モーターレンチとは
モーターレンチは、主に水回り設備のナットなどを、比較的少ない力で締めたり緩めたりするための専用工具です。
よく似た工具のモンキーレンチとの違いは、大幅に広い口開き幅を持つことです。
水回り設備のナットは大きいため、一般的なモンキーレンチでは対応できないことがあります。モーターレンチは、ナットを挟む部分 (口金) がハンドルと平行になっているため、モンキーレンチよりも格段に広い口開き幅を持っています。これにより、大きなナットでもしっかりと掴むことができます。
また、円筒形のパイプを強力に締め付けるための工具であるパイプレンチも似た形状をしていますが、パイプレンチは滑り止めのために口金にギザギザの歯が付いています。 このため、モーターレンチの代わりにパイプレンチを使用すると、水回り設備のナットを傷つけてしまう可能性があります。
モーターレンチの使用用途
モーターレンチは、幅広いサイズのナットに対応できるため、洗面台、トイレ、浴室など、比較的大きな呼び寸法の水道配管のメンテナンスに使用されます。
水道配管は、パッキンを用いて配管の気密性を保つ構造です。そのため、使用する継ぎ手やナットは、呼び寸法が大きい一方で、締め付けトルクが比較的小さく、モーターレンチによる締め付けや取り外しに適しています。
また、締め付けや取り外しの際に加わるトルクが小さいため、樹脂などの比較的柔らかい材質のナットに対しても適しています。
モーターレンチの原理
モーターレンチの最も大きな特徴は、本体に備えられているウォームギアにより、口開き幅を無段階で調整できるため、さまざまなサイズのナットや継手に対応できる点です。
配管に使用されているナットは、メッキ加工されたものや真鍮 (亜鉛と銅の合金) 、樹脂製のものなどが多いため、これらを傷つけないように、一般的なモーターレンチの本体はアルミニウムのような比較的柔らかい金属でできています。
一般的なモーターレンチは、ハンドルと平行な方向に口開き幅を調整します。口開き幅が大きくなるほど、ハンドルがナットや継手に対して相対的に短くなるため、大きなトルクが必要になる場合があります。
そのような場合には、モンキーレンチのように口金がハンドルに対して垂直な縦型のモーターレンチを使用すると、大きなナットに対しても比較的少ない力で締め付けや取り外しが可能です。また、配管と配管の間の狭い場所でも作業しやすいという利点があります。
モーターレンチのその他情報
モーターレンチの使用上の注意点
モーターレンチの使い方は簡単ですが、破損やケガを防止するための注意事項があります。
1. ガタツキがないことを確認する
モーターレンチを使用する際は、ナットを挟んだあとにガタツキがないことを確認してから回します。ガタツキのある状態で力を入れると、モーターレンチがすっぽ抜けて思わぬ事故やケガにつながるおそれがあります。
ガタツキがない状態でも、万が一すっぽ抜けたときのことを考えて、手を挟まない位置関係で力を入れることが重要です。また、ガタツキのある状態でナットへの引っかかりが不十分のまま無理矢理回すと、ナットをなめてダメにしてしまうこともあります。
2. 正しい方向に回す
モーターレンチを回す方向は、上アゴから下アゴ方向と決まっています。ナットを締めるときは正しい方向になりやすいですが、取り外すときも同じ持ち方だと下アゴから上アゴ方向に緩めることになります。下アゴに力がかかりすぎると、破損の原因になるため注意が必要です。
また、固着したナットを取り外す際に、パイプなどでハンドルを延長して大きな力を加えるのも破損の原因となります。ハンドルを長くして大きな力が必要な場合は、縦型のモーターレンチの使用をおすすめします。
参考文献
https://electrictoolboy.com/media/18574/
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0294.html