万能投影機

万能投影機とは

万能投影機

万能投影機とは、測定対象を正確な倍率でスクリーン上に拡大投影し、拡大された像から形状や寸法を観察・測定する装置です。

万能測定機は光学測定なので、測定対象物に非接触で測定・観察が可能で、測定対象物を傷つけることがありません。また、スクリーンに拡大投影して計測するため、複数の人が同時に観察することもできます。取り扱いが簡単な点がメリットです。

スクリーンの大きさは300~500mm程度が主流ですが、大きいものには1,000mm以上になる製品もあります。万能測定機は構造が単純で安価、場所を選ばず導入できるため、現在でも根強い需要を保っている測定機です。

万能投影機の使用用途

万能投影機は主に、工業製品の生産現場や品質保証分野で使われています。電源投入すれば即使用できる上、スクリーン上に拡大投影されることから、製造ラインでの品質確認には便利な測定機です。

加工品の輪郭形状の観察や寸法測定 に用いられ、さらにテンプレートを用いた比較測定にも有用です。測定対象は主には金属部品や樹脂成型品などですが光学測定のため、生物など、光と透過するものの観察もできます。また、簡易的ながら表面の観察をする機能を備えた機種もあるため、使用場面や分野は幅広いです。

万能投影機の原理

投影機は、測定対象に光を透過させて作った影をレンズを通すことでスクリーンに拡大した像を投影します。そのため、ステージの測定対象を置く部分は、ガラスなどのように光が透過できるよう透明体で透過率が高くなければなりません。

透過照明の光学系には、テレセントリック光学系が採用されています。テレセントリック光学系は焦点が合っていない状態でも像がぼやけるだけで、大きさを変えることがないのがメリットです。

なお、万能投影機は焦点から結像までを1つのレンズユニットで行うため、レンズの大きさと倍率により、焦点からスクリーンまでの距離が自然と決まります。スクリーンや装置の大きさに限りがある点に注意が必要です。

万能投影機のその他情報

1. 万能投影機の誤差要因

万能投影機で測定する際の誤差要因として代表的なものは、測定誤差と倍率誤差です。万能投影機は、基本的にスクリーンに映されたエッジを目視で位置合わせして測定するため、目視による合わせ誤差や、作業者の癖によるかたよりが無視できません。

測定物の傾きとXYステージの平行が一致していないことによる誤差や、万能投影機本体や測定物の水平が出ていないことによる誤差も測定誤差の一因となります。また、万能投影機はその測定原理から、光源からスクリーンまでの光が平行光になっていません。

そのため、内部に取り付けられたミラーが傾いていると、スクリーンの中央と端では倍率に差が出てしまいます。これを倍率誤差といい、倍率誤差が大きくなりすぎると、光軸中心から外れた箇所での測定値の信頼性が落ちてしまいます。

2. 万能投影機という名称

投影機について規定しているJISはJIS B 7184になりますが、万能投影機という名称は規定されていません。JISでは測定投影機という名称で規定されています。つまり、正確に言うと、万能投影機という名称はJISに規定された製品ではありません。しかし、メーカー各社には万能投影機という名称でラインナップされています。

JIS B 7184は1972年に制定され、その際は投影機もしくは万能投影機として規定されました。しかし、1999年に書換えられ、その際に万能投影機の名称を測定投影機に差し替えました。万能投影機という名称からは、あたかも万能な測定機のように捉えられてしまい測定機の名称としてふさわしくない、という理由からです。

そのため、それ以前に開発された製品には万能投影機という名称が残っている製品もありますが、決してJIS規格から外れた製品というわけではありません。ただし、測定に必要なスケール、カウンタ、角度表示などができるものという規定があります。これらが搭載されていない投影機は、JISに当てはまるとは言えないので注意が必要です。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/measurement-selection/type/projector.jsp

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