スパイラルタップ

スパイラルタップとは

スパイラルタップ

スパイラルタップは材料にネジ穴を立てる際に使用する工具の一つで、らせん上に刃が付いた構造をしています。スパイラルタップは直溝タップと比べて、ネジ穴を加工するときの切りくずが外に排出されやすく、より下穴に密着しながら削り出せます。そのため、主に止まり穴加工用によく用いられます。
スパイラルタップではらせん状に取り付けられた刃溝を回転させることで、切りくずをポケットに沿って外に排出できます。スパイラルタップは、ステンレスや合金、炭素鋼、プラスチックなどの材料で止まり穴加工を行う場合に有効です。

スパイラルタップの使用用途

1. 止まり穴加工

スパイラルタップは、主に止まり穴加工に使用されます。止まり穴とは材料が貫通されていない穴のことで、後にボルトを締めたとしても穴の底でボルトは必ず止まります。あるいは貫通させたくない材料に対しては、止まり穴加工を行います。スパイラルタップは、切りくずが外に排出されやすいため、穴加工の際に切りくずが残らず、ネジを正確に切り出すことができます。

2. ステンレス、合金、炭素鋼、プラスチックなどの材料での加工

スパイラルタップは、ステンレス、合金、炭素鋼、プラスチックなどの硬質材料での加工に適した工具です。これらの材料は切削加工が難しいため、スパイラルタップのように切りくずを排出しやすい工具が必要です。スパイラルタップは、らせん状に取り付けられた刃溝が材料の切りくずをポケットに沿って外に排出するため、スムーズに加工できます。

スパイラルタップの原理

スパイラルタップは、タップ加工における切りくずの排出を改善するために開発された工具です。通常タップ加工をするときには下穴を開けてから、タップによりネジを切る必要があります。このときタップが穴の底についてしまうとネジをそれ以上切ることができないため、下穴はタップの深さよりも深く開けておくことが必要です。

直溝タップを用いた場合には、大きな切りくずはポケットから外に取り出せますが、細かな屑については排出されずに止まり穴の底に溜まってしまいます。そこでスパイラルタップではこの欠点を改善するために、ネジ加工用の刃溝がらせん状に取り付けられています。

この刃溝を材料の中で右ネジの進行方向に従って回転させると、刃溝に沿って材料の切りくずはポケットに沿って、外に排出されるという仕組みです。逆向きに回転させれば、ポケットの内側へと向かっていきます。

スパイラルタップにより下穴を深く開ける必要がなくなり、切りくずの排出がスムーズになるため、穴加工の効率が向上します。また切りくずが詰まってしまうことによる刃の摩耗も軽減されるため、耐久性が向上するというメリットもあります。

スパイラルタップの特徴

長所

(切りくずを外部に排出できる)
スパイラルタップはらせん状の刃溝が付いているため、切りくずを材料から外部に排出できます。このため穴底に切りくずが溜まりにくく、タップが進行しやすいことが利点です。また切りくずが穴内に残らないため、加工面の品質を保ちやすくなります。

(作業効率が高い)
スパイラルタップは切りくずを排出しやすく、作業効率が高くなります。またスパイラルタップは比較的高速で回転できるため加工速度を上げられます。

(精度が高い)
スパイラルタップは切りくずを排出することで加工面に切りくずが付着することを防止するので精度が高い加工が可能です。また刃先が穴底に密着しやすく、均一な加工ができるという特長があります。

(ワークに傷をつけにくい)
スパイラルタップは切削力が比較的小さいため、ワークに傷をつけることが少なくなります。またらせん状の刃が加工面を滑らかに切削するため、加工面の仕上がりが良好です。

(幅広い材料に使用できる)
スパイラルタップは硬い材料やプラスチックなどの柔らかい材料にも使用できます。このため一つのタップで多種多様な材料に対応できるため、加工工程の簡略化につながります。

短所

(切りくずが詰まりやすい)
スパイラルタップは切りくずの排出がスムーズなため、直溝タップよりも清掃性は良好ですが、それでも細かな切りくずがポケット内に残りやすく詰まりやすいというのが欠点です。この場合はスパイラルタップを回転させて進行方向にねじ込んだ直後に,逆回転させて,進行方向とは逆に移動させて切りくずを排出するなどの手間が必要です。

(切削力が大きい)
スパイラルタップはらせん状の刃を持っているため、直溝タップよりも切削力が大きくなります。そのため加工する材料が硬かったり加工する深さが深かったりする場合、スパイラルタップの切削力に耐えられずにタップが折れてしまうことがあります。

(加工面が荒れる)
スパイラルタップは切りくずを外に排出するため、切りくずが加工面に付着することは少なくありません。このため直溝タップに比べて加工面が荒れやすく、表面の仕上がりが悪くなることがあります。特に切削速度が速すぎると、切りくずが熱で焼き付いてしまうことがあるため、適切な切削速度で加工することが必要です。

スパイラルタップのその他情報

スパイラルタップは、高い剛性と耐久性が求められる工具であるため、一般的にHSS(高速度度鋼)やカーバイト(硬質合金)で作られています。

HSSは、鉄、炭素、モリブデン、クロム、バナジウムなどの合金を主成分とした鋼材で、高い硬度と耐摩耗性、耐熱性を持っていることが特徴です。このためHSSは高速切削工具の材料として広く用いられています。

一方、カーバイトは、タングステン、チタン、コバルト、クロムなどの金属を主成分とした硬質合金です。非常に硬く、高い耐磨耗性、耐摩耗性、耐熱性を持っています。カーバイトはHSSよりも硬くて刃先を薄くできるため、高精度での切削加工に適しています。

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