ろう付け炉とは
ろう付け炉とは、金属の「ろう付け」を行う際に使用する工業炉です。
金属の溶接方法は大きく分けて、融接、圧接、ろう接があります。このうち、ろう付けははんだ付けと共にろう接に分類されています。
ろう付けは、接合する金属 (母材) どうしの接合部分に、母材より融点温度が低い、合金でできたろう剤を溶かして、接着剤のようにして接合する方法です。母材が溶融し始めるより低い温度で行うため、融接と比較して母材にゆがみが生じない利点があります。
ろう付け炉の使用用途
ろう付け炉は、金属部品のろう付けに使用します。接合する2つの母材とその接合部分にろう剤を挟んで炉の中に入れます。炉内の温度を、ろう剤は溶解するが母材は溶解しない温度まで上昇させ、一定時間置いた後で冷却して、ろう付けが完了します。溶接部分で母材が溶解しないので、融接と違って綺麗な接合が可能です。
ろう付け炉を使用すると、ガスバーナーを使用する場合と比較して母材全体が均一に加熱されるので接合部分にゆがみが生じません。そのため気密性が求められる配管の結合部や圧力容器の溶接に適しています。他には自動車部品などに使用されています。
ろう付け炉の原理
ろう付けをする際には、接合する2つの母材の接合部分、または接合部の近傍にろう剤を置きます。その前に必要に応じてフラックスなどを使って接合部を清掃します。
ろう剤は母材よりも溶融度が低い合金でできており、銀に亜鉛と銅が混ざった銀ろうが最もよく使われます。棒状のものが一般的ですが、板状のものやペースト状のものもあります。色は銀色です。
銅に亜鉛が混ざったろう剤は黄銅色をしているため、黄銅色の金属の接合に使われます。融点が低いアルミニウムが母材の場合の接合には、同じくアルミ合金のアルミろうを使用します。接合部分をバーナーなどで加熱すると、ろう剤が溶融し毛細管現象で接合面全体に広がります。その後、冷却するとろう剤が凝固し、接合が完了します。
ろう付け炉を使ったろう付けでは、ろう剤を配置した母材をろうの中に入れ、炉内を高温にすることで行います。炉内の温度をろう剤は溶けるけれども、母材は溶けない温度にすることによって、母材を含めた全体を均一に加熱します。
その結果、ガスバーナーを使う場合と比較して母材のゆがみが少なく気密性の高い強固なろう付けが可能です。治具や置き方を工夫するなどして複数個のろう付けを同時にできる、複数個所のろう付けを同時にできるなどの利点があり、量産品に向いています。
ろう付け炉の種類
密閉式で真空状態でのろう付けや、ガス雰囲気中でのろう付けが可能な炉を、真空ろう付け炉と言います。真空ろう付け炉は、空気中でのろう付けができない、チタンのろう付けやセラミックのろう付け等に使用します。
真空ろう付け炉は、真空による脱ガス作用で接合部に気泡が残りにくい、金属の酸化膜ができないという利点があり、セラミックやチタン以外にも高精度なろう付けを要求される金属製品のろう付けに使用されます。
真空ろう付け炉には、ろう付け以外の用途にも使用できる汎用真空加熱炉から、大型のろう付け専用炉、加熱室が複数並んだ大型設備まで様々なものがあります。
一方、空気中でろう付けを行うろう付け炉は、真空ろう付けを必要としない金属の、量産品に使用されます、専用治具に母材とろう剤をセットして、自動で大量に製品をさばく大規模設備が中心になります。
ろう付け炉の選び方
ろう付け炉の選択では、母材となる金属の種類と大きさ、そのろう付けに最適なろう剤などを検討した上で、条件に適合した炉を選択します。
ろう付け炉には、炉を制御するための装置や加熱装置、真空設備等が必要になります。場合によっては自動化設備との連携も必要です。メーカーでは装置の販売と併せてろう付けを受託している会社もあるため、委託から始めることも可能です。