ナノインプリント装置とは
ナノインプリント装置とは、超微小回路パターンなどを形成するナノインプリントを行う装置です。
主に半導体の超微細回路パターンの形成などに使用されています。
ナノインプリント装置の使用用途
ナノインプリント装置は、半導体などの超微小回路パターンの形成に使用されています。ナノインプリント装置を使用すれば、微細なパターンを容易に量産できるため、これまで難しくコストがかかっていた微小回路を作成することが可能です。
半導体分野以外に、バイオテクノロジー分野やディスプレイなどの分野などでも利用されています。また、大学や研究所などの研究機関における研究や開発の目的での使用、生産の現場における条件や仕様に合わせた試作品を作るための使用も進んでいます。
ナノインプリント装置の原理
ナノインプリント装置は、ナノインプリント技術を実現する装置です。ナノインプリント装置は、ガラスや樹脂が塗布された基板および載置台、載置台に相対向して設置される超微細パターンが形成されている金型を有します。
そして、金型を基板に押し付けるプレス手段、ガラスや樹脂を硬化させる硬化手段が必須構成です。すなわち、基板上の溶融しているガラスや樹脂にプレス手段により金型を押し付け、金型の形状を転写します。
この金型の形状が転写されたガラスや樹脂を硬化手段により硬化し、基板上に超微細パターンを持つガラスまたは樹脂層を形成します。さらに、ナノインプリント装置は大型でスペースを必要とするものが一般的ですが、持ち運びができるほどコンパクトなサイズのナノインプリント装置も登場しています。
ナノインプリント装置のその他情報
1. ナノインプリント技術
ナノインプリント技術とは、極微細加工により超微小サイズのパターンを刻み込んだ金型をガラスや樹脂などに押し付けて同じ形状を転写する技術です。この技術により、超微小サイズのパターンが形成されている同一の部品を短時間で量産できます。
2. 樹脂の種類による硬化方法の違い
ナノインプリント装置の基板上の樹脂層に使用される樹脂としては、「熱可塑性樹脂」と「光硬化型樹脂」があります。「熱可塑性樹脂」とは、高温加熱することにより溶融し、冷却することで再度硬化する樹脂のことです。
一方の「光硬化型樹脂」とは光を照射することにより硬化が起こる樹脂で、UV硬化型樹脂などが代表的です。このため、ナノインプリント装置の硬化手段としては、冷却する手段と紫外線などの光を照射する手段があります。
なお、ナノインプリント装置としては、どちら一方の手段を持つものと両方の手段を持つものがあります。
3. 樹脂の供給方法
ナノインプリント装置において、ナノインプリントされる基板上の樹脂層の多くは基板上に一律に樹脂を塗布して形成したものです。この方法では、パターンを形成する場合にパターンの形状や樹脂の硬化速度によっては、パターンのエッジが甘くなるなどの問題が懸念されています。
そこで実施されているのが、基板上の樹脂の供給をインクジェットプリンターの技術を応用した方法です。すなわち、インクジェットプリンターの技術を利用して基板上のパターン形状に対応する部分にのみ、最適な量の溶融樹脂を噴出して塗布して樹脂層を形成しています。
このとき、パターンに応じた適量な樹脂量や樹脂のパターンへの流入速度、硬化速度などを考慮して溶融樹脂の最適供給量を求め装置に組み込んでいます。
4. ナノインプリント装置とリソグラフィ
半導体製造装置の中でもリソグラフィを利用した装置は、超微細パターンの形成に向いています。この装置では、基板上に一律に塗布された樹脂層上にパターンに応じて光を照射しています。つまり、光が当たった部分だけを硬化してパターンを形成し、現像して不要部分を取り除いてパターンが完成する仕組みです。
この方法の場合、光の照射は回路パターンに応じて縮小投影露光で行っています。この縮小投影露光はレンズ系により制御していますが、レンズ系の制御が困難で装置が大掛かりになるのが問題です。
しかし、ナノインプリント装置であれば、超微小回路パターンを形成した金型を樹脂層に押し当てて一気に光を照射するため、レンズ系の制御が必要ありません。非常にシンプルな操作で超微細回路パターンを有する半導体の製造が可能であり、ナノインプリント装置に対する期待が高まっています。
参考文献
https://www.mitsuiec.co.jp/nanoimprint
https://www.shinetsu.co.jp/jp/
https://xtech.nikkei.com/dm/article/WORD/20060314/114815/