皿小ねじとは
皿小ねじ (英: Countersunk Head Screws, Flat Head Screws) とは、小ねじ頭部の形状がねじ側にテーパ状の円すい形で、横から見ると皿のような形状をしているねじです。
丸皿小ねじ頭部の上端面は丸みを帯びているのに対して、皿小ねじは上端面が平坦になっています。小ねじとはJIS B0101 ねじ用語で、「比較的呼び径の小さい頭付きのねじ。駆動部の形状として一般的には、すりわり付き、十字穴付きなどがある」と規定されています。
「サラ小ねじ」「さら小ねじ」なども、同義語として使用されています。
皿小ねじの使用用途
図1. 皿小ねじの使用例
皿小ねじは一般的に、メスねじが加工されている被締結物 (取り付ける相手側) に使用します。皿小ねじの身近な使用例として、図1のように、ドアクローザー、ドアノブ、ドアヒンジ (蝶番) の取り付けなどが挙げられます。
被締結物には、ボルト頭部の円すい形より少し大きい、テーパ状のザグリ穴を加工 (ザグリ加工) します。そのため、小ねじ頭部は、被締結物表面からはみ出しません。
基本的な用途は、頭部上端面に丸みを帯びた丸皿小ねじと同様ですが、頭部分が平坦になるように使用されます。また、皿小ねじは、小ねじ頭部の十字穴に引っかかる場合があり、これを防ぎたい時は丸皿小ねじが有用です。
皿小ねじの原理
皿小ねじは、他の小ねじと同様に、ねじ (この場合の「ねじ」は、スクリュー状の形状だけを示します) により締結します。皿小ねじは、タップ加工しためすねじにねじ込み締結する場合に使用し、一般的にナットを使用して締結する場合には使用しません。
皿小ねじは、十字穴もしくはすりわり (マイナス穴) にプラスもしくはマイナスドライバーを差し込み締め付けます。なお、皿小ねじの長さ表示は、ボルト頭部を含む全長で表されています。六角ボルトなど一般のボルトの長さは、ボルト頭部高さを除くねじ部を含む軸部長さで表されています。
皿小ねじの種類
図2. 皿小ねじの種類、材質と形状
皿小ねじの種類は、下記の2つに分類されます。
1. 小ねじ頭部の穴形状による分類
皿小ねじ頭部の穴形状は、工具を差し込む部分の形状で、下記の4種類があります。
十字穴 (プラス穴) JIS H (Phillips) 形、Z (Pozidriv) 形
十字穴にはH形 (Philips) とZ形 (Pozidriv) の2種類があり、それぞれ穴形状が異なります。したがって、それぞれ専用のドライバーやソケットビットなどの工具を使用します。
H形とZ形は、H形は圧力面 (締め付け時にドライバー面と接触する面) の角度が若干開いていて、Z形はほぼ垂直であることが違いです。Z形の方が、締め付け時にドライバーが浮き上がるカムアウト現象が起こりにくいという利点があります。しかし、日本国内ではH形が多くなっています。
すりわり形 (マイナス穴)
すりわり形は、真っ直ぐな1本の溝でマイナス穴とも呼ばれています。マイナスドライバーやマイナス形状のソケットビットなどの工具を使用します。
図3. 皿小ねじ頭部の穴と工具の形状
六角穴
六角穴は、穴にぴったりフィットした六角レンチを使うため、高い締め付け力を得られます。L形の六角レンチは、締め付け時のボルト周囲のスペースが少なくて済むメリットがあります。
ただし、六角レンチには、ミリサイズとインチサイズがあり、六角レンチの選定には注意が必要です。
トルクス穴 (Torx、Torx Plus、Tamper-Resistant Hex、Tamper-Resistant Drilled)
トルクス穴は、星形の穴形状で「トルクス」はテキストロン社 (Textron Inc.) の登録商標のため、一般的な名称では「ヘックスローブ」などと呼ばれています。
2. 材質 (強度区分) による分類
一般的な皿小ねじの材質 (強度区分) は、下記の3種類があります。
材料区分 |
強度区分 |
適用規格 |
鋼 |
4.8 |
JIS B1051 |
ステンレス鋼 |
A2-50, A2-70 |
JIS B1054 |
非鉄金属 |
右記の材質区分の中で受渡当事者間にて決定 |
JIS B1057 |
皿小ねじのその他情報
1. 皿小ねじの規格
- JIS B1111 十字穴付き小ねじCross recessed head screws
- JIS B1101 すりわり付き小ねじ Slotted head screws
- ANSI/ASME B18.6.3 Machine Screws, Tapping Screws, And Metallic Drive Screws (Inch Series)
- ISO 7046 Countersunk flat head screws (common head style) with type H or type Z cross recess – Product grade A
市販されている皿小ねじには、現行のISO規格に準拠する前の旧JISで製作されているものもあり、ねじピッチが異なります。旧JISで製作されているものには、小ねじ頭部外径が小さいものがあります。
そのため、取り替えの際や被締結物のめねじが、現行JIS品と旧JIS品のどちらかを確認して使用する必要があります。それ以外にも、JIS規格外寸法で製作されている皿小ねじがあり、使用の際は注意が必要です。
2. 皿小ねじのサイズ
- ねじの呼び: M2~M8
- ねじ長さ (推奨長さ): 4~60 mm
※ねじの呼びによって長さの範囲は異なりますので、詳細はJIS規格を参照してください。
参考文献
https://www.urk.co.jp/contents/elements/element2.html
https://www.tsurugacorp.co.jp/dictionary/machine_screw/machine_screw_flat_head.html
https://www.nejishop.com/html/page1.html
https://www.akaneohm.com/column/denshoku2/
https://www.nbk1560.com/resources/specialscrew/article/nedzicom-topics-13-galvanic-corrosion/?SelectedLanguage=ja-JP