ヘリカル減速機とは
ヘリカル減速機とは、ヘリカルギアと言う歯車 (ギア) を使った減速機のことです。ヘリカルギアとは斜歯 (はすば) 歯車といい歯車の山の稜線が、回転軸に対して傾いている歯車をいいます。ヘリカルギアは歯車の強度や、歯車同士が噛み合う際に発生する音や振動を少なくする効果があります。よってヘリカル減速機も、音や振動を少なくしたい場合に使われる減速機です。
なおヘリカルギアのように山の稜線が回転軸に対して平行な歯車は、スパーギア (平歯車) といいます。
ヘリカル減速機の使用用途
ヘリカル減速機の使用用途は、稼働時の騒音や振動を少なくしたい機械に使われています。自動車に搭載されているトランスミッション、ファイナルドライブといった動力伝達部品も、ヘリカル減速機の一種です。
産業機械や工作機械のような工場で稼働する機械から、エレベータやエスカレータといった私たちの日常生活の中で稼働する機械まで、減速を伴う機械の歯車機構の多くは、ヘリカル減速機と呼べます。ほとんどの機械においては騒音や振動を抑える必要があり、平行軸歯車による減速を行う減速機のほとんどがヘリカル減速機です。逆にヘリカルギアを使わない減速機は、レーシングカーの変速機です。
減速機は専用設計される場合がほとんどですが、市販の減速機として販売されている商品もあります。設計要望を満たす回転数、トルク、減速比、取り付けるスペース、入出力軸の位置関係などを満足できる商品を選ぶ必要があります。
ヘリカル減速機の原理
ヘリカル減速機は歯車を用いた減速機の一種であり、原理は回転数比によるトルクの増大です。歯数が少ない歯車と、歯煤が多い歯車を噛み合わせ、歯数が少ない歯車を回すと、歯数が多い歯車は遅い速度で回転します。例えば回転を入力する歯車の歯数が20歯、回転数を伝達される歯車の歯数が40歯であれば、出力される回転数は、入力する回転数の半分になります。一方で出力されるトルクは、入力したトルクの2倍の大きさが得られるのが、減速機の原理です。
ヘリカル減速機ではヘリカルギアを用いているため、音や振動を抑えることができます。これはヘルカルギアによって、歯車のかみ合い率を上げることができるからです。歯車のかみ合い率とは、同時に噛み合っている歯の数を表したものです。ある二つの歯車が噛み合っている場所で、噛み合う歯の数を数えるとします。スパーギアは歯車が回転軸と平行なので、かみ合い率は1以上になることはありません。しかしヘリカルギアは歯車同士は回転軸に対して角度を持っているので、複数の短いかみ合いが生じます。これらを足し合わせると、かみ合い率は1よりも大きくすることができます。
ヘリカル減速機のその他情報
スラスト力の発生
音や振動を少なくできるヘリカル減速機ですが、弊害としてスラスト力が生じます。スラスト力は噛み合う2つの歯車を回転軸上において、互いに遠ざける方向に作用するものです。通常はスラスト力を受けるための機械要素が必要です。例えば、歯車の回転軸にスラスト方向の力も受けられる軸受を選んだり、新たにスラストワッシャや、スラストベアリングを追加する方法があります。
遊星歯車ならスキューにも注意
ヘリカル減速機の中でも、遊星歯車機構を用いた場合、ピニオンに発生するスラスト力によって、スキューと呼ばれる現象にも注意が必要です。スキューは「斜め」「歪み」と言う意味の英語ですが、遊星歯車機構のピニオンの回転を支えるニードルが、スラスト方向にも力を生じる現象をいいます。
ニードルはピニオンとピニオンシャフトの間を転がるコロです。通常ならニードルはピニオンシャフトと平行な回転軸で転がりますが、ピニオンにスラスト力が発生すると、わずかな隙間の範囲内において、ピニオンシャフトと角度を持って転がるようになります。するとニードルは軸方向にも進もうとするため、スラスト力が生じます。
ヘリカルギアによって生まれるスラスト力は、決して軽微なものではありません。歯車の計算で論理的に導けるものなので正しく計算し、適切な軸受の選定などが重要です。
参考文献
https://www.mikipulley.co.jp/JP/Products/SpeedChangersAndReducers/about.html
https://toolremake.com/helical-gear/