細胞毒性測定試薬

監修:株式会社同仁化学研究所

細胞毒性測定試薬とは

化合物が、細胞へ与える影響や効果を評価・確認するため、細胞数の測定に使用する試薬のことを指します。

細胞毒性の測定には、細胞数のカウント、[3H] チミジン取り込み法、 MTT法、WST法、遊離LDH活性測定法など様々な測定法が利用されています。

細胞毒性測定の指標は大きく3つに分類することができ、実験に合った手法を選択する必要があります。

  • 細胞増殖能力 / Proliferation
    サンプル中の細胞数を測定し細胞の生存状態を解析
    細胞分裂に伴う細胞数を反映したもので、目視による細胞数のカウントやDNA量を測定(ヌクレオシド取り込み法など)することにより、生細胞数や細胞増殖の有無を解析します。

細胞毒性測定試薬1

  • 細胞生存能力 / Viability
    細胞全体の健康状態を測定し、間接的に細胞数、毒性を解析
    細胞全体の健康状態を測定する指標を指しており、NADHやATPなど生細胞特有の代謝生成物の量やエステラーゼ活性など酵素活性を測定します。細胞生存能力の測定は操作が簡便であること、特殊な装置を必要としないこと、細胞増殖能力や細胞毒性を間接的に評価できることから、最も汎用されている指標となります。
  • 細胞毒性 / Cytotoxicity
    死細胞の指標を測定することで細胞に対する毒性を解析
    死細胞における指標として細胞膜損傷を測定する方法が一般的に用いられており、細胞内物質の漏出や細胞膜不透過性色素での染色などにより直接的に死細胞を検出します。

細胞毒性測定試薬の使用用途

医薬品や化粧品をはじめとした、様々な化学物質の評価で使用されています。
化学物質が細胞に対して毒性を示す濃度を評価する毒性試験、化学物質が細胞に対して薬剤効果を示す濃度を評価する薬効試験などがあります。
また、動物実験の代替法としても細胞毒性試薬が利用されています。

細胞毒性測定試薬の原理

測定法には細胞増殖や毒性を直接的に解析する「細胞増殖能力」と「細胞毒性」に対し、間接的に細胞数や毒性を解析する「細胞生存能力」があります。

「細胞生存能力」測定は、MTT法やWST法と呼ばれる、還元発色試薬と生細胞中の脱水素酵素活性を利用して吸光度測定により細胞数を計測する方法で、測定の手軽さ、安全性、再現性などの点から細胞増殖試験や細胞毒性試験など幅広く利用されています。
また、「細胞毒性」測定は、細胞膜損傷により細胞外に漏れ出した酵素(Lactate Dehydrogenase:LDH)を指標に細胞毒性を測定する方法です。

細胞毒性試験について

細胞毒性測定試薬が用いられる細胞毒性検査には、検査に使用される細胞のコロニーの形成方法によりいくつかの方法があります。以下のような方法が代表的です。

  • コロニー形成試験
    コロニー形成試験は、医療機器など試料と細胞を直接接触させ、その抽出液を用いて培地にコロニーを形成させて検査をおこなう試験方法になります。
  • 直接接触試験 (コロニー形成法) 
    直接接触試験は医療機器の一部を採取し、これを培地に沈め細胞を直接播種してコロニーを形成させて試験をおこなう試験方法です。

ほかにも、「ティッシュカルチャー (TC) インサート試験 (コロニー形成法) 」や「Elution試験 (サブコンフルエント法) 」、「直接接触試験 (サブコンフルエント法) 」などの方法があります。

そして、いずれの方法においても細胞により形成されたコロニー、すなわち複数以上の細胞が集まった細胞集合体中の生細胞の割合で毒性を判断しています。

生細胞をカウントするための「細胞生存能力測定用試薬」と死細胞をカウントするための「細胞毒性測定用試薬」があります。

細胞生存能力測定用試薬

細胞生存能力測定用試薬は、細胞毒性試験においてコロニーを形成したとき生細胞のみに反応し、生細胞にのみマーキングする、もしくは生細胞との反応により生成される物質を導き出すなどして生細胞をカウントできるようにする役目をする試薬です。

生細胞のみに反応してマーキングする仕組みとしては、還元発色試薬と生細胞中の脱水素酵素活性を利用したものが代表的です。これによってマーキングされた生細胞を吸光度測定により検出し、細胞数を計測することで毒性を判断しています。

この方法は操作が簡便であり、特殊な装置を必要としないことや細胞増殖能力や細胞毒性を間接的に評価できるため、最も利用されています。

ただし、生細胞の数だけを求めた場合は細胞の全体数が減ることなくその数が生存しているのか、全体の数も減っているのかが判断できず、生細胞の脱水素酵素活性が低下していることもあります。

細胞毒性測定用試薬

生細胞の数だけを求めた場合は結果に不具合がある可能性があるため、細胞毒性測定用試薬を用いた検査も行います。細胞毒性測定用試薬を用いれば、色素の利用により死細胞の数の測定が可能です。

この色素は、死細胞において細胞膜が損傷したことで細胞外に漏れ出した酵素を指標とする死細胞のみが反応する性質があります。

「細胞生存能力測定用試薬」を用いて生細胞をカウントし、「細胞毒性測定用試薬」を用いて死細胞の数もカウントして総合的に細胞毒性を判断しています。

細胞毒性測定試薬のその他情報

細胞毒性測定試薬の種類

細胞毒性測定試薬のうち、生細胞をカウントするための細胞生存能力測定用試薬は細胞の性質や検査項目に応じた測定指標を持つものを選びます。測定指標の種類としては、以下のようなものが代表的です。

  • ミトコンドリア内脱水素酵素活性
  • 細胞内脱水素酵素活性
  • ATP量
  • エステラーゼ活性

一方の細胞毒性測定用試薬も細胞の性質や検査項目に応じた測定指標を持つものを選びます。測定指標の種類としては、以下のようなものが代表的です。

  • 細胞内酵素の漏出
  • 生細胞染色色素の漏出
  • 膜不透過性色素
  • 色素排除法

なお、これら試薬は、試薬単体として販売しているケースやキットとして販売されているケースがあります。

細胞毒性試験に関しては自社で行う場合もあれば外部委託で行う場合もあり、企業によって様々です。

参考文献

http://www.fdsc.or.jp/contract/contract_service/
https://dojindo.co.jp/products/category.cgi?bid=1&code=1631492616
https://www.ube.co.jp/usal/documents/se113_134.htm
https://dojindo.co.jp/products/contents/mtt-wst-ldh-cell-cytotoxicity-viability-proliferation.html
https://www.nikoderm.com/

本記事は細胞毒性測定試薬を製造・販売する株式会社同仁化学研究所株式会社様に監修を頂きました。

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