生分解性グリースとは
生分解性グリースは、閉鎖系の自然界に及ぼす影響が少ないとされる環境対応型の生分解性潤滑油の一種です。生分解性とは、有機物が微生物によって二酸化炭素と水に分解されることを呼びます。
一般的にOECD法による生分解度試験によって60%以上の生分解度の場合のみを生分解性グリースとしています。基油によって種類の大別され、ナタネ油、ヒマシ油などを使用した植物油脂系、トリメチロールプロパンエステル、ペンタエリスリトールエステルなどを使用した合成脂肪酸エステル系に分かれています。
脂肪酸エステルの原料となる脂肪酸は、植物油から得ることが主とされています。一方、ポリエーテル系の潤滑油は、シール材との相性や鉱油との混合安定性などの問題もあり、年々使用量は減少傾向にあります。
植物油脂系は、ヨーロッパにおいて、理想的な基油として広く使われており、生成分率と低価格が評価されています。欠点の植物油の酸化安定性が劣る点については、種子の遺伝子組み換え技術によって改良された植物油の開発が進んでいます。
生分解性グリースの使用用途
生分解性グリースは、主に建設機械、農業機械のほか、海洋・河川・湖沼周辺で稼働する機械やトラック、鉄道のポイント部など幅広い箇所の潤滑油として使われています。
生分解性は、前述のように基油の種類に大きく依存し、異なります。使用する時には、グリース性能に影響を及ぼす増ちょう剤の種類なども考慮して選ぶ必要があります。生分解度で考慮すると、長寿命や極圧性が生分解性グリースは優れていると言えますので、広温度範囲での機械に使用されていることが多いです。
現在、日本国内では、生分解性グリースをはじめとする生分解性潤滑油の使用を義務づけている法律等はありませんが、建設現場における油の漏洩対策の一環と自然に配慮した取り組みとして、生分解性作動油の品質・性能を追究する規格も策定中の段階です。
今までよりも自然環境や生態系保護に対する意識が社会全体で強くなっています。現在、機械を扱う企業にとって潤滑油の漏洩は負のイメージになりやすく、生分解性グリースをはじめとする生分解性潤滑油を使う動きが加速しています。