製品を選定することが必要です。

フォークリフト動線分析ツール

フォークリフト動線分析ツールとは

フォークリフト動線分析ツールとは、工場や物流倉庫などにおいて搬送業務に使用するフォークリフトの動線を可視化し、台数・運用の適正化を図るツールです。

製造業や物流業によって用いられるフォークリフトは、稼働状況を正しく把握することが難しく、台数過剰になりがちです。また、一般的なフォークリフトでは稼働時間を確認することはできますが、走行場所、時間ごとの稼働状況や、空走行と積載走行の比率など、詳細な稼働データを把握することはできません。

フォークリフト動線分析ツールは、このようなフォークリフトの稼働にあたって動線を可視化し、運用を最適化するために使用されるツールです。

フォークリフト動線分析ツールの使用用途

フォークリフト動線分析ツールは、工場や物流倉庫などで稼働するフォークリフトをはじめとする業務用車両の動線や稼働状況を可視化するために用いられます。フォークリフト動線分析ツールによって、フォークリフトの滞留時間、移動距離や、稼働率 、時間別帯の稼働状況の分析が可能です。

これらの分析により、工場や物流倉庫における搬送業務の課題を解決することができます。具体的な改善事例としては、

  • 工場や倉庫におけるフォークリフト配車の効率化
  • 工場や倉庫におけるフォークリフト動線の最適化、作業効率化やレイアウトの改善
  • 稼働率の低いフォークリフトを可視化し、台数削減によるコストカットを行う

などが挙げられます。例えば、動線の交差や特定個所への集中的なアクセス、また、特定個所・特定時間帯における滞在時間や車両数など、現場の課題を可視化することが可能です。

フォークリフト動線分析ツールの原理

フォークリフト動線分析ツールでは、RFIDやビーコンをはじめとする情報通信を利用してフォークリフトの動線を可視化します。動線の可視化と共に

  • 稼働率と稼働時間帯
  • ドライバーごとの運転時間
  • 積載走行と空走行の時間比率
  • 走行距離
  • 走行速度

も可視化することが可能です。

また、倉庫/工場内の施設データとしては、積載走行が多いエリア、空走行が多いエリアなどを可視化することができます。

1. ビーコンを利用するフォークリフト動線分析ツールの例

ビーコンとは、ごく限られた範囲にのみ届く無線通信を使用する情報通信の仕組みです。例えば、倉庫内に位置ビーコンを設置し、フォークリフトに積載センサーと搭乗ビーコンの設置を行うようなケースがあります。

位置ビーコンは各フォークリフトの正確な緯度・経度を1秒単位で把握します。フォークリフトの通路や作業場に一定の間隔で取り付けることで動線を取ることが可能です。搭乗ビーコンは、フォークリフトの運転席に取り付けるセンサーです。搭乗ドライバーとフォークリフトの対応を時間ごとに把握することができます。

積載センサーはフォークリフトの爪元に取り付けるセンサーです。荷物を積載している時に反応し、積載走行の時間と空走行の時間を把握することが可能です。積載センサーの情報と位置ビーコンの情報を加味することにより、積載走行エリアと空走行エリアの判別を行うことも可能です。

2. RFIDシステムを用いたフォークリフト動線分析ツール

RFIDシステムとは、RFIDタグと呼ばれるタグ内の情報を電波や電磁波を用いて認識し、データを読み書きするシステムです。全てのフォークリフトにRFIDリーダーを設置し、倉庫随所にRFIDタグを配置します。

これらの仕組みにより通過情報の他、滞留時間や稼働率を算出することが可能です。

フォークリフト動線分析ツールの種類

フォークリフト動線分析ツールは複数種類の製品が販売されています。前述の通り、ビーコンやRFIDによる車両追跡を行うソフトウェアの他、UWB、Wi-Fi、PDRなど他の追跡方法に対応している製品もあります。

現場によっては、複数の追跡方法 (位置測位センサー) に対応している製品が必要です。例えば、複数の建物間を移動するフォークリフト動線の場合は、屋内はビーコン、屋外はGPSなどに自動的に切り替える製品を用いることで動線分析が可能となります。

また、製品によっては現状の稼働データを取得するだけではなく、適正フォークリフト台数の提示を行うことが可能です。このように、用途や目的に合わせて適切な製品を選定することにより、十分な効果を得ることができます。

AGV・AMR制御FMS

AGV・AMR制御FMSとは

FMSとは、Fleet Management Systemの略でAGV (無人搬送車、英: Automatic Guided Vehicle) やAMR (自律走行搬送ロボット、英: Autonomous Mobile Robot) などの搬送業務を行うロボットの複数台の効率的な制御を行うシステムです。

AGVやAMRなどの搬送ロボットは、物流倉庫や製造現場を中心に搬送業務の省力化・効率化を目的として導入が進められています。FMSは複数の自動運転車両の走行予定・計画などを管理するためのシステムで、群制御モジュールなどと呼ばれる場合もあります。

FMSを活用しエレベータ―と連携した搬送を行うAMR

新たに発生したタスクに対して、どのAGVやAMRをアサインするのが最適なのか、渋滞やお見合い状態を避けるためにはそれぞれのAGVやAMRにどのような経路を割り当てればよいのか、などを判断し、最適な運行計画を実現します。

AGV・AMR制御FMSの使用用途

AGV・AMR制御FMSは、AGVやAMRなどの搬送ロボットが用いられている現場において導入されています。特に、複数台のAGVやAMRが用いられているような広い倉庫や工場などの現場での活用が中心です。

複数台のAGVやAMRが動いている現場においては、FMSなどの上位システムが交通整理をしなければ、搬送機同士が通路に同時侵入し、どちらも動けずに停止してしまうデッドロック現象が発生してしまいます。また複数台を効率的に動かし、生産性を最大化するためにはタスクの割り振りやそれぞれのAGVやAMRのたどる経路を最適化しなければなりません。

FMSは、上記のシチュエーションにおいて、複数台のAMR、AGVの統括的かつ効率的な制御を行い、工場や倉庫の搬送自動化の基盤となっているシステムです。

AGV・AMR制御FMSの原理

1.  概要

FMSは、搬送ロボットへのタスクの 割り当て (配車制御) 、各AGVやAMRへの経路の割り当て(経路生成) 、交差点などでの同時侵入回避制御(交差点制御)などの機能を主とし、複数台のAGVやAMRの搬送効率を最大化するシステムです。

各搬送ロボットの稼働状態をリアルタイムで監視した上で上記の制御を行っているため、UI (ユーザーインターフェース) では各機体のリアルタイム位置やログなどを確認することができます。また、走行距離、異常回数や残充電量なども管理して、充電スケジュールの調整します。

2.  配車制御

新たに発生したタスクに対してどのAGVやAMRをアサインするかを決定するのが交差点制御機能です。それぞれの機体の現在のステータス (搬送中なのか、帰還中なのかなど) 、残充電量、リアルタイム位置などを考慮し、多くのケースでは「もっとも近くにいて手空きの機体」をアサインします。

3.  経路生成

それぞれのAGVやAMRに最適な経路を割り当てるのが経路生成機能です。各機体のリアルタイム位置や目的地を考慮し、単純に最短な経路を生成し割り当てるケースだけではなく、現在運行中のAGVやAMRの残存パス (今後通る経路) を考慮し、できるだけ重複や渋滞を避ける経路を割り当てます。

4.  交差点制御

交差点の通行や、すれ違いのできない狭い通路の走行を制御するのが交差点制御機能です。交差点においては右側優先や、タスクの優先順位付けなどのルールに基づき、片方に進行許可をもう片方に一時停止命令を出し、同時侵入し停止してしまう状態に陥らないように管理します。

狭い通路の走行に関しては、両側からAGVやAMRが同時に侵入してしまうと鉢合わせしてしまうため、仮想的な信号を設け、機体の通路への侵入を管理します。

AGV・AMR制御FMSの種類

AGV・AMRを制御するFMSは、様々なシステムがあります。メーカー間の差として注目されるのが接続性です。多くのシステムが特定のAGVやAMRとしか接続することができない一方で、一部のFMSはメーカーや機種をまたいだ自動搬送機の群制御を行っています。

また、工場や倉庫を自動化する際に連携が必要なのはAGVやAMRだけではありません。PLCで制御されるプレス機や溶接機、フォークリフト、ロボットアーム、エレベーター、MESやWMSなどの上位システム、との情報共有及び協調制御が必要になります。FMSを自動化プラットフォームととらえた際に、いかに接続性、拡張性が高いかが焦点となります。

AMR(自律走行搬送ロボット)

監修:Industry Alpha株式会社

AMR(自律走行搬送ロボット)とは

AMR(自律走行搬送ロボット)とは、倉庫や製造現場などで搬送業務を行うロボットの一種です。

AMRは、周囲の環境地図を作成することができ、現在位置を推定して自動で経路探索をしながら目的地まで走行することができます。AGV (Automatic Guided Vehicle) と異なり事前にガイドを設置する必要はなく、障害物や人を自動で避ける機能があります。AMRとは、Autonomous Mobile Robotの頭文字を取った略語です。また、協働型搬送ロボットと呼ばれる場合もあります。

AMR(自律走行搬送ロボット)の使用用途

AMRは重量物を扱う工場や倉庫などを中心に搬送業務を代行することに使用されています。人と作業エリアを共有して協働し、複雑なルートで搬送を行うことに用いられることが多いです。主な用途には下記のようなものがあります。

  • 物流倉庫などにおけるピッキング業務・搬送業務
  • 製造業における工程間搬送、部品・材料搬送
  • クリーンルーム内へ機材の搬送
  • 医療施設内での書類の配布・回収
  • 医療施設内でのリネンや配膳カートの搬送
  • 商業施設における商品の補充や陳列、在庫監視
  • 飲食店における自動配膳

台車やパレットなど多様なものを運搬できるAMR(自律走行搬送ロボット)

AMRは、人との協働を前提に開発されていることから、例えば、倉庫などでは作業者が商品をピッキングし、AMRが搬送を担うなどの役割分担が行われています。また、ピッキング作業ができる、アーム状協働ロボットを組み合わせたAMRも活用されます。

ピッキングから搬送、設置までが可能なAMR(自律走行搬送ロボット)

AMR(自律走行搬送ロボット)の原理

1. 概要

AMRは、搭載されたセンサーで周囲の状況を把握し、機体に荷物を載せられて自律移動する仕組みです。AGVが磁気テープやランドマークなどの誘導体を必要とするのとは異なり、AMRは、SLAM (英: Simultaneous Localization and Mapping:スラム)  機能を搭載し、周囲の環境地図を作成して自動で経路探索すると共に、人や障害物をセンサーで感知して回避しながら目的地まで走行します。

また、タブレット端末などで指示した目的地に向かわせたり、進入禁止領域を設定したりすることも可能です。

2. センシング技術

前述した自律走行を実現するため、AMRには複数のセンサーが搭載されています。AMRはこれらの高精度かつ複数のセンサー情報を融合することで、精度の高いルート作成を行い、運用されています。まず、基本となるセンシング技術は、レーザーを用いた距離センサー (LiDAR) や3Dカメラです。これらを用いて、機体から周囲の壁や柱までの距離を推定し、周囲の2次元や3次元の環境地図を作成しています。

また、更に

  • 走行距離を測定するエンコーダ
  • 機体の向きの変化を測定するジャイロセンサ

などの情報を組み合わせることで、現在位置の推定や機体の姿勢などを算出することが可能です。これらの情報をもとにSLAM技術を用いて目的地までの最適な走行ルートが算出されます。安全面では、LiDARやカメラで人や障害物を即時に感知して、自動回避、停車するようにプログラムされています。

AMR(自律走行搬送ロボット)の種類

AMRは、製品の種類によって搭載されているセンサーが異なったり、また用途に合わせて機能が異なっていたりします。例えば、大きさでは最小通行幅80cm程度のコンパクトなものもあり、このような製品は狭い製造現場に最適です。積載量は製品によって大きく異なり、積載量100kg、300kgなどの製品から2500kgまで耐えられる製品まで様々なものがあります。

積載量が500kg、1000kgのAMR(自律走行搬送ロボット)

広い現場をターゲットとして販売されている製品では、複数台同時制御に対応しており、多いものでは最大200台の同時制御が可能です。また、特定の機能に特化している製品もあります。ピッキング用のアームが付いている製品では、

  1. 自律的にAMRが棚まで移動
  2. 棚の中の対象物を掴む
  3. 搬送を実行
  4. 搬送先へ対象物を配置

の4つのステップを全自動で完了させることが可能です。用途や現場、目的に合わせて適切な製品を選定することが必要です。

 

本記事はAMR(自律走行搬送ロボット)を製造・販売するIndustry Alpha株式会社様に監修を頂きました。

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生物脱臭装置

監修:ミライエ株式会社

生物脱臭装置とは

生物脱臭装置とは、微生物の代謝を利用して臭気を分解・除去する装置です。

アンモニアや硫化水素などをはじめとする、動植物由来の悪臭ガスに有効です。微生物が付着した充填材、微生物の乾燥を防止する散水装置などから構成されます。一般に薬剤等を使用せず、電気代と散水用の水を循環するための費用のみで稼働できることからランニングコストが低いです。また、耐久性、耐食牲に優れているため長期間に渡って使用することができます。

生物脱臭装置の使用用途

生物脱臭装置は、主に動植物などの有機物由来の悪臭ガスの分解脱臭処理のために使用されます。アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル等の各種臭気に対応しており、主には下記のような用途があります。

  • 養豚場、鶏舎などの畜産施設
  • 下水処理場、し尿処理場、汚泥処理施設
  • 堆肥化施設・食品リサイクル施設
  • 食品加工工場
  • 農業集落排水処理場、家畜糞尿処理、水産加工排水処理
  • 縦型コンポストで発生する高温・高濃度アンモニアの処理
  • 製紙工場で発生する悪臭ガスの処理
  • バイオガス発電で発生する悪臭ガスの処理

生物脱臭装置の原理

1. 動作機構

生物脱臭装置は、主に微生物を定着させる充填材と、微生物の活動活性化と乾燥防止のための散水装置から構成されています。分解脱臭の過程で生じる酸を処理するため、中和設備が併用される場合もあります。

脱臭の仕組みは下記の通りです。

  1. 下部の吸気口から悪臭ガスが吸気される
  2. 吸気されたガスがガス拡散部を経由して上部の脱臭槽へ拡散される
  3. 悪臭成分は、散水された水に溶解してから、あるいは気相中からそのまま、脱臭槽・脱臭塔の充填材に生息する微生物表面に吸着される
  4. 吸着された悪臭成分は、微生物のエネルギー源として増殖に利用される
  5. 硫黄化合物とアンモニアは酸化されて硫酸や硝酸が生成し、浄化されたガスは上部から放出される

微生物を吸着させる充填材には、多孔質ガラス材や、ガラス発泡材、木質系炭素材、ポリプロピレン・ビニロンなどの繊維状担体が使用されることが多いです。充填材は、充填物の表面積が大きく、気液接触効率に優れている担体が使用され、その中に微生物を高密度で生息させる仕組みです。繊維状担体ではループ状にするなどの工夫により、比表面積が大きくなっています。

散水装置で使用される水は、通常、循環水方式が取られており、循環水槽とポンプが併設されます。タイマーによって処理水が間欠的に散水され、環境に配慮されています。

2. 特性

生物脱臭装置の主な特性は下記の通りです。

  • 圧力損失が低い (悪臭ガスは担体に沿って鉛直方向に通過するため)
  • 優れた処理効果 (担体密度が常に均一に保持でき、ガスが偏流しないので処理効果が優れる)
  • メンテナンスフリー (消耗品や薬品がなく、担体は耐食性・耐久性に優れているため交換が不要)
  • 経済性に優れている (動力はブロワとポンプによる電気のみであり薬品コストがなくランニングコストが低い)
  • 土壌脱臭法などと比べて設置面積が小さい

生物脱臭装置の種類

生物脱臭装置には、上記で紹介した固相型の他にも、曝気式やスクラバー式などの液相型があります。装置によっては低エネルギー化に力を入れており、散水に循環水方式、送風に低圧ブロワを使用することで、CO2排出量や電気使用量が大幅に削減されます。規模には様々なサイズが有り、目的用途に合わせて選定することが重要です。

また、製品によっては、断熱材入りの二重壁構造が採用されています。二重壁は外気温の変化による装置内の温度変化を抑制し、寒冷地での温度低下や高温時における槽内の温度上昇を防止することが可能です。温度変化に敏感な微生物の活性が損なわれないようにすることができます。また、天井が低い現場に対応する横型タイプの活性炭脱臭を使った製品では、脱臭カートリッジを側面から装填することが可能です。設置場所や、用途などに合わせて適切なものを選択することが必要です。

本記事は生物脱臭装置を製造・販売するミライエ株式会社様に監修を頂きました。

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無垢フローリング

監修:ボード株式会社

無垢フローリングとは

無垢フローリングとは、無垢材を材料としたフローリング、すなわち一枚板を切り出して製造されたフローリングのことです。

合板でできた一般的なフローリングを複合フローリングと呼びます。無垢フローリングは、複合フローリングよりも木材の持つ柔らかい肌触りや温もりなどを感じられることが特徴です。

また、一枚一枚に違った表情が出やすく、天然の木目の表情や色味の違いなどを生かした雰囲気づくりをすることができます。熱伝導性が低く断熱性に優れることから、素足で歩いた際には質感の心地よさを感じることが可能です。

無垢フローリングの使用用途

無垢フローリングは、一般的な複合フローリングよりも高級で木材の風合いを楽しめるフローリングとして使用されます。一般住宅の他、ホテル、商業施設、オフィスフロアなどで、高級感のある空間づくりをしたい際に導入されています。また、保育施設・幼稚園・学校など、素足で歩いた際の質感と無垢材の温かみが重視される教育施設でも積極的に採用される床材です。

武道場やダンススタジオなど、素足での使用が多くなる運動施設にも積極的に導入されます。また、寺社などの和風建築でも施工実例があります。いずれの場合も、新築・リフォーム工事共に使用することが可能です。

無垢フローリングの原理

1. 概要・製造

無垢フローリングとは、伐採した木材をそのまま一枚板の木材に加工して製造されるフローリングです。製造の工程は大きく分類して下記のようになります。

  • 原木伐採・製材
  • 乾燥 (天然乾燥・人工乾燥)
  • 裁断加工・研磨加工 (厚み・幅・裏溝加工)
  • 塗装

伐採された原木は曲がりや反りが無いよう水分調整されながら製材され、板の含水率約10%を目安に蒸気式乾燥釜で乾燥させます。長辺・短辺の加工とともに裏溝加工が行われますが、この裏溝加工の役割は、表面の割れ止めや反り止めなどです。施工時に余分な接着剤をこの裏溝に逃がすこともできます。表面は補修やサンディング処理によって滑らかにされ、オイルステインやウレタン塗装などの塗装を施された後に出荷されます。

2. 特性

無垢フローリングは天然の一枚板であるという特徴から、下記のような特徴があります。

  • 材料木材特有の風合い
  • 木材自体の特性による経年での色の変化
  • 熱伝導率の低さと優れた断熱性
  • 調湿作用
  • 修復がしやすい

無垢フローリングは、1枚1枚違った木目や節などが出るため、材料木材の風合いを楽しむことができます。木材特有の香りが楽しめることも特徴です。また、木材は経年によって色が変化し、樹種によっては色が濃く、赤みが増し、樹種によっては色が薄くなり白っぽくなります。このように天然素材の雰囲気を味わうことのできるフローリング材です。

また、熱伝導率が低く断熱性に優れているため、素足で触れても冬は冷たく感じにくく、夏はべたべたしにくいという点も特長の1つです。また、水分を吸収・放出する調湿作用があります。夏の高温多湿の際には水分を吸収して部屋の湿度を下げ、冬の乾燥の時期には無垢材から水分を放出するため、室内の快適性を上げる効果があります。

無垢フローリングの種類

1. 樹種

無垢フローリングには、様々な樹種の木材が用いられます。スギ、ヒノキ、パインなどの針葉樹の樹種は、材質が柔らかい傾向にあり、明るめの色が多いです。一方、広葉樹は木が締まっており、硬く耐久性に優れている傾向にあります。無垢フローリングに用いられる代表的な広葉樹の樹種は、オーク、アカシア、メイプル、ウォールナット、バーチ、チークなどです。チーク、ブラックウォルナット、マホガニーは、特に三大銘木として知られています。

2. 塗装

表面の塗装仕上げは大まかに2種類です。オイルステイン・自然オイル仕上げなどと呼ばれるものは、植物油などを原料とした自然塗料で、木材に染み込ませて保護するものです。無垢材の質感や風合いを感じることができますが、こまめなお手入れと年一回程度のオイル塗布が必要となります。

ウレタン塗装仕上げとは、ウレタン系の合成樹脂を主成分とする塗料で、無垢材の表面に薄い膜をつくります。オイルより無垢材ならではの風合いなどは減るものの、耐水性、傷に強いなどに優れています。

3. その他

使用される建築物・施設による種類、貼り合わせ方の違いなどがあります。例えば、武道場用では通常より厚手の無垢フローリング材が用いられます。貼り合わせ方には、通常のユニタイプの他、乱尺、ヘリンボーン、パーケットなどがあります。

本記事は無垢フローリングを製造・販売するボード株式会社様に監修を頂きました。

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太陽光PPA

太陽光PPAとは

太陽光PPAとは、電気を必要とする需要家 (個人や企業など) の屋根や敷地に、PPA事業者が太陽光発電設備を設置するサービスです。

PPA事業者は、太陽光発電設備の所有者となり、設置から運用、メンテナンスまでワンストップで行います。需要家は、発電された電気を自社で使用し、使用量に応じてPPA事業者にサービス料金を支払います。

「PPA」とは、Power Purchase Agreement (電力販売契約) の略で、第三者所有モデルとも呼ばれています。PPAと比べられるサービスに、「自社所有」があります。自社所有は初期費用が高く、運用・管理・保守を自社で行う必要があるのに対し、PPAは設置費用などの初期投資が要らず、運用・管理・保守にも手間がかからないことがメリットです。

太陽光PPAの使用用途

1. 電気代の削減

太陽光発電設備が大きい、日射量が多いなどの条件によっては、太陽光PPAのサービス料金が、電気料金より安価になり、電気代の削減が期待できます。また、太陽光PPAによる発電量の分だけ、電力会社から購入する電気が減るため、電気のデマンドが下がり、電気料金の基本料金を低減することができます。

また、太陽光PPAのサービス料金単価は、一般的に固定料金で、約20年の長期契約となります。一般的に変動料金である電気料金と比べて、長期にわたって、コストの変動リスクを抑えることができます。

2. CO2排出量の削減・脱炭素経営

太陽光発電は温室効果ガスの排出量ゼロの再生可能エネルギーです。CO2排出量の削減に繋がり、企業にとっては脱炭素経営の推進となります。CO2排出に伴う増税や法規制のリスクを回避することができ、自社及び製品のブランディング効果が高まることで投資家や金融機関からの評価の向上も期待することができます。

3. BCP対策

太陽光PPAを導入することで、災害時などの停電の際に、一定量(事業所の電灯等)として使用できる場合があります。蓄電池を併用する場合には、発電した電力を貯めておくことで、太陽光発電ができない夜間などにも電気を使用することが可能です。これらのことから、太陽光PPAの導入により、停電によって、事業の継続が困難になるリスクを回避・軽減できる可能性があります。

太陽光PPAの原理

1. 概要

太陽光PPAとは、電気を必要とする需要家 (個人や企業など) の屋根や敷地に、PPA事業者が太陽光発電設備を設置するサービスです。PPA事業者は、太陽光発電設備の所有者となり、設置から運用、メンテナンスまで集約できます。

2. 契約体系

一般的な契約期間は15年〜20年であり、需要家は、発電された電気を自社で使用し、使用量に応じてPPA事業者にサービス料金を支払います。

太陽光PPAの選び方

1. 契約期間

PPA事業者との契約期間は、一般的に15~20年程度です。そのため、例えば屋根に太陽光設備を設置する場合は、建物の建て替えが長期間不要かを確認し、短期間で建て替えしないといけない場合は太陽光PPAの契約期間も短期間に変更できるか、あらかじめPPA事業者に確認することをお勧めします。

2. 運用・管理・保守の内容

太陽光発電設備の運用・管理・保守はPPA事業者が担いますが、その内容はPPA事業者によって異なります。運用・管理・保守の方法や頻度は、設備の安全性や発電効率に影響することもあります。設備が故障したときの修理対応の有無など、あらかじめ確認することをお勧めします。

また、電気の使用状況などを把握・管理し、適切に運用する技術・サービスがあるかどうかも、PPA事業者を選ぶ際のポイントです。

3. 契約満了後の対応

契約満了後の対応も、PPA事業者によって異なります。「太陽光発電設備の所有権を自社に移転して継続して使用したい」、「契約を延長して引き続きPPAモデルを利用したい」、「設備を撤去したい」といった需要家の希望とPPA事業者の契約内容が合致しているかが重要です。

また、契約期間が長期であるため、契約満了後の自社の状況や方針を、導入前に予測することが難しいこともあります。そのため、契約期間中に改めて、契約満了後の対応を協議することができるのかも、あらかじめ確認することが大切です。

4. 余剰電力の取扱い

電気の使用量が少ない需要家は、使用量にあわせて小規模の太陽光発電しか設置できません。そのため、太陽光発電を設置できる場所が十分にあっても、大規模な太陽光発電を設置できず、せっかくの広い敷地が無駄になることがあります。

しかし、余剰電力買取のオプションをつけることで、需要家の敷地により多くの太陽光発電を設置することができ、実質的にサービス料金単価を低減することができます。余剰電力買取ができるかどうかも、PPA事業者を選ぶポイントです。

5. 蓄電池などの多様なサービス

PPA事業者が提供している多様なサービスやサポートを確認することもPPA事業者を選ぶ上で重要です。

例えば、BCP対策(事業継続計画)として、太陽光発電に蓄電池を組み合わせる需要家が近年増えつつあります。太陽光発電で発電し、余った電気を蓄電池に溜めておくことで、台風などの災害で系統電力の供給が止まってしまった場合なども、一部の電気設備を使用することができます。さらに、太陽光発電は天候などで発電量が変動するものですが、蓄電池に溜めた電気を電気の使用量の多い時間帯に放電することで、デマンド調整に寄与し、電気料金の削減にもつながる場合があります。

また、CO₂フリーの電気料金メニュー等のサービスもあわせて導入することで、さらに脱炭素化を進めることもできます。自社の脱炭素目標を達成するために、太陽光発電以外のサービスを組み合わせの可否も、PPA事業者を選ぶポイントになります。

コーポレートPPA

コーポレートPPAとは

コーポレートPPAとは、企業や自治体などの法人がPPA事業者から自然エネルギーの電力を長期に購入する契約を結ぶサービスです。

PPAとは、Power Purchase Agreement (電力販売契約) の略で、太陽光発電を設置する場所が無い企業や自治体が、太陽光発電で発電した再生可能エネルギー電力を、長期間、安定的に購入できるサービスです。PPA事業者が需要家構外の広い土地等に太陽光パネルを設置して発電し、電力系統(送電線)を通じて需要家へ電気を供給します。

従来の太陽光発電では、自社の屋根に太陽光パネルを設置するモデルが一般的でしたが、屋根面積が小さいと発電量が少なくなってしまいました。一方でコーポレートPPAは、需要家構外の広い土地に太陽光パネルを設置するため、発電量が多くなり、需要家の敷地面積に関わらず多くの再エネ電力を使用することができます。

コーポレートPPAの使用用途

1. CO2排出量の削減・脱炭素経営

太陽光発電は温室効果ガスの排出量ゼロの再生可能エネルギーです。CO2排出量の削減に繋がり、企業にとっては脱炭素経営の推進に繋がります。CO2排出に伴う増税や法規制のリスクを回避することができ、自社及び製品のブランディング効果が高まることで投資家や金融機関からの評価の向上も期待できます。

また、証書などと異なり、太陽光発電設備は需要家毎に専用に新設しますので、追加性(新たな再生可能エネルギー設備の増加を促す効果)に整合します。その上、契約期間は一般的に20~25年となるため、長期間・安定的に再エネ電力を購入できます。

2. 電気料金の変動リスク低減

コーポレートPPAのサービス料金単価は、一般的に固定料金で、20~25年の長期契約となります。一般的に変動料金である電気料金と比べて、長期にわたって、コストの変動リスクを抑えることができます。

コーポレートPPAの原理

1. 概要

コーポレートPPAとは、太陽光発電を設置する場所が無い企業や自治体が、太陽光発電で発電した再エネ電力を、長期間、安定的に購入できるサービスです。PPA事業者が需要家構外の広い土地等に太陽光パネルを設置して発電し、電力系統(送電線)を通じて需要家へ電気を供給します。

2. 料金・契約期間

需要家は、発電された電気を自社で使用し、使用量に応じてPPA事業者にサービス料金を支払います。一般的に、サービス料金単価は固定料金で、初期費用は無料となります。
月々のお支払額=初期費用0円+1ヶ月の電気使用量×サービス料金単価(固定)
一般的な契約期間は20年〜25年です。

3. 適用条件

コーポレートPPAで発電された電気は、自社で使用する必要があるため、発電している時間帯に電気を多く使用する需要家に適しています。具体的には、土日なども含めて年間を通じて日中に電気を使用する、年間約500万kWh以上の使用量の需要家に適しています。