スクリューナット

スクリューナットとは

スクリューナットとは、さまざまな機械において、モーターなどの回転運動によって直進方向の移動や位置決めをする機構で使われるナット部品のことです。

スクリューナットと回転軸を併せて使用することによって、回転運動と直線運動の変換を行います。

広義にスクリューナットという言葉からは、6角形状の外形に内ねじを持つ六角ナットも当てはめて捉えることができますが、工業部品を扱う上でスクリューナットという名称は、回転と直線運動の変換に使うナット部品に限定して用いられています。

スクリューナットの使用用途

スクリューナットは、モーターなどの回転運動を発生させる動力源と、動力源によって回転する回転軸とを併せて、可動域のある対象物の搬送や装置の昇降機能として使用されます。

主には産業用機械や産業用ロボット、アミューズメント装置の可動機構の一部として用いられています。また可動ジャッキも、スクリューナットの使用用途の一つです。

スクリューナットの原理

スクリューナットが回転軸とセットで用いられ、回転運動と直線運動との変換ができるのは、螺旋状のねじ形状によるものです。

ねじはリード角という斜面の斜度に相当する一定の傾きを持った山と谷形状が連続しており、回転軸と回転軸の外側を覆うナットの穴の内径に、互いが嵌合することによって機能します。

広く用いられている締結用のボルトやナットと原理は同じですが、大きな違いの一つは、スクリューナットには移動や位置決めを行うために台形ねじと呼ばれるねじ形状が用いられていることです。

スクリューナットの種類

スクリューナット自体にJISやISOの規格はありませんが、現在市販されている製品には、DCM形とDC形の2種類があります。両者の違いはフランジという鍔 (つば) 形状の有無で、DCM形にはスクリューナットを固定するための鍔と固定用のねじ穴がついたものです。

DC形にはフランジはなく円筒形上をしていますが、円周方向の溝や軸方向に切り欠き溝などが設けられています。

スクリューナットのその他情報

1. ボールねじとの違い

スクリューナットと同様の目的に用いられる機械要素にボールねじがあります。ボールねじも回転運動と直線運動の変換に用いられる機構です。

ボールねじでは作動時の摩擦抵抗を減らすために、ボールの転がりを利用しています。スクリューナットと回転軸はお互いにすべり運動をするため、特に両者に作用する荷重が大きいほど大きな摩擦力が生じます。繰り返し動作すれば摩耗も発生するため、耐摩耗性の高い材料や表面処理なども考慮しなければなりません。

一方でボールねじのように鋼球を内臓していないため機構がシンプルであることから、利用目的によって選択する必要があります。

2. スクリューナットの諸元

スクリューナットはダイカスト製で成形されており、ボールネジに比べ高耐久で低コスト運用が可能です。また、ボールねじの要領で使用出来ますが、ボールねじに比べてねじ部分の摩擦が多いため稼働効率は落ちます。そのため使用する際には、可動するものや精度を考えて剪定しなければなりません。

スクリューナットは高強度亜鉛合金で製造されており、摩擦性や高荷重に優れています。機械特性については以下のとおりです。

  • 引張強さ:275~314 N/mm^2
  • 引張耐力 (0.2%) :216~245 N/mm^2
  • 圧縮強さ:539~686 N/mm^2
  • 圧縮耐力:294~343 N/mm^2
  • 疲れ強さ:132 N/mm^2×10^7
  • シャルピー衝撃値:0.098~0.49 N・m/mm^2
  • 伸び:1~5%
  • 硬さ:120~145 HV

スクリューナットを選定する際には、荷重の種類に応じて以下の安全係数を考慮し選定する必要があります。

  • 使用頻度の少ない静荷重のとき:安全係数1~2
  • 一般的な一方向荷重のとき:安全係数2~3
  • 振動・衝撃を伴う荷重のとき :4以上

参考文献
https://www.kss-superdrive.co.jp/jp/pdf/qa/Q-LS-01.pdf

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