FCD400とは
FCD400は、FCD材 JIS-G5502「球状黒鉛鋳鉄品」に規定されている鋼材の一つです。
FCD400が規定されている「球状黒鉛鋳鉄」は、鉄組織中の析出黒鉛を球状にした鋼材であり、強度や展延性が改良された鋳鉄といえます。FCDは別名では、「ダクタイル鋳鉄」や「ノジュラー鋳鉄」と呼ばれることもあります。ノジュラー(Nodular)は、小さな節状、球状という意味の英語です。
球状黒鉛鋳鉄は、鋳物の脆弱性を克服するために、応力集中を弱めて析出黒鉛を球状化する工夫をしています。強度の必要な箇所に使われ、自動車部品や水道管(ダクタイル鋳鉄管)などで主に使われています。
FCDの後ろに付く数字の400は、引張強さの下限値を示しこの材料の引張強さが400N/mm²以上であることを意味します。また、400の後にハイフンと数字が付くこともあり、それらは鋳鉄の伸びの数値を表します。例えば、FCD400-15であれば、引張強さが400以上であり、伸びの数値が15以上の鋳鉄ということになります。
FCD400の使用用途
FCD400は球状黒鉛鋳鉄として、引張強さ、伸びなどが「fc」と呼ばれる片状黒鉛鋳鉄よりも優れています。鋳鉄として、十分な強度を誇り、高い延性とじん性を有しています。そのため、大きな負荷がかかる箇所や部材にも十分耐えられます。ものによっては、数倍の強度を誇り、粘り強さも優れているため、自動車部品や産業機械などで使われています。
FCDの「D」は、Ductileの「D」で、展延性があるとの意味で、FCD全般的に展延性が高いです。また、特性として、鋳鋼と比べて振動と騒音を低減することがあげられます。伝わってきた振動が黒鉛の境界で摩擦運動を起こし、熱エネルギーに変わって消失するためです。
FCD400は、その高い強度と靭性から、下記のような様々な分野で利用されています。
1. 自動車部品
クランクシャフト、ギア、ブレーキドラムなど
2. 機械部品
フレーム、ハウジング、プーリーなど
3. 建設機械部品
ショベルカーのアーム、ブルドーザーのブレードなど
4. 一般産業機械部品
ポンプ、コンプレッサーの部品など
FCD400の性質
鋳造する直前にセリウムやマグネシウムを加えて析出黒鉛を球状化させるのが、片状の鋳鉄のねずみ鋳鉄との違いです。ねずみ鋳鉄の脆さは、析出した片状黒鉛に応力集中しやすい点でしたが、球状黒鉛鋳鉄は、析出黒鉛を球状化することにより応力集中を弱めています。ご使用の際は、黒鉛が非連続のために腐食の進行が遅いという特性に留意して、耐食性を生かし信頼性の高い部品として利用できます。
また、ある程度の変形に耐えることができ、加工性が良いという特徴があります。切削加工や溶接加工などの二次加工が比較的容易に行えます。また耐摩耗性は、表面硬度が高く、摩耗に強いという特徴があります。そのため、摺動部や摩耗が激しい部分への使用が適しています。
FCD400のその他情報
1. FCD400の比重
FCD400の比重は、その組成や製造方法によって若干変動しますが、一般的に7.0~7.3g/cm³程度です。これは、鉄の比重(7.87g/cm³)に比べてやや小さい値となります。
2. FCD400のデメリット
FCD400は、高い強度と靭性、加工性の良さ、耐摩耗性を兼ね備えた、汎用性の高い材料です。様々な分野で利用されていますが、他の材料と比較してコストが高いという点も考慮する必要があります。