シロッコファン

シロッコファンとは

シロッコファンとは、遠心式送風機の一種で、回転軸を中心に対峙する2枚のリムに挟まれた多数の羽が円周状に並んだ形の羽根車を持つ送風機です。

羽根車が回転することで、羽根車の内側の空気が遠心力によって外側に押し出されます。羽根車の外周を渦巻型のケースで囲み、一か所だけ開いた送風口から空気を集中して押し出します。この送風口にホースをつなぐと、任意の場所に空気を送り込むことが可能になります。

シロッコファンは扇風機などで使われているプロペラ型のファンと比較して、羽の部分全体を金属等のケースで保護することができるとともに、風を集中して一か所から送り出すことが可能です。この特性を活かして、シロッコファンは大小様々な送風機として使用されています。

シロッコファンの使用用途

シロッコファンは、羽根車の直径と高さの調節や片側吸入方式と両側吸入方式の選択などにより設計の自由度が高めることができるため、工場や倉庫の中の空調設備を始め、様々な設備・機械の中に組み込まれて利用されています。主な用途の例は下記の通りです。

1. 半導体製造工場のクリーンルーム

半導体製造工場のクリーンルームなどでは、フィルターを通して大きさ1ミクロン以下の埃をも取り除いた、極めて清浄化された空気をクリーンルーム内に流します。空気は天井のフィルターから室内に流され、グレーチング構造の床をすり抜けて回収され、浄化されて再循環しています。このような環境中では、空気の流れを乱す送風機の持ち込みは特に厳しく制限されています。

シロッコファンは、空気の吸入口、送風口にホースを付けて外に空気の乱れを発生させないため、密閉された装置内部の局所的な冷却用として使われています。

2. レンジフード

シロッコファンはレンジフードでも使われています。一戸建ての住宅の壁や窓に据え付ける換気扇は直接外に空気を排出するため、プロペラ型のファンが使われています。

一方で、マンションなどの集合住宅のレンジ上部に取り付けてあるレンジフードは、吸い上げた空気や煙を配管を通して建物の外に排出する場合が多くなります。このように吸い上げた空気をダクトを通して外部に送り出す場合は、シロッコファンが多く使われます。

シロッコファンの原理

シロッコファンは、円筒形に並んだ羽と、それを取り巻く渦巻型ケーシングが特徴です。46〜64枚の羽を持つ羽根車が高速回転して羽根車の内側から空気を吸い込み、渦巻ケーシングに沿って強い流れを起こし、送風口から空気を強く押し出します。

プロペラ式の送風機が、羽を回転軸の周りの小さな面に固定するのに対して、シロッコ型送風機は羽の両端をリムでしっかりと固定しているため、長時間、高速で安定した回転が可能です。風量も大きくとることができ、中型から大型の産業用送風機で1200Pa程度の風量を得ることが可能です。

シロッコファンの種類

1. 羽根車の材質

シロッコファンの羽根車の材質は、小型軽量の製品は主にプラスチック製ですが、一般的には鋼板やアルミなどが使われています。羽根車の外形は、数十mmのものから1,500mm程度のものまで広範囲に作られています。

多数の羽が高速で回転するため、羽の取り付け方法が重要になります。大型送風機で高温、低温、多湿などの過酷な環境下で使用する場合には、鋼の羽をリベットでカシメしたものが適しています。逆に小型軽量の送風機には、一枚の板からプレス成型した羽根車が適しています。

2. 吸入口

シロッコファンの吸入口は、羽根車と渦巻シーケンスの片側から吸入する片吸込 (シングルサクション) タイプと、両側から吸入する両吸込 (ダブルサクション) タイプがあります。装置・機械の中にシロッコファンを組み込む場合に、据え付け位置によっては片側からしか空気を吸入できない場合があるため、この場合は片吸入タイプを使用します。

4. 軸受の配置

シロッコファンには、羽根車の軸受けを羽根車の片側だけに配置した片持ちタイプと、両側に配置した両持ちタイプがあります。吸い込みダクトを取り付ける場合には片持ちタイプを使用します。一方で両持ちタイプは設置空間を小さくするのに適しています。

5. その他

羽根車
羽根車は、通常は一つのモーターに一つの羽根車がついています。特別な形としては一つのモーターに二つの羽根車がつながっている二連式のものがあります。

送風口
送風口は、上部に水平に向いているものと、下部に水平に向いているもの、横部に上向きについているものと、横部に下向きについているものがあり、送風口の先に付けるホースの取り回しを考慮して選択できるようになっています。

回転軸
回転軸は水平のものと、垂直のものがあり、羽根車の回転方向も時計方向のものと反時計方向のものがあります。

このようにシロッコファンは、基本構造は一つですが、使用環境や要求する風量、設置場所や装置・機械内部での取り付け方法に応じて様々な選択肢があり、カスタマイズ可能な機械です。

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