誘電率測定装置

監修:キーコム株式会社

誘電率測定装置とは

誘電率測定装置とは、物質の分極のしやすさの指標である誘電率を測定するための装置です。

誘電率は蓄えられる電気の大きさを表す指標となっているため、誘電率の測定は、コンデンサ用の材料や絶縁体の性能を評価するシーンで利用されています。誘電率測定装置には、インピーダンスアナライザや、各種共振器が用いられます。共振器を用いる共振法には、様々な種類の共振器を用いた測定方法の種類があり、測定物に合わせて最適な方法が使用されます。

誘電率測定装置の使用用途

誘電体とは、電気伝導率が低い絶縁体でありながら分極性があり、低い周波数や 中程度の周波数領域では電荷を蓄えることができる物質です。下記のような製品に用いられています。

  • 電子機器の絶縁材料
  • コンデンサの電極間挿入材料
  • 半導体素子のゲート絶縁膜
  • 圧電素子
  • 強誘電素子センサ
  • トランスジューサ

信号の遅延・減衰・反射・クロストーク・放射などの信号伝送の品質は、材料のもつ電気特性によって大きく左右されます。優れた高周波特性を持つ材料を開発する上では、電気材料の特性を正確に把握することが必要です。誘電体の利用の上で、誘電率測定装置は下記のような用途で利用されます。

  • コンデンサ用の誘電材料の評価
  • 液晶材料に混入した不純物イオンの検出
  • 有機半導体の移動度の測定
  • 固体電解質の電導度評価
  • 回路基板に使用される絶縁材料の評価

尚、誘電率測定装置で測定される誘導体には下記のようなものがあります。

  • 高速ディジタル、マイクロ波回路の基板材料
  • 通信用誘電体アンテナ、フィルタ用低損失誘電体、高誘電体
  • 薄膜材料、多層構造材料、新素材
  • 半導体向け絶縁材料
  • 医用電子機器
  • 化学薬品
  • 各種粉体、液体
  • ケーブル絶縁体
  • 樹脂
  • ガラスやセラミックス類

誘電率測定装置の原理

1. 概要

誘導率測定装置には、いくつかの種類があり、大きな分類では下記のように分けられます。

  • 容量法 (集中定数法) : 測定試料を電極で挟んでコンデンサを形成し、キャパシタンスとコンダクタンスを測定して誘電率を得る方法 (インピーダンスアナライザ)
  • 反射伝送法 (S パラメータ法) : 伝送線路に測定試料を設置し、電磁波をかけることでその反射特性や透過特性から誘電特性を評価する方法
  • 共振法: 共振器内に微小な誘電体や磁性体を挿入した際に生じる、共振器内の共振周波数やQ値の変化量を測定して誘電率を測定する方法

上記の方法はそれぞれ、周波数範囲によって使い分けられます。数μHz~数100MHz範囲においては容量法を利用したインピーダンスアナライザが使用されることが多いです。それよりも高周波領域では、反射伝送法や共振法が利用されます。

誘電率測定装置の種類

誘導率測定装置には、測定対象物に合わせて様々な装置があります。下記は具体例の一部です。

 1. インピーダンスアナライザ

インピーダンスアナライザは、容量法の誘電率測定に使用されています。測定試料を2枚の電極に挟み、電圧または電流の交流を印加する仕組みです。測定したインピーダンス値から、誘電率や誘電損失を計算することができます。

固体液体を問わず物体の状態に合わせて状態に合わせてサンプルホルダを購入または製作することができるため、比較的測定が容易です。また、他の測定方法に比べて比較的コストが低いです。

2. 空洞共振器

空洞共振器とは、導体壁で囲まれた空間内に、その寸法及び形状で定まるある特定の波長の電磁界のみが成長する共振現象を生じさせることで、誘電率及び誘電損失を測定する装置です。

フィルム、板/シート状のサンプルを短冊状に一定の幅に切断して測定するタイプの装置や、共振器の間のギャップにシート状サンプルを挿入するタイプの装置などがあります。

3. 同軸共振器

同軸共振器とは、サンプルの平坦な面を共振器の上に置くだけで誘電率の測定が可能な共振器です。同軸共振器は、共振器上部に小径の開口部があり、そこからはみ出るわずかな近接場 (エバネッセント波) が測定サンプルに浸潤し、共振器全体の共振周波数、Q値がサンプルの複素誘電率に応じて変化する仕組みです。このQ値の変化量から誘電率を算出します。

携帯端末の筐体部品や、多ピンコネクタのモールド樹脂、各種素材開発品の測定に特に適している種類の共振器です。

本記事は誘電率測定装置を製造・販売するキーコム株式会社様に監修を頂きました。

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ADASテスト

監修:キーコム株式会社

ADASテストとは

ADASテストとは、自動車の運転支援システムであるADAS: Advanced Driver-Assistance Systems (先進運転支援システム) の開発試験を行うサービスです。

ADASには、ドライバーや歩行者の安全性と快適性を高めるために運転操作を支援する自動車の様々なシステムが含まれます。あくまで運転の主体は人でありながら、車両システムを部分的に自動化、適応、強化することで、ヒューマンエラーを最小限に抑え、交通事故を減らすことが可能です。このようなADASには、センサー、カメラ、車載ECUを始めとする、様々な技術が必要となります。ADASテストは、このような技術試験を行う環境を提供するサービスです。

ADASテストの使用用途

ADASテストは、自動車のADASシステムの開発におけシミュレーションやテストソリューションを提供する目的で使用されます。

ADASは、車両周辺の状況を把握するためのさまざまなセンサテクノロジーのデータを用いて、動作する運転支援システムです。ミリ波センサーやレーザーレーダー、カメラなどの個々のハードウェア機能の試験や、それらと接続する車載ECUの試験、仮想空間におけるシステム全体の試験、更には、テストコースなどにおける実車試験などがあります。実際の交通環境で起こりうる様々な状況を想定した様々な試験が行われます。

ADASテストの原理

1. ADASの技術要素

ADASの実現には、外界に対するセンサー技術、車体の制御などを行う車載ECU、高速かつ正確な車載ネットワーク、車載ローケータなどが必要です。主な構成要素には下記のようなものがあります。

  • ミリ波レーダー: 周辺物体までの相対距離を計測する
  • レーザーレーダ (LiDAR) : 遠距離にある対象までの距離や、その対象の性質を分析する
  • 車載カメラ
  • 位置計測センサー
  • ADASロケーター: 衛星測位、ジャイロセンサーや車速測定などを組み合わせた測位システム
  • 車載ECU (電子制御ユニット)
  • 車載ネットワーク
  • 超音波センサー (ソナー)

2. ADASの機能

上記のようなADASの技術要素から実現されるADASの代表的な機能については下記のようなものがあります。

  • 車間距離制御装置 (ACC: Adaptive Cruise Control System)
  • 前方衝突警告 (FCW: Forward Collision Warning)
  • 衝突被害軽減制動制御装置 (AEBS: Advanced Emergency Braking System)
  • ナイトビジョン/歩行者検知 (NV/PD: Night Vision/Pedestrian Detection)
  • 交通標識認識 (TSR: Traffic Sign Recognition)
  • 車線逸脱警報 (LDW: Lane Departure Warning)
  • 車線逸脱防止支援システム(LKAS: Lane Keeping Assist System)
  • 死角モニタリング (BSM: Blind Spot Monitoring)
  • 後退時車両検知警報 (RCTA: Rear Cross Traffic Alert)
  • ドライバー監視システム (DMS: Driver Monitoring System)
  • 自動ヘッドランプ光軸調整 (AFS: Adaptive Front lighting System)
  • 高度駐車アシスト (APA: Advanced Parking Assist)

3. ADASテスト

ADASのテスト環境は、開発段階に合わせて、主に次の3種類があります。

  • 仮想空間においてプログラムの上でセンサシミュレーションなどを行う
  • ミニチュア模型などを用いて走行試験を行う
  • 実車に必要な装置を組み込み、テストコースや公道での走行試験を行う

ADASには、機能毎に用いられる外界を認識する各種センサ技術、画像認識技術などのような判定技術、ステアリング操作などの自動車操作技術があり、開発の初期ではそれぞれの機能別にテストが行われます。開発の後期では、複数の車両やソフトターゲットを使用して複雑なシナリオを作成し、実車での検証が必要です。歩行者、車両などのソフトターゲットの他、さまざまな気象環境が想定されます。高い精度でドライバーの操作を再現するため、運転操作ロボットが導入される場合もあります。

ADASテストの種類

ADASテストには様々なあり、下記はその例の一部です。

1. 停止車両との車間距離計測

AEBS (衝突被害軽減制動制御装置)、FCW (前方衝突警告) は、事故を回避のための重要なシステムです。これらのシステムは前方の道路状況や自車の状態を正しくモニタリングすることが必要です。

このような機能のテストのため、GPSを利用してリアルタイムで障害物との距離を±2cm の精度で測定することのできるシステムが提供されています。

2. 室内テストシステム

室内でのテストシステムは、実路走行データに基づき、高い精度で実環境をシミュレーションにて再現するシステムです。様々な課題となるシーン再現し、台上での評価を可能とします。ときにはリアルとバーチャルを融合した環境が使用されることもあります。

本記事はADASテストを行うキーコム株式会社様に監修を頂きました。

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現場管理システム

現場管理システムとは

現場管理システムとは、工事現場などにおいて本社、各営業所、現場、それぞれをつないで施工管理等を行うシステムです。

施工現場の安全管理・監督や、文書や図面などのデータ管理、カメラなどと連携した災害対策や、一連のワークフローにおける申請・承認などの履歴保存など、安全・品質に関わる業務を包括的に管理することができます。建設業の様々な企業で採用されており、ペーパーレス化、現場の省力化、働き方改革に大きく貢献している製品です。

現場管理システムの使用用途

現場管理システムは、工事現場などにおいて、施工管理の効率化・業務品質の向上に使用されています。戸建住宅の新築・修繕や、大規模建築の新築・修繕、設備施工など、様々な分野の工事現場で使用されているシステムです。大手住宅メーカー、大手大規模改修工事会社、住宅建材会社などで採用されています。

例えば、傘下に支店・営業所を持つ、或いは下請け先があるような工事のケースでは、現場管理システムを活用して本社からの一括管理を行うことにより、請負工事の管理と業務時間短縮を行うなどの用途があります。また、会社間での複雑な業務連携が必要なケースにおいて、施工管理を効率化する目的で使用される場合もあります。

現場管理システムの原理

現場管理システムは、安全管理・品質管理を効率化する機能や、その他現場管理・監督の様々な業務を軽減する機能が備わっています。

クラウド上でシステムを管理することにより、現場と事務所との往復コストが減少したり、報告書等の作成の手間を軽減したりすることが可能です。残業減少、働き方改革にも効果があります。主な機能は以下の通りです。

1. 安全管理

現場管理システムを利用することで、徹底した安全パトロールをシステム内で管理したり、カメラを設置して連携することにより、足場監視、防犯対策を行うことができます。

また、カメラによる監視を行うことにより、災害時の現場確認・対応にも役立ちます。

2. 業務管理

現場管理システムは、スマートな業務遂行、現場の省力化にも貢献します。

  • クラウド上における文書や図面の一元的データ管理
  • 申請・承認のワークフローをクラウド上で管理

書類の管理では、社内共通の書類や、現場ごとの図面や写真データ・実績データなどを一元的に管理することができます。工事情報・チェックシート・写真台帳など、全てを管理することができるため、報告書作成・データ整理の手間を省くことが可能です。

また、申請・承認のワークフローや、本部からの一斉指示、現場と事務所のコミュニケーション・データ共有を一括で管理することができ、状況把握やタスク管理が容易になります。業務のペーパーレス化、管理・監督の省力化や、円滑な施工に貢献します。

3. 品質管理

現場管理システムでは、品質チェックシートの機能を用いることで判断基準を統一して高い品質を担保することが可能です。写真を利用したレポート作成も可能であり、更にチェック漏れや撮影漏れを防ぐために、予め撮影ポイントの登録を行うこともできます。

また、データを一元的に管理するため、有資格者への検査依頼や、複数人での同一検査も従来より容易かつ有効に行えるようになり、品質向上の効果も期待できます。

現場管理システムの選び方

現場管理システムは、複数製品が提供されており、それぞれ機能面で特色があります。上記で述べた基本機能の他には、例えば下記のような機能の例があります。

  • 自社の業務に合わせたカスタマイズ機能
  • 必須事項のTo Doリストを作成して関係者全員で共有
  • 受注工事の契約金額・予算管理機能
  • 入金・請求管理機能
  • 地図や駐車場情報を共有する機能など現場サポートに特化した機能

自社の施工業務に合わせて、必要な機能を備えた製品を選択することが必要です。これら機能性に加えて、コスト、操作性 (UI) 、利用可能端末などに注意して選定する必要があります。

インサートナット熱圧入機

監修:プロステック株式会社

インサートナット熱圧入機とは

インサートナット熱圧入機とは、熱をかけながらプラスチック素材にインサートナットを挿入する装置です。

インサートナットとは、プラスチック素材に埋め込んで、素材同士のジョイントを強化するための締結ねじです。プラスチックは金属素材よりも機械強度が低く、樹脂同士をつなぎ合わせただけでは容易にジョイント部分が外れます。インサートナットは金属製であり、樹脂素材のジョイント部を強化して外れないようにするため埋め込まれます。

熱圧入機は、インサートナットに熱を加えるため、埋め込まれる側のプラスチック素材にも熱が伝わって柔らかくなります。圧入が容易になるだけではなく、埋め込み完了後にはプラスチック素材が固まって強度が高まることが特徴です。

インサートナット熱圧入機の使用用途

インサートナット熱圧入機は、プラスチック成型品へ締結用のねじ (インサートナット) を挿入するために使用されます。主な用途には下記のような分野での製品の製造や組み立てがあります。

  • 自動車 (車載機器、バッテリー部品、吸気系部品、センサー部品、ラジエター周り部品、エンジン部品、ドアパネル、フレームの固定)
  • パソコン、タブレット、スマートフォン
  • 電子機器 (基板上の部品固定や端子、コネクタの取り付け) 
  • バーコードリーダー
  • 住宅用設備
  • ガスメーター、電力量計
  • 端子台、各種コネクタ
  • 各種産業用機器

インサートナット熱圧入機の原理

1. 概要

圧入機は、強固なフレームと専用の圧入ツールで構成されており、空気圧、電動、または手動の力で動作します。自動で動作する圧入機は、モーターや制御装置を備えており、圧力、速度、深さを調整して正確な圧入作業を行います。

熱圧入機の場合、素材の下穴にインサートナットをセットして、熱源からインサートナットへ熱を加えます。インサートナットからプラスチック素材に熱が伝わり、プラスチックを部分的に溶融しながら挿入する仕組みです。対応しているプラスチックはPOM・ABS・PPなどがあります。挿入後はプラスチックが冷えて固化するため強度も良好です。

インサートナットの挿入方法には、成形後インサートと、成形時インサートとがありますが、インサートナット熱圧入機は成形後インサートに使用される方法です。

2. 工程

工程・手順は各メーカーにより違いますが、下記はインサートナット熱圧入機の手順の一例です。

  1. 成形品製品にインサートナットをセットする
  2. 熱圧入機のステージ (台) に成形品製品をセットする
  3. 加熱体を下げる
  4. 熱がインサートナットから成形品に伝わり、樹脂を溶融しながら自然にインサートナットが挿入される
  5. 加熱体を上げる
  6. ステージから成形品製品を取り外す

インサートナット熱圧入機の選び方

インサートナット熱圧入機は、ワークスペースの大きさや、
メンテナンス要件などの点以外の他には、下記にも考慮すると良いでしょう。

1. サポート

インサートナットの熱圧入は、プラスチック製品 (ワーク) に金属製のめねじを固定する高度な技術です。この技術は特に、インサートナットの圧入を専門とする企業が非常に少ないため、経験豊富で技術的な知識を持った業者の選定が重要です。

ワーク材質や形状、インサートナットの種類により精密な調整を施し、最適な圧入条件を見極めることで、部品の品質を高めます。

2. 操作性

機械が操作しやすいかどうかは、生産性と安全性に影響します。操作が簡単な機械は、トレーニングに時間がかからず、オペレーターエラーのリスクも少なくなります。

3. コストパフォーマンス

単純で安価なものから細かい設定ができる高価なものまであります。専用機・汎用機、1台〜複数台を導入することを踏まえて検討することが大切です。

4. 実績

単純に機械を販売しているだけでなく、圧入実績があるかも重要ポイントです。製品開発段階や量産段階で圧入経験があるかも含めて検討すると良いでしょう。

インサートナット熱圧入機の種類

1. インサートナット熱圧入機には様々な種類の製品があります。装置によって、動力の種類、必要な動作圧力、および加圧対象物の特性などが異なるため、用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

温度調節機、タイマー、バッチカウンターなどを備えた装置もあります。

1. 動力の種類

圧入動力には、手動で動作するハンドプレス方式のほか、スイッチ操作で自動で挿入が行われる電動式の装置もあります。

手動式の製品は、手動で手軽に操作・位置決めを行うことができることが特徴で、特に使用数の少ない製品や試作品に便利です。

自動式の製品では、水平・垂直の位置をプログラムで管理し、ハンドレバーがついていて、自動式/手動式を切り替えることができる製品もあります。

2. 単軸/多軸

インサートナット熱圧入機のうち、多軸の製品では一度に複数箇所のインサートナット挿入が可能です。複数の挿入箇所がある場合、多軸製品を用いることで、作業工数を大幅に削減することができます。

本記事はインサートナット熱圧入機を製造・販売するプロステック株式会社様に監修を頂きました。

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フラッシュプログラマ

監修:株式会社コンピューテックス

フラッシュプログラマとは

フラッシュプログラマとは、フラッシュメモリへの書き込みを行う装置です。

これは、デバイスプログラマ (ROM ライタ) の一種で、特にフラッシュメモリに特化したものを指します。フラッシュROM ライタと呼ばれる場合もあります。フラッシュプログラマには、パソコンに接続してフラッシュメモリに書き込むタイプや、パソコンで作成した書き込みファイルをフラッシュプログラマに保存し、スタンドアロンで書き込むタイプのものがあります。また、書き込み方式によってオンボードや、オフボードをサポートする機種など様々なタイプがあります。フラッシュプログラマは、主に生産現場で使用されますが、ソフトウェア開発時や、最終製品のフィールドメンテナンスにも使用されます。

フラッシュプログラマの使用用途

フラッシュメモリは、工業的および産業的に様々な機器に組み込まれ、制御プログラムやデータを記憶するためのデバイスです。フラッシュメモリにはNOR型とNAND型があり、主な使用例は以下のようになります。

NOR型:産業機器、家電、プリンタ、携帯情報端末、車載機器

NAND型:パソコン、スマートフォン、デジタルカメラ、車載機器 (ナビの地図データ、ドライブレコーダーなど)

フラッシュプログラマは、これらのフラッシュメモリにプログラムを書き込むために使用されます。主な使用用途としては以下の通りです。

  • 組込み機器の生産ラインでの書き込み
  • 車載機器(ドアセンサやミラー制御など)のMCUへの書き込み
  • 各種製品の現場でのファームウェア更新
  • 検査工程の一部としてプログラムの書き込み

オンボード・プログラミングに対応している製品では、基板実装後や最終工程において基板実装済みのフラッシュメモリを書き換えることが可能です。生産・検査システムに組込んで使用したり、LIN接続などを利用して複数の車載機器などに書き込みを行える機種も存在します。外部信号を接続してフラッシュメモリへの書き込みや、書き込み状態の取得が可能な機種では、生産システムの自動化が実現できます。

フラッシュプログラマの原理

1. 概要

フラッシュプログラマは、フラッシュメモリへ電気的にデータの書き込み、消去などを⾏う装置です。CPU内蔵フラッシュメモリでは、JTAGまたはSWDなどの接続方法で書き込みが行われます。UART接続やLIN接続に対応しているものもあります。また、シリアルフラッシュメモリの場合は、SPI信号をハードウェアで直接制御して書き込む、専用のフラッシュプログラマもあります。

2. 主な機能

  • フラッシュメモリの全領域の一括書き換え及び、部分書き換え

  • 書き込み内容の読み出しと照合 (ベリファイ)

  • 書き込みデータファイルの読み込み (ヘキサファイル、ELF ファイルなど)

  • フラッシュメモリの全消去

  • フラッシュメモリのプロテクト設定・解除

フラッシュメモリの種類によっては、セキュリティやプロテクトの機能を搭載したものがあります。こういったデバイスは初期状態で書き込みが禁止されていることがあり、フラッシュプログラマにはプロテクト解除、書き込み、再プロテクトを行う機能が必要とされます。

フラッシュプログラマの種類

1. オンボード/オフボード

フラッシュプログラマには、オンボードとオフボードの書き込み方法があります。オンボードとは、ボードに実装されたフラッシュメモリへの書き込みで、オフボードとは未実装のフラッシュメモリへの書き込みです。

フラッシュプログラマには、それぞれオンボードとオフボード専用の機種があり、本体にアダプタを接続して、両方に対応できる機種もあります。オブボード用のフラッシュプログラマは、1個単位で書き込むタイプや、一度で複数個に書き込める、ギャングライタと呼ばれるタイプがあります。

2. NOR型/NAND型

フラッシュメモリにはNOR型、NAND型があります。NOR 型フラッシュメモリは、ランダムアクセスの読み取りが高速で小容量に適しており、主に機器に組み込んで制御プログラムの記憶装置として使用されます。NAND型フラッシュメモリは、大容量のデータストレージに適しており、USBメモリ、SDカード、SSDなどのストレージに使用されています。

フラッシュプログラマにも、NOR型、NAND型それぞれに対応した機種があります。両方に対応している製品もありますが、対応機能はNOR型とNAND型によって異なる場合があります。

3. その他

その他、フラッシュプログラマには、下記のような機能を搭載している機種もあります。

  • SPI フラッシュメモリ書き込み専用の機種
  • 複数個の書き込みデータ保存可能
  • モバイルバッテリーで動作可能
  • フラッシュプログラマからボードへの電源供給が可能
  • 検査システム等に組込んで外部から制御可能

本記事はフラッシュプログラマを製造・販売する株式会社コンピューテックス様に監修を頂きました。

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エレベーターシステム

エレベーターシステムとは

エレベーターシステムとは、エレベーターの安全運用を目的として遠隔監視などの役割を担う通信システムです。

従来のエレベーターの保守は、人力での通報・監視・点検保守に頼る部分が大部分でした。ネットワーク・IoTを活用した現在のエレベーターシステムにおいては、エレベーターとサービス拠点との通信を利用し、自動での異常検知並びに報告・自動点検・遠隔復旧などを行うことが可能となります。

エレベーターシステムの使用用途

エレベーターシステムは、主にエレベーターの安全運用と保守管理を目的として導入されています。エレベーターの状態を、サービス拠点 (管制センター) に逐次送信するとともに、トラブル発生時にはエレベーター内の利用者と音声通話を行うことも可能です。災害時などの緊急停止の際、オペレーター側から利用者に外部の状況など、情報提供を行うこともできます。エレベーターの安全運用のため、備えられている主な機能は下記の通りです。

  • 平常時の運行状況・機器状況の遠隔監視
  • 緊急停止などの際におけるオペレーターへの自動通報
  • 緊急時などにおけるエレベーター内とオペレーターとの音声通話
  • トラブル時の遠隔復旧・遠隔救出
  • 自動点検・機器変調の診断
  • 運行データの収集・解析

エレベーターシステムの利用によって遠隔で利用状況を知ることができるため、現地確認・点検などのコストを削減することができるというメリットがあります。また、現地での作業員対応が必要なトラブルの場合も、遠隔監視システムで予め情報を得てから出向くことができるので、作業時間の短縮・作業の効率化に繋がります。

また、機器による遠隔監視・点検により、ドアの開閉状態や開閉に関わるベルトの緩みなどを目視よりも更に細かく正確に定量することが可能です。目視で点検ができない部分についても、点検が可能になる場合があります。そのため、エレベーターシステムの導入により、異常の早期発見精度が向上するという効果もあります。

エレベーターシステムの原理

1. 構成

エレベーターシステムは、エレベーターに設置する「デバイス」、エレベーターとサービス拠点を繋ぐ「ネットワーク」、データを蓄積する「クラウド」の要素から構成されます。

デバイスは、エレベーターに付属している各種の監視装置・センサーに接続しており、ネットワーク経由でサービス拠点とやり取りします。緊急通報用のスイッチがついており、非常時には音声通話機能を備えます。

使用されているネットワークは、PHSや公衆電話回線、ISDN、LTEなどです。近年、高速・大容量回線であるLTEへの移行が進められています。従来の通信は、データ通信と音声通話との通信を切り替える必要がありましたが、LTEを利用したVoIPはデータ通信と同時に通話が可能なため、通話と遠隔救出作業を同時に行えることが長所です。また、Wi-Fiネットワークは、配線用ケーブルを必要としないというメリットがあります。

また、動作に関わるデータにはクラウド・サーバーを活用することで、システム構築に関わるコスト削減が行われている場合があります。

2. 監視・点検項目

エレベーターシステムで監視・点検が行われる項目には下記のようなものがあります。それぞれにセンサーが設置されており、データはネットワーク経由でサービス拠点へと送信されます。

  • 制御関連 (機器温度・ブレーキ動作状態・接触器動作状態・制御機器動作状態)
  • かご関連 (戸の開閉・ゲートスイッチ動作・押しボタン動作・インターホン電源)
  • 昇降路内における安全スイッチの動作
  • 乗場 (戸の開閉・ドアスイッチ動作・乗場操作盤の押しボタン動作)
  • 走行状態 (起動状態・着床状態)
  • 運行状況 (月毎起動回数・階床別利用状態)

エレベーターシステムの種類

エレベーターシステムは複数の企業から提供されており、それぞれ特色ある機能が搭載されています。

例えば、エレベーターが自動で点検運転を行う製品では、夜間に毎日1回定期点検を行う場合があります。運行データを取得し、顧客希望に応じてエレベーター機械監視点検報告書・エレベーター利用状況などの報告書を発行します。

最新のエレベータゲートウェイは、VolPやVoLTEを介した音声伝送をサポートし、エレベーターの通信システムのシームレスなリモート監視と管理する製品です。また、災害時に備えてエレベータ内部にバックアップバッテリーが備えられている場合もあります。

費用やグレードによって様々な製品があり、施設や建物の用途に合わせてサービス内容を選ぶことが必要です。

ファインバブルノズル

監修:株式会社ライヴス

ファインバブルノズルとは

ファインバブルノズルとは、直径100μm未満の微細な泡を作り出すことができるノズルです。

液体内の微細な気泡であるファインバブルは、環境、食品、美容、農業、医薬など、多様な分野で活用されている技術です。ファインバブルのうち、直径100μm未満、1μm以上の泡をマイクロバブル、更に小さい直径1μm未満の泡を「ウルトラファインバブル」と呼びます。

気泡の生成法には様々な方法があります。

サイズの大きなマイクロバブルを作るには、液のせん断によって気泡を粉砕する方法や、液中溶存ガスを析出させる方法などがあります。

また、さらに小さなウルトラファインバブルを作るにはマイクロバブルを原料として高速旋回によって粉砕する方法や、加圧溶解と急減圧によってマイクロバブルとウルトラファインバブルを発生させマイクロバブルを浮上分離する方法、そして液中の溶存ガスからキャビテーションによって直接ウルトラファインバブルを発生させる方法などがあります。

ファインバブルノズルの使用用途

ファインバブルノズルによって発生するバブルには洗浄効果や生理活性効果、浄化効果などさまざまな効果があり多様な分野で使用されています。

1. 環境

環境用途には、溶存酸素濃度を向上させることによる湖沼やダム湖、曝気槽、調整槽などの浄化や、地下ピットなどにおける臭気の低減などがあります。また、汚水・排水の処理や洗浄にも使用されます。ウルトラファインバブルを使用することで給排水の配管内部を清浄化し、設備の保全にも役立ちます。

2. 工業用途

工業用途では、各種洗浄や、配管や設備に発生するバイオフィルムやスケールの抑制に使用されています。下記は、主な用途の例です。

  • 金属部品の油分洗浄
  • 冷却塔での細菌・水垢・藻の抑制
  • 研削盤クーラント液などに使用することによる研削加工の改善
  • シリコンウエハーの超鏡面研磨加工
  • 循環配管内部の清浄化
  • 排水処理の負担軽減

3. 水産

水産業はファインバブルノズルが効果的に使用されている分野の一つです。養殖や漁獲から出荷までの間の畜養において、溶存酸素濃度の上昇、生理活性の向上、水質改善などの目的に使用します。

ガス溶解技術と併用することで窒素ガスを利用して鮮度保持に使用する場合もあります。また陸上養殖など水を循環させて使用する現場では接液部の清浄化や藻の繁殖を抑制するなど施設のメンテナンス性の向上を目的に使用することも増えています。現在使用されている主な水産物は下記の通りです。

  • 海苔
  • 貝類 (カキ、ホタテ)
  • ウニ
  • エビ、カニ
  • ウナギ、ヒラメ

4. 農業

農業分野では、農作物栽培に使用する水・肥料に利用されるほか、また収穫した農作物の洗浄にもファインバブルが利用されています。

特にウルトラファインバブルは気泡が長期間水に存在し続けるため溶存酸素濃度の向上が容易であることに加え、通常の水と比較してぬれ性が向上しているため、土や農作物の根に浸透しやすくなることで成長を促進することが期待できます。現在ファインバブルが使用されている主な作物は下記の通りです。

  • トマト、ミニトマト
  • イチゴ
  • レタス
  • ホウレン草

5. 医療

ファインバブルノズルは、医療における清浄化用途でも使用されている技術です。大量になる水の使用量を抑えることができるため、コスト削減につながる可能性があります。

医療現場では、ウルトラファインバブルが清浄化用途で使用されています。特に歯科医院では治療に水を多用することもあり、清潔な水環境を維持するためウルトラファインバブルノズルが使用されることがあります。また近年では透析病院においても活用が始まっています。

医療分野での主な用途には下記のようなものがあります。

  • 医療器具の洗浄
  • 人工透析における逆浸透膜、循環ラインの清浄化
  • 歯科利用 (診察台のユニットチューブ、口腔ケア、消毒室での器具洗浄)

6. その他

ファインバブルノズルは、その他にも様々な分野で使用されています。下記は用途例の一部です。

  • 入浴施設における配管の清浄化および人工炭酸泉の生成
  • 公共施設等でのトイレ配管の尿石の剥離・悪臭の除去
  • >家庭内における浴室、キッチン、洗面、洗濯機などの清性向上や、配水管におけるスケール蓄積の防止
  • 美容における温浴効果、保温効果・保湿効果

ファインバブルノズルの原理

1. ファインバブルの性質

ファインバブルは、気泡サイズによりマイクロバブルとウルトラファインバブルの2種類に分けられます。マイクロバブルとは直径100μm未満、1μm以上の気泡であり、それよりも更に小さい直径1μm未満の気泡はウルトラファインバブルと呼ばれます。これらは負の電荷を帯びている気泡です。

マイクロバブルの存在する水は白濁したように見えますが、ウルトラファインバブルは極度に小さいため目視することができず、無色透明に見えます。マイクロバブルはゆっくりと水中を浮上し消滅します。ウルトラファインバブルは、刺激を与えなければほとんど溶解も浮上もしないことが大きな特徴とされています。

2. ファインバブルノズルの仕組み

ファインバブルノズルは、ノズルを通る水流に微細な空気の泡を発生させる装置です。

例えばアスピレータと呼ばれる自吸式のノズルは、一般的にT字型管になっておりT字の水平線にあたる管の一方を水道の一次側、もう一方を二次側に接続します。水平方向に水を流すと一部細くなった部分で水圧が低下し流速が増しベンチュリ効果によって内部に負圧が発生し、空気を自吸します。自吸した空気は、内部構造で粉砕され微細な気泡を生成し、噴射されます。

一般的な構造では、ノズルに絞り部を設けることで多数の高流速部 (キャビテーションポイント) が形成され、この内部機構によって激しい乱流を起こすことで、バブルはさらに微細化されていく、という仕組みです。

ファインバブルノズルの種類

ファインバブルノズルは様々な分野で使用されていることから、製品の種類も多様です。

解決したい課題に合わせて必要な効果を発揮するノズルを選択する必要があります。

  • どんな液体を通すのか
  • マイクロバブルを作るのかそれともウルトラファインバブルを作るのか
  • 必要な流量はどれくらいか
  • 設置環境はどんな場所か
  • ガス溶解 (酸素や窒素、オゾンなど) が必要な現場か

などファインバブルが必要な現場によって選択するノズル (およびメーカー) が変わります。各メーカーや商品の情報をご確認ください。

本記事はファインバブルノズルを製造・販売する株式会社ライヴス様に監修を頂きました。

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フラットヒーター

監修:株式会社熱学技術

フラットヒーターとは

フラットヒーターとは、産業用途などに用いられる平形のシーズヒーターです。

シーズヒーター (英:Sheathed Heater) とは、金属管の中心に電熱線などの発熱体を配置し、絶縁物を充填した電気ヒーターです。通常のシーズヒーターは金属管が丸形ですが、フラットヒーターは扁平形をしています。液体・気体・固体の加熱に使用される、産業用ヒーターの一種です。丸形シーズヒーターが線接触での加熱となるのに対し、面接触で熱伝達されるため、加熱効率に優れています。

フラットヒーターの使用用途

フラットヒーターは、通常の丸形シーズヒーターと同様、各種分野における加熱に使用されています。油、水、薬液などの液体や固体加熱など広く加熱一般に使用することができ、主な用途には下記のようなものがあります。

  • フライヤーなどの業務用厨房機器
  • ホットプレート
  • 配管加熱
  • 理化学機器
  • 金型加熱
  • 各種洗浄装置の加熱用部品

特に多く使用されているのが、油を加熱して使用するフライヤーです。コンビニエンスストアなどの揚げ物の調理に採用されています。ヒーター発熱部の間隔を広く確保することができるため、揚げ物のカスが付きにくく、油の劣化が少なく、また、清掃がしやすいというメリットがあります。

また、金型加熱は、プラスチック成形工程に使用される用途です。金型を加熱して適切な温度に保つことで、プラスチックが均一に溶解します。

フラットヒーターの原理

1. シーズヒーターの原理

フラットヒーターは、シーズヒーターの一種です。シーズヒーターは、金属製のパイプの中に、電熱線をコイル状にしたものを通し、金属パイプと電熱線が接触しないように、絶縁粉末を詰めて密封する仕組みのヒーターです。電熱線をシース (鞘)に収めていることから、シーズヒーターと呼ばれます。

電熱線にはニクロム線、絶縁粉末には酸化マグネシウム (MgO) などが使用されることが一般的です。シース材質には、SUS316Lなどが使用されます。

2. フラットヒーターの特徴

通常のシーズヒーターは丸形ですが、フラットヒーターは平形をしています。平形で厚みが薄い為、通常のシーズヒーターよりも小さなRで曲げることができます。表面積が広く、熱効率に優れ、電力密度を低く設定できることが特徴です。狭い空間に大きな発熱面積をとることができます。

また、フラットヒーターは通常、1本のヒーターで3相電源への直接接続が可能です。このため、丸形シーズヒーターが3本のヒーター本数が必要なところ、ヒーター本数は1本で済みます (ヒーター本数が1/3) 。また、内部Y結線タイプの場合リード線本数は3本となり (通常の丸形シーズヒーターでは6本) 、結線作業を削減することが可能です。内蔵されている電熱線は2本から3本であることが一般的です。

フラットヒーターの種類

フラットヒーターは、用途に合わせて様々な曲げ形状の種類があるヒーターです。同心円状、四角形状、直線状の折り返しなどの様々な平面的形状のほか、直方体などの3次元的形状の製品もあります。曲げ形状の制約は、通常の場合最小曲げRt面R15、最小曲げRw面R40程度です。一般的なフラットヒーターは、幅22.5mm、厚み7.7mm、最大のシース長は4,000mm〜5,500mmです。最高温度は、ステンレス製の製品で650℃です。

また、大型の油加熱などでは、複数本 (4本、6本など) のヒーターがセットで使用される場合もあります。特殊なものでは、熱電対内蔵のフラットヒーターなどもあります。

フラットヒーターの種類

図1. フラットヒーターの種類

本記事はフラットヒーターを製造・販売する株式会社熱学技術様に監修を頂きました。

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試験紙

監修:シグマアルドリッチジャパン合同会社

試験紙とは

試験紙とは、溶液の性質や溶液に含有する特定の化学物質の濃度を調べるために用いられる、指示薬を浸透させて乾燥させた紙です。

溶液の性質や含有物質によって試験紙に浸透した指示薬が呈色し、色見本と見比べて判定を行います。物理化学及び分析化学的性質を利用した比色分析の一種です (比色法) 。最も有名なものにpH試験紙 (万能試験紙) がありますが、その他にも様々な種類があります。

試験紙の使い方

図1. 試験紙の使い方

試験紙の使用用途

試験紙は、教育・研究・開発・品質管理や排水試験を始めとする、幅広い用途で使用されています。

1. 教育

教育では、小学校から大学まで、リトマス試験紙やヨウ化カリウムデンプン試験紙、塩化コバルト紙、pH試験紙など、様々な試験紙が活用されています。こうした試験紙は比色法により結果がわかりやすく、また、特別な機器を必要とせずに定性分析ができるため、教育機関で活用されています。

2. 研究・開発

研究・開発の分野においても試験紙は簡易的な分析の方法として広く使用されています。pH試験紙は溶液等の液性 (酸性/アルカリ性など) を判定するために、化学を始めとする様々な分野で使用されています。

また、水分試験紙は、固体表面上の付着水や有機溶剤中に含まれる水分の検出に用いられます。

酸化剤を測定するヨウ化カリウムデンプン試験紙は、微量の酸化剤と反応して呈色し、塩素、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸塩などの検出に使用されます。

3. 検査

試験紙の中には検査に用いられるものも多くあります。水質検査試験紙は、残留塩素の測定や、各種水質モニタリングに使用されます。具体的な用途は、

  • プール、浴槽施設における残留塩素の測定
  • 貯水槽、鑑賞魚水槽などにおける残留塩素濃度の測定
  • 飲料水の残留塩素濃度の測定
  • 食品工場などで消毒に使用される塩素消毒液の濃度測定
  • 工業排水、畜産排水などの窒素成分の測定 (排水処理施設のモニタリング)
  • 河川や湖沼水、地下水などの水質モニタリング (富栄養化対策)

などです。また、オイル試験紙は、水や土壌に含まれるオイルの有無を検出するために使用されることがあります。

尿検査用試験紙など、医療用に使用されている試験紙もあります。

この他にも、水溶液中の鉄、マンガン、カルシウムなどの金属を測定する試験紙やブドウ糖、アンモニウム、過塩素酸などの特定の化学物質を測定するための数多くの種類の試験紙が存在します。

試験紙の原理

通常、試験紙は、ろ紙に各種指示薬を染み込ませて製造されます。試験紙に測定したい試料溶液を滴下もしくは塗布する、あるいは、試験紙を浸すことで呈色させる仕組みです。また、試料溶液に試薬を添加してから試験紙に滴下して呈色を確認する試験紙もあります。

例えば、万能pH試験紙では、複数の指示薬を組み合わせて浸透させてあり、幅広いpHがわかるようになっています。万能pH試験紙を測定試料に浸漬し呈色させ、試験紙と付属のカラーチャート (色見本) を比較して試料溶液のpHを目視で読み取ります。また、試験紙によっては専用機器やスマートフォンでpHを読み取る事が出来るものもあります。

試験紙の種類

1. pH試験紙

pH試験紙で最も一般的なものは、ロールタイプの試験紙です。使用する分だけちぎって主に広い範囲を大まかに測る時に使用します。

その他に短冊タイプや、変色する部分が複数あるスティック状の試験紙もあります。

図2. pH試験紙

2. 水質検査試験

水質検査試験の分野では、窒素・リン成分を検出する試験紙や、残留塩素を検出する試験紙などがあります。

硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、アンモニア性窒素、リン酸イオンなどを検出する試験紙は、主に排水中の成分検出に用いられています。

残留塩素を検出する試験紙は、塩素濃度の測定範囲毎に種類があり、用途によって使い分けられます。

この他にも、亜鉛、亜硝酸、アスコルビン酸、亜硫酸、アルミニウム、アンモニウム、過酢酸、過酸化物、カリウム、カルシウム、グルコース (ブドウ糖) 、クロム酸、コバルト、シアン化物、硝酸、スズ、全硬度 (総硬度) 、炭酸塩硬度、鉄、銅、鉛、ニッケル、ヒ素、ペルオキシダーゼ、ホルムアルデヒド、マンガン、モリブデン、硫酸、遊離脂肪酸などの試験紙があります。

3. その他

上記以外にも様々な試験紙があり、多様な分野で使用されています。

  • オイル試験紙は、水や土壌に含まれるオイルの有無を検出する試験紙です。炭化水素やガソリン、潤滑油と反応すると青色の試験紙が濃青色に変色します。
  • 塩化コバルト紙は、水分の有無を検出する試験紙で、乾燥時には濃青色ですが、水分を含むと淡紅色を呈します。
  • ヨウ化カリウムデンプン試験紙は、塩素、過酸化物など微量の酸化剤と反応して青紫色を呈する試験紙です。
  • ヨウ素試験紙は、ヨウ素の有無を検出します。ヨウ素が試験紙のデンプンと反応し、試験紙は青色に呈色します。例えば、ヨウ素を含む消毒剤の使用後に、ヨウ素が残留していないか確認することが可能です。また、教育現場でもヨウ素デンプン反応の観察のために用いられます。

本記事は試験紙を製造・販売するシグマアルドリッチジャパン合同会社様に監修を頂きました。

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PEEK3Dプリンタ

監修:株式会社システムクリエイト

PEEK3Dプリンタとは

PEEK3Dプリンタとは、PEEK樹脂及びその他のエンジニアリング・プラスチック、及びスーパーエンジニアリングプラスチックなど、特殊プラスチックの造形が可能な3Dプリンタです。

エンジニアリングプラスチック (エンプラ) とは、耐熱性、機械的強度などの性能が汎用プラスチックより優れ、工業用部品として適している素材です。PEEK樹脂をはじめとするスーパーエンジニアリングプラスチック (スーパーエンプラ) は、エンプラを上回る耐熱性、高温時の機械的強度を持ちます。

スーパーエンプラは、高い融点のため従来の3Dプリンタでの造形が難しい素材でした。PEEK3Dプリンタは、優れた温度コントロールにより、スーパーエンプラの加工も行うことができるようになっています。

PEEK3Dプリンタの使用用途

PEEK3Dプリンタでは、汎用樹脂からスーパーエンプラに至るまで数多くの材料に対応可能であることが多く、様々な産業用樹脂部品を製造することが可能です。下記のような様々な分野で活用されており、様々な樹脂部品が製造されています。

  • 航空宇宙
  • 自動車
  • 医療
  • ガス
  • 石油
  • 半導体
  • エレクトロニクス

特に、自動車や航空機の分野では、これまで金属部品を使用していた箇所を高強度のエンプラ製部品に置き換えることで車体・機体の軽量化が進んでいます。また、医療分野では、人工膝サポーターなどの医療器具を製作することに活用されています。

PEEK3Dプリンタの原理

1. PEEK樹脂及びスーパーエンプラの性質

エンジニアリングプラスチック (エンプラ) とは、強度と耐熱性に優れたプラスチックの総称であり、工業用部品として適した高機能樹脂です。一般的には、耐熱性100℃以上、強度49MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上を持つ素材をエンプラと呼び、150℃以上の連続使用温度を持つ樹脂素材をスーパープラスティック (スーパーエンプラ) と呼びます。

代表的なスーパーエンプラの1つが、PEEK (ポリエーテルエーテルケトン樹脂) です。PEEKは、200℃以上の耐熱性に優れ、また、機械的強度、耐薬品性、再スチーム、耐油性、電気絶縁性、耐放射線性などにも非常に優れています。

エンジニアリングプラスチックの素材例

図1. エンジニアリングプラスチックの例

2. PEEK3Dプリンタの仕組み

PEEK3Dプリンタは、熱融解積層方式で造形を行います。熱溶解積層とは、樹脂などを高温で溶解させ、ノズルから出力させながら重ねていくことで立体を造形する方式です。

PEEK樹脂をはじめとするスーパーエンプラは、融点が高いため、PEEK3Dプリンタは優れた昇温機能と共に、高温や温度変化に耐える構造を有しています。例えば、通常搭載されるノズルは最高で500℃前後まで昇温可能な高温対応ノズルです。造形を行うチャンバ内も高温環境になるため、機械ユニットに使用されるモータやリニアレール、駆動ベルトやPCB基板などには、高温耐性を持つ部品が使用されています。

PEEK3Dプリンタの仕組み

図2. PEEK3Dプリンタの仕組み

3. 3Dプリンターによる造形の利点

PEEK樹脂をはじめとするスーパーエンプラを用いて3Dプリントを行うことには、主に下記のような利点があります。

  • 切削機にはできない形状が造形可能
  • 軽量化が簡単にできる
  • 材料のロスが少なくコスト削減できる
  • 内製化によるリードタイムの短縮
  • 3Dデータを用いて形状をカスタマイズできる柔軟性

PEEK3Dプリンタの活用事例

図3. PEEK3Dプリンタの活用事例

PEEK3Dプリンタの種類

PEEK3Dプリンタには様々な製品があり、用途に合わせて使い分ける/選定することが可能です。最大造形体積は製品によって異なり、大型のものでは400x300x300mmまでの造形が可能です。基本的にノズル温度は前述の通り高温対応ですが、機種によって最高温度は450℃から540℃程度と幅があります。

医療現場に特化した機種では、フィラメントから発生する臭気を外部に漏らさないよう、高性能なHEPAフィルターを装備していることがあります。また、騒音が抑えられた機種ではオフィスなどに設置することも可能です。多様な機種があり、用途に合わせて自由に選択することができます。

本記事はPEEK3Dプリンタを製造・販売する株式会社システムクリエイト様に監修を頂きました。

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