マルチクレーンとは
マルチクレーンとは、小型軽量の手押しクレーンです。
狭い場所や他のクレーン設備の無い場所で、荷物の吊り上げと移動に使用されます。マルチクレーンは、普通のクレーンを小型化したようなアーム形状です。
台座と足には車輪がついており、荷物を吊った状態で台車と同様に人力で移動させます。自重は100kgほどの軽いものがあり、アームと足は折りたたみが可能なため、遠方時に運ぶ際にはライトバンでも運搬可能です。
マルチクレーンには、アームの駆動に油圧を使用したものがあります。このタイプは、アームの上下の移動が容易に行えます。
マルチクレーンの使用用途
マルチクレーンは、他のクレーン設備がない場所や狭い空間内での荷物の積み降ろしが必要な場所で使用されます。軽量なので、運搬が容易なのが特徴です。この特性を活かして、田や畑などの農作業現場で農作業機械の積み下ろしに重宝されています。
また、マルチクレーンは他のクレーンと比較して全体にかなり小型です。アームは小さく、高さも低くなっています。このため、ワンボックスタイプの貨物自動車やアルミボディのトラックの荷台の中にアームを挿入して、荷物を直接吊り上げることができます。従って、狭い空間から荷物を運び出す器具としても有用です。
さらに、人力で手軽に操作できることもマルチクレーンの利点です。工場や倉庫などで、駐車場に到着した平ボディのトラックの荷台に横付けすると、荷物や機械の積み下ろしと移動ができます。
マルチクレーンの原理
マルチクレーンは、車輪が付いた土台の上に支柱があります。支柱の先にアームが付いており、アームを支柱についている油圧シリンダ―を介して手動で上下させる仕組みです。
また、支柱の途中にはウインチが取り付けられています。このウインチも手動です。ウインチからアームの先端までワイヤーが通されており、ワイヤーの先端には荷物を吊り上げるためのフックがあります。荷物を吊り上げる際には、このフックを下げて荷物を吊り、ウインチでワイヤーを巻き上げます。
台座部分には足が付いています。足は使用時に開く折り畳み式です。足はアームの伸びる方向に対して、上から見るとアームを挟むようにV字型に開きます。足の先端にも移動用の車輪が付いています。台座についた車輪と、脚の先についた車輪との3点支持で、クレーンを支えながら荷物を吊り上げて移動します。
マルチクレーンの種類
マルチクレーンは、吊り上げ荷重が約500kgから約1,000kgで、吊り上げ高さが約2.5m以下と、クレーンの種類の中では最も小型なクレーンです。自重も100kgから200kgのものが主流になっています。
アームの長さは、1m~2m程度のものが一般的です。多くのマルチクレーンでは、アームの長さを2段階か3段階に調整が可能となっています。アームの長さによって、最大つり上げ荷重が変わる機種と変わらない機種があります。
また、マルチクレーンを使った荷物の釣り上げと吊り降ろしでは、荷物を吊り上げた状態でクレーンを回転させて横に降ろす場合もあります。大型クレーンなどでは標準でクレーンを回転させるための機構があり、荷物を吊った状態でクレーンを回転させても、バランスは崩しません。
マルチクレーンにも、クレーンを回転できるものもあります。このタイプのマルチクレーンでは、クレーンがバランスを崩して倒れないようにするために、横方向に支えるための足が付いています。
マルチクレーンの選び方
マルチクレーンを選択する際には、作業中の事故防止の観点から、作業空間の大きさや吊り上げる荷物の大きさを考慮して、最適なサイズと吊り上げ荷重のものを選択することが大切です。
最大吊り上げ荷重よりも重いものを吊り上げると、クレーンの転倒や荷物の落下など、事故につながる可能性があります。
参考文献
https://www.rent.co.jp/sanki/04data/multi_crean.htm
https://www.supertool.co.jp/products/products.php?eid=00055
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/223006528761/?HissuCode=SMC500