ゼータ電位計とは

ゼータ電位計とは、主に液体中の粒子における分散の安定性の指標となるゼータ電位を測定する装置です。低濃度溶液のほか、懸濁液のような粒子が多く配合されている溶液における分散の安定性の評価によく使用されます。

ゼータ電位計の使用用途

ゼータ電位計は、溶液中の粒子における分散の安定性を評価しており、様々な分野で使用されています。

評価対象は、顔料や研磨剤を分散させた工業品、新規機能性材料やナノテクノロジー製品、バイオメディカル製品など溶媒に粒子を分散させた様々な製品です。この結果は、分散の安定性のほか、凝集・沈降、流動性の目安にもなります。

ゼータ電位計の原理

ゼータ電位計はゼータ電位を測定する装置です。そこで、まずはゼータ電位について解説します。

1. ゼータ電位とは

溶液中の粒子のほとんどが、プラスまたはマイナスに帯電しており、その表面は帯電している電荷と反対のイオンの層でおおわれて電気的な中性を保っています。このようなイオンの層は固定イオン層と呼ばれています。その上にはイオン拡散層が形成され、プラスイオンとマイナスイオンが混在する構造です。

このイオン拡散層内のプラスイオンやマイナスイオンの分布は均一ではありません。例えば、固定イオン層がプラスのイオンであると、固定イオン層に近い部分では反対のマイナスのイオンの濃度が高い構造です。固定イオン層から離れるにつれ、マイナスのイオン濃度が低くなり、その分プラスのイオン濃度が増えていきます。

溶液に電界が加わると、粒子が電気泳動します。このとき、粒子にはせんだん力がかかり、イオン拡散層内部で粒子と共に移動する層と、そのまま溶液内の同じ位置に留まる層に分かれます。この境界面は「すべり面」と呼ばれ、このすべり面の電位が「ゼータ電位」です。つまり、ゼータ電位が高いということは、粒子が動きにくいということとなり、分散性が安定していることになります。

2. ゼータ電位で分かること

ゼータ電位が大きければ、粒子間の反発力が強くなり凝集しにくく、安定性が高くなります。一方、ゼロに近い場合には、粒子間が反発しにくいので凝集しやすくなります。すなわち、ゼータ電位は、粒子における分散の安定性の指標です。また、ゼータ電位が高いということは、溶液内で動きづらいということとなり、粒子単体の分散の安定性の目安ともなります。

ゼータ電位計の種類

ゼータ電位計の測定方式で溶液中の粒子分散性を測定するのに適しているのは「電気泳動法」「コロイド振動電流法」です。順番に説明します。

1. 電気泳動法

電気泳動法は、帯電した粒子が移動する速度を利用した測定方法です。粒子が分散している溶液に電圧を印加すると、マイナスの粒子はプラス電極、プラスの粒子はマイナス電極に向かう移動が起こります。このとき、粒子内でのイオン拡散層内にはせんだん力が生じます。

ゼータ電位が大きければ、大きなせんだん力が必要です。すなわち、粒子の移動速度(泳動速度)は遅くなります。したがって、移動速度からゼータ電位を算出し、粒子における分散の安定性を評価できます。

2. コロイド振動電流法

この方法は、コロイドのような高濃度の溶液のゼータ電位を測定するのに好適な方法です。電気泳動法では、粒子が溶液の中をある程度の速さで移動する必要があり、濃度が高い溶液のゼータ電位を測定するには希釈する必要がありました。

しかし、コロイド振動電流法では高濃度の溶液を希釈せずにゼータ電位を測定できます。コロイド振動電流法は、溶液に超音波を照射して溶液を流動ではなく振動させているのが特徴で、この方法であれば濃度が高い溶液も測定可能です。

前述のように、粒子は帯電しており、その周囲には溶媒からなる反対の電荷のイオン層が形成されています。溶液が振動すると、溶媒と粒子では密度が異なるため、帯電した粒子とイオン層の間で分極が生じ、コロイド振動電位(CVP)と呼ばれる電場を発生します。この電場を電位変化として検出し、ゼータ電位として評価するのがコロイド振動電流法です。

ゼータ電位計のその他情報

ゼータ電位計の中で、電気泳動できない50μm以上の粒径の粒子や、繊維および板、フィルターなどのゼータ電位測定には「流動電位法」が用いられています。

流動電位法は、被測定物表面に接した状態で液体を流動させると、溶液の流入側と流出側に電位差が生じることを利用した測定法です。被測定物に接した状態で液体を流すと、被測定物と液体間にイオン拡散層が生じます。そして、イオン拡散層内で液体と共に動く部分と固体表面に留まる部分間にゼータ電位が生じるため、液体の流入側と流出側に電位差が生じるのです。すなわち、流入側と流出側の電位差を測定すれば、ゼータ電位を算出できます。

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