インサートナット熱圧入機

監修:プロステック株式会社

インサートナット熱圧入機とは

インサートナット熱圧入機とは、熱をかけながらプラスチック素材にインサートナットを挿入する装置です。

インサートナットとは、プラスチック素材に埋め込んで、素材同士のジョイントを強化するための締結ねじです。プラスチックは金属素材よりも機械強度が低く、樹脂同士をつなぎ合わせただけでは容易にジョイント部分が外れます。インサートナットは金属製であり、樹脂素材のジョイント部を強化して外れないようにするため埋め込まれます。

熱圧入機は、インサートナットに熱を加えるため、埋め込まれる側のプラスチック素材にも熱が伝わって柔らかくなります。圧入が容易になるだけではなく、埋め込み完了後にはプラスチック素材が固まって強度が高まることが特徴です。

インサートナット熱圧入機の使用用途

インサートナット熱圧入機は、プラスチック成型品へ締結用のねじ (インサートナット) を挿入するために使用されます。主な用途には下記のような分野での製品の製造や組み立てがあります。

  • 自動車 (車載機器、バッテリー部品、吸気系部品、センサー部品、ラジエター周り部品、エンジン部品、ドアパネル、フレームの固定)
  • パソコン、タブレット、スマートフォン
  • 電子機器 (基板上の部品固定や端子、コネクタの取り付け) 
  • バーコードリーダー
  • 住宅用設備
  • ガスメーター、電力量計
  • 端子台、各種コネクタ
  • 各種産業用機器

インサートナット熱圧入機の原理

1. 概要

圧入機は、強固なフレームと専用の圧入ツールで構成されており、空気圧、電動、または手動の力で動作します。自動で動作する圧入機は、モーターや制御装置を備えており、圧力、速度、深さを調整して正確な圧入作業を行います。

熱圧入機の場合、素材の下穴にインサートナットをセットして、熱源からインサートナットへ熱を加えます。インサートナットからプラスチック素材に熱が伝わり、プラスチックを部分的に溶融しながら挿入する仕組みです。対応しているプラスチックはPOM・ABS・PPなどがあります。挿入後はプラスチックが冷えて固化するため強度も良好です。

インサートナットの挿入方法には、成形後インサートと、成形時インサートとがありますが、インサートナット熱圧入機は成形後インサートに使用される方法です。

2. 工程

工程・手順は各メーカーにより違いますが、下記はインサートナット熱圧入機の手順の一例です。

  1. 成形品製品にインサートナットをセットする
  2. 熱圧入機のステージ (台) に成形品製品をセットする
  3. 加熱体を下げる
  4. 熱がインサートナットから成形品に伝わり、樹脂を溶融しながら自然にインサートナットが挿入される
  5. 加熱体を上げる
  6. ステージから成形品製品を取り外す

インサートナット熱圧入機の選び方

インサートナット熱圧入機は、ワークスペースの大きさや、
メンテナンス要件などの点以外の他には、下記にも考慮すると良いでしょう。

1. サポート

インサートナットの熱圧入は、プラスチック製品 (ワーク) に金属製のめねじを固定する高度な技術です。この技術は特に、インサートナットの圧入を専門とする企業が非常に少ないため、経験豊富で技術的な知識を持った業者の選定が重要です。

ワーク材質や形状、インサートナットの種類により精密な調整を施し、最適な圧入条件を見極めることで、部品の品質を高めます。

2. 操作性

機械が操作しやすいかどうかは、生産性と安全性に影響します。操作が簡単な機械は、トレーニングに時間がかからず、オペレーターエラーのリスクも少なくなります。

3. コストパフォーマンス

単純で安価なものから細かい設定ができる高価なものまであります。専用機・汎用機、1台〜複数台を導入することを踏まえて検討することが大切です。

4. 実績

単純に機械を販売しているだけでなく、圧入実績があるかも重要ポイントです。製品開発段階や量産段階で圧入経験があるかも含めて検討すると良いでしょう。

インサートナット熱圧入機の種類

1. インサートナット熱圧入機には様々な種類の製品があります。装置によって、動力の種類、必要な動作圧力、および加圧対象物の特性などが異なるため、用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

温度調節機、タイマー、バッチカウンターなどを備えた装置もあります。

1. 動力の種類

圧入動力には、手動で動作するハンドプレス方式のほか、スイッチ操作で自動で挿入が行われる電動式の装置もあります。

手動式の製品は、手動で手軽に操作・位置決めを行うことができることが特徴で、特に使用数の少ない製品や試作品に便利です。

自動式の製品では、水平・垂直の位置をプログラムで管理し、ハンドレバーがついていて、自動式/手動式を切り替えることができる製品もあります。

2. 単軸/多軸

インサートナット熱圧入機のうち、多軸の製品では一度に複数箇所のインサートナット挿入が可能です。複数の挿入箇所がある場合、多軸製品を用いることで、作業工数を大幅に削減することができます。

本記事はインサートナット熱圧入機を製造・販売するプロステック株式会社様に監修を頂きました。

プロステック株式会社の会社概要はこちら