ステンレス鋼線

ステンレス鋼線とはステンレス鋼線

ステンレス鋼線とは、ステンレス鋼を使用した針金状の線材のことです。

他の金属や合金よりも錆に強いという特徴を持っています。ステンレス鋼線の主材料であるステンレス鋼は、耐食性の他に、さらに高い強度や耐熱性などの性質を持ち、加工性にも優れています。このため、使用されている分野は非常に多岐にわたっており、用途は様々です。

ステンレス鋼の種類によっては、熱処理や焼きなましといった処理を加えることで、用途に合わせた仕様に変化させることができます。

ステンレス鋼線の使用用途

ステンレス鋼線が使用される分野は非常に広く、耐食性・耐熱性・強度・衛生面などの様々な特徴を活かした用途に用いられています。業界分野では、自動車産業・食品産業・建築産業・エネルギー産業・電子部品・医療業界などで使用されています。

具体的には、耐食性や耐熱性を活かして自動車やスマートフォンなどの部品です。また、衛生的で高強度である特徴から医療機器や手術道具の部品などに、さらに衛生的で耐熱性が強いという特徴を活かして、焼肉用の金網などに使われます。

ステンレス鋼線の原理

ステンレス鋼線は、ステンレス鋼の性質を損なわず、特性を活かして線材に加工するため、高い耐食性や強度などの特徴を有した鋼線です。ステンレス鋼は、主成分である鉄に10.5%以上のクロムニッケルモリブデンチタン等を添加した合金です。

クロムが酸素と結合して、鋼の表面に薄い保護皮膜を生成します。この皮膜に覆われているために、ステンレス鋼は耐食性があります。不動態皮膜と呼ばれるこの皮膜は、100万分の3mm程度のごく薄いが、大変強靭で一度こわれても、周囲に酸素があれば自動的に再生する機能があります。そして、腐食から内部を保護します。

錆除去や皮膜付加などの表面処理を施した後で、コンピューターで制御しながらステンレスを線状に引き伸ばして規定仕様の鋼線を製造します。

ステンレス鋼線のその他情報

1. ステンレス鋼線の規格

ステンレス鋼線に関する規格の一例は、日本産業規格の「JIS G4309 (2013):ステンレス鋼線」があります。この規格は、ステンレス鋼線の材料や10%程度のクロムを含有する耐熱鋼線の材料で製造したものについて規定されたものです。

鋼線の種類を組成・製造方法・特性などから35種類に分類しており、SUS201のようにアルファベット部分と数字部分を組み合わせた記号を採用して表記します。35種類に分類された鋼線は、鋼線の組成によってオーステナイト系・フェライト系・マルテンサイト系の3種類に大別されます。

オーステナイト系は約18wt%のクロームと約8wt%のニッケルを含有した鋼線です。フェライト系とマルテンサイト系はそれぞれ約17wt%、約13wt%のクロームを含有した鋼線です。これらの組成比は、鋼線の種類によって多少変化します。

また、鋼線の調質の有無により軟質1号・軟質2号などの区別もあります。調質とは、鋼線に熱処理や伸線加工処理を行うことを指します。軟質1号は、鋼線を伸線加工した後、固溶化のための熱処理を行ったものが対象です。軟質2号については、オーステナイト系は固溶化のための熱処理をした後に、フェライト系とマルテンサイト系は焼なましをした後に、伸線加工を行ったものが対象です。

2. ステンレス鋼線と硬鋼線とピアノ線の違い

ステンレス鋼線とよく似た線素材として、硬鋼線ピアノ線があります。硬鋼線とピアノ線の大きな違いは品質の差です。2つの線はどちらも鋼から作られますが、ピアノ線は、リン・硫黄・などの不純物の含有量が硬鋼線よりも少なく規定されています。

また、ピアノ線には腐食試験でのきず深さや、脱炭検出試験での全炭層深さに関する規定が定められています。ピアノ線は引張強さや線径などの物理的性質についても非常に厳密です。ピアノ線の方が硬鋼線よりも求められる品質レベルが高いので、価格もそれに応じて高くなります。

一方で、ステンレス鋼線は、ピアノ線・鋼線と異なり、クロムやニッケルの組成比に関する規定があります。ピアノ線・鋼線は錆びますが、ステンレス鋼線は耐食性や耐熱性などが優れています。

参考文献
http://www.shinsei-kogyo.co.jp/lineup/stainless.html
https://ns-sw.co.jp/publics/index/38/
https://www.ss-stainless.co.jp/stainless/index.html
https://kikakurui.com/g4/G4309-2013-01.html
https://kikakurui.com/g3/G3502-2013-01.html
https://www.nipponsteel.com/company/publications/monthly-nsc/pdf/2005_12_154_13_16.pdf
http://www.jsse-web.jp/kandokoro/kan2.pdf
https://www.fusehatsu.co.jp/technology/piano-kokosen/seibunhikaku.html

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