真空洗浄機とは
真空洗浄機 (英: vacuum washer)とは、洗浄槽内を真空状態にして洗浄を行う機器です。
機器内を脱気して真空状態にすると、洗浄剤が対象物の隅々まで行き届くため、通常では洗浄できない箇所の洗浄ができます。乾燥の工程も高い効果を発揮するので、併用して使われることが多いです。
また、真空状態では液中に残存する酸素も脱気されて超音波の強さが高まり、超音波洗浄と併用して高い洗浄効果が得られます。
真空洗浄機の使用用途
真空洗浄機は、通常では十分な洗浄が難しい対象物や火災や爆発のリスクがある対象物に対して使用されます。複雑な形状や極小の穴、止まり穴、袋穴などがあるので、洗い残しがありません。
また、航空機や、アンテナ、金属部品類などに使用する揮発性が高く、引火の危険性がある洗浄剤なども使用可能です。
真空洗浄機の原理
真空洗浄機は、一括して作業を行うため密閉構造をしています。対象物と洗浄液を入れて、真空ポンプに接続します。
機器内で減圧と復圧を繰り返し行って真空状態にし、空気溜まりなどを取り除き、対象物の形状や細部に洗浄液を浸透させて汚れを分解する仕組みです。また、真空状態の機器内で使用済みの洗浄液を加熱・蒸発させて、汚染された液のみを廃液として処理し、洗浄剤の成分のみを抽出して再利用します。
真空洗浄機の真空圧は、調整可能です。一般には10KPa程度とし、洗浄蒸気を入れて蒸気洗浄を行います。真空蒸気洗浄が終わると、洗浄液を排出し、0.1KPa位の真空にして真空乾燥させます。真空洗浄機に超音波洗浄を組み合わせると、洗浄効果を上げることが可能です。
真空洗浄機の構造
真空洗浄機の洗浄槽は、1槽式だけではなく、2~10槽以上を使う方式があります。例えば、3槽式の実施例は2槽で真空洗浄を行い、他の1槽は真空乾燥用です。
第1槽の真空洗浄で使用した洗浄剤は、加熱蒸発させて回収し、第2槽の洗浄液として再利用されます。また、第2槽で真空洗浄された対象物は、第3槽に送られ、真空乾燥されます。
真空洗浄機の特徴
1. 高い洗浄性
真空状態で洗浄するので、ポケット部分、袋穴、針孔、重なり部分の空気が抜け、洗浄液が十分入り、高い洗浄効果が得られます。超音波洗浄と併用すると、キャビテーションが強力になり、洗浄性の更なる向上が可能です。
2. 低ランニングコスト
蒸留再生回収装置があり、洗浄剤を常時回収し、溶解した油分を再生します。クローズド構造で、排気も回収再生し、廃液も濃縮して排出します。したがって、溶剤洗浄に比較して、ランニングコストは1/5~1/10程度です。
3. 低設備コスト
排水がないので、排水処理設備が不要です。また、高効率の蒸留再生機により、冷却水はチラーが不要で、クーリングタワーの循環水で十分です。
4. 安全性・環境対応
真空容器内の洗浄であり、火災・爆発の危険は非常に少ないです。ガス濃度検知装置などにより、安全性が高くなります。
また、洗浄剤に炭化水素系が使用できるので、オゾン層を破壊するフロン・エタンなどは使いません。真空ポンプにより排気され、使用した洗浄液も排気回収装置で回収・再利用します。
真空洗浄機のその他情報
真空洗浄機の洗浄剤
真空洗浄機に使用する洗浄剤は大きく分けると、炭化水素系、水系、溶剤系の3種類があります。
1. 炭化水素系洗浄液
油汚れに対して洗浄力が強く、真空洗浄の場合は止まり穴・袋穴にも対応が可能です。洗浄液のリサイクルができるので、環境に優しいです。ただし、洗浄機に引火性の対応が必要になることがデメリットとして挙げられます。
2. 水系洗浄液
引火性がないので、防爆性は必要ありません。短所は、止まり穴・袋穴への対応が少し難しいことです。超音波洗浄を併用して対処します。アルカリ性洗浄剤、中性洗浄剤、水溶性潤滑防錆剤などがあります。
3. 塩素やフッ素系の溶剤系洗浄液
止まり穴・袋穴の洗浄は難しいですが、洗浄性自体は高いです。使用に対する規制が年々厳しくなり、種類によっては人体に悪影響があります。地球温暖化やオゾン層破壊が大きい洗浄液です。
参考文献
http://marusantec.com/senjosys1.html
https://www.kaijo.co.jp/washsystem/product/phenix2_vacuum.html
https://kyoden-kpi.jp/solution/acceptance/apparatus/cleaner