CVD

CVDとは

CVD (英: Chemical Vapor Deposition) とは、化学気相成長呼ばれる金属などの表面に薄膜を形成する方法の一つです。

金型や切削工具の表面硬化、半導体ウエハーの絶縁膜と保護膜の形成などの分野で使用されています。CVDで薄膜を形成する方法は、表面処理を行う対象物 (母材) を炉の中に入れ、そこに薄膜となる原料を含んだガス (原料ガス) を流しこみ、エネルギーを与えて化学反応により膜を形成します。

CVDにおいて原料ガスに反応エネルギーを与える方法には、主に熱、プラズマ、光の3つがあります。それぞれを熱CVD、プラズマCVD、光CDVと分類していて、それぞれに特徴があります。その他に、溶融温度の低い有機金属を加熱してガス化し、炉内に送り込み、高周波によって蒸着を行うMO CVDがあります。

CVDの使用用途

CVDは金属などでできた製品や部品、工具等の表面に薄い膜を形成し、そのことでそれらの表面を硬く傷つきにくくするコーティング技術の一つです。対象物には金属製品と、半導体製造工程にあるウエハーなどが代表例です。

金属製品では、耐焼付性、耐摩擦性、耐腐食性が増し、高硬度化できることから、過酷な条件で使用される金型や工具などの製造で使用されています。半導体の製造工程では、ウエハーの表面に絶縁膜や保護膜を形成する工程で、CVDが使用されています。

CVDの原理

CVDは炉の中に膜を形成する母材を入れ、その中に膜の材料となる原料ガスを流し込みます。その状態では母材の表面に薄膜はできません。続いて炉の中に熱、高周波の電力、強い光等でエネルギーを加えることで、原料ガスが加水分解、自己分解、光分解、酸化還元、置換などの化学反応を起こして、母材の表面に薄膜を形成します。

物質の表面に薄膜を形成する他の方法には、真空蒸着やスパッタリングなどがあります。CVDは三次元形状をした母材の側面や内面にも比較的均一な膜の作成が可能で高真空が必要ないため、大規模な真空設備が必要なく排気時間を短縮できます。さらに、炉の中に流し込むガスの種類を変えることにより、様々な用途に適した種類の膜を形成することが可能です。

CVDの種類

CVDの種類は下記の通りです。

1. 熱CVD

熱CVD (英: thermal chemical vapor deposition) では約1,000℃まで加熱した炉の中に原料ガスを流し、母材の表面に炭化チタン (TiC) 、炭窒化チタン (TiCN) 、窒化チタン (TiN) のなどの蒸着物質を成膜させます。

熱高硬度、耐摩擦性の要求される金型と、耐焼付性、耐摩擦性、耐腐食性を要求される製品や部品、高温になる金型の表面処理に適しています。大型の母材の表面処理にも適用できますが、高熱となることから、適用可能な母材は高熱に耐えられる物質になります。

2. プラズマCVD

プラズマCVD (英: plasma-enhanced chemical vapor deposition, PECVD) は、母材を置いて新旧状態にした炉の中に原料ガスを入れ、高周波の電力を加えて原料ガスをプラズマ状態にします。このプラズマが、母材の表面で化学反応を起こし、膜が堆積します。熱CVDと比較すると低い温度で膜を形成することができ、半導体の製造工程で広く用いられています。

3. 光CVD

光CVD (英: photo chemical vapor deposition) は、原料ガスに強い光を当てて光分解し。発生したラジカルを母材の表面で再結合させて薄膜を形成します。光CVDの光源には、エキシマレーザー、エキシマランプ、低圧水銀ランプ、シンクロトロン放射光などが使われます。

プラズマCVDが電界で加速されたイオン分子により薄膜が傷つけられてしまう問題を抱えているのに対して、光CVDはその心配が無いので、半導体の製造工程で使用されるようになりました。但し、使用するにつれて光を導入する窓が曇ってくるので、安定稼働面での問題を抱えています。

4. MO CVD

MO CVD (英: Metal Organic Chemical Vapor Deposition) は原料ガスに容易に熱分解してガス化できる有機金属を使用します。ガス化した有機金属を炉の中に送り込み、高周波をかけて母材の表面に膜を形成します。大面積で均一な膜を形成しやすい利点がありますが、有機金属は毒性が強いものが多く取扱いには注意が必要です。

CVDの選び方

CVDは優れた薄膜形成法であり、幅広い用途があります。その反面、材料ガスの種類や、材料ガスを化学反応させる方法にいくつもの種類があり、それぞれに利点と欠点、適用できる母材と原料ガスに制限があります。

どのような母材にどのような原料ガスを使って膜を形成するかによって使用できるCVDのタイプが絞られるため、その中で最適なCVDを選択します。

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