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炭酸銀についての概要、用途、原理などをご説明します。また、炭酸銀のメーカー9社一覧や企業ランキングも掲載しておりますので是非ご覧ください。
1993年~2019年に日本化薬株式会社医薬研究所にて医薬品の研究開発、各種生体試料の分析に従事。危険物取扱者、放射線取扱主任者として施設管理業務も担当。2019年に同業他社に転職、現在まで同様の業務を担当。専門書執筆・翻訳・校閲活動も行っている。>LinkedIn: h
炭酸銀とは、化学式Ag2CO3で表される銀の炭酸塩です (この化合物の銀は1価であるため炭酸銀 (Ⅰ) とも表記します) 。
常温では、うすい黄色~黄緑色をした粉末で存在しています。硝酸銀と水溶性の炭酸塩 (例えば炭酸アンモニウム) を混合することで合成されます。
通常、水系で混合され、生成した炭酸銀は水不溶の沈殿として回収されます。分子量は275.75、CAS登録番号は534-16-7です。
炭酸銀の主な使用用途は、触媒原料や試薬としての用途です。また、有機酸に溶解するため有機酸銀塩の原料にも使用されています。炭酸銀以外の有機酸銀塩も、合成直後は黄色を呈していますが、光に敏感に反応して暗色となります。
触媒として有名なものに、酸化反応をマイルドに進行させる触媒であるフェティゾン試薬 (Fétizon’s reagent) があります。これは、炭酸銀をセライトに保持させたものです。ただし、フェティゾン試薬の実験室における調製方法としては、硝酸銀水溶液にセライトを加え、のちに炭酸ナトリウムを加えることで炭酸銀とする方法が一般的です。
一方、Fétizon’s reagentの状態で販売されている試薬もあります。また、炭水化物誘導体の位置選択的ベンジル化の触媒に用いられるほか、オレフィンのパラジウム触媒によるオキシアリール化のための塩基としても用いられます。
その他、生体成分の染色 (病理検査時の検体の染色など) も用途の1つです。ただし、一般的な銀染色では、硝酸銀が銀試薬として用いられます。
メタリック塗装における銀鏡膜層形成組成液の銀化合物や、従来の「はんだ」に変わる導電性接着剤 (銀ペースト) の材料として使われています。
可視光に反応する性質を利用し、可視光応答性の半導体や光触媒の原材料として使われています。
外観は、うすい黄色~黄緑色の粉末です。製品としては小塊になっていることもあります。合成直後はうすい黄色をしていますが、環境の空気や光にさらさされることで暗色化します。暗色化は部分的な酸化銀の生成や銀の遊離によるとされ、保管には遮光が重要です。
そのため、多くの市販品に褐色瓶が用いられています。炭酸銀は水にはほとんど溶けません。溶かし切るのに体積の30,000倍の冷水または体積の2,000倍の熱湯が必要です。
一方、稀硝酸、硫酸、アンモニア水、シアン化アルカリ溶液にはよく溶けるとされています。加熱していくと約210~220℃で分解し、酸化銀と二酸化炭素を生成します。さらに高温になると、単体の銀が生成します。また、光によって変質する恐れがあるため、保管には遮光が必要です。
国内法規上の主な適用法令としては、毒劇法で「劇物・包装等級3」、大気汚染防止法では「有害大気汚染物質」に指定されています。経口投与時のLD50 (急性毒性) は3731mg/kg (Rat) であり、国連GHS分類では区分5とされています。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性は区分2、目に対する重篤な損傷性又は眼刺激性は区分2Bであり、有害性を有します。そのため、取り扱いには手袋や保護眼鏡などの保護具が必要です。
強酸化剤と反応する可能性があるため、混在を避ける必要があります (法令上は強酸化剤の方が第1類または第6類危険物として規制されています) 。火災になった場合、完全燃焼により二酸化炭素、不完全燃焼により一酸化炭素が発生します。同時に銀の酸化物も生成し、いずれも人体に有害です。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-1316JGHEJP.pdf
*一部商社などの取扱い企業なども含みます。
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