光触媒脱臭装置とは
図1. 光触媒脱臭装置のイメージ
光触媒脱臭装置とは、フィルター上に担持した光触媒の強い酸化力によって悪臭物質や有害物質を酸化分解し、空気を脱臭する装置です。光触媒は、表面に光が当たることで効果を発揮し、有害物質やニオイの原因物質などを酸化分解します。
その結果、脱臭・抗菌作用を及ぼし、空気を浄化することができます。酸化力はオゾンよりも強力ですが、安全で人体に害を及ぼすことがありません。日本発祥の技術です。
光触媒は光によって自主的に再生可能であるため、何度も繰り返し使用することができます。簡易的なメンテナンスで効果を維持できることや、廃棄処理の必要がないことも特徴です。
光触媒脱臭装置の使用用途
光触媒脱臭装置は、悪臭が問題となるような場所に設置して、周辺環境の空気を浄化する目的で使用されています。花粉、カビ、たばこ、細菌や、新型インフルエンザなどのウイルスも除去できます。
オゾンなどよりも安全であることをメリットとして採用される場合が多いです。そのため、主に、安全性や衛生面を重視する場所で利用されることが多く、動物などを飼育している大学や企業の研究所や、食品工場や厨房、介護施設や病院などでも利用されています。
また、悪臭が原因でブランドやイメージを損なわないように配慮する場所(人の出入りが多い大型商業施設や、ホテルなどの宿泊施設)でも利用されています。酸化力が高く、非常に強い脱臭作用があるため、下水処理施設、汚泥処理施設など、悪臭が非常に強い場所でも採用されています。
光触媒脱臭装置の原理
図2. 光触媒の原理
光触媒脱臭装置は、光触媒と流体力学の原理を利用しています。光触媒の脱臭作用の原理は、酸化分解反応です。
- 酸化チタン(TiO2)に光(紫外線)が当たって価電子帯の電子が励起され、e-(電子)とh+(正孔)が生じます。
- 空気中の酸素と水が酸化チタン表面に吸着して、h+やe–と酸化還元反応を起こすことにより、・OH(ヒドロキシラジカル)やO2–(スーパーオキシドアニオン)などの活性酸素が発生します。
- 発生した活性酸素が酸化チタン表面に吸着した有機化合物と酸化還元反応を起こします。悪臭物質や細菌などは分解され、二酸化炭素と水が生成されます。
オゾンの酸化電位が2.07であるのに比べて、光触媒の成分である酸化チタンの酸化電位は、3.20です。これは、オゾンより光触媒の酸化力が強いことを示しています。
また、流体力学の原理を用いて内部構造を工夫することで、圧力分布を均一化し、装置の小型化が図られている製品もあります。光触媒フィルターを2層や3層の構造にすることで、空気が光触媒に接触する面積を増やし、効率を上げる工夫が施されています。
光触媒脱臭装置の種類
図3. 光触媒脱臭装置の種類
製品の構造は、基本的に光触媒フィルターと紫外線ランプから構成されています。光触媒(酸化チタン)を担持するフィルターには、プラスチック、セラミック(アルミナ)、アルミニウムなどがあり、製品によってフィルターの枚数は異なります。プラスチックは軽量で割れにくく、セラミックは、熱・化学的に安定な素材であり、アルミは高強度で軽量という特徴がそれぞれあります。
また、ファン直上タイプ、横置き型、天井吊り下げタイプなど、様々な形状のものがあり、大きさも室内に設置できるくらいの小型のものから屋外用の大型のものまで様々です。光触媒は光によって自己再生するため、光触媒自体のメンテナンスはローメンテナンスで済みます。ただし、定期的に紫外線ランプ交換が必要となります。
油煙を含む厨房排気などに対して用いる場合は、前処理としてサイクロンスクラバーや、グリスフィルターを備えた製品を選択することが有効です。
参考文献
https://www.toyokosho.co.jp/
https://www.shonan-ceramics.co.jp/about/
https://www.toyokosho.co.jp/introduction/