シーケンス弁

シーケンス弁とは

シーケンス弁とは、主に油圧装置 (油圧により動作する装置)を用いた回路 において、油圧シリンダなどアクチュエータの作動順序を制御するために使用される圧力制御弁です。

シーケンス (英: sequence) という名前の通り、1つの液圧回路上に複数あるアクチュエータをあらかじめ設定した順序に従って作動させることを目的に使用されます。例えば、3つのシリンダが含まれる油圧回路において、シーケンス弁を使用して動作させる場合、1つ目のシリンダの動作が完了してから2番目が動作し、2番目の動作が完了してから3番目の動作を開始させます。

このように、1つの動作が完了してから次のアクチュエータを作動させる回路を構成することが可能です。

シーケンス弁の使用用途

シーケンス弁が使用される分野は、食品や半導体製造などの製造業、クレーン車、フォークリフトをはじめとした建設機械です。油圧を使用した液圧回路では、大きな力を発揮することが可能です。

油圧は工作機械や大型機械を動かすための動力源として利用されています。シーケンス弁は特に油圧を動力源とした分野において、使用されることが多いです。

代表的な使用例を以下に挙げます。

1. 製造業

 例えばプレス機においては、金型の閉鎖、金属加圧、製品の排出というように、素材の投入から排出までのプロセスが決まっています。大きな力を決められた順序で出力する制御が可能です。

2. 建設機械

特に箱型構造のジブを有する移動式クレーン車においては、ジブが伸縮する順番を制御するために使用されています。

シーケンス弁の原理

シーケンス弁は、一次側の圧力が設定値を超えたことを検知すると、出力を二次側に切り替えます。1つ目のアクチュエータ側で設定された圧力を超えると、シーケンス弁に内包されるスプールが動き、2つ目のアクチュエータ側に出力先を切り替えることが可能です。

シーケンス弁の構造は単純で、入力ポートと出力ポート、ドレンポートを有し、中には作動油など動力源を流す方向を切り替えるスプールが内蔵されています。

シーケンス弁の構造

図1. シーケンス弁の構造

シーケンス弁は、ボディ、スプール、ポート、圧力調整ネジ、ばね、チェック弁で構成されます。ポートには入力ポート、出口ポート、そしてドレンポートがあります。調整ネジで直下のばねの硬さを調節することで、動作の切り替えのタイミングを調整可能です。

ポンプから動力が供給されている間は、各アクチュエータは順序に従って動作しますが、動力の供給がなくなるとチェック弁を通して自由に流れます。

シーケンス弁の種類

図2. シーケンス弁の種類、油圧記号

シーケンス弁は、スプールを動かすための圧力の取り方で内部パイロット型と外部パイロット型に分けることができます。

  • 内部パイロット型
    パイロット圧を内部で取得します。
  • 外部パイロット型
    パイロット圧を外部から取得します。

シーケンス弁の選び方

シーケンス弁を使用する際、搭載する回路の圧力と流量が選定するうえで重要な要素です。圧力は次の動作に移るタイミングを制御したり、シリンダなどで必要な力を左右させたりします。適切な圧力設定から外れると、回路を破損させたり、意図しないタイミングで次が動作したりする可能性が高いです。

また、流量は動作させるスピードを左右させ、動作の効率に影響します。同一のシーケンス弁であっても、圧力と流量によって切り替わるタイミングは異なることに注意が必要です。スプリングの力によって一次側のポートが作動している間二次側に油が流れないように閉ざされています。

しかし、圧力が上昇していくと設定圧になる前から徐々に出力先が二次側に流れていきます。オーバーライド特性と言われ、リリーフ弁をはじめとした油圧制御弁のカタログで確認できます。

シーケンス弁のその他情報

シーケンス弁の動作順序

図3. シーケンス弁の動き

具体的な動作順序 (油圧回路の場合) は、以下の通りです。

  1. はじめは2つ目のシリンダ側は閉じられているため、動力源から1つ目のシリンダに向けて油が流れます。入力された油は1つ目のシリンダを作動させます。
  2. 1つ目のシリンダの動作が完了すると、回路の圧力が上昇します。パイロット圧によって、シーケンス弁内のスプールが押し上げられ、2つ目のアクチュエータ側へ出力を開放します。
  3. 2つ目のシリンダが動き出します。
  4. 2つ目のアクチュエータが作動します。

なお、一次側の圧力が設定圧を超えている間、二次側のスプールは解放の状態を維持します。

参考文献
http://www.housho.co.jp/publics/index/24/
https://www.hyd.daikin.co.jp/seminar/seminar_03
https://shigematsu.org/?p=22498
https://www.khi.co.jp/kpm/pdf/2atsuryoku_09.pdf
https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/web/9902/pdf_9902-9/f-05.pdf

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です